茨城県で、ガス窯焼成時における死亡事故がありましたね。
非常に残念でなりません。なくなられた方のご冥福と、重態の方のご回復をお祈りしています。
陶芸のお仲間の方々もきっと辛い思いをされているでしょうね。
一酸化炭素中毒に関しては、直後にブログにも書きましたし、人に聞かれたり、機会があるごとに話したりもしてきました。
また、わたしの尊敬する先輩の師匠も一酸化炭素中毒で亡くなられていて、この茨城での事故をどんなお気持ちでご覧になっただろう、と思うと胸が痛みます。
きっとこのブログを読んでくださっている方々も、その事件についての話題が職場や学校であったり、一般の方から質問をされたりしたことでしょう。
陶芸の窯は、たとえそれがコンピューター制御の電気炉でも1200℃を超える高温を生み出す以上、ある意味、とても危険なものです。
まして、ガスや灯油は炎を発して、同時に窯の近くに燃料のタンクを設置していますから、取り扱いを間違えると大惨事になる可能性もあるわけです。
また、それらのバーナーでは大量の酸素を消費しますので、換気をおろそかにすれば、一酸化炭素を発生させて死亡事故に至ることがあります。
◆一酸化炭素は、炭素含有物の不完全燃焼によって発生する無色・無味・無臭の気体で、発生したことに気づきにくく、酸素の代わりにヘモグロビンに容易に結びついて運動能力を低下させ、窒息にいたります。
普通の家庭でも、ファンヒーターなどによって、毎年冬にはなんらかの事故が起こるぐらいですから、陶芸の窯では換気には十分気をつけなければなりません。
今回の事件は、一酸化炭素中毒で、その原因はダンパーを開けずに窯に点火し、そのまま換気されない閉め切った窯小屋の中で3人の方が被害にあわれたということでした。バーナー数本の酸素消費と3人分の酸素消費で、小屋の中の酸素は、あっという間に使い切ってしまわれたと思います。
◆陶芸窯で使用するガスバーナーの燃焼に必要な酸素の量はガス1に対して
プロパンガスで約24倍
ブタンガスで約31倍
アセチレンガスで約12倍(陶芸には使いませんが)
の酸素が「最低限の」必要量です。
これはあくまで酸素量です。「空気」ならばさらにこの5倍が必要なのです。
※これには人間の呼吸の分は含まれません。
◆わたしは灯油バーナーについてのデータはほとんど持っていませんが、同じように換気に注意するのは間違いのないことです。(これについては是非詳しいかたの発信を期待します)
今回の事故は、素焼きの点火からかなり短い時間で発見されたにも関わらず、死亡事故になりました。後日の報道でダンパーが閉じたままであったことが判明しました。
あくまで、想像の域をでませんが、もし、ダンパーが開けてあればこんなに短時間に死亡事故にいたることはなかったのではないかと思います。残念です。
かつてのわたしの勤務先にはレンタルのガス窯が3基ありました。一度だけ、女の子が一人で借りて焚いたとき、点火してすぐに、その子は食事かなにかに出かけてしまいました。
ところがダンパーが閉じたままでした。
窯場にはほかに誰もいませんでしたが、わたしトイレに行くついでに覗いたときの中の空気といったら、形容しようがありませんでした。
あわてて、すぐに火を止めて、社長らに報告し、その子が来るのを待ちましたが、1,2時間戻ってきませんでした。
もし、わたしたち全員が現場に出ていたならば、もっと発見が遅くなったと思います。なんらかの事故につながったかもしれません。
後日見た窯の中は煤けて真っ黒でした。
レンガを積んだりする工場と隣接して、かなり広い窯場でしたが、たった2時間ぐらいで耐え難いような空気になってしまうのです。(これを教訓に工場の壁の上部を一部取り外して、換気口にしました)
毎日日本中で、何百というガス窯が焚かれています。その中で爆発や一酸化炭素中毒の事故はほとんど起きません。窯はきちんと管理すれば危ないことはないのです。
しかし、当然、事故はゼロではなく、ガス窯の小さな爆発事故や一酸化炭素中毒をはじめ、薪窯で火事を出した人もたくさんいます。
陶芸とは、炎を使う仕事です。炎がない電気炉でも高温を発生します。それを行う人間は、誰よりも安全対策や燃料に詳しく、それらの情報に敏感でいないといけないと、わたしは思います。
すくなくとも、どんなことをするにしても、安全第一なのは間違いありません。
ここでわたしが書いたガスの話は、自分の経験と、たった1冊の本から得た情報に基づいています。それも図書館にあったものです。
今ならば、ネットで調べることもできるかもしれません。
ガスを使うならガスのことを、灯油なら灯油のことを、電気ならば電気のことを、薪ならば薪のことを、もう少し知るべきではないでしょうか。
さる有名な陶芸家が、最近の人間は焼成をきちんとやっていない奴が多い、と言っていました。といって、その人がそういう機会を若手に与えてくれるわけではないんですけどね。(もっと言うとその人は焼成を化学的には理解してないんですけどね)
それを聞いて、悔しかった当時のわたしは、俄然勉強して今日に至っているわけです。
先日、隣街で小さなビストロをしている友人が来てくれましたが、彼はシェフになるにあたり、フランスのワイナリーから、福岡の食肉加工場の解体現場まで、見学したそうです。
そういう姿勢が、よい仕事と安全につながるとわたしは思います。
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posted by inoueseiji at 19:00
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窯と焼成に関すること