今日親類が陶芸を習い始めたという知人を連れてきてくれて、陶芸窯についての説明や世間話をしたのですが。
その方はすでに中古の七宝用の電気炉を購入しており…。
すぐに素焼きしかできないと気づかれたようですが。
(まぁ厳密には素焼きもできないわけですが。)
写真を始める時にカメラを購入しなければならないように、当然陶芸を始めるにも必要な道具というものがあるわけで、そこのところを書いてみます。
わたしの発信ですから「まず窯を手に入れよう!」と普通はなるわけなんですが。
とはいえ、陶芸を習い始めたばかりの人が、小さな家庭用だとしても、いきなり陶芸用の窯を購入する、ということはいろいろな面で難しいことが多いわけですよ。
じゃあ、「まずは中古でもいいから電動ロクロを購入しよう!」と思うのは自然な考えで、それを否定することも難しく、実際にわたしも築炉メーカー時代に、知り合いのツテで中古の電動ロクロを窯より先に入手したくちです。
しかし。わたしもそうだったからといって、間違っても電動ロクロを先に購入してはいけないのです。
残念ながら、叔父の知人も中古の電動ロクロをも購入しているそうで、ああ、ちょっと遅かったなぁと話をしながら思った次第です。
多くの書籍でも指摘されているように先に電動ろくろを購入すると後悔することになるんです。
家には電動ロクロしかない状態ですので、ただひたすらロクロを練習するようになります。
当然そうなれば多少はロクロ技術は上がっていくかもしれませんが、作品というよりも、正確には作品予備軍ばかりがたくさんできることになります。
陶芸サークルや陶芸教室では、なかなか自分で焼成する機会を得ることはないわけで、釉薬についてもまったく関われないことのほうが多いようです。今日お会いした方が通われているところもまったく釉薬の施釉は人任せとのことでした。
釉薬の濃度調整や施釉に関われないのであれば残念ですが、そこまで技術や認識のレベルは上がっていきません。
そうなれば、ますます電動ロクロばかりをコツコツと頑張ることになっていき、作品予備軍はどんどん部屋に増えていきます。
ところが。
自分がロクロで作って削って乾燥させたものが、正しく焼き上がるかどうかは焼成するまで確認することができません。
そうして窯での焼成工程が自分自身の実体験として持てないまま、電動ロクロの技術がどんどん偏ったものになっていき、あやまった認識を身につける可能性が非常に高くなっていきます。
理想は焼成を通じたものづくりを経験していくことですが、今回は陶芸を始めたばかりで、当然家に窯は無い、ということで話をすすめてみましょう。
少なくとも乾燥工程の理論と実践、釉薬の管理と施釉、ここだけは身につけていただきたい。
教室などに置いたままではなかなか乾燥を実践的に理解していくことは難しいと思いますから、自宅陶芸はレベルの差こそあれ、行っていただきたいと考えています。
ということで、陶芸を始めた方が用意すべき最初の自宅陶芸の道具としては以下のようなものになるでしょう。
- 正しい作陶技法について書かれた技法書
- 筆記用具とノート
- 乾燥をコントロールするための発泡スチロールの箱
- 粘土のための丈夫なビニール袋
- 古新聞
- 雑巾数枚
- しっぴき
- 針とコテ
- コシゲ板やスケッパー
- 削るためのカンナ類
- なめし皮もしくは保水性の高い布
- 霧吹き
- スポンジ
- 作品を載せたりする板
- 土練りする台か板
- 重量を計測するはかり
- 釉薬と保存するためのペットボトル
- CMCなどのノリ
- 刷毛や筆類
- ボウル数個
- きちんとした手ロクロ
このあたりをスタートの道具とするといいかと思います。
絶対に必要と思われている(誤解されている)電動ロクロや撥水剤ははじめは必要なしとします。
またマーキングのための下絵具があってもいいかもしれません。下絵もしっかりとやってみたいということであれば、鉄やゴスなどはらはじめていきましょう。
これが成り立つのは、教室やサークルが自分で施釉したものを無条件で焼成してくれるということです。それが難しい、無理ということであれば、教室を変えるか、自宅に窯を持つことを考える段階だと言えるかもしれません。
作陶において必要な技術と知識を得るためには、実は電動ロクロは必要ありません。
順番からいえば窯の次です。ここ、お間違えなく。