2016年08月09日

陶芸窯の選び方を知っているのか

オートバイに乗らなくなってからのわたしの趣味は自転車です。マウンテンバイク、トライアル、BMXにママチャリや小径車などさまざまな自転車に乗ってきて、いまはロードバイク(厳密にはシクロクロスです)に乗っています。競輪選手がのっているような早いヤツです。


スーパーに買い物に行く人が乗るのはママチャリで、早く走りたい人はロードバイクに乗るでしょう。それぐらいの違いは子供でもわかります。その値段も1〜3万円と15万円以上と、大きな開きがあります。


あなたが自転車でなにかをしようとしたとき、どんな自転車を選べばいいか、これまでの経験で判断できるはずです。買い物にしか使用しない人がロードバイクを 買ってしまうなんてことはないでしょうし、そのうちレースに出てみたいと考える人がママチャリを選ぶこともないはずです。


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それでは自分のやきものの仕事にどんな窯が向いているのか、理解している人はどれぐらいいるのでしょうか。残念ながらそう多くはいないでしょう。やきものを学ぶまで窯を見ることもなかったでしょうし、自転車ほどたくさんの種類を知っているわけではないでしょうから。


たとえば同じ大きさの電気窯で、30万円と50万円の二つがあったとしたら、そのどこがどう違うのか指摘できる人はどれほどいるでしょうか。


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最近流行の自転車、ロードバイクについては、ネットに情報があふれています。変速機のグレードによって性能と値段が大きくことなること、フレームがアルミか カーボンかで走りに違いがでてくること、タイヤを変えれば異なるシチュエーションに対応できること、パンク修理の方法、カスタムの仕方、購入する際の選び方、台湾製よりイタリア製のほうがはったりがきくこと、などなど、本当に多くの情報が手に入ります。


それでは、陶芸窯についても自転車と同じように、あふれるほどの情報がネットに存在しているでしょうか。ご存知の通り、答えは否です。


残念ながらネットで「窯 焚き方」と検索しても、自分ひとりで窯焚きができるような情報がヒットしない。これが現状です。


これまで何度も陶芸ブームがありました。そのたびに多くの陶芸家が生まれて窯を築いてきたはずです。また、たくさんの築炉メーカーも生まれ、それら企業が切磋琢磨するなかで、陶芸窯は大きく進歩してきました。


ただ、だれも発信していない。あまり教えられてもいない。その証拠に大学で陶芸を専攻した方に窯についての説明をすると、そんなこと初めて知りましたと喜ば れることがとても多いのです。ためしにどこかの大学の陶芸専攻のカリキュラムをネットでチェックしてみてください。焼成についてどれだけ教えられていないかがわかり、愕然とするでしょう。


またアマチュアの方々は、粘土細工講師や陶芸家のなりそこないたちがばらまいてきた根拠のない風説に惑わされて、なかなか購入に踏み切れないでいることが多いようです。


大きな決心をして窯を購入された方でも、窯に関する知識がないために苦労されていることがよくあります。また、本来はロードバイクを購入するべき人がママ チャリを購入してレースに挑戦しようとしていることもあります。ブリジストンやミヤタといったメジャーなメーカーだから大丈夫と思われるかもしれません が、どちらのメーカーもママチャリからロードバイクまで製造しているので、注意が必要です。


かつてこんなことがありました。アマチュア作陶 家としてやきものを楽しんでいる方でしたが、あることをきっかけにうまく焚けなくなってしまったので窯を見てほしい、という相談でした。会社経営に成功さ れ、やきもの三昧の生活と趣味の車のために一等地に広大な家を建てた方でした。ヨーロッパ各国の高級車が何台もあり、成功した芸術家のモダンなアトリエと いう雰囲気の仕事場。しかし窯場にあったのは、その場に似つかわしくない「ママチャリ」の窯でした。たしかにメーカーはよく耳にするところのものです。本 人もそれが理由で選んだということでした。残念ながらメーカーの営業マンは対応できずに土下座して逃げており、わたしに話がきたというわけです。


わたしはその窯場で、なんとも言えない気持ちになりました。車に何千何億と払える人の窯としては、あまりにも貧相でした。また設置の状況、煙突の取り付け方などから、メーカーの営業や工事者が窯焚きできない人間であるのは一目瞭然でした。


このことから言えるのは一つです。自分で努力して知ろうとしなければ、決していい窯に出会うことはないということです。カタログが立派なことや全国展開していることが、まったく製品の良さに比例していない業界です。


例えば自動車は、たくさんの法律に守られて、メーカーもテストドライバーなどによる試験をくりかえしています。しかし陶芸窯の世界にそんなシステムはありません。黙々と いい窯を造っているところが大企業とは限りません。事実多くの築炉メーカーが産地密着の中小企業です。車と違い、窯が焚けない人もたくさん製造や営業にか かわっています。もちろん、窯を焚ける人が設計をしていますが、あくまでその人のポリシーで窯を造っているだけで、最低ラインの基準が存在するわけではな いのです。


アマチュアにはこれでいいだろう、壊れれば修理させればいいさ、そんな声が聞こえてきそうなものもあります。何十年も仕様変更されない窯をカタログに乗せつづけているメーカーもあります。逆に顧客の現場をまわり、細かな改良を黙々とつづけているメーカーもあります。



posted by inoueseiji at 14:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中
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