2024年08月30日

台風も大したことなく


窯の移動があったのですが、台風のために延期。
じゃあ代わりにじゃないけれど、二ヶ月半ぶりに動画をアップしました。

珠洲焼の薪窯のしごとがあったというのもあるのですが、日々の業務が忙しくなれば動画はサボり気味になっていくものです。

リアルが充実している人はYouTuberにならないってヤツですね。




今回のエアダンパーのことも、発信しようとさえ思っていなかったことの一つです。
いくつもの現場で見聞きしたことで初めて伝える必要があるんだなと思ったものでした。

きっと同じようなことが他にもあると思います。

以前動画のコメントだったと思いますが、熱電対を炉内の中心まで差し込めないんですがいいのでしょうか、みたいな質問があったように記憶しています。そんな質問をあなたは笑うことが出来るでしょうか。わたしは正直びっくりはしましたがその気持にちょっと打たれました。

確かにそこはわたしも発信していないし、ちゃんと誰かに習ってもいないないことだと思いました。質問者の方も、どこにも聞く人もおらず、意を決してコメントされたのだろうと想像できました。

これを笑える人は、熱電対の炉内への突き出し量は保護管の直径の◯◯倍である、と明確に答えることが出来るのでしょうか。そしてそれってどこかの学校はちゃんと授業で教えてるんですかね?



話はトンで。

あるミュージシャンの動画を偶然に見ることがありました。
そこでこんな話がありました。

海外でコンサートの予定があり、その方はまぁまぁ大きな楽器の奏者なので、一部はパリの楽器店で借りるという予定で現地入りされたとか。ホテルにチェックインして早速その予約していたお店に行ってみると、程度も状態もあまり良くない楽器が用意されていて、これしかないからという冷たい対応。

オタクは老舗なんだから、もうちょっといいヤツあるでしょう?と詰め寄ってもラチがあかない。一見の東洋人の客なんてこれでいいだろうということなんでしょうか。

仕方ないので店先で、そのダメな楽器でゴリゴリ演奏したら、オイオイ、お前すげぇじゃん、そんなの使っちゃダメだぜ!この最上級のヤツを持っていけ!と店の奥からめちゃくちゃ良い楽器が出てきたそうです。

そしてコンサートも大成功。チャンチャン。

この件について、そのミュージシャンの方は公平と平等という言葉を使っていました。

どこの馬の骨にでも、平等に最上級のものを用意するのか?
それともその人の技量によってレベルを合わせたものを提供するのか。

ヨの人々は平等を求めすぎていないか?
とも言われていたように記憶しています。


じゃあ窯のはなし。


わたしはやっぱり窯に関しては、まだまだ平等でやり続けるしかない気がするんです。
誰にでも同じ情報や機材がいくほうがいい。もちろん選択の自由はあります。

誰か(まぁ俺か)ちゃんと窯のことをまとめて教えてクレイ!って思いますよね。

熱電対をいつまで温度計って呼ぶのかとも思うし、補償導線の立場はあいかわらすスピーカーケーブルに脅かされているし、扉の閉め方、温度計測、エントツの素材や施工方法、圧力計の単位、調整器の寿命、バーナーヘッドのヒビとか、ゼーゲルコーンの向きとか角度とか、まだまだ伝わっていないことは多いように思います。

これで〜いいやら〜悪いやら〜新聞読んでも〜書いてな〜い(岡林風)


検索したらひっかかる情報を出していて、プロという方のほとんどが知っていることになっているのであれば「そげなことも知らんとか〜こんバカチンが!」と言えますが、妙なアドバイスや変な配管工事をするメーカーもいたりするんだから、まだまだ革命目指して頑張ります。

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(黒いチューリップはないじぇ)
posted by inoueseiji at 06:37 | イノウエセイジの頭の中

2024年08月19日

ガス窯のバーナーあたりの話(音声入力ブログ)

これまでの相談で、いくつかガスバーナーの間違った使い方について確認したことがありました。プロ・アマ問わずですね。それこそ何人もいらっしゃいました。ここ最近数件あったのはバーナーの空気量の調整、エアダンパーの部分ですね。


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(右端のリング状の部分がエアダンパー:空気量を調整します)

ある方は空気の量が多すぎたし、ある方は空気の量が少なすぎて煤が出てるような状態でした。ガス窯なのに窯場が煤で黒くなってるんですね。窯の扉上部とか窯場の天井とかね。それは本来ガス窯ではありえないことなんですけど、何十年もそんな焼成を、その窯元さんをやってきたわけです。


また別の方は空気量の調整を間違った状態のまま、何十回も焼成のデータを取ってやってらっしゃいました。何回やっても揃わないとかね。こうじゃないな、あーじゃないと悩みながら続けてきて、いよいよ何が正解なのかわからなくなって相談をしていただいたなんてことが何件かありました。そんな設定を誰にアドバイスされたんですかと聞いたら設置した業者さんだという話でした。


大事なことで、皆さんが誤解されてることは、ガス窯のバーナーとか、そういうことはガス屋さんはわからないんですよ。ガス屋さんっていうのは 家庭に向けての器具の設置とか、そういうお仕事がメインであって、まああとは工場とかですかね、そういうところのガス関係の設備の工事をされているのであって、陶芸のガス窯なんて見たこともない人はたくさんいます。決してガス窯について詳しいわけではないということです。


それを責めることはできませんよ。同じように我々もプロパンガスとか電気についての詳しい知識や工事の経験もないですよね。そういう部分を繋いでいるのがわたしの様な取扱業者だと思います。

窯の設置業者さんが、知らないくせにお客様に非常に不用意なアドバイスや助言をする。それは非常に罪深いことです。

それによってお客様はいろんな迷惑を被っちゃうということですね。うちに相談があったお客様はみなさん、ここはこうするんですかとか、ちゃんと最初の設置時などに使い方を確認されたそうなんです。その時に業者から、こうですよって教えられたら、それは正しいと思いますよね。知らない人間が適当なことを言っているかもしれないと疑ったりしないでしょう。

でも実はそれは大間違いであったなんてことを何年も経ってから知らされる。なにしろ全く安定しないし、製品が取れない。そういうことで時間やお金がロスされていくわけですよね。いよいよ困り果ててネットで調べてこのオジサンに電話してみようかとなり、これまでの数年間のやり方をあっさりと否定される。わたしにも似たような経験がたくさんありますから、よくわかりますよ。

非常に厳しい発言をしていると思われてるみたいで、井上さんに相談したらなんか怒られちゃうんじゃないか、みたいなことも言われたこともありますけども、自他ともの過去のいろいろな例があるので、それは厳しくならざるを得ない。というか、わたしが言ってるぐらいのことは当たり前になってほしいと思っています。

実を言うと僕はすごいくいい加減な人間なんですよ。そのいい加減な人間でさえ、これは免許を取らないと怖いなって思うことが 電気とかガスとかクレーンとか、そういう世界にあるということですよね。例えば建築現場なんかでは免許持ってる人しかいませんが、そんなベテランがやってても事故が起きることはあるんですよ。死亡事故とかありますし、爆発とかねそういうこともあります。

業者はモノを売ればいいから楽チンじゃないんですよ。
梶田絵具店の梶田さんだって筆や顔料を作ったりするわけではないですが、それらがどこでどのように作られて、現場ではどう使用されているのか、ありとあらゆる例を知っていてお客様に提案されているわけです。村上金物店のワタナベさんだって同じです。窯の業者もそれぐらいの感覚でやっていかなければならないんです。自分で窯焚きできないような人は圧力計も交換せずに設置したりしますからすぐに分かります。でもそれは私には分かるけれどもお客様にはわからないことなんです。

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(箱から出したまんまのI-72調整器:この圧力計では数値がデカ過ぎてコントロールできない)


メーカーの責任も重要ですが、実は自分では陶芸窯を作っていない販売業者の責任は、実は非常に重大だということです。右から左に販売すればいい、窯を設置すればいいということではないんです。設置工事が終わってからが仕事ですよ。

業者というのはさっきも言いましたが、メーカーと窯元さん作家さん、ようはお客さんと製造メーカーとの間に立って、しっかりとサポートしなければいけないんです。それからお客さんの現場では、電気屋さんやガス屋さんに、窯とその工事に関しての説明をしてあげなきゃいけない。そういう重要なポジションなんですよ。

まあ窯自体は作らないし、多少はわたしみたいに業者が設置工事とかするっていうこともあると思うんですけど、丸投げの人もいるでしょう。とにかく製造・設置工事の全体でいえば取扱業者は大した作業はしないわけです。本体の製造以外の技術的な部分、使い方やメンテナンス、そうした 知識とか焼成技術の面でのサポートができなきゃダメよってことです。それで対価を取ってるわけですよね。


その業者の利益分の責任がたっぷりとあるっていう風に考えないと、適当なアドバイスや説明をしたら、真面目なお客様ほど一生懸命それで焼成テストして頑張るんですよ。間違った使い方で一生懸命に。

自分のやり方が悪いんじゃないかと思っていろんな試行錯誤をされていくんです。


相談されて私が実際見に行ったら、ただ単に最初の設定が間違ってますよっていうね。それでもコントロールできないのに頑張ってるとか煙突の工事がそもそも間違ってますとかね。そういうことって実はまだまだ非常に多いんですよね。

わたしはいろいろな情報をプロの人たちで共通の認識としていただきたいと思います。
そのときに別に私からどうこうじゃなくていいと思っています。ネット上に情報を上げておけばいい。だって、こいつ嫌いだわ〜っていう人も必ずいると思うので。

とにかくですね、なんだか焼成がうまくいかないなと思ったら、セカンドオピニオンは取った方がいいんじゃないかなと思います。電話ならわたしは答えますよ。実際問題ですね、今はスマホで簡単に写真送れるんですから、こうなってるんですけどいいんでしょうかぐらいの確認だったら出来るじゃないですか。それが合ってる間違っているぐらいの答えはもらえると思うのでね。それだけでも違いますよ。


それで何か間違いがはっきりしたら、じゃあちょっと見積もっていただけますか、みたいな話でもいいのかなとは思いますね。そうすればこちらも仕事になるわけですから、業者だって営業活動の一つと捉えることが出来ると思います。






posted by inoueseiji at 07:01 | イノウエセイジの頭の中

2024年08月13日

お盆休みに休みの取り方を考える

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無事に仕事をやり終えて、タウラス築炉工業(仮称:全員牡牛座だから)の三人はそれぞれの場所へ戻っていきました。
お疲れ様でした。ケガなどがなく本当に良かったです。

記念写真を撮りましたが、自分たちの仕事の都合で矢沢のアニキとイノウエだけがこの写真の段階、アーチのレンガが巻けたところで終了して撤収することになりました。それでも二日の予備日を消化してました。志村さんだけがさらにあと二日、最後まで残ってくださいました。

最初8人でスタートした築炉工事ですが、7人になり6人になり、5人になり、最後は3人デス笑。
まぁレンガ積みは人手があってもどうしようもない状態に最後の方はなりますし、シンリュウの方々にはそれぞれの支店でのお仕事が溜まっていたので、ある程度は予定通りでもあります。

今回の現場、いろいろなことがありましたが、やはり日程をホテル都合できめなければならなかったというのが一番のネックだったと思っています。夏にする仕事じゃないよね笑。

それから思うのは、働き方として世代間のギャップをすごく感じたなぁと思いました。30代から70代が一緒に働くのを50代の自分が見ていてですけれど。

自分はどちらかというと70代のシンリュウの社長の気持ちがよくわかります。そりゃ意見をしたり安全対策を軽視したような場合はビシバシ詰めましたが、気持ちはわかる。気合と根性、やると決めたら絶対に完成させるんだという覚悟で臨む。よく分かる。プランBが発動するときは◯ぬ時だ、ぐらいの覚悟があったでしょう。

自分でもガンガン作業して、10時や12時になっても仕事を止めない。それも分かる。ここケリがつくまで、とかあるからね。でも社長やイノウエが手を止めなければ社員はやめれないし、休憩できない。時間の管理は想像以上に重要なんです。だから逆に3日目ぐらいからは自分のスマホに10時、12時、15時、17時でタイマーを設定して最大音量で鳴らすようにした。現場のみなさん、休憩するのも仕事ですからね。

実は全員でサッと休憩に入ればちゃんと10分ぐらいで休憩は終わる。それがいつまでも仕事をグダグダやったりする上司がいたりして、なんとなくダラダラと休憩時間に入ると、それこそ20分ぐらい休憩時間がかかってしまう。お昼休みもそう。「昼だ!よし、弁当!」となればリズムと区切りがはっきりしてストレスが少ない。それをトップが一人だけ作業続けたり、しかもそのせいで弁当がいつ来るんだかわからないとかやっていると、これまた小さなストレスの塊が現場にドンドン溜まっていくのだが、休憩にすんなり入らない感覚の人にはそれがわからないことがある。今日は12時で明日は12時10分とかはダメなのである。学生だって数学の授業が5分伸びたらブチ切れるんじゃないかな。

一日二日ならいいんです。周囲も我慢できるでしょう。
それが一週間二週間になるとかなりツラくてヤバい状況になるのである。ロスタイムも数時間になっているでしょう。


経営者の感覚は経営者しか持っていない。そしてそれを周囲に求めることはできない。
また自分が出来ることは周囲も出来るとか、自分が感じ取っていることは周囲も感じ取っていると思うのも甚だ危険である。

そもそも技術系の人間は自分が何かが出来ると思うこと自体、常に疑っておくべきなのかもしれません。わたし(だけじゃないが)の昔取った杵柄とかはガチな現場では必要ないことの方が多いですし、そんな杵柄を持った自分と他人が一緒になったその現場で、確実にその仕事を成し遂げていかなければならないのです。

また、雇われていた時期も相当あるので、働く側の気持ちもある程度覚えています。雇われている側としては、何時に終わるんだとか、出張手当はどうなっているのかなぁとか、土日もなしかぁとか、この人スゴい博多弁だなぁ〜とか、そういう気持ちの方が強いはずだし、それが普通です。珠洲焼復興とかよりも残業手当の方が気になるのが人情というものでしょう。それでいいんです。正しいんです。

ただし、技術系の仕事ですから、よそのレンガ師が仕事していれば見て盗もうとか、そういうのはあるでしょう。それを望むのであればルール無用でエクスペンダブルズと一緒にそういう取り組み方をするしかないこともあります。

今回の反省としてはタイムスケジュールを厳密に管理すること、やはり一日ぐらいは休養日を入れるべきだったのでは、というところかな。


posted by inoueseiji at 08:08 | イノウエセイジの頭の中

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