2021年10月13日

10年前と言っていることは変わらない


アナログ温度計.jpg


当時課金?して読んで下さった方には申し訳ございませんが、有料記事の中古機材についてです。







◆◆◆   中古陶芸機材について











とある業者の方からメールをもらった。とても嬉しいメールだった。
わたしの窯の仕事に共感と評価をしてもらったのである。遠く離れた地方だがそういう感覚を持っている人がまだいるということがわかっただけでも嬉しい。


陶芸の窯、ロクロなど中古で流通する陶芸機材はかなりある。

特に窯などは新品を購入したり設置したりするにはそれなりに費用がかかるのは承知の通りで、場合によっては新車1台分以上の出費を覚悟しなければならない。

そこで中古の機材を探そうとするのは自然なことだろうが、中古車と違い、陶芸の機材の場合はかなり気をつけなければならない。

必ずしもきちんとしたものが流通しているというわけではないからだ。

わたしは窯についてよく車に例える。あなたが車の免許を持っていようがいまいが、それなりに自動車についての評価を想像することができるであろう。たとえば年式、走行距離や傷などで、その価格と車の価値を考えることができるであろう(もちろん車屋もひどいのがいる)。

そもそも、車には車検というものがある。国と法律が介在している世界なのだ。
ところが陶芸の世界にはそんなものはない。しかも、ほとんどの人はそういう機材や道具をいざ買うぞ、という状態で初めて中古の窯や道具にむきあわなければならない。

はたしてそれで正しい判断ができるのであろうか。はなはだ疑問である。





◆中古機材の販売


わたしは瀬戸を離れて数年がたつが、これまで窯業界で経験したこと、また地元に戻って見聞きしたことから正直なところを書いてみたい。

まずは中古の窯がどういう経緯で売られていくのかということである。窯業地では工場が閉鎖したりした際に、そういう業者が介入してくる。この時、多くの場合はタダ同然で、重たくて面倒くさい窯や機械を引き取ってあげる、もしくは手数料を取ります、ということが多い。

それをどうするのか。

そこから業者の良し悪しが分かれてくるのだ。そして残念ながら、良い方よりも悪い方が多い。





◆悪いとはどういうことか


何をもって悪いというか、はっきりさせておきたい。

タダで手に入れたものを、数十万で売るのは悪いことか。わたしはそういう業者は好きではないが、ここでは悪いということにはしない。そういうものを手に入れるタイミングやチャンスに恵まれる要素もあったと思うからだ。また、人によってはそういう行為こそ良い商売と考える人もいるだろう。人間にはそれぐらいの振れ幅があるのはわかっているつもりであるが、嫌いなものは嫌いなのである。

ここでの悪いとは、手に入れたものに対する無知と無頓着である。

窯というものが、陶芸の仕事においてどういう意味を持つのか、実感として知らない、電動ロクロの整備の仕方がわからない、手に入れたものが寿命のどのあたりにあるのか理解する知識がない。

そういう無知を「悪い」という。

土練機の中の固まった粘土を除去もせずに現状渡しとしたり、錆びを落としてペンキを塗ることもしないで、ただ価格をつけてネットにのせるような無頓着も悪いんだ、とわたしは言いたい。




◆まともな商品はあるのか


30センチの高さの作品が焼ける小さな電気炉の中古で、20万円ぐらい。

よくそういう問い合わせがある。
結論からいうとそんなものはない。あるほうがおかしい。

以前ネットでその条件に合うものがあるので見て欲しいと言われたことがある。
わたしから買うわけでもないのに、見ず知らずの人にそんなことをする義理はない。正直腹立たしかった。それでも興味本位にそのページを見てみた。

なるほど現状渡し、20万円である。

しかしヒーター線の劣化が異常に激しく断線もあり、10万円単位での修理が必要であることが見ただけでわたしにはわかった。もちろん一般の人にはそんなことはわからない。


電動ロクロで、年式も不明なほど古い。整備もしてないが数万円する。
堂々とそれを売っている。はたして新品で高くても十数万円のロクロが数十年たっても数万円の価値があるのだろうか。

買う人がいる以上、それは余計なお世話なのかもしれないが、あなたは20年前の整備されていない乗用車に、その新車価格の十分の一を出せるだろうか。

すくなくとも整備はしてほしいとわたしは思う。整備をしないということは、整備できないということであろう。

古さが評価されるのは作品だけで十分である。





◆まともな業者はいるのか


いる。

わたしもそうなろうとしている一人のつもりだし、その努力を怠っていないつもりだ。わたしだけでなく同じような価値観を持つ人もいる。

特に自分たちで造っている人たちは信頼できる。つまりメーカーだ。

また、作陶の経験がある人(わたしもその一人:継続中)も、同様の感覚を持っていることが多い。

臭い言い方かもしれないが、陶芸をしっかりと愛しているかどうかということかもしれない。















平成23年 1月13日

井上 誠司

(一部編集済み)




まぁ有料メルマガなので文体は意識して硬い感じにしていたような記憶があります。
でもちょっとクドいかな(笑)。

陶芸窯についてのわたしの発信内容はあまり変わっていません。
それは窯というものが大きくは変化していないからです。

つまり変化の激しいパソコンやIT業界とかと違って、窯や窯焚きというものは、一度その太い幹を掴んだら一生モノの知識と技術になるのです。

それには実践して確かめるしかないのですが、逆にいえば誰にでも出来ることです。

そうそう、みんな大好き電動ロクロですが、シンポさんの標準機、現在のダイレクトドライブ以前のRK-88とかの部品はほぼ流通していないようです。特にゴムのリングなどは入手不可能ですから、補修できません。またメーカーにも在庫はありませんからご注意ください。

新しいのを購入してほしいというのがメーカーの願いみたいです。

posted by inoueseiji at 08:08 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中
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