2020年11月27日

陶芸のニオイ問題


日某絵具店の方(笑)と電話でいろいろとお話したのですが、電気炉でのニオイの発生をどうするかという質問がお客様からあったとのことでした。

まず、エントツのあるガス窯ではニオイがすることはありません。
焼成で発生するニオイはエントツを通じて排気されてしまうからです。

やきものの製造工程の中でニオイを感じる作業はいくつかあるかと思います。
自分で窯を焚かない人でも想像できるのは、油性撥水剤の溶剤臭でしょうか。

また焼成中であれば燃料や炉内に炭素が多いとニオイを感じます。薪窯でも薪が燃える特有のニオイを感じます。「あぁ薪窯焚いてるな〜」というニオイです(笑)。

気炉の場合、焼成中であればいくつかのニオイ発生条件があるかと思います。
まず素焼きですが、わずかですが焼成初期段階で粘土が含む有機物の燃える際に発生する独特のニオイを、窯の周囲でわずかながら感じることがあります。また還元焼成を行う方も、ガスを投入すればさらに強いニオイを感じることでしょう。

ちなみに一酸化炭素が出てると言われる方もいますが、一酸化炭素は無臭ですから、このニオイは完全燃焼しきれていないガスの排気のニオイです。ストーブなどでも起こりえますから本格的な冬到来の前にこちらもご確認ください。

日本ガス石油機器工業会のサイト https://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/anzen/co/index.html


しかしそうしたニオイも、アレに比べればそこまでひどくもありませんし、そこまで周囲に迷惑をかけることもないでしょう。


では。

電気炉の焼成でもっともニオイが気になる時とはいつでしょうか。


実は金液等の焼き付け工程です。


液や銀液等を使用した作品の焼成では、どうしても金液が含む樹脂等が燃えるニオイがします。おおよそ400〜500℃ぐらいまで確認されるこのニオイは、かなり独特のものです。

瀬戸などの陶産地を歩いていると時々このニオイが漂ってくることがあります。
わたしや経験のある人であれば「あぁ金を焼き付けているんだなぁ」と微笑ましく思いますが、何も知らない人にとってはただの異臭と感じるだろうとも思います。

そもそも金を塗る際に使用する金油がなかなかのニオイです。
こうした作業を自宅陶芸で行うには、周囲の人を不安にしないようにニオイ対策をする必要があるでしょう。

気扇を回すにしても、人通りの多い通学時間や、お隣がバルコニーでせっせと洗濯物を干しているタイミングは避けておきたいものです。ニオイのピークを、深夜か、逆に真っ昼間の地域人口がもっとも下がる時間帯に持っていくしかないかもしれません。

後ろめたいことがなければそんなことをしなくても(笑)という声を聴きそうですが、人間というものはご近所が変なことをするのに意外と敏感です。これは築炉業に関わってきたわたしの実体験でもあります。突然お隣がエントツを立てたりするとしっかりとチェックしているものですし、その家の人には聞かないで、わたしたち業者に探りを入れてこられることはよくあります。

ましてその後にニオイや煙が出てきたとなると、ご近所トラブルにもなりかねません。密集する住宅地の方に、わたしが灯油窯をオススメしない理由もここにあります。無煙タイプでも少しは煙が認めらえますし、ブロアーの音もそこそこするからです。

液などの焼成によるニオイの元は、液に含まれる樹脂などの燃焼によるものです。ということは「ある程度は」その量によってニオイの強弱は「多少は」変動するかと思います。

壺の表面を全部金彩するとか、打倒三輪家とか思われている方は、そうとうニオイが発生するということを覚悟するか、ガス窯で行うといいでしょう。

気炉の方はお住まいの環境に合わせて少しづつ様子を見ながら行ってみてください。
まずはカップの縁とか、お雛様の着物にチョンと塗る程度から様子を見て、これぐらいニオイがするんだな、と把握しながら行うべきでしょう。

まぁ新しいギターアンプを買ったり、でっかいテレビを買ったときに、近所が許してくれるボリュームの勘所を探るような感じですね(違うわ!)

く言われることですが、ご近所トラブルを避けるためにも、初窯の記念品を配るとか、日頃の井戸端会議で「すっごく小さな窯でチョコチョコっとしたもの焼いてるのよ〜」と現状を過小気味に伝えておくのもいいかもしれません。まぁとにかく、やきもの屋は周囲とは仲良くしておくべきです。

マンションやそうした近所づきあいが希薄な環境の方であれば、なるべくニオイや音などで周囲を不安にしないような対策は考えておいたほうがいいかと思います。

s-IMG_4850.jpg
(波佐見:陶壁「陶磁の路」部分 イノウエ撮影)



















posted by inoueseiji at 16:12 | Comment(3) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年11月16日

陶芸に見るダニング=クルーガー効果


「なぜ能力の低い人間は自身を素晴らしいと思い込むのか」という調査によれば、能力の低い人間は以下のような特徴があることが分かった。

  • 自身の能力が不足していることを認識できない
  • 自身の能力の不十分さの程度を認識できない
  • 他者の能力を正確に推定できない
  • その能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる。

ウィキペディア ダニング₌クルーガー効果より



いるね〜、陶芸にも(笑)。


逆に能力の高い人間は自分を過小評価しているそうですよ。
自分がサラッと出来ることは誰でもサラッと出来ることなんだと思うから、だそうです。



わたしの拙い発信でも、ネット上での窯に関する発信が少ないからか、そこそこ見ていただいているようです。それらの発信についていろいろな質問をいただくことがあり、それはまたこちらの勉強と経験値の蓄積にもなることですから、なるべくわかる範囲でお答えするようにしています。

それでも本州の端っこあたりの准〇授みたいに、プロをタダでこき使おうというアホに当たることもあり、ホームページには有料対応と無料対応の基準を明確に記しているわけです。

逆に動画のコメントについては「その動画にかかわることであれば」なんでも答えていくようにしています。

わざわざ「」で囲っているのでもわかるようにロクロの動画に違う動画の窯のことを聞いてきたり、そもそもまったく動画に関係のない個人的な機材の質問を書き込まれることもあり、困惑することがよくありました。

まぁ答えられる範囲のことであれば答えるようにしてはいましたが、そういうコメントに限って返信しても何の反応もありません。


聞きっぱなし?

そりゃ上達しないよ(笑)。



いちいちそれに反応していては革命は成就しませんから、どんどん進んでいくしかないのですが、本当にもったいない。

直接メールしてくださる中にも、明らかに有料である事案について、よろしくお願いいたします、と言われてもねぇ…。




それよりも。

わたしを筆頭に発信している人とその内容を鵜呑みにしてはいけません。

尖ったナイフのような少年時代を送ったイノウエが、免許だ資格だとたまに言うのは、我々やきもの自営業には誰もツッコんではくれないからです。



無資格でなれるイケてる職業 

第4位 陶芸家

なんですよ。
(順位は適当〜アナタも考えてみよう)




免許もなにもないわけ。
陶芸教室の講師にもなんの資格も必要ありません。

それでいいし、そういうものです。


免許がない、それは大人のチェックは入っていませんぜ、ということでもあるわけですから、そこを注意していきましょ。

最近サボり気味ですが、発信するには話す内容の参考文献やエビデンスをなるべく示すべきだし、理系はオール2でしたとか、理数系の大学でお勉強しましたとか、発信者はちゃんと白状して、視聴者も発信者のバックボーンを確認してから受け取る度合いを考えましょう。

個人の発信にはチェックが入りませんから、どうしても玉石混交になってしまいます。

わたしのロクロ動画なんて職人さんからすれば、白帯が偉そうにという感じでしょう。ゼーゲル式の説明とかも、お前がするんじゃない、とあの人とあの人とあの人の奥さんが心の深いところでは思っているのかもしれません(笑)。

また逆に「オレの言うことが正解っス!イエ〜100マン通り調合を使いこなす天才はこんイノウエばい!」なんて言う方もいるでしょう。

検索すれば一つのキーワードでそれが同列に並べて表示されてしまいます。


そして視聴回数が多いと正解のような錯覚をしてしまいます。





(敬愛する陶芸ユーチューバーの全動画が最近非公開になったようですが、おそらくはそのあたりの遠因にもなっているのかなぁと勝手に想像しています。違ったらごめんなさい。応援は永遠にいたします)



さて陶芸に見るダニング=クルーガー効果についての説明は、あいかわらず尻切れトンボで出来ませんでしたが、またいつか!


IMG20201106101219.jpg


類似する用語:カジタ=イノウエ効果

個別の調合を先んじて行えば一つの乳鉢を用いて正しい実験が行えるが、34歳以下の男性が往々にして陥る、いい加減な計算に頼って次々に原料を乳鉢に投入して乳鉢のサイズが大きくなっていく現象。またそれによって作られたテストピースの釉薬は先に塗布した釉薬の減少分を考慮していないためにまったく資料として機能しないことをいう。おもに日本の窯業界のほんの一部で使用されている用語。

posted by inoueseiji at 09:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年11月14日

粘土以外の「ネンド」も気にしてみよう


小忙しい日々の中、久しぶりにロクロを回したら風邪気味になっちゃいましたイノウエです。

わたしが倒れてもこの二人がいる!



長文はまた今度!

今日はあったかいモノ(熱燗・お湯割り)いただいてしっかりと寝ます。


posted by inoueseiji at 15:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年11月05日

砥部焼のお碗で美味しいゴハン!




砥部に行ってきたのは先月末ですが、大変勉強になりました。

何しに行ったのかはちょっとアレですが、仕事がおわったあとは皐月窯さんに見学コースのガイドをしていただき、梅山窯さんの貴重な資料や製陶所の様子を見ることができました。

砥部が有田や瀬戸と大きく違うことの一つは、あくまで食器の産地であるということではないでしょうか。

瀬戸などはセラミックや耐火物、碍子なども作りますし、それは有田も同様でしょう。

砥部はどちらかというと小鹿田焼のような磁器の民芸の産地という認識の方が強いのかもしれませんね。きりっとした磁器も悪くはありませんが、砥部のおおらかでそれでいて洗練された文様と器体、砥部の現在を引っ張る若手の作家さんや窯元さんの仕事も素晴らしいと思います。

実にいいところですよ。

今回はGOTO適用で宿泊はかなりお安くできました。



★お世話になった皐月窯さんのところでのお仕事の様子は過去動画にあります。




posted by inoueseiji at 10:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中