わたしがやきものの仕事でもっとも嫌なのが素焼きだ、という話は前に書きましたが、じゃあ何が好きなのか、というと釉薬の調合です。
もちろん、ほかにも好きな工程はたくさんありますが、先日かなりの数を調合しましたので、そのことを書いてみます。
調合をするのに、化学式が必要かどうかは、それぞれの人が、どう釉薬を捉えていくかにかかわってくることが多いとは思います。それよりも、まずやってみることが大切ですし、面白いと思います。
もっとも簡単なのは、長石と灰を混ぜる、さらにその基礎釉に酸化鉄やゴスを入れて着色することでしょう。
釉薬の調合に挑戦する場合は、とにかく乳鉢と乳棒を用意します。
大きさは、乳鉢の直径が12〜15センチぐらいのものを用意すればいいでしょう。あまり小さいと粉がこぼれたりしますし、これより大きくなると、一気に乳鉢の価格が上がります。
できれば上皿天秤があればいいでしょうが、まあ、最初はデジタル秤でもいいと思います。わたしは最初の1年ぐらいはデジタル秤でやっていました。複雑な調合でなければ、特に問題はありません。
三角座標を使用した調合のことなどは、多くの本やネットで説明されているようですから、わたしはそれ以外のこと、自分が学んで、なるほど、と思ったことを書いてみます。
まず、試験調合はたくさんの種類をおこなうはずですから、100円ショップなどでプラスチックのカップを購入し、そのカップに番号を振ってマジックで書いておきます。
これは当然、ミスを防ぐためです。わたしは数字やアルファベットを書いて、ノートに別に調合の内容を書いたりしています。こうすれば、カップは洗ってまた後日使用できます。試験する粉末は、20〜30gぐらいが適当でしょう。
まず、よく洗って充分乾かした乳鉢にまず最初の混合原料をいれ、乳棒でよく摺ります。
これはあくまで混ぜるためで、粒子を細かく摺るという意識は必要ありません。あくまで、大きなかたまりをつぶして、それぞれの原料が充分に混ざるようにするのです。
さて、いよいよ水を入れますが、入れすぎに注意しましょう。まず、粉を湿らせる程度にしたほうがよいと思います。それから、少しづつ水を足し、筆で塗れるぐらいにします。
わたしはこの段階でCMCを入れています。水だけでは、刷毛塗りがしにくいと思います。水やCMCを入れたら乳棒で数分充分に混ぜます。混ぜるときは、おへその所に抱え込んでゴリゴリやったほうがやりやすいでしょう。
用意した素焼きのテストピースに塗ります。
このとき、意外とおすすめなのが、均一に塗るのではなく、ムラになるように塗ることです。釉薬の薄い部分と濃い部分を意図的に作っておくのです。
こうすれば、一つのテストピースで、その釉薬のさまざまな表情を確認することができます。
釉薬1を調合して、テストピースに塗ったら、乳鉢と乳棒を洗います。
洗ったら、乳鉢をよく拭いて、乳棒をさし、ドライヤーの先端も差し込んで温風で充分に乳鉢と乳棒を乾かします。こうしないと、次の釉薬2の原料を入れたときに、粉が乳鉢にくっついて、仕事がかなりやりにくくなります。
数種類の釉薬を試験する場合は、なるべく、白い原料から混ぜていくべきです。しかし、もし乳鉢の内側に前の釉薬の色が残って、拭いても洗っても取れない場合は、長石の粉か、ケイ石の粉と水を入れて摺ると、きれいになります。
一つの調合で、テストピースを二つが三つぐらい作っておくと、酸化や還元、最高温度などの試験に使用できます。
こうしてすべてのテストピースを作って焼き、その中から、うまくいったものがあったら、今度はそれを、さらにテストします。
だんだんと作品を大きくすると、テストピースとのギャップがあることがあるかもしれません。小さな色見でいいと思っても、大きな器になると雰囲気が思った感じにならない、ということもあり得ます。
また逆に、意外といいぞ、ということもたまにはあります。
もちろん、調合のことばかりでなく、釉薬のテストをする土を変えるなど、やろうと思えばいくらでも試験はつづいていきます。
さて、いくつか試験した中から、これを使ってみよう、というものがでてきたら、今度は乳鉢ではなく、バケツなどで調合します。
バケツなどでキロ単位の調合をする場合は、先にバケツに水を入れてから粉を入れます。そうしないと、原料粉への水の浸透が悪くて、なかなか均一に混ざりません。
バケツで釉薬を作ったら、篩(ふるい)を通します。篩は80目以上であれば、大丈夫です。スムーズに篩を通すためには、なるべく水の多い薄い釉液にしておきます。後日分離したうわずみを取り除き、適正濃度にして使用します。
わたしは、こうした作業が好きですが、逆に、面倒くさくて嫌い、という人もいます。
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posted by inoueseiji at 19:50
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釉薬に関すること