2009年09月24日
ガスや灯油、薪の窯での、還元焼成の状態についてヒントになるかもしれないことを書いてみます。
還元焼成に入ると、窯の色見の穴から炎がふき出します。通常の焼成でも、温度が上がってくれば炉内圧が上がって、色見の穴の前にライターの炎をかざすとふき返しますし、還元状態になれば炎が数センチふき出します。
このことは、よく陶芸の技法書などで紹介してあります。逆に酸化焼成では、穴の方へライターの炎が吸われます。この説明、たしかにその通りです。
しかし、この説明では足りない部分があります。
引くところ、ふくところの境界、プラスマイナスゼロの部分がまったく説明されていません。色見の穴から、炎がふき出さないし、炉内へも引き込まない状態、かざしたライターの炎が動かない「ゼロ」の状態があります。
このゼロの状態をまず探すこと。
これが炎のある窯では大切であるとわたしは思います。薪窯ではまた話がちがってはきますが、ガスや灯油の窯であれば、このゼロの状態を見つけ出すことが基本のテクニックになるでしょう。(残念ながら、それを教えてくれる人は少ないですが)
この窯のバランスを意識できなければ、思う通りの焼成を行うのは難しいと思います。同じ窯でデータを取り続けても完全に同じように焚くのは難しいものだからです。
還元をかける前の段階や酸化焼成では、この基準のゼロから少しマイナス(中に炎が吸われる)の状態にして焚くのが効率がいいのです。
いま現在酸化焼成をしているが、基準ゼロから、どれぐらいマイナスになっているのか、把握しなくてはいけません。マイナス1とマイナス10で、色見の穴の部分でライターの炎が見せるのは同じ現象です。ですが、温度の上がり方や、燃料の消費の仕方はかなり違ってきます。
この基準のゼロの部分がわかると、酸化焼成をするのが楽になります。
脱水と有機物の燃焼がある素焼きの初期段階と、本焼きの酸化焼成では引かせ方を変えたりしてみてください。酸化焼成が難しい、温度が上がらない、という窯焚きは、煙突に熱を引かせすぎているのです。
また、このプラスマイナスゼロの状態を「中性」、と呼ぶこともあるようですが、わたしにはその認識はありません。中性というのは、はっきりと還元、とは言い切れない炉内の雰囲気のこと、弱還元の状態をさしているのかなぁ、と思っています。
還元焼成では、このふき出す炎の長さなどを基準に還元状態を推察して、焚いていきます。わたしは自分の窯では基準とする長さがある程度あって、それ以上炎がふき出しているようならば、ドラフトやダンパーで調整します。
還元焼成の際には、色見の穴の、炎のふき出しが目安になります。ガス窯などでは、どれぐらいの長さが出ているのかを基準にしますし、人によっては、その炎の色や勢いをみているようです。
また、薪の窯では、複雑に酸化還元反応がおこっているわけですが、酸化気味に焚く場合は、投入した薪が十分に燃えて落ち着いてから適量の薪を投入するようにします。
薪を投入した直後、色見の穴から煙や炎が勢いよく噴き出しますが、薪が燃えていくにつれて、その炎が落ち着いていきます。そしてある程度燃焼させると炎も煙も出なくなります。窯の構造にもよりますが、ここまで待って適量の薪を投入していけば酸化「気味」に焚いていくことになるでしょう。
逆に還元「気味」に(薪窯ではほとんどそうなりますが)焚くには、炎が色見の穴から出なくなったタイミングで薪を投入します。
薪窯は焼成にかける時間もほかの窯よりも長く、燃料としては効率の悪い木材を使用しますから、ガス窯のように一言で酸化、還元と言えない部分があります。
そのため、窯のどの場所に詰めるのか、などで焼き上がりを調整していく必要があります。燃焼でのコントロール幅がゆったりしている分、窯の詰めかたや、薪を投入するタイミングなどが重要になっていきます。
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posted by inoueseiji at 06:46
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窯と焼成に関すること
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