2008年05月06日

釉薬の濃度調整について


わたしのメインの仕事は織部の器です。織部釉薬は、掛け方や濃度によって、まったく違う表情になってしまいます。これまで、形が上手くできても、釉薬にからんだ失敗で、たくさんの器をボツにしてきました。(ボツになったものがどうなるかは、あまり触れたくありませんね・・・)

下は、そうした中で、検索で偶然発見した釉薬メーカーのホームページからの抜粋です。
これもプリントにして講座でくばりました。



釉薬の濃度調整に、比重計を使用される方が多いかと思いますが、信用していると、とんでもない事に成る場合が有ります。

それは、同じ物が手に入る保障が無いからです。メ−カ−・ロット等の違いによって、何時も同じ物とは限りません。酷い物は、5度以上違う物も有ります。比重計を使われるなら、常に予備を1本持ちその間に新しい物を購入して下さい。そして新しい物が同じ所を指すかを確認しておいて下さい。

その様な管理をして比重計を使用したとしても完璧とは言えません。何故ならば、釉薬の濃度を合わせただけに過ぎないからです。

一番大事な事は、素焼素地の上に釉薬の層が、どれだけ付いたかが問題だからです。常に一緒にしようと施釉しても、施釉の速度・素地の厚み・素地の大きさ・素焼の焼け具合・季節の温度変化などにより何時も一緒には成りずらいのです。最善の方法は、施釉した後爪で引っ掻いて、釉薬の厚みを確認する事です。これが、最も大事な事です。難しくて出来ないと言う事をよく聞きますが、慣れて頂ければ出来ると思います。もう1つは、施釉後の素地の破片を保管しておき、最も良かった時の物に限りなく近づけて頂く事です。そうした釉薬管理が出来て初めて、自分の思い描いた作品が出来上がると思います。今後の参考にして頂けたら幸です。

(カネアツ釉薬 HPより抜粋)

施釉(せゆう)の基本はまず濃度の調整です。いきなり感覚で物事を進めるのは、ただの遠回りという気がします。しかし、同時に、五感を使って作業を進めることも大切です。 釉薬の取り扱いは、実は非常に難しく長い熟練を要します。小さな製陶所で施釉している人がいたら、間違いなく熟練工か社長です。  私は趣味だから適当でよい、という考え方には反対です。 色々なことにチャレンジしたり、記録したりしてみて下さい。

 そしてものつくりに一番大切なのは、創意工夫を楽しむことです。



釉薬の取り扱いはとても難しいのは確かです。


学習センターの講座をはじめたころ、継続してわたしの講座にきた、陶芸経験者の誰一人として釉薬の濃度という概念をもっていませんでした。これには正直ショックでした。複数あるどの講座でも教えていなかったそうです。どうして受講生は釉薬を絵具の色のように捉えているのだろうか、という疑問が少しとけた気もしましたし、教える側にいる人間として反省もしました。

同業の多くの知人は、この爪でひっかく方式をとっているようです。粘土の含水率を計測しないのと同様に、なにごとも経験という言い方もできると思います。しかし、わたしの性格では、目の前に比重計があるのに、使わないという選択をするのは無理なのです。

加減を覚えるというのは時間もかかります。加減を早く覚えるためにも、数値化するというのは重要だと考えていました。(いまもこういう考え方に変わりはありません。)

わたしも以前は必ず比重計でしっかりと測るだけでした。ひしゃくなどを使って釉薬をかける動作は変わりませんから、最初の数値を合わせればそれでいい、と考えていました。そのころは爪でひっかいて厚みをみることは知っていましたが、やっていませんでした。

今はどうしているかというと、比重計である程度まで合わせてCMCを入れ、そこから先は爪を使う、という方法にしています。


熱帯魚を育てる方々のはなしによると、塩分濃度を測る比重計は、同じ水槽の水でも、メーカーによって示す数値がことなるそうです。水槽で使用する比重計は、釉薬に使用する比重計とは目盛りがちがいますので、陶芸用もそうだと言っているわけではありません。ただし、どんな計測器も100パーセント信用することはできないということはできるでしょう。


わたしの場合、今まで購入した3本の比重計は、全て同じ釉液で同じ数値を差しました。同じきちんとしたお店で買ったものだからだと思います。話はそれますが、以前ホームセンターで買った湿度計はかなり狂っていました。計測器はやはり信頼の置けるお店とメーカーの品、ということでしょう。


いずれにせよ、自分なりの創意工夫が大事だと思います。

感覚だけでは自分のしっている仕事の枠を抜け出すことはできません。また計測に頼りすぎると、ものづくりで一番大切なセンスが培われなくなってしまいます。



・・・これが他人ごとならいいのに。



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posted by inoueseiji at 22:06 | Comment(1) | TrackBack(0) | 釉薬に関すること
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Posted by ottjarl at 2022年12月29日 22:42
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