2010年01月31日

ガス炉で酸化焼成


先日、ガス炉で酸化焼成がうまくいかない、という相談がありました。

その詳しい内容は割愛させてもらいますが、ガス炉で酸化焼成をされている方は、いったいどれぐらいの割合でいらっしゃるのでしょうか。

瀬戸の一部のことしかわたしは知りませんが、普通に織部や黄瀬戸などをガス窯で焚いている産地ですので、とくにこんな疑問を抱くことはありませんでした。

しかし、これまで九州内や、メールでのいくつかの質問や問い合わせを見る限り、他の産地や、作陶をされる方の中には、酸化焼成は電気炉で、還元焼成はガス炉か薪窯で、という考え方をしている方がけっこういらっしゃるようです。

もちろん、それぞれの窯の得意分野を利用するのは、重要なことです。しかし、だからといって、様々な燃料の窯を複数持つというのは、現実には難しいことでしょう。

だとすれば、必然的にひとつの窯で様々な燃焼方法を駆使しなければなりません。

あらためて今回のお話ですが、どうもガス炉で酸化焼成をしている方は少ないようです。というよりも還元焼成をするためにガス炉を導入している、というところが多いのでしょう。

わたしもかつての受講生から、先生の窯で還元で焼いてほしい、というようなことをいわれたことが何度かあって、還元焼成がなにか特別な焼成方法のようにとらわれていることに少し戸惑ったことがあります。

わたし個人、その気持ちはとてもよく理解できますが、同時に危険だとも思っています。

なぜなら、その考えを突き詰めていけば、電気よりもガス、ガスよりも薪のほうがよい、という思想に行き着くような気がするからです。

数百年か数千年かはわかりませんが、その長い歴史の薪の窯と、1950年代に普及してきたガス炉や電気炉とでは、開発史や焼成技法、また一般への認知度があまりに違いすぎますし、そもそも比べることではないとわたしは考えています。

電気炉やガス炉など、今の機材を使って優れた作品を生み出している作家は人間国宝をふくめ、たくさんいますし(個人的にはそのほうが多いと思います)、これから世に出てくる作家はそれを意識していく必然があると思っています。

過去何回も繰り返して書いていますが、わたしは薪窯は大好きです。最低年に1,2回は焚き手として窯を焚きますし、自分でもはやく薪窯を作りたいと思っています。

ただ、それとこれとは別で、わたし個人としては、自分が努力しなかった言い訳を窯や燃料のせいにはしたくないと思っています。

釉薬の調合、焼成スケジュールの設定など、一人の作家の一生をかけてでさえ、一つの窯の焼成を極めることは不可能かもしれません。

最近、自分のことを棚にあげるのが得意になってきましたが、なぜその操作をするのか、今窯の中がどうなっているのか、はっきりと言葉に落とせていますか。薪窯だからこの粘土でつくる、と決め付ける前に、手に入れられるだけの土を窯に入れてみたのでしょうか。(自分もこれはやってないな・・・)

窯のこと、焼成のことで様々な相談を受けるたびに、このご時世に陶芸窯を売る人は、焚けなければ商売にならない、と感じています。

はっきり言えば、焚けない人は売るなと言いたい。
どれだけ多くの人が、そういう人たちに迷惑をこうむってきたことか。

それから、これは声を大にしていいたいことですが、自分がやったことがないこと、自分ができないことを安易に人にアドバイスするのはやめてほしいと思います。

特に窯焚きのことでは、そのアドバイス一つで、その人の一窯がダメになるおそれがあるわけです。大きな窯では2ヶ月近い時間がかかることがあります。それを安易な一言でダメにしてはいけませんし、焚くほうもそれを鵜呑みにしてはいけません。(鵜呑み経験者 談)

また、わたし個人は、ガス炉の酸化焼成について、正しいと思われる記述を雑誌や本で見たことはほとんどありません。ダンパー全開で、ドラフトのレンガを閉じていれば酸化になる、などというのは、はっきり言って大嘘です。

わたしは車の免許のない人から車は買いませんし、乗れないひとから競技用の自転車も買いません。

きっとみなさんもそうではないですか?



ガス炉での酸化焼成は、右のカテゴリ、「窯と焼成にかんすること」を参考にしてみてください。









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posted by inoueseiji at 11:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 窯と焼成に関すること
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