2021年01月09日

偉そうに水簸の話をしてみる

え〜九州は南国ではありません。
西国です。

今日の福岡県。

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たまにはこれぐらい積もったりもするのです。
スキー場も熊本とかあちこちにありますよ。
駅前にソテツとか植えるから誤解があるのよね。

昨日今日で九州自動車道はじめあちこち通行止めです。
雪に弱いが台風に強いのが九州人ですね。


さて。

相変わらず窯跡や窯の話は不人気ですが年末案内していただいた小代焼の窯跡にはロクロピットも水簸場も残されていました。


多くの方は水簸という言葉に馴染みが薄いかと思いますので、今日はかんたんに水簸のお話を書いておきます。

水簸は「すいひ」と読みます。
水のフルイということです。

まずゴタゴタ言わずに誰にでも理解できる例え話をしてみましょう。

学校のグラウンドに水溜りができていたら、そこは雨上がりにぬかるみになりますよね。
別にお庭でも舗装されていない駐車場でも、忍び込んだ採掘場でもいいです。

晴れた日のグランドの地表は乾いて同じような状態でした。
なぜその同じ場所が水溜りの所だけぬかるんでしまうのでしょうか。

それは水溜りと雨のせいで自然に水簸と同じ状態ができて、一番細かい粒子が一番上になってしまい、そこを不用意に踏んでズルっとなってしまったから、です。

よく乾いた土を水の中にブチこんで撹拌すると、粒子レベルでバラバラになります。
そうなると、粒の大きな重いものから先に沈んでいきます。つまり砂利や石が先に沈み、細かな土がいつまでも水中を浮遊している状態になり、その泥水の中の土も、粒の大きなものから順に沈んで行きます。

水簸はそれを利用した方法です。

窯元や採土しているような作家さんの仕事場、たとえば九州では小鹿田焼の里にそうした水簸のための水槽などをみることができます。


唐臼で細かく粉砕した原土を水槽に入れて撹拌し、それを次の水槽へ移していくことで徐々に粒子は細かくなります。
これは沈殿していない泥水だけを次の槽に移すことで、沈殿していない細かな土だけを得ることができるわけですね。
移す時にもフルイを通しておけば不要にゴミや大きな粒子が混ざることを防げます。

学校なんかではストークスの法則なんてものを習ったりもしますが、そんな計算をしている人に出会ったことはありません(笑)。
それよりも水溜りを思い出していただければよいと思います。

とことん細かな粒子を得ることも可能ですし、ある程度の石とゴミ(ゴミは浮きます)を取れればいいということであれば、ポリバケツ一つでも可能です。

粘土生産の現場、製土工場などはそれをもっと大規模に効率よく行っていて、もっと様々な工夫や機材を使用しているわけですし、脱鉄も行う必要もあるでしょう。

水簸の工程は土に対して水の量が過剰なまでに多いとも言えます。求める大きさの粒子が揃ったら、次にその水を抜かなければなりません。沈殿させて上水を除去し、さらにフィルタープレスなどを使用して脱水し土練機を通して含水率20〜23%程度の陶土にしていかなければなりません。

どの工程であっても土と水のコントロールがついてまわるのが陶芸、やきものの仕事です。

さて、動画で紹介させて頂いた窯跡に水簸場はやっぱり川のそばにありました。
やきものの仕事、いや昔からモノ作りの現場は川の近くというのが多いのかもしれませんね。

そんな視点で窯跡や陶産地を訪れれば、これまでと違う発見や視点を持てるのではないでしょうか。


(川の側にありますよ〜)










posted by inoueseiji at 10:36 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中
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