2008年10月31日

技術と言葉 2

技術を言葉に置き換えることの難しさ。

たしかに菊練りを写真と文章だけで教えることは難しいと思います。
しかし、不可能でしょうか。そもそも、菊練りをしないといけないのでしょうか。

YOUTUBEなどで、海外の陶芸関連の動画を見ていると、日本の常識のようなものを簡単に打ち砕かれるような動画が、たまにあります。

それと同じように、菊練りをしないで、空気の抜けた作りやすい土はできないのでしょうか。そういう風に考えた時、あたらしい視点が生まれるのではないかと思っています。

菊練りをしないことを前提に作陶するとか・・・考えるのはただですよ。


ここまで書いておきながら、ですが、わたしはやっぱり菊練りがいるな、と思っています。くだらない実験をしたり、本筋をはずれたコツみたいなものを試した上での結論です。

逆にわたしの嫁は、手びねりで小さな陶人形しかつくりませんから、ほとんどしません。



ところで、一体どうすれば技術を言葉で伝えることができるのか。

以前、たしかNHKの番組で観たことですが、熟練工の手の動きを3Dで解析して記録する、という取り組みの紹介をしていました。たしか数年前です。言葉ではなくて、3Dのコンピューターアニメーションでした。

それは特殊な溶接の技術でしたが、そういう技術保存の取り組みに、なにかヒントが隠されているのかもしれません。



これまでのメディアなどを見て、足りないなと思う部分を思いつくままに書いてみても、

 菊練りの動きを何分割の写真にするのか。

 撮影方向はいくつ。

 右手の動きだけ、の記録はどうなるのか。

 左手の動きだけ、の記録はどうなるのか。

 練るときの台の高さは何を基準にすればいいのか。

 絶対条件はなにか。

 一般的に陥りやすい失敗とその対策。


特に最後のよくある失敗など、取材すれば実例がいくらでも撮影できるのではないでしょうか。

ここまで書いていて、以前築炉メーカーにいたときに、社長の友人のある作家さんの本をいただいたことを思い出し、探し出してページをめくってみました。すると・・・

   「・・・すでにみなさんは、土練りについてよくご存知だと思いますので・・・・・・。」


なるほど、うまい。

しかし、その後の本文では、土練りの回数についてや、状況に応じた固さなどが、数ページにわたって書いてありました。こうした記述はなかなか他の書籍ではありません。

この本は、非常にわかりやすく、参考になった本ではありますが、初心者向けの本ではありませんから、このような書き方になったのでしょう。

また、陶芸教室で、隣り合って受講生に教える場合でも、イメージを明確に伝えなければ、菊練りを教えることは大変だろうと思います。力の加減を、なにかに例えて伝えられるか。その世代にわかりやすい例えができるか。

作陶するのとは、まったく違う技術と才能がいる世界だと思います。しかも、作陶する技術を持った上で、ということですから。

以前、なにかに書きましたが、わたしはもともと、陶芸教室で教えるつもりはなかったのですが、誰かに技術と知識を伝える、という努力をすることで、自分の技術を見直し、その向上に非常に役に立っています。

友人が、また全く別のジャンルで講師をしているのですが、優れた講師になるには、自分が実践し、人に教え、自分も誰かの生徒であること、と言っていました。

自分も誰かの生徒であること、これは非常に重要なことで、教えるだけの人間はどうしても独りよがりになりがちです。あらたに誰かの生徒になると、見えてくることがたくさんあります。

技術を言葉やイメージに置き換えることが、これから大事になってくるのかもしれません。

このテーマはまた書けそうですね。


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posted by inoueseiji at 09:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作陶に関すること
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