2013年10月17日

織部の渋抜き


わたしのやり方は瀬戸の釉薬屋さんから聞いたものを、さらにアレンジしたものです。この正しいやり方をブログにもアップして、多くの人に知ってもらいたいと考えています。

織部の渋抜きには、トチ渋を使った方法もありますが、わたしの渋抜きは塩酸を使ったものです。ご了承ください。



●そもそも酸化皮膜とは何なのか

織部釉は焼成後、曇ったようにくすんでいます。これは釉薬の表面に皮膜がついているからで、この皮膜をわれわれは酸化皮膜と呼んでいます。この皮膜は釉薬に含まれている酸化銅の析出物ということですが、どうして皮膜になるのか、わたしはわかりません。残念ながら、わかっているという人に会ったこともないです。だれか教えてください。

まあ、皮膜が取れれば問題ないですよね。


●窯出し

窯出しの時に注意することは、織部釉の部分を素手で触らないということです。
軍手をするなどして、手の脂がつくのを防ぎます。そうしないと指の跡がいつまでも渋抜きで取れないことになります。


●まずは水に浸す

窯出ししたらまずは水に漬けます。理由は、渋抜きに使う塩酸の成分が、素地や釉薬の貫入にしみ込まないようにするためです。これをおこたると、渋抜きしても貫入から白い塩がいつまでも出続けてやっかいです。

水に漬ける時間は1〜2時間でいいと思います。塩酸で渋抜きする場合、これはとても大切な工程ですので忘れずにやってくださいね。


●お湯と塩酸を用意

いよいよ渋抜きをするわけですが、水ではうまくいきません。ある程度熱いお湯を用意します。お風呂よりもちょっと熱い程度で十分です。だいたい50〜60℃でいいでしょう。わたしは我が家の給湯器で一番熱い設定の60℃で行っています。

重要な塩酸とお湯の混合比ですが、かなり薄いです。だいたいお湯15〜20リッターに、塩酸20cc程度を目安にしてください。きちんと測ることが重要です。横着はしないこと。

作品がつかるだけの容器が必要です。コンテナ、衣装ケース、子供用プールなどを流用して使います。

塩酸は取り扱いに注意が必要です。手袋、マスクなどを必ず着用してください。


●中和のために重曹水

バケツ一杯の水に大さじ1〜2杯の重曹を入れて攪拌し、用意しておきます。別になくてもいいのですが、塩酸を中和するために重曹を使うのです。わたしが紹介している方法での塩酸溶液は、素手でも大丈夫なぐらい薄いのですが、念のためにも重曹水を用意しておくといいでしょう。


●漬け込む

いよいよ作品を漬け込みます。お湯がかなり熱いので、棒やハサミなどを用意するといいでしょう。漬け込む時間は1〜3時間程度です。塩酸水の濃度が薄いので、結構アバウトでも大丈夫です。キーワードは薄く長くです。

瀬戸の製陶所などは、もっと濃い塩酸溶液で、もっと短時間でやっているようですが、あわてることはありません。塩酸が濃くていいことはあまりありませんから。


●皮膜を取る

時間がたち、頃合になると、本当に皮がむけるように皮膜が取れてきます。そうなったらスポンジなどできれいに作品を洗い、完全に皮膜を取り除きましょう。このとき確実に皮膜をとることが大切です。拭き残すと乾燥したときに皮膜が残ってしまいます。

きれいに拭き落としたら、流水で洗い流します。この工程で、自分の作品の美しさを存分に味わってください。作者の特権です。


●乾燥させて終了

全ての作品の渋抜きが終わったら、後片付けです。塩酸水には先ほどの重曹水を混ぜて中和し、流しに捨てましょう。作品は水気を切り、乾燥させます。これで織部の作品ができあがりです。この一手間があるので、織部の作品は割高だったりするのです。


以上がわたしが行っている渋抜きの作業工程になります。是非参考にしてください。渋抜きで大切なのは、あまりあせらないことです。短時間でやろうとすると失敗のリスク、事故のリスクが高まります。とにかく塩酸は薄くして、長い時間をかけるようにします。



今回紹介した渋抜きの方法、是非あちこちで広めてください。

もともとはわたしも釉薬屋さんに教わったことです。水に漬けるとか、重曹水とかは、わたしが付け足した部分ですが、薄く長くというのがこの方法の一番の肝です。

織部釉はとにかく美しいものです。特に渋抜きしたばかりの濡れた作品はとても美しい。だからやめられないのです。

※今ではクエン酸で行っています。2020年1月追記】




★ネット陶芸講座の受講生も募集中です。 

http://www.knowledge.ne.jp/lec1535.html



ランキングに参加しています。

↓↓↓ ほかにもたくさんの美術・陶芸ブログがありますよ。



にほんブログ村 美術ブログへ      
にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 釉薬に関すること
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/78370115
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

あなたのクリックでオジサン泣いちゃいます→ にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ