先日とあるところで焼成指導をしてきました。
プロとして独立し自分の窯も手に入れてという若い作家さん。
中古ですが設置してすぐ、なんだか窯の操作に違和感を感じ、その業者にも違和感を感じて、意を決してふくおか陶芸窯にご連絡をしていただいたとのこと。
そのガス窯を設置した自称「窯の専門家」の業者さんはやはり常識としてありえないことをしているだけでなく、「30回ぐらい焚いたらわかりますから」との有り難いアドバイスを彼に残していったとのこと。
ワタシも自分が思い通りに焚けるようになるまで15回ぐらい失敗しましたが、それは窯の操作は出来ているが求める還元焼成の度合いや窯詰め方法などで失敗したということであって、窯が言うことを聞かないとか、温度が上がらないとかではありません。
初窯に失敗したわけではありませんでしたから。
初窯に失敗したわけではありませんでしたから。
30回ねぇ。
もしワタシがこの人生を30回ぐらい繰り返し生きたら最後はなんとかソフィー・マルソーとの結婚も叶いそうな気がしますが、家族背負って、人生かけて、どうなるかわからない焼成を30回もこなすことがアナタには出来ますか?
もちろんガス代はあっち持ちではなく、アナタ持ちです。
安いところと契約していても30万円弱はするかな(笑)。
自分で焚けない、自分で窯を造っていない、そういう方が陶芸窯の販売をしても極論わたしはいいと思います。
だったら「ホームページに窯の専門家って書いてますけど、だれも窯焚き出来ないんですわ」とちゃんとお客様に言いましょう。
焼成指導は別料金と明記して外注するか、小声で「無理デス!」って先につたえましょう。
焼成指導は別料金と明記して外注するか、小声で「無理デス!」って先につたえましょう。
焼成指導とは、その窯を自由自在にコントロールして購入してくださったお客様を知識と技術で応援する大切な「窯の専門家」の仕事です。築炉メーカーなら当たり前で、取扱業者のワタシでも当たり前のこととしてガス窯では行っています。
また窯の購入をお考えの方々はしっかりと情報を集めて、一人でも焚けそうな気がするゾ!というぐらいの根拠のない自信を持てるようになるまで大きな買い物をするのは控えた方がよいと思います。
厳しい言い方をすれば購入する側に知識がないから「窯の専門家」なんて自称を許しているということでしょう。わたしはそれをもってその産地のレベルが瀬戸にかなわないという悲しい根拠になると考えます。
お客様になる側にちゃんと知識や経験があって「エントツぐらい真っ直ぐ立てろアホ!」とか「圧力計つけたままで運んでくんなボケ!」ぐらいのことをその産地の誰もツッコめないからいけないのです。
窯の専門家の「これで大丈夫ですよ!」にツッコめないではカモになるだけです。
一人ひとりが「これのどこが大丈夫なんだよ!」って欠陥工事をインスタに晒せるような知識をもちましょう。
車の購入に例えるとすれば、築炉メーカーが正規ディーラーや製造工場、ワタシのような業者は元ヤン店長の中古車屋みたなもんです。
新車が買えないのならば「この車はこことここを新品にすればイケるな」ぐらいの眼を持つまでは手を出さないか、元ヤン店長がいまは更生して実は整備士免許持っていた、なんてことを確認するまでハンコを押すのはやめましょうよ。
そんなことできる自信がないというならば、何百回も言っているように
窯はつくって焚ける人から買う
につきます。
「プロですから分かってらっしゃるでしょ〜!」
分からないことを分からないと言えるのがプロです。
「前の窯と同じように操作すれば大丈夫ですよ〜!」
前の車と同じように運転してもいいの?
「30回ぐらい焼いたらわかりますよ」
じゃあガス代そっち持ちだよな?
「まぁやっていればわかりますって!」
生きていれば悟りますって?無理無理!
この再生リストを30回ぐらい観たら「窯の専門家」を論破できると思います(笑)。