発熱体と炉内の温度表示には70〜90℃の差があると言われています。
ヒーター線の使用温度が1375℃のとき
炉内は1295℃以下の必要があり、多くの電気炉の最高使用温度が1280℃になっているのもこのためです。
しかし、熱電対と温度指示計の誤差は±1%はあるといわれており
素焼きでも800℃の±1%は808℃と792℃
本焼きであれば1250℃の±1%は1262.5℃と1237.5℃となるのです。
ただし後述のようにもっと測定誤差があることも多く確認されています。
SK8(1250)での誤差1%は12℃以上あります。
いかに優れた測定機器といえども過信してはいけないということでしょう。
かならず色見やゼーゲルコーンを入れる必要があるということを忘れずにおくこと
そして電気炉では安易に1250℃以上に設定しないことも大事です。
1250℃に設定してゼーゲルコーンを入れてみれば案外と温度が上がっているのがわかるでしょう。
誤差が小さくても無根拠にそれを繰り返せば電気炉ではヒーター線等の寿命は短くなるのは間違いのないことです。
世の中の測定機器には必ず誤差がある、という考え方をすれば、いかに温度計のみの焼成が不確かなものかわかるでしょう。
また他人の1250℃と自分の1250℃には差があること、それがたとえ±1%であっても25℃程度の開きはありえるということであり、ガス炉のように温度計は別で購入している場合、温度計の個体差や製造年月日、メーカーによってそれ以上の誤差がでることがありえるし、実際にわたし自身も確認しています。
温度が高いほうがよりよいやきものに成り得るというのは、ある意味、正解でもあり、不正解でもあるのです。
しかし、同じ作業をする以上、より高い温度にしたいのが人情というものでしょう。
それにより釉薬の流れのトラブル、棚板やヒーター線の寿命への悪影響があることは、知らない人の方が多いのが現実です。
それを発信しなければメーカーにはそうしたトラブルばかりが報告されることになるのです。釉薬メーカーでも同じことでしょう。焚き方が悪いのに自分の作った釉薬のせいにされてはたまらない。しかしそういうクレームは多いだろうと思います。
一体だれがこんな風にしたのでしょうか。
やきものは科学的な考察と工業としての側面を強くもっています。
センスだけで正しい窯の運用はできません。ロクロが上手いだけでは作家にも先生にもなれないということです。
この責任はわたしを含むメーカーと販売者にあるとも言えます。
そもそも先生でさえ理解していない人の方が圧倒的な話です。
この人が窯が焚けるかどうかなんて車の免許の有無のようには判断できないのです。
せめてそれを搬入時や取扱説明書に明記しておかなければ、安直に根拠もなく1250℃以上の高温にするユーザーが出てくるばかりでしょう。
人よりも高温にする、人よりも大きくする、人よりも早くする、あまりにも幼稚な張り合いだと思いませんか。
すぐれた作品は帯留めのようなサイズであっても人を虜にし、一生忘れられないほどの記憶を刻むものです。
茶碗などにもそういう作品は多いですし、わたしもその場から動けなくなった作品があります。
まだまだ発信が足りないようですね。