2010年02月01日
昨年末、ガス炉本焼きの焼成立ち会いに伺いました。
中古ガス炉の煙突工事を頼まれたところで、一度目の本焼きでどうも釉薬の溶けが悪かったため、2度目の本焼きではゼーゲルコーンを入れ、わたしも窯が1000℃を超えたあたりから立ち会うことにしました。
特に仕事という意識はなく、その方や、茶道をされている友人の方のお話などを伺い、楽しくすごしていました。(今度は是非呑みましょう!)
ところが気のせいか、温度計の数字と色見から見える窯の中の光がずれているような気がしたのです。しかし、自分の窯場ではないし、周囲の明るさの加減かもしれないな、と気にもとめずにいました。
しかし、温度計が1150℃を超えてもゼーゲルコーンの角もたったまま全く反応がおきているような感じもしません。1200℃を超えましたが8番のゼーゲルコーンはまったくピクリともしません。普通、十分に時間をかけて昇温した場合、ゼーゲルコーンの指示温度よりも早く軟化し、すこしづつ倒れはじめます。
以前にも書きましたが、わたしの窯でわたしが焚いた場合、SK8は1180〜90℃で完全に倒れます。これは還元焼成の場合で、酸化焼成ならば、倒れる温度は多少上がります。
年末の焼成立ち会いでは、もうこの時点で12時間以上の時間がかかっていましたので、そろそろゼーゲルコーンが反応しはじめてもいいころです。しかし、まったく反応していません。
たまたま不良品のゼーゲルコーンだった、ということはありません。ゼーゲルコーンはJIS規格品であり、JISの認証というものはそんなに簡単に取れるものではないからです。
温度計と熱電対、二人のアマチュア作陶家と一人のプロ、そしてゼーゲルコーン。この中で一番当てになるのは、当然ゼーゲルコーンです。
温度計の数値が1200℃に近づき、超えた時点ではっきりと炉内温度と温度計の表示温度にずれがあるという確信を得ましたので、ゼーゲルコーンを倒すことを目標に窯を焚き続けました。
とうとう、温度計は1300℃を超えてしまいました。しかし、1300℃近い高温でみられる、炉内からの強烈な発光はありません。まだまだ黄色とオレンジの中間のような感じでしかないのです。
どうも100℃以上のずれがあるようです。
最終的に火を止めたのは、1370℃でした(笑)。すごい。
熱電対には保護管の中に白金と白金ロジウムという聞きなれない金属が入っています。これらの金属は高温に熱されると、二つの極の間に微量な電圧を発します。これをゼーベック効果といい、この微弱な電圧を利用して温度を知るのです。
つまり、温度計が二つの電極からの電圧を読み取り、それを温度へ表示しなおしているのです。そのため温度計というのは、ほとんど電圧計と同じだといえます(ミリボルトメーター)。
これは余談ですが、保護管先端の金属で発生した電気で針を動かすわけですから、アナログの温度計には電源は必要ありません。デジタルの温度計は数値をデジタル表示するために電源が必要ですが。
今回の温度計の数値の狂いはどこからくるものでしょうか。考えられるのは、熱電対自体がなんらかの不具合をおこしている、といのが一つ。それから、どちらにも不具合はおきていないが、温度計側の電流値のオフセットが合っていない、という可能性が一つ。
どうもそのあたりのような気がします。
いろいろと調べましたし、信頼のおける人にも聞いてみましたが、このような事例に遭遇した人はなくて、はっきりとした解決にはいたりませんでした。
電圧値をテスターで測定して、数値を割り出したりするのをみたことがあるよ、という知人がいましたが、わたしのほうでそれ以上は調べられませんでした。
次の焼成で、動作が確実な温度計と熱電対を持ち込み、交互に差し替えてみながら誤差を把握してみようと思っています。
それにしても、ゼーゲルコーンや色見を入れる重要性を改めて感じました。いくら経験豊富でも炎と炉内の色だけで窯を焚くのは無理でしょう。ゼーゲルコーンがないならば、せめて色見を入れるべきです。
今回、あらためて温度計で窯を焚く危うさを感じました。わたしの手元にある温度計と熱電対の2セットは、それぞれ差し替えて同じ数値を指し示すことを確認していますが、それでも熱電対と温度計が必ず正確かというと、正直わかりません。両方とも同じようにあっていない可能性もあるからです。
保護管の中の配線が悪くなっているなど、物理的な故障の際の修理についてもこれからさらに調べてみようと思っています。
この件に関して何か情報をお持ちの方は是非お知らせ下さい。
あなたの熱電対と温度計は大丈夫ですか?
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posted by inoueseiji at 07:00
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窯と焼成に関すること
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