個展もいよいよ最終日です。
2年目のジンクスに負けずに、なんとかそこそこの売り上げを出しています(多分)。
今回、「注ぐ器」というテーマに沿って、急須などが多いのですが、テーマ展示のメインのテーブルには煎茶碗3杯分の水をコップで用意して、注ぎごごちを試してもらっています。きびしい嫁の検査をパスした急須たちしか展示されていませんので、全てキレはよいのですが、人によって、器の扱い方、手の動く早さが違い、感想はまちまちです。
わたしの友人や先輩も、あまり急須をつくっていないようですし、陶芸家全体的に急須を手がける人が少ない理由もなんとなく理解できました。
こちら側がキレのよい、軽い急須をつくっても、人それぞれ手の大きさや筋力がちがうため、取手の長さ、大きさ、太さで評価を決められてしまいます。また、それも含めて及第点をとっても、容量が家族構成に合わない、といわれることもあり、ほかの器と全く勝手が違います。
とあるお客さんが言ってましたが、急須はもらって一番困る器なんだとか。なるほど、と思いましたが、お花をくれた叔父、叔母には売れ残りを送りつけようと思っています。
さて、急須といえば口切れです。
注いだ後にタラリとたれるのはいやですよね。そこで、わたしなりにキレの良い急須の見分け方を書いてみます。
もっとも重要なのは、口の角度、先端の形状、注器そのものの素材です。
口の角度はなるべく30度以下にします。そうでない場合は口の先端部分だけでもそうなるように工夫すること。
口は薄いに越したことはありません。金属器だと、ほとんどキレを気にしなくていいようですが、陶器は厚みがありますから、なるべく薄く。しかし、あまり薄いと脆くなるので妥協点を自分なりに探すしかないようです。
また注ぎ口の穴も大きすぎず、小さすぎず。感覚ですが、タバコよりは細いぐらいでしょうか。口先はそのままよりも、わずかに斜めに切ったほうがキレが良くなります。しかし、斜めすぎると、最後傾けきった時に液体が暴れます。
同じ形状ならば、釉薬をかけない焼き締めの急須のほうがキレはよいようです。
ヒントになるかどうかわかりませんが、こんなことを意識して幾つかつくってみると、自分なりに理解できると思います。
会場でも聞かれたら答えています(もっと具体的に)。
そこまで話した人が買わずに帰ると、嫁が教えるだけ教えてもったいない、と言います。しかし、これも人が書いたり、実験した情報を公開したから、わたしの知識になったのです。それをわたしで止めることは、間違いだと考えています。
たくさんの人が良い急須を見分けられるようになれば、またつくれるようになれば、人々の生活や陶磁器業界も少しだけ変わるんじゃないでしょうか。
陶磁器の技法や調合は、おそらく藩窯であったころの名残で、秘伝として口外してはいけないという認識が強いようです。なかにはたいした秘密ではないこともたくさんあります(二回焼くとか)。わたしはこうした体質が日本の陶磁器業界を衰退させてきたのではないかとおもいます。
技術や情報を公開しても、窯と土と手が違えば、容易には再現できません。作り手として、こそこそ隠し事をしたくもありません。たくさんの情報を公開することで、全体の底上げにつながると思います。現に、そうした集団が日本各地にいくつかあるようです。
わたしは一時期自分が損をしてもいいから、情報は公開すべきだと思います。結局最後に得をするのは、公開した側になるということを、もうすでに体験しているからです。
公開する側はまた、その情報に責任があります。そのため、自分も勉強するようになります。これも一つの効果だと思います。
では、個展最終日、がんばってきます。
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