以前、わたしの生涯学習の教室に2年間通われて、曜日の都合から違う教室に移られた方が訪ねてくれました。こうした「卒業生」がまた講座に顔をだしてくれるのは、本当に嬉しく、講師冥利につきるものです。
しかし、そうして訪ねてくれるのは、その教室で答えが見つからない相談があるときがほとんどです。その方、仮にMさんとします、の相談は、大物を素焼きするとキレが出てしまう、というものでした。
Mさんは、わたしの講座にいるときも、課題を無視して大物をつくるような方でしたが、技術もそこそこあり、そうしたトラブルがわたしの講座で起こったことはなかったと思います。
実は、話を聞いているうちにわかったのですが、そのキレの原因は、窯詰めの仕方でした。ですが、わざわざこのブログに書こうと思ったのは、そのときの講師の方の応対が余りにひどいと思ったからです。その教室の講師は職人としてはプロのようです。(これ以上は書きません)
Mさんが、何度やってもキレが出てしまうのですが、とその先生に相談したところ、どれぐらい乾燥させましたか、と聞かれたそうです。週に一度通っているわけですから、最短でも窯に入るまで1週間あります。Mさんは「1,2週間です。」と答えたところ、「それは短い。尺皿なら最低一月ぐらい乾かさないと。」と言われたそうです。
それを聞いて唖然としました。仕事でつくっている人なら様子を見ながら室でゆっくり乾かしていくのもいいでしょう。それでも、よほど大きくて、複雑な形状のものの話です。趣味で一生懸命に作陶されている人に、そういうことを強要する神経がおかしいと思います。
これまで、わたしの講座で、一度もキレを出したことがない人が、教室が変わったとたんにキレが出るようになった。それに対しての答えになっていません。ロクロで挽いた尺皿を一ヶ月も乾かすなんて聞いたこともありません。素焼きするまでに結果として、1ヶ月かかったというのならわかりますが。
そこで、今回はそれに対抗する、ある乾燥方法を紹介したいと思います。
これは乾燥機などを使用する方法を簡単に再現する方法で、理論は訓練校や各学校で教えていますが、実践方法は「焼き物実践ガイド」(樋口わかな著)からのものです。この本についてもいつか紹介したいと思います。
まず、理論ですが、3段階あります。
1 温度を55℃まで少しずつ上げる一方で、
送風を抑え湿度を85%に保つ
作品中の水分流度を上げることになります
2 温度を55℃に保ったままで、通風をよくして
湿度を60〜70%に下げる
内部から表面への水分移動をスムーズにします
3 高温低湿で完全乾燥させるため、温度を80〜90℃に上げ、
湿度は10〜15%にまで下げる
理論的にはそうですが、これを完璧に実践することは小さな工場でさえ難しいでしょう。樋口わかな氏の本では、これを簡単に実践するためにビニール袋を使うとしています。
やり方は次の通り。
A 直射日光の当たるところに作品を出します。
わたしはテストのために、つくりたてのモノを出してみました。
B そして、大きく空気を含ませて、ビニール袋をかぶせ、
作品をのせた亀板の下にビニールの口を巻き込んで、
風が中に入らないようにします。
ビニールが作品にあたらないようにすること。
C 袋の内側に水滴がついて流れそうになったら、
ビニールをはずし、水滴を振り落とします。
そしてまたビニールをかけて、A〜Cを繰り返します。
日向に出してビニールでつつむ、というAが1の工程、そして、ビニールをはずして水気をきるB、Cが、先述の2,3工程になります。
試してみましたが、このビニールを取るというのが面倒です。丁寧にとっても、つい中の水滴が作品についたりしてしまいます。また、幾つかの作品がある場合、何度もビニールを取ったりかけたりしなくてはなりません。
そこで、廃材を利用して骨組みを作り、粘土がはいっていたビニールを切って貼り付けて箱をつくりました。これだとかけたり、取ったりも簡単です。1時間もかからずできました。
正直、写真の作品は壊れてもいい、という覚悟でテストしましたが、土瓶状の厚さや突起など複雑な形のものでも、非常に均一に乾燥しました。これから積極的にこの方法を使ってみようと思います。
写真の作品は、昨日つくってビニールにいれ、初期乾燥は完全にできてしまいました。今日から何もかけずに外に干しています。
お恥ずかしい話ですが、以前この土で同じものをつくって、乾燥でほとんどキレてしまっていました。そのため、効果はまちがいないと断言できると思います。
調子に乗って、非常に大きな作品を新聞でくるんでから、ビニールで包み、外に出して一日日光に当ててみました。これもいまのところ上手くいっています。
さらに焼成は以前の記事を参考にしていただければ、より失敗がすくなくなるのではないでしょうか。
5月14日の記事 素焼きが怖い
こういうことに行き着くことが、師をもたない人間の特権なのか、哀しさなのか。
なんだか読み返して複雑な心境になってしまいました。
わたしは、その教室の先生のように、1ヶ月かけて乾燥させるのが悪いということではありません。ただ、人に陶芸を教えるということでお金をもらっている以上、困っている生徒を放り出してはいけないと思うだけです。
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さて、本日の記事の、より安全な乾燥方法は似た形で発泡スチロールの箱の開け閉めで実践しています。
最初に記述されていた窯入れの仕方でキレが入るとはどのような窯詰めをしたら発生するのでしょうか?
宜しかったら教えて下さい。
コメントありがとうございます。
>著書を購入して・・・
とありますが、誰の本でしょう?
発砲スチロールは多くの方が用いていますが、これは、ビニールを使用することが重要なのです。(日光を入れて、中の温度を上げていくから)
一度お試し下さい。
Mさんのキレは窯詰めをした人が、大皿の上に、細かい作品をデタラメに置いて焼いていたことが原因です。
望月集さんのブログと勘違いして書き込みしていました。
http://mblog.excite.co.jp/user/ikkannet/?_s=ff0e00139a82feb8bc3e4760a7f5857c
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宜しくお願いします。
かまいませんよ。
また来てくださいね。
作陶では勘違いがないようにお気をつけ下さいね。/笑