2010年03月08日

補償導線のこと



これまでの熱電対トラブルのお話、原因は補償導線でした。

窯の温度計には、それ専用の線が必要で、それがかなり特殊なものである、と知らない方も結構いらっしゃったようです。

そもそも、どうして温度が測れるのか手元のカタログの受け売りの部分もありますが、簡単に説明してみます。

いつも言っていますが、わたしはバリバリの文系・美術系ですので、理系の方はやさしい目で見守ってくださいね。

理科でならったと思うのですが、金属中には電子がいます。(らしい)

それら自由電子は温度に応じて動き方が変わるわけです。温度が高くなれば運動は激しくなっていくわけです。

で、その動き方は金属の種類によってちがいます。熱電対の保護管の中には、2種類の金属線(プラチナとプラチナ+ロジウム)が入っていて、温度を計測する先端で溶接し、くっつけてあります。

その反対側は温度計の中で回路としてつながっているので、くるっと一周した電気回路なのです。(デジタル温度計のコンセントは電光表示のための電源取りがメインで、温度測定のためではない。アナログ温度計が電源を必要としないのはそのため)

この2本が同じ金属ならば、自由電子は移動しません。ところが異種金属だと自由電子は、他方の金属へ移動するそうです。

そんなこと知るかい、と思っていましたが、1821年にドイツのゼーベックという人が発見したため、「ゼーベック効果」と名づけられています。


ま、美術系のわたしが自由電子の気持ちを説明すれば、

 「なんだ、あっちもプラチナか・・・。」

というのと、

 「おい、ロジウム混じりなんて見たことないよ!行ってみようや!」

という違いでしょう。(ゼーベックさん、ゴメン)


じゃあ、補償導線とはなにか。

熱電対の中のプラチナを、何メートルも伸ばすことができるのならば必要ありません。おそらく。

しかし、金銭的にも工業的にもそれはあまりにも無駄なので、それらの金属のゼーベック効果による起電力とほぼ同じ程度の起電力を「補償」するリード線、つまり「導線」なのです。

陶芸のR型熱電対の測定範囲は600〜1600℃ですから、その温度帯に適合した補償導線を必要とします。

前回のメルマガを書いたあと、おもしろい実験をしてみました。

わたしの手元にある温度計2つと、あずかりもの1つをそれぞれ比較することにしました。熱電対は2本、補償導線は新旧、型ちがい合わせて3本です。

やってみて実感したのは、600℃以下の数値が温度計3つともバラバラ。
R型というのは600〜1600℃というのを実感しました。
(実際には1400℃までぐらいが適正使用範囲らしいです)

線をつなぎ変えたり、熱電対と温度計の組み合わせを変えたりしてみましたが、温度計を付け替えた時の誤差が一番大きかったようです。

つまり、線や熱電対を交換するよりも、温度計を交換すると表示される温度が一番変化しました。ですから、やっぱり人の言う温度はあてにできませんね。

アナログ温度計とデジタル温度計の誤差は、最大で(あくまでわたしの実験上)70℃ぐらいです。

これは、1180℃でわたしの窯でゼーゲルコーンの8番が倒れる、というのに合致しています。偶然だとは思いますが、今現在アナログ温度計が生産されていない以上、端子の酸化や劣化などで、ほとんどの人のアナログ温度計は低く表示されているでしょうね。

データはあくまで、その窯、その人、その温度計だと割り切るべきです。


さて、補償導線ですが、わたしがもっている資料では、R型の補償導線だけでも10種類以上あります。ちゃんとしたところから買いましょうね。

当然、補償導線は陶芸のためだけのものではありません。発電所やボイラー、をはじめ、さまざまな業界で使われています。温度管理に関わる重要なものとして、規格なども決められているようです。

わたしたちが知っている黒い補償導線、あの色もJISで決められている色なのです。国によっては同じR型対応でも色が違ったりするようです。海外に陶芸関連のお仕事で行かれる方はお調べ下さい。

わたしも、あいつのことをただの耐熱線だと思っていた時期もありました。
(悪かったな、補っしゃん。)

温度一つ計測するだけでも、これだけたくさんの技術と人と歴史があるのです。正直子供のように感動してしまいました。

いろいろな方や仕事との出会いでたくさん勉強させてもらっています。

ありがとうございます。



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posted by inoueseiji at 10:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 窯と焼成に関すること
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