2008年05月17日

液状の釉薬や長石を使って調合するには


透明釉や織部など、ほとんどの釉薬は自作しています。
そのときに使用する長石は、瀬戸の釉薬屋さんからわけてもらっている擂った長石を使用しています。巨大なミルで擂ったもので、釉薬屋さんが基礎原料として作っているもののようです。品質も安定しているようです。

瀬戸に住んでいるときは、なにも思わずに釉薬屋さんをはじめ、絵具屋さんや道具屋さん、フルイ屋さんなどにいっていました。福岡には当然そんなお店はありませんし、知っている範囲での有田界隈にも瀬戸ほど何でも揃っているわけではないようです。なんとも贅沢な環境で勉強したり、仕事をしたりしていたんだな、としみじみ思い返します。

さて、その長石ですが、釉薬の白いポット1本で2000円ちょっとだったような気がします。ポットは自分で持って行きます。買う場合はたしか1000円ぐらいだったと思います。わたしは年に1度は車で愛知県に行きますので、そのときに長石を1、2本もらってくるのです。

いつも安定してるその長石、1リットル分を乾燥させて長石がどれぐらい入っているかデータを取っていました。ところが先日、小分けしていたポットの内面を洗い、その洗い水のせいで、いつもよりも相当薄くなっていました。これではデータが使えません。単純な整数比の調合ですが、あまりにも分量が変わっては釉薬の性格がかわってしまいます。

わたしはいつも、比重計をはじめ1リットルあたりの重量も測って釉薬を管理しています。
そこで、一度キチンと比重と固体含有量の関係を調べておこうと思っていましたが、「釉とその顔料」に載っていました。今後はこのデータを基準としていこうと思っています。

ここからは、わたしの個人的な考えですから、注意して読んでください。

陶芸は不確定要素がとても多い世界だと思います。土、釉薬、焼成何一つとして同じものはありません。同じメーカーの同じ窯を隣同士において、同じ制御で窯を焚いてもわずかながら違いがあることがあります。ある種の釉薬は長石が少し変化しただけで、発色がかわってしまうそうです。

どうすればいいのでしょうか。

わたしは数年前に、そこに数字を持ち込んでみようと考えました。こう書くと理系の人みたいでかっこいいですが、もともとわたしは美術系です。数字が嫌いなんですね。やきものも最初はセンスだろうと漠然と考えていたぐらいです。

ところが、センスなどではものはつくれないんですね。つくれないことはないのでしょうが、わたしが考えるものはつくれませんでした。どうしても科学的に考えたり、数字を使わないといけない部分があるんですね。

たとえ話になるかどうかわかりませんが、なにか絵を描くときに、鉛筆も絵具も紙もあれば、センスでいいのかもしれません。では絵具から作ってください、といわれたら画家はどうするでしょうか。陶芸はどうもここらへんがちがうようです。程度の差はありますけれど。絵具をつくるとなったら、もう数字が出てきそうです。

全てはあいまいな範囲でしか安定していません。
ですからこちら側にははっきりした数字が必要なのかもしれません。

長石のはなしに戻りますが、いままでわたしが使っていたデータは、長石1リットルが1500gのとき、それを干して得た長石乾粉は760g前後でした。「釉とその顔料」のデータを参考にすれば、1リットル1500g(真比重2.60 泥しょう温度15℃)だとすれば、809.250gになっています。この数パーセントのずれをどう考えるかは個人の自由だろうと思います。わたし個人としては自分の測った1リットルの曖昧さ、学者の提示するデータの潔癖さを合わせてかんがえれば、対比して問題なかろうと思います(実際それで釉薬をつくっています)。

100点ではありませんが、70点ほど悪くありません。

釉薬を液状で保管、購入したとします。その釉薬に5%のベントナイトや0.1%のコバルトを加えるときにあなたならどうしますか。

経験豊富な陶芸家はよく、「適当な」という表現をします。わたしも適当にやっていることもたくさんありますが、こういうデータを使っての適当も便利だと思っています。

デイ漿ショウ比重ヒジュウ、ボーメ固体コタイ含有量ガンユウリョウ相互ソウゴ関係カンケイ
固体コタイシン比重ヒジュウ2.60 デイ漿ショウ温度オンド15℃のとき)

漿比重

固体含有量

°Be

比重ヒジュウ

g/l

30

1.263

427.375

33.84

31

1.274

445.250

34.95

32

1.285

463.125

36.04

33

1.297

482.625

37.21

34

1.308

500.500

38.31

35

1.320

520.000

39.43

36

1.332

539.500

40.55

37

1.345

560.625

41.67

38

1.357

580.125

42.79

39

1.370

601.250

43.91

40

1.383

622.375

45.03

41

1.397

645.125

46.15

42

1.410

666.250

47.27

43

1.424

689.000

48.39

44

1.438

711.750

49.51

45

1.453

736.125

50.63

46

1.468

760.500

51.75

47

1.483

784.875

52.87

48

1.498

809.250

53.99

49

1.514

835.250

55.11

50

1.530

861.250

56.23

51

1.546

 

 

52

1.563

 

 

53

1.580

 

 

54

1.597

 

 

55

1.615

 

 


この記事はまだまだ追加してくことがありそうです。


<追記>

先日の窯焚きのときのデータを書き込むのを忘れていました。
わたしの灰を使った透明釉、この表を使ってあらためて調合したものと、今までのバケツから釉掛けしたものを窯に入れてみました。結論から言いますと、違いはありませんでした。

ゼーゲル式を用いての調合ではありませんから、単純な整数比の調合では問題ないのではないでしょうか。それよりも重要なのは、いつも同じ原料を使う、安定した長石を使うということだと思います。長石の個性を生かしたい場合は別ですが。少なくとも、既存の釉薬になにか添加したいときに、この数値は役に立つのではないでしょうか。

御意見お待ちしていますが、クレームは受付かねますので、調合は自己責任でお願いします・・・。

<追記2>

先日、いつも使っている1リットルの計量カップで、水の重量を測ったら980gぐらいでした。つまり、1リットルになっていなかったのです。あらためて計量カップにしるしを点けて、長石をはかったらほぼ、上記の一覧表と同じ数値をとりました。もっとも、これまでも支障はなかったので、釉薬にもよるでしょうが、数パーセントの誤差は許容範囲だと思います。



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posted by inoueseiji at 14:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 釉薬に関すること
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