2024年02月29日

窯のサイズをどう表現する?

益田長石がお気に入り、イノウエです。

さて。

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(薪窯はどう表現するでしょうか)

シンプルに窯のサイズ表記についての質問をいただきましたのでお答えしてみます。

立方メートルという言い方が正しいのは算数の世界であって、実際の現場では「リュウベ」と言います。これはようするに「立米」のこと、広さをあらわす「へーべ」が「平米」なのと同じです。

つまり、ガス窯などで「この窯は0.3㎥」という場合は「このかまは0.3リュウベ」と読むわけです。そして重要なのはその0.3㎥という容積はどこのことを指しているのか?ということです。その認識についての質問でしたので、そこを解説しておきましょう。

これは窯炉の内容積ではありません。
(ここ試験に出るよ)

棚板での有効容積になります。

つまり、A社の0.3㎥とB社の0.3㎥があるとすれば、窯の大きさは大きく違うことがあるということでもあります。なぜならば炉内の容積の違い、レンガの壁厚の違い、フレームデザインの違いによって外寸はもとより、重量も大きく変わるわけです。ガス窯などで何も詰められない空間がありますが、それは非常に重要な炎の通り道でメーカーでまったく考え方が違いますが今日の本題から外れますのでとりあえずスルーしておきます。

さて、ガス窯などの設計は、まず棚板サイズから有効容積を決定するところからはじまり、そこから周りが決まっていくという感じでしょうか。先述のように同じ容積の窯であってもその性能は大きく変わることがあるということです。例えば同じ1800ccの車でもスポーツカーやファミリーカーなどの違いがあるという感じに近いでしょうか。そして窯の燃料や焼成システムの違いは単気筒と6気筒、4ストや2スト、ガソリンやディーゼルぐらい変わってくるという感じでしょうか。



そして追加の質問ですが、じゃあなんで電気炉は「◯kW」いう表記なのか、ということです。

キロワット表記ね。

ついでにいうと、厳密にはkWのWは大文字表記です。これまでこのブログの過去記事でも間違っているところがあるかと思いますが、念のため。kwもKWも誤りとなりますので要注意です。小文字のkは1000倍をあらわすkです。大文字のKだと違う単位になっちゃいます。

電気炉だけではなく、家庭の様々な電気機器にも表記がある「kW」は消費電力の表記です。アンペア(A)とボルト(V)の掛け算で求められます。単相電源であれば200Vの8kWは、40Aです。40A✕200V=8000W=8kWですね。

電気炉の表記について注意しなければならないのは、ガス窯や灯油窯などの「㎥」と違い「kW」が焼成できる有効容積をあらわすわけではない、ということです。例に出した8kWでいえば、1250℃前後の使用を考えている電気炉と上絵専用で900℃までしか上がらない電気炉、はたまた1600℃を想定したファイン向けの電気炉では、同じ8kWでも焼成できる有効容積が変わってしまいます。しかしこれがガス窯であれば同じ㎥表記になります。

100Vの電気炉でも同じです。共栄電気炉製作所のKCシリーズ、ふくおか陶芸窯で取り扱っている電気炉の100Vモデルは3種類あり、それぞれの有効容積は違いますが、すべて同じ1.5kWになります。なぜなら同じ家庭用のコンセントを使用して100V✕15A=1500W=1.5kWとなるからです。

電気炉の設置、その電気工事は消費電力、つまり電流や電圧の数値によって使用する電線や遮断器の種類やサイズが決定されます。電力会社との契約などでもこの数字が大きく意味を持ちますので、電気炉はkW表記になっています。



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(GPSついてます)


ちなみにパワーショベルもバケットの容積でサイズを表します。どれだけの土砂をすくう能力があるのかをバケットサイズで表現しているわけですね。エンジンの排気量を言われるよりも能力を如実にあらわすわけです。

バケットサイズが0.04㎥なんかはトラックに載せられて走ってますが、この写真の0.8㎥ぐらいになると普通はなかなかお目にかかりません。ちなみに業界では「コンマゼロヨン」「コンマハチ」といい、リュウベとはいいません。

これも陶芸とは無関係ではありません。
鉱山で石や土を掘っているのはこうした建機類です。
(これは試験に出ない)

というわけで、窯のサイズをどう表現するかについて書いてみましたが、いかがだったでしょうか。ガス窯なんかでは0.2㎥の180ミリ壁厚の台車なし、なんて言うとイメージが湧いてきます。重さもだいたい想像がつきますね。


posted by inoueseiji at 07:59 | イノウエセイジの頭の中

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