2025年03月22日

卒業と合格発表の季節

80年代洋楽ポップスを聴いていたら中学時代の小っ恥ずかしいエピソードを思い出して泣きそうになったイノウエです。
はい、今日は陶磁器フェアに行こうかなと思っております。

先日受験しました危険物乙種4類の結果が届きまして無事に合格いたしました。
やったぜベイビー!

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(ビールでマラカス振っていこう)

また筑前工房でのロクロ道場も進んでおります。

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(ハマったねぇ)

とういわけで、カモフラージュなタイトルと記事はここまででございます。



ちょっとデリケートなネタかもしれませんが、最近高齢者の方の対応を難しく思わされることが続いております。

わたしでさえ「この間さぁ〜」と会話で出すネタの”この間”が8年前だったり、グーグルフォトで「あれから5年」とかで出てくる写真に「もうそんなに経ったか!」と思わされたり、まだ同じ服着てるとかあったり笑。思い違いをしていたり、それを修正できなかったり、永遠に単語や漢字の読み違いをしていたり。

ね、50代でもそうんなんだから。

それが70代以上のご高齢の方であれば個人差は大きいですが、思い違いが強くなっていたり、判断が意固地になられていたりすることがあります。そのため、こちらも丁寧に気をつけて対応と確認をしていかなければならないと思うことが最近いくつかありました。このあいだ福岡銀行の窓口で大声出しているご老人がいたけど正直わからんでもないのよ。だってこっちも50代なんだから。相手にわかるような説明を想像できない人も多くなったしね。

さてわたしの業務のことですが、連絡をいただいたので以前その方とやりとりしたメールアドレスに詳細を送ったんです。全然返信んがないので連絡したらメールが届いた届いていないでひと悶着あって、またイチから電話でのやりとりをしなおしたり。

補修の件で、いざ引き取りという段階で「なんか以前いただた写真と電気炉の後ろのカベと床が違うなぁ」と思って念の為に確認したら数年前に引越してご家族と同居になっていた。気が付かなかったら配送業者はイスカンダルの果てにいくところでした。まぁそんなのはまだいいほうで。

2基目をご検討とのことで、コロナやいろいろなことで値上がりしている現行価格の見積を説明して送付したら、これまた数年前に送っていた過去の見積金額を引き合いにされたり。そもそも見積書って有効期限があるんだけどなぁと思っても仕方ない。それよりも今年の4月からまたいろいろと値上がりしていくので不安しかありませんよ、こっちだって。

似たような話で年齢問わずですが「ネットはもっと安いものがある」と言われたらそれまでです。

じゃあその安いところはラインや電話・メールでなんの質問にも答えてくれて、休日も早朝も関係なく対応してくれるんでしょうか(あと買ってもないのに◯田絵具店とかに質問だけの電話とか失礼だからね笑。せめてメールにしないとさ)

わたしはどのお客様にも統一価格を意識してそれを実践しています。そしてその後の補修については利益をほとんど取らないようにしています。だって”ネットよりも高い”うちから購入してくださった大切なお客様なんですから。

ネットで購入して補修だけたのんでこられる方にももちろん快く対応しますが、その場合は適正料金をいただき、あらためて次回からお客様価格での対応にしています。

陶芸窯って価格競争するような製品とはわたし個人は思っていません。
そして価格はフィルターです。

値切る人と良い関係にはなりませんし、そのとき値切れたと思った人もその分は必ずどこかで払わされますよ。
だっていつかは修理か補修が発生すると思うんだけど。

むかしはガス窯を導入すれば配管工事はガス供給会社がもってくれたりしました。今も少数ながらそういうことはあるでしょう。
だってそのお客様はいまから他の家庭の何倍もガスを使ってくれるんですからね。携帯の機種代0円とおんなじ。

どんどん脱線しますけれど、なによりも怖いのは「そんなことプロに頼まなくてもこうすれば直せるよ!」という無責任な発信と実践を見せてくれる永遠にプロにならない方々のネタ。そんな無責任な発信で数年を棒に振る人のなんと多いことかと思います。情報の取得には汗かきましょう。仕事なり趣味とはいえ貴重な時間を費やすんですから。

ヒーター線を張り替えたら本焼温度で空焚きしてっていつも言ってるじゃん?

ガス窯はいきなり本焼きしないでアブリを徐々にやってくださいって言ってるだらぁ?

窯の選び方げな言いよるばってん、きさん全部の窯焚いたこるあるとや?

なんて誰が言っているのかしら。


最近はクルマのオイル交換の情報さえディーラーはぼったくりと思っている人がいるらしいけど、ディーラーやメーカーが推奨している数値は本当に本当の最低ラインだって知らないのかなぁ。

ああこうしてわたしも意固地なオジサンになっていくんですねぇ。

◆過去記事 ゴルゴ13ルール
posted by inoueseiji at 08:37 | イノウエセイジの頭の中

2025年03月14日

米の研ぎ汁問題にアツくなるには理由がある【与太話】

「アナタ、米の研ぎ汁問題はもういい加減にして働いて!」という声は放っておいて笑。

昨日紹介した粉引の大皿は美しいでしょう。
ここぞという時に食卓に上る器なんです。
器はそうやって育っていくものだと思うのです。


さて。

あまり具体例を出すと我が身がヤバいのでアレですが。

たとえば桃山時代に作られて現代まで銘品として残っているものは、それなりに使い込まれてきた器の良さを持っているものだと思います。みなさんが、いわゆる骨董という言葉を聞いてイメージするような雰囲気の器です。カッコいいですね。


しかし。
そんな器にも窯出し直後のウブなときがあったはず。

それはわかりますよね?

現在の作家モノは、必ずしもそのウブな状態で売られるわけでもない、ということは大人の事情を知る人なら…です。

まぁとある有名な作家さんで、焼成したおびただしい数の井戸茶碗を山に野ざらしに積んで数年放置から数十年放置して、個展をするとなると改めてそこから選び取る、ということをされていた方がいます。それは一つの作品づくりの方法論であるといえますが、自然と古色付けにもなっていると思います。

他にもいろいろあって、土中に数年埋めておくとか、トチ渋につけておくとか、紅茶とか、ベンガラや鬼板の水溶液で着色するとか、あまり詳細を書くとイケない技法がいろいろとあるのかもしれません(かもしれないブログ笑)


じゃあそれが米の研ぎ汁問題となんか関係があるのか?ということになるかと思いますが。


焼成の甘さのような部分が茶碗の味や雰囲気を生み出す一つの条件にもなるのかもしれませんが、それは茶陶では良くても食器では厳しいのではないかと思います。自作の器を改善しないで米の研ぎ汁のような水漏れ防止剤を使用する考え方は、前述したあまり表に出したくない裏ワザを茶陶と食器で混同していく可能性があります。

食器と茶陶の自己主張の強度はかなり違うようにも感じています。


わかりやすく言えば、自分の求める作品の雰囲気が絶対であれば、水が漏れようが関係ありません。モグサ土で志野を焼こうが井戸茶碗を万単位で山に放置しようが好きにすればいい。ファンはそれを数万から数十万円出してありがたく購入するでしょう。

しかし一般の家庭で使われる器を一般人のお財布で購入可能な価格で販売しているのであれば、テレビで見た陶芸家の考え方よりも製陶所の考え方に近いものを採用したほうが良いのではないかとわたし個人は思います。


まぁこれはちょっと脱線しすぎなのは自覚しますが。
与太話なんでゆるしてチョンマゲ。


もう一つ、米の研ぎ汁に潜む問題点があると思います。それは窯焚きなどでもよくある、誰もそれに突っ込めない、周りがそう言っているから自分も、という状況が広まってしまい、いつの間にかそれが事実のようになってしまう、ということへの危惧です。

還元焼成について、ダンパーとドラフトの操作について、ヒーター線について、築炉メーカーについて、エントツの素材について、バーナーの調整方法について、電気工事について、温度計測について、補償導線について。

誤解と誤謬、思い違いに曲解がこれまで山のようにあったし、今も多々あると思います。
実際にわたし自身も五十を過ぎてようやく真実を知って悔しい思いをしたことがいくつもあります。最初にちゃんと伝えてくれればやったのに!とかさ。


何年も間違った窯の操作をして苦労してきた人。


間違った発信で窯の購入に不安を覚えた人。

スピーカーケーブルで温度計測してきた人。

木炭を電気炉に突っ込んでヒーター線をダメにした人。

安直なアドバイスで一窯全部パァにした人。

窯そのものを壊してしまった人。



そんな人たちは。

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誰も悪くありません。



プロだと思った人たちのアドバイスを信じただけです。

米の研ぎ汁のように。




というわけで自分のブログの中ぐらいグダグダ熱く書いておく。

ご安全に!



posted by inoueseiji at 08:34 | イノウエセイジの頭の中

2025年03月13日

米の研ぎ汁問題から脱線する【電子レンジと洗剤】

購入したところが答えないから相談が来るけれど、それでお金を取るほどの商売人ではない自分がトホホなイノウエです。

はい、米の研ぎ汁問題は、派生作品?がまだまだしつこく続きます。

繰り返しになりますが、米の研ぎ汁を使用すると目止めになる、ということを作り手の一部が認識して、お客様向けに説明しているということは、自作の器や陶器一般に吸水性があること、場合によってはクレームになるほどのシミができることを把握しているということです。

だとすれば、本来はその米の研ぎ汁についてももう少し詳しく説明するべきなのではとオジサンは意地悪に考えてしまいます。

精米機で7分づきにしているけれど研ぎ汁が濃すぎますか?

研ぎ汁の理想的な濃度はいかほどでしょうか?

米の研ぎ汁はどこで購入できますか?

なんてさ笑。

まぁたしか1970年代の陶芸関連の書籍には確かに米の研ぎ汁について言及している書籍があったと記憶しています。


また土鍋を購入したら最初はお粥を炊いてから、なんておばあちゃんの知恵袋みたいなことを聞いたことがある人も多いでしょう。でもそれはペタライトが今のように多く使用される前の土鍋の時代でしょう。わたしの世代でも若かりし頃の土鍋土はザクザクの手が痛いような土で、焼成温度を変えてと言われていました。

山内陶料さんが一般売りを解禁されてから、今の土鍋は別にわざわざ1180℃で焼成をする必要はありません。他の製品といっしょにSK7のOFで問題なく焼成できます。逆に1180℃で焼成するとトラブルのもとです。1180℃の根拠は以前書いたので、今日は意地悪して書〜かない。

わたしがこんなことを何度もしつこく書くのは、このノリが窯選びや焼成方法にもあるからです。シンプルな理屈や仕組みを知ることなしにただ米の研ぎ汁を盲信するようなノリ。これを是正しないといつまで経っても何百本記事を書いてもなぁ〜んにも変わらないことになるからです。

その証拠にこのブログでは、毎日まいにち2009年のダンパーとドラフトの記事がアクセストップの状態が続いています。まぁ脱線です。



とにかく。

ベストの状態で焼き上がっても陶器には吸水性がある、といということを理解すれば、電子レンジをどうするかもわかるでしょう。また洗い方についても聞くまでもない。


まず電子レンジについては自作の器で何度でもテストすればいい。もしくは、電子レンジこそお客様にはやめといて、と言っていいのではないかと思います。電子レンジは水分子を振動させるわけですからね。条件によっては器に染み込んだ水で、なんてことがあり得るということですね。

ウチはまぁまぁ自作の器なら
電子レンジに突っ込んでます。使っているのは失敗作が多いので笑。ちなみにグラタンは織部の型打ちの角皿をトースターでガンガン加熱しています。トースターは意外とへっちゃらのはずです、ってイノウエが言っていたとか言わずに、自分の器は自分でテストしてね。


あとは洗い方です。

先日の記事にも書いたように、むかし同期みんながまだまだ未熟だった頃ですが、購入した知人の器からイヤな匂いがするようになったことがあります。昨日食べたカレーの臭いとかそんな匂いではなく、台所の排水溝のようなイヤな匂いです。飯碗でしたが、それが熱いご飯の匂いに混ざって立ち昇るのです。うんざりしてすぐに使わなくなりましたが、ある時ふと思い出して素焼きしちゃったという話でした。


共働き家庭だったりすれば洗い物を流しにつけっぱなしにしていたり、放置していることがあります。それは別に悪いことでもない。そういうことを想定しておく必要が製造業にはあるのでは?ということです。

また食洗機問題もあるようです。親しい方から聞きましたがオサレカフェの器が洗剤臭くてコーヒーが飲めなかったことがあったそうです。そのオサレキッチンを見ると食洗機でガンガン洗っていた。せっかくのオサレ器をセレクトしているのなら、なぜ手洗いしないのかと思ったそうですが、お店のスタッフが業務用食器と混同しているのだろうから仕方がないことだと思ったとのことでした。

食洗機ね。

オートクチュールを家の洗濯機にブチ込む感覚やろ、なんてわたしは言っておりません笑。
そしてそれだけ業務用食器というものが優れているということでもあります。


洗剤にしても流しに漬けっぱなしにしても、器の吸水性を考慮しておくべきでしょう。ワタシがいまこのポジションで無責任なことを言うのはズルいかもしれませんが、自分だったらやっぱり釉薬や土によっては食器用の水漏れ防止剤をしてから販売するかな。

米の研ぎ汁なんて書かないで、初めて使用する前には水につけて、使用後はなるべく早く手洗いで洗ってください、と書くべきでしょう。そして吸水性のこと、洗剤を使用する場合の注意書き、よく乾かすこと、匂いがついたら日光に当てることも有効であること、どうしようもなければ引き取って素焼きするなんてサービスもいいかもしれません。またジーンズのように使い込んでいく美しさが陶器にはあるということも発信しておくべきでしょう。


そしてなによりも作り手は自分の器を自分の生活で使ってテストすることが大事だと思います。耐熱の器を販売したいのなら、一冬しっかりと自宅で使い込んでからにするとか、そういうスタンスが大切です。

そんなに待てない!とかあるかもしれませんが、あの人の器いいよ〜という評判よりも、あの人の器すぐカビる!とか水炊きしてたら割れたの!なんて悪評のほうが780倍ぐらい早く広まってしまうので気をつけましょう。写真付きでトゥイッター笑なんかに上げられたらイヤじゃん?


とりあえず釉薬のことも含めて、梶田絵具店のサイトをチェック!

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(20年以上前にいただいた同期Oさんの粉引大皿。真白だった器がここまで育った。井上家の宴席にいつもあって我が家の祝い事のすべてを知っている大切な器。)
posted by inoueseiji at 08:07 | イノウエセイジの頭の中

2025年03月12日

米の研ぎ汁問題は続きます【釉薬の問題など】

もうすぐ池田屋で会合だぜ!と思っていたら、自分の脱藩のところまで振り出しに戻された気分のイノウエです。

さあ、元気だしていきましょう!

はい、では米の研ぎ汁問題のパート2です。

米の研ぎ汁で器の目止めをするということは、そもそもバッチリ出来上がっても吸水性のあるのが陶器だけど、何某かの要因で通常よりも吸水性が強い状態になっている、ということでしょう。

あ、一応今回からは「自分の器はちゃんとテストして問題ないのはわかっているけれど、クレーム対処のためにあえて製品のシオリに米の研ぎ汁と記載しているんですわ」という方のことではなく、マジで自分の器の水漏れやシミやカビの原因がわからなくて、ネットを検索しまくって「米の研ぎ汁がいいんだって!」となっている人を対象に書きますんでよろしくメカドック!

まずいきなりギャフンとなっちゃいそうなことを書いておきます。これはとても大切な考え方ですからあえて。

自分の器の雰囲気を大事にするあまりに食器としての機能を犠牲にする方や考え方があります。
茶陶とかね笑。時代付けとか笑。まぁそれはそれでよろしい。しかしその場合は米の研ぎ汁なんて言わないで食器用の水漏れ防止剤を使用して「つくり手側が責任をもって」やってください。お客に米の研ぎ汁なんて用意させるのは論外であるようにわたし個人は思いまっせ。気をつけないとどこかが”ペットボトル入の米の研ぎ汁”を販売しそうだもんね。


あなたが有名売れっ子作家ならば、茶筅通しで畳が濡れるぐらい水が漏れてもお茶の先生が怒ることはないかもしれません。逆に「早く器が育たないかなぁ」と嬉々として使ってくださるようなこともあるかもしれません。しかしほとんどの場合は水漏れしたとか貫入にコーヒーの色が入ってしまったとかクレームを言うような方へ説明をする羽目になる確率の方が高い。

衣服にたとえれば量産の器と手作りの器はユニクロのシャツと手縫いのセーターのような違いかもしれません。ユニクロのシャツならガシガシ洗濯するでしょうが、あの子の手縫いのセーターはやさしくソフランで手洗いするべきですよね。まさか洗濯機では洗わないでしょう。無意識でその常識が衣服にはある人が多い。なんででしょうね。

まぁそれと同じで、作家ものの器をどう取り扱うかは、器好きな人の共通認識になるまでは作家側が発信していくしかない(と思うよ)。その際に米の研ぎ汁ではあまりにも哀しい。ていうか、器好きな人の共通認識が米の研ぎ汁になりつつある危機感を感じています。一部のギャラリーの人がそういうこと言っているらしいし。


さて、学校の教科書でも習うように、磁器やb器とはちがって陶器には吸水性があります。それは粘土の種類や釉薬との兼ね合いで変動するわけですが、吸水性がある。つまり焼結したものでも目に見えない気孔が素地に存在しているということです。

当然ながら窯出し直後の器にはなんの水気もありません。そこに米の研ぎ汁なんかをブチ込んでしまうと永遠に雑菌のエサをみずから供給する器になってしまう。つまりカビが発生しやすい器になってしまうということです。

たとえば織部釉を使用した器は渋抜きをしますので、窯出し後に水道水に漬けてからクエン酸水などに浸します(なんでかは過去記事で)。塩酸を使用する人ならもう消毒しているのに近い状態でしょう。それでも長い期間使用していれば高台内にカビが発生することもあります。条件によっては数ヶ月でそうなることもあるでしょう。

まだ窯が熱いのに窯出しして、ピンピン音がする熱い器に焼酎を注いで呑むとかいう◯◯な窯元のニュースを昔みたことがありますが、そんなことをすればもうその匂いは取れなくなってしまいます。

友人や同期の初個展などで購入した器が速攻でカビたり、焼きが甘くて洗ったあとにイヤな匂いが取れなくなったりしたことがあります。幸いワタシはやきものの仕事をしているので、匂いに耐えきれなくなって知人の器を自分の窯で素焼きしたことがあります。そうすればカビも匂いも消えるし、若干何某かの反応も進むのか、そこから一切カビなくなったりすることもあります。しかし、いくらふくおか陶芸窯が「一家に一台、陶芸窯」の世界を目指していても、普通の家庭に窯はありません。だからあくまでこれはやきもの屋の裏ワザです。

はい、ということでここからが本題。
今日問題にするのは釉薬視点での米の研ぎ汁問題です。

まず釉薬の濃度を把握しましょう。濃度で器の吸水性や汚れやすさは変わることがよくあります。濃度というのは器に表面にくっついた釉薬の厚みを管理できるのかということです。


濃度の比較については16年前の過去記事があるので確認してください。


★さまざまな濃度で焼成実験


↓ これは5年前。

★数値で管理できるかな?
http://inoueseiji.sblo.jp/article/187506422.html


焼成温度を変更しないのであれば釉薬の濃度や調合を変更するべきかもしれません。もちろん、そうしろと言っているのではなく、ヒントとしてそういう考え方はどうかしら?ということです。

話がまだまだつづくので、また次回にしましょうかね。

A young woman enjoying pottery.jpg
(AIに陶芸を楽しんでいる若い女性、とお願いしたらこうなった)

posted by inoueseiji at 08:28 | イノウエセイジの頭の中

2025年03月10日

無洗米の人はどうすればいいのかしら?【米の研ぎ汁問題】



お水が冷たいと道具をつかって米を研いでいたことはヨメには内緒のイノウエです。

器を購入したらいまだに「米の研ぎ汁で」という注意書きがあると複数の方から伺いましたし、わたしもフェアなどで購入した器のしおりに書いてあったことがあります。

動画の冒頭でも発言しておりますが、わたし個人は雑菌のエサを仕込むようでイヤです。
反論する方は沸騰させるから問題ないというのかもしれませんが、それでもイヤ。

イヤなものは嫌なんです。
そもそも面倒くさい。

1200℃オーバーで焼成しているものが沸騰ぐらいでどうにもなるかいな、と思います。

もちろんワタシもコーヒー注いだら茶色い汗をかくようなカップを作ったことがあります。
敷物を濡らすような花器をつくったこともあります。
炒めた油が染み込んだ跡が消えないようなお皿を作ったこともあります。

でもね。

撥水剤に逃げてはイケないわけですね。
安直に。

特に食器はね。

器が悪いのに溶剤でどうにかしようという発想をする人は少ないと思います。
あくまでも撥水剤などは保険として使用するものだと思います。まぁ花器は別かもしれません。

これまでわたしが認識した「米の研ぎ汁で煮てください」とか、そういう注意書きをしおりに書いている方々はみなさんプロでした。プロとしての意識から、その製品のクレーム対策として書いているということは理解しております。

ただね。

昭和じゃないんだから、プロの方からそれを是正してお客様を安心させていかないとイケないのではないかな、とオジサンは思うのであります。


もう昭和じゃございません。
令和でござんすよ、旦那。

米の研ぎ汁なんてどの家庭でもある時代ではなくなったのです。
無洗米を使用している人もいるでしょう。
そもそもおコメを食べない外国の方も購入するでしょう。
炭水化物ダイエットしている人はどうすればいいのでしょうか。

大昔の土鍋なんかはかなり粗い土で焼成温度も低くしていたはずです。
ペタライトなんてジンバブエから輸入されていなかったでしょうから。
米の研ぎ汁やお粥を最初に炊け、なんてのは、そんな時代のおばあちゃんの知恵袋的なことです。

だから製品のテストをすることです。

そして釉薬と土の相性や調整をしっかりとしましょう。
もう一度言うけど、食器なら特に。


陶器なら必ず釉薬に貫入は入ります。
ただそこに汚れが入るか入らないかは土と釉薬との相性できまる部分もあります。
こんなときにゼーゲル式なんかも使えるかもしれません。

焼成も関係します。
焼成時の最高温度や窯出しの温度も影響すると思います。ゆっくりと昇温させることや熱いうちに蓋開けるなといつも申し上げております。



新しい器は水だけで洗って、水を吸い込ませてから使い始めとすると良いと思います。
そして町中華屋の厨房みたいにいつまでも洗い物を放置するんじゃなくて、食べ終わって一服したらすぐに洗って乾燥させましょう。手作りであろうとも、しっかりと作られた器ならそれでいいはずです。

そして作家なら自分が作った器を自分の生活の中でもしつこく使っていくことです。
そうしてようやく人からお金を取る器ができるのだとわたし個人は思います。

量産品をバカにしてはいけません。
ここまで書いた様々なことを全クリしている製品なのです。
100円ショップにあるものでさえです。

量産の器の世界の人は「米の研ぎ汁で」なんて言わないと思います。


それとも。


そう言わざるをえない時代なのかねぇ。





◆追記:過去記事をリンクしておきます。

水漏れ防止剤について
posted by inoueseiji at 09:43 | イノウエセイジの頭の中

2025年03月05日

おつ〜【危険物取扱者乙4】

いつの間にやら3月になってしまいましたイノウエです。

さて日曜日に危険物取扱者乙種4類の試験を受けてきました。

学科だけだから楽勝かなぁ?と甘く考えておりましたが、テキストはいいとしても問題集がとても難しかったです。

この試験も6割で合格なのですが、なかなか厳しいと感じていました。

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(オジサンは10日じゃ絶対ムリ笑)

液化石油ガス設備士の合格でちょっと力が抜けたのも正直ありましたし、確定申告でションボリしていたというのもあるでしょう。

試験会場で隣の席は高校生でしたが、オジサンが受験するときのアドバンテージは人生経験しかございません。
ああガソリンスタンドにそんなのあったなぁとか、それって梶田絵具店さんみたいなところ?とか、あの業者さんがそうだったんだなぁとかね。そう考えると若い方々には資格取得後も頑張っていただきたいと思います!

今年の問題でありがたかったのは、プロパンガスの燃焼についての化学反応式の問題が出たことです。これは以前動画にもしたネタだし、液化石油ガス設備士でも必要な知識でした。計算するまでもなく反応式を覚えていたので助かりました。




試験の結果は今月末です。

わたしの仕事に直接の必要性はないのですが、灯油窯のお客様もいらっしゃるし、なによりもこうした試験を受けることで勉強できたことは財産になります。落ちたとしてもです。

また定期的になにか取得していこうかなと思います。


え?
今回の危険物取扱者乙種4類を勉強して思ったことですか?




よくセルフ給油をオッケーにしたなぁ!



でしょうかね。


ご安全に!
posted by inoueseiji at 07:44 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月26日

電気炉価格改定のお知らせ【共栄電気炉製作所:LR/LKシリーズ】

おはようございますイノウエです。
昨日共栄電気炉製作所さんよりアナウンスがありましたので、ご紹介いたします。

上蓋式電気炉のLRシリーズおよび横扉式LKシリーズの価格が改定され、本年4月1日発注分より新価格での提供となります。これまでの価格から約2割程度の上昇になります。

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(筑前工房に展示機のLR-10があります)

とはいえ小型100VのKCシリーズをはじめ、すべての電気炉が価格改定された中で、ここまで価格を維持していただいたことはありがたいことでした。駆け込みで受発注があるかと思いますが、ご検討中の方はお早めにお問合せください。

ふくおか陶芸窯としては、LRシリーズやLKシリーズの納入先は九州および中国・四国地方までかと思います。お見積りは無料で行っておりますので、ご遠慮なく。

LKも納入実績はありますが、LRシリーズは上位機種と性能は変わらず、価格を抑えたモデルでこれまで、たくさんの納入をさせていただきました。また本社工場にお邪魔した際にはその製造の途中段階を説明していただき、耐火断熱レンガのさらに表面にボードを貼ることで、焼成時の電気代がかなり抑えられることなどを知り、驚いたことを思い出します。

還元焼成にも対応したヒーター線が酸化モデルでも標準装備されており、後々バーナーセットを追加して還元焼成も可能です。

う〜んウチも発注しておこうかなぁ。

共栄電気炉製作所さんの本社工場の様子はコチラをどうぞ。



posted by inoueseiji at 07:19 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月25日

ロックンロールが耳障りな人向けではないからさ笑【2025ロクロ動画スタート】





窯の仕事や工房の補修に明け暮れていたら、とんでもなくロクロが下手クソになっていたので、今年はロクロ動画からスタートです。

こんな雑な動画ですが、わたしとしてはようやく筑前工房でロクロを回せるようになったと感慨深いのであります。生温い目で見てやってください。

作るのはロクロ動画が一番カンタンですし、観てもらえるので、これからガンガンやっていきましょう。

この動画はとりあえずアップロードをする、という自分の中の目標で上げたもの。
今後はちゃんと詳しく説明をしながらやっていくつもりです。

むかし講座で行ったアンケートでは受講生の9割の方が、ロクロに憧れて陶芸を始めた、という事実を知り驚いたことがあります。つまり陶芸という世界の入口、その先の窯と焼成の入口は、やっぱり電動ロクロということでしょう。

ロクロ漬けにして陶芸なしには生きられない状態にすれば、窯と焼成にも手を出すということでしょうか笑。

リハビリを兼ねて今年55歳のオジサンがどこまでロクロの技術を高められるかを見ておいてください。すぐに挫折する可能性もありますが、よろしくメカドックです。

実際に過去のロクロ動画のおかげで、お客様の作家さんとロクロの話ができたりしますし、中には独立直前にわたしの動画をロクロの前のタブレットで流しながら練習していたなんていう、なんともこそばゆいエピソードを聞いたこともあります。ありがたいことですが、世の中もっと技術がある人がたくさんいますので、こんなオジサンの動画は踏み台にして高みに登っていってください。

以前も書いていますが、わたしを含めて技術がある人はYOUTUBEに動画なんてアップしておりませんから、そこだけは気をつけておいてください。わたしの動画の目的は、ロクロが上手になったら窯にも興味を持つ人が増えて、自分にも仕事がくるかもね?という動機です。そういう意味ではブレは少なめかもしれません。

過去記事はコチラ。


う〜ん今読み返すと結構ヤバいことを書いている気がします笑。

まぁいいか。


はい、では最後に今週のAIさんのコーナー!
今日はマイクロソフトのCopilotに画像をお願いしてみました。

「 陶芸のロクロを楽しんでいる中年男性の画像を生成してください」

で、いただいた画像はコチラ!

中年男性が陶芸のロクロを楽しんでいる様子.jpg
(またヒゲでものばすかな)


ではまた〜!
posted by inoueseiji at 07:30 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月17日

AIに聞いてもわからない?【窯の焚き方】

通常検索よりもAIに聞いた方が何倍も電気代がかかるらしいですね、イノウエです。
まぁ知ったこっちゃないですが。

先日AIに聞いた窯の焚き方は誰も信じてはいないと思いますけども笑。
AIの答えに一部マーカーをしていますが、その色には意味を持たせています。

紫色のものは「それは間違いだろ」と思ったところ。
黄色は「だからそれを聞きたいんだけど」「そうだったら苦労しないわ」というニュアンスのところです。

そもそも素焼きか本焼きか、最終的に何℃で焼成するのかを聞かれていないあたり、ダメな業者の受け答えみたいで微笑ましいですが、お客様にはそんなことは判断できないでしょう。

昨日も焼成指導のお仕事をしてきましたが、灯油窯で小型なのでなかなか難しかった。

福岡に戻ったばかりの頃、自分が築炉メーカーで働いてきたことが知れると、いろいろと相談やこんなことがあった、などと様々な事例を聞くことがありました。

その中で印象的だったのが、灯油窯を知人が購入して自宅に設置したが、煙突からの黒煙とブロワーの音で近所中からクレームがあり、雨の日にしか焚けなくなったというものがありました。焼成指導はあったんですかと聞いたら設置時に軽く説明があっただけ、とのことだったと聞いたように記憶しています。初めての窯が灯油窯でアマチュアの高齢女性なら無理があるように思います。

わたしも灯油窯をこれまでいくつか設置しましたが、場所を選ぶ窯だと思います。あまりに隣の家が近いところであればやめた方がいい。そういう方ならガス窯をおすすめします。

これを売りっぱなしにしてきた業者やメーカーの罪、つまりは業界の罪はゼロではないと私個人は思っています。焚けない人が焚けない人に売りっぱなしにする悲喜劇。本人にしてみれば悲劇でしょうけれども。

でもね。わかりますよ。会社員で営業とかだったら売れればいいよ。相手が苦労するとか焼成できないかもしれないとかを考える必要はないし、考えないでしょう。わたしだって社員だったときには「今週の土曜日休みかなぁ?」とか「寸志ってボーナスじゃないの?」とか、そんなことしか考えてなかったもんです。

それは社長や経営者が考えること。
だからトップの考えが大事なんです。
わたしは大沢ガス炉商会にいたからこんなキャラになったんです。
それは創業社長がそういう人だったからに過ぎません。



私は灯油窯の経験が一番少ない。だから焼成指導はこちらとしてもありがたい経験値アップの機会でもあります。灯油バーナーのオイル漏れを直したり、いくつか補修をやってみて構造は理解しても、実際の灯油バーナーの挙動は窯焚きを通じて体験しないとわからないわけです。

ガス窯もほとんど発信がないけれども、まぁ灯油窯も発信はない。先日のAIは「窯の説明書をよ〜と読まんといかんばい」と言ってましたが、そもそも窯の説明書なんてついていないこともあるし、灯油窯に関しては、点火と消火の方法が載っている程度で「灯油バーナーの説明書」でしかない。エントツの働きなんかを書いている説明書におめにかかったことがない。これは書籍でもそう。いろいろと偉そうに書いていても窯の焚き方を発信できないわけじゃん笑。


焼成指導をするということは、灯油バーナーの仕組みや操作に「習熟するためのアドバイス」を行う必要があるということです。正しいやり方だけではなく、エントツの働きやダンパーとドラフトのこと、火力との兼ね合いなどを実体験してもらうために行う必要があります。

そう考えると業界未経験の方が設置するのはありだけども、焼成指導は難しいと思います。もちろんコツコツと自社の窯を自分で焚いている社長や業者さんはいます。購入を考えている方はそのへんもよく確認しておくことをおすすめします。

もちろんそれなりに失敗もするし慣れるまで時間はかかるでしょう。それでもやり方がわかっての失敗と、これでいいのかな?と思いながらの失敗は次元が違います。やっていればわかりますからとか、10回ぐらいやれば理解できますとか、お客様のほうがわかってらっしゃるでしょう?などとホザく業者は焚けないと判断しましょう。

そしてメーカーや業者には得意分野があります。それも確認しておくべきでしょう。わたしは今灯油窯の経験値をどんどん上げていっています。バーナーの簡単な補修も出来るようになりました。このまま頑張って「薪窯が一番苦手です」という段階にしていきたいと思っております。

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(モルタルを練るのは得意)


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(また連絡してクレイ!)
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2025年02月13日

AIに窯の焚き方を教えていただきました

15年以上前に書いた記事に動画を貼っつけた「ダンパーとドラフトについて 1」という記事が毎日一番読まれています。

たまにこのことに触れていますが、相変わらずその状況は変わりません。


こんなオッサンのブログよりもAIに聞いたらいいんじゃないの?と思ったのでGeminiさんに聞いてみました。



Q:陶芸用のガス窯の焚き方を教えてください。


陶芸用ガス窯の焚き方は、窯の機種や大きさ、焼成する作品の種類によって異なりますが、基本的な手順と注意点をお伝えします。

準備

  1. 窯の点検: 窯内部にゴミや割れた陶片などが残っていないか確認し、取り除きます。バーナーの点火口が詰まっていないかも確認しましょう。
  2. 作品の準備: 焼成する作品を窯詰めします。作品同士が触れ合わないように、適切な間隔を空けて配置します。
  3. 窯の密閉: 窯の扉や煙突のダンパーをしっかりと閉め、窯を密閉します。
  4. ガスと空気の準備: ガスボンベのバルブを開け、ガスが窯に供給されるようにします。また、窯には適切な量の空気を取り入れるための空気孔(ダンパー)があります。

焚き始め

  1. 点火: バーナーのコックを開き、点火します。最初は弱い火で、徐々に火力を上げていきます。
  2. 昇温: 窯の温度を徐々に上げていきます。急激な温度上昇は、作品の破損や窯の劣化につながるため、ゆっくりと時間をかけて昇温させます。
  3. 温度管理: 窯の温度計を確認しながら、目標温度まで昇温させます。温度計がない場合は、炎の色や窯の内部の様子で温度を判断します。
  4. 窯内の観察: 窯の覗き穴から、作品の状態や炎の状態を観察します。作品が溶けたり、変形したりしていないか、釉薬の状態はどうかなどを確認します。

焼成

  1. 最高温度保持: 目標温度に達したら、その温度を一定時間保持します。この時間を「ソークタイム」と呼びます。ソークタイムは、作品の種類や大きさ、釉薬の種類によって異なります。
  2. 温度調整: ソークタイム中に、必要に応じて温度を微調整します。
  3. 焼成終了: ソークタイムが終了したら、バーナーのコックを閉じ、火を止めます。

冷却

  1. 自然冷却: 窯の扉やダンパーを閉じたまま、自然に冷えるのを待ちます。急冷は、作品の破損や窯の劣化につながるため、十分に時間をかけて冷却します。
  2. 窯出し: 窯が十分に冷えたら、作品を取り出します。

注意点

  • 安全対策: ガス窯は、火や高温を扱うため、十分な安全対策が必要です。 
    • 換気: 窯焚き中は、換気を十分に行い、酸欠にならないように注意しましょう。
    • 耐火服: 耐火服や手袋を着用し、火傷を防ぎましょう。
    • 消火器: 万が一の火災に備え、消火器を準備しておきましょう。

  • 窯の取扱説明書: 必ず窯の取扱説明書をよく読み、指示に従って操作しましょう。
  • 試し焼き: 本焼きの前に、試し焼きを行い、焼成条件を確認しましょう。
  • 記録: 窯焚きの温度や時間、作品の状態などを記録しておくと、今後の焼成に役立ちます。

その他

  • 焼成温度: 焼成温度は、作品の種類や釉薬の種類によって異なります。一般的には、陶器で1200〜1300℃、磁器で1300〜1400℃程度が目安です。
  • 還元焼成: ガス窯の中には、還元焼成ができるものもあります。還元焼成は、窯内の酸素を減らし、作品の色や釉薬の発色を変化させる焼成方法です。

ガス窯の焚き方は、奥が深く、経験が必要です。最初は、先生や先輩に教わりながら、少しずつ経験を積んでいくことをお勧めします。




Q:陶芸窯のダンパーとは何ですか?


陶芸窯のダンパーとは、窯の煙突部分に取り付けられた、排気量を調整するための装置です。

ダンパーの役割

  • 窯内の空気の流れを調整: 焼成時、窯の中の空気の流れを調整することで、温度分布を均一にしたり、還元焼成などの特殊な焼成方法を行ったりすることができます。
  • 温度管理: ダンパーを調整することで、窯の温度上昇速度や最高温度をコントロールすることができます。
  • 燃料効率の向上: ダンパーを適切に調整することで、燃料の消費量を抑えることができます。


ダンパーの種類

ダンパーには、主に以下の2つの種類があります。

  • 手動ダンパー: 煙突の開口部を板状の蓋で塞ぐことで、排気量を調整します。

  • 自動ダンパー: 温度センサーと連動し、自動的に開閉することで、窯内の温度を一定に保ちます。

ダンパーの操作

ダンパーの操作は、焼成する作品の種類や窯の構造によって異なります。一般的には、以下の点に注意して操作します。

  • 焼成初期: 窯内の温度が低い間は、ダンパーを大きく開けて、十分な空気を取り入れます。
  • 焼成中期: 窯の温度が上昇するにつれて、ダンパーを徐々に閉めていきます。
  • 焼成後期: 最高温度に達したら、ダンパーを調整して、温度を一定に保ちます。
  • 冷却時: 冷却時は、ダンパーを閉じて、窯内の温度が急激に下がるのを防ぎます。


注意点

  • ダンパーの操作は、窯の取扱説明書をよく読んでから行ってください。
  • ダンパーの開閉具合によって、焼成結果が大きく左右されることがあります。
  • 焼成中は、常に窯の温度や状態を観察し、必要に応じてダンパーを調整してください。


ダンパーは、陶芸窯の焼成において、非常に重要な役割を果たしています。ダンパーを適切に操作することで、より良い作品を制作することができます。




Q:陶芸窯の煙突に設けられたダンパーとは別にドラフトという穴もあります。この働きはどのようなものでしょうか。



陶芸窯の煙突に設けられたダンパーとは別に、ドラフト(バカ穴)と呼ばれる穴もありますね。このドラフトは、ダンパーとは異なる役割を果たしています。

ドラフト(バカ穴)の役割

  1. 窯内の空気の流れを調整: ドラフトは、煙突の途中に設けられた穴で、開閉することができます。この穴を開けることで、煙突の断面積が小さくなり、煙突の引き(排気力)を弱めることができます。これにより、窯内の空気の流れが変化し、温度分布を調整したり、還元焼成などの特殊な焼成方法を行う際に役立ちます。

  2. ダンパーの微調整: ドラフトは、ダンパーと併用することで、より細かく窯内の空気の流れを調整することができます。ダンパーで大まかな調整を行い、ドラフトで微調整を行うことで、理想的な焼成環境を作り出すことができます。

  3. 窯の温度上昇速度の調整: ドラフトを開けることで、窯内の空気の出入りがスムーズになり、窯の温度上昇速度を調整することができます。


ドラフトの操作

ドラフトの操作は、焼成する作品の種類や窯の構造によって異なりますが、一般的には以下の点に注意して操作します。

  • 焼成初期: 窯内の温度が低い間は、ドラフトを閉じて、窯内の温度上昇を促します。
  • 焼成中期: 窯の温度が上昇するにつれて、ドラフトを徐々に開けていきます。
  • 焼成後期: 最高温度に達したら、ドラフトを調整して、温度を一定に保ちます。
  • 冷却時: 冷却時は、ドラフトを閉じて、窯内の温度が急激に下がるのを防ぎます。


ダンパーとドラフトの違い


ダンパーは、煙突の開口部を板状の蓋で塞ぐことで排気量を調整するのに対し、ドラフトは、煙突の途中に穴を開けることで排気量を調整します。ダンパーは、排気量を大きく調整するのに適しており、ドラフトは、排気量を微調整するのに適しています。


注意点

  • ドラフトの操作は、窯の取扱説明書をよく読んでから行ってください。
  • ドラフトの開閉具合によって、焼成結果が大きく左右されることがあります。
  • 焼成中は、常に窯の温度や状態を観察し、必要に応じてドラフトを調整してください。


ドラフトは、ダンパーと並んで、陶芸窯の焼成において、非常に重要な役割を果たしています。ドラフトを適切に操作することで、より良い作品を制作することができます。





…とのことですが。

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これで焚けるかな?
でも5年後が楽しみ笑。

posted by inoueseiji at 07:33 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月11日

副業陶芸家の可能性を考える

先日ニュースで偶然見た副業寿司職人のネタ。

(それはいいけどヒゲは剃ってほしい)

◯リエモンではないけれど、たまにある”修行はいらない”系の話かと色眼鏡をかけて見ておりましたが。

サポートしているのは30代のガチ職人、仕込みはガチ職人がすべて行う。そして副業寿司職人たちは握りに特化して訓練されているというのに非常に納得したのであります。

マグロを延々と200貫握り続けるなんて逆に普通の寿司職人でも体験する機会は少ないのかもしれません。お店の規模にもよるでしょうけれども。


まぁたしかに回転寿司店の裏側なんてこんな感じというか、もっとシステマチックになっているんでしょうけども。

副業寿司職人ができるかどうかは、ようするに寿司職人の技術的なキモは何か?ということを見極めることにもなる。

そして、それを抽出してシステム化することが出来たから、職人さんと副業寿司職人とお客様と地元のウィン・ウィンになりつつあるということですね。

もちろん副業寿司職人には、ニュース動画にもあるように握り以外の技術や知識はないわけですから、そこをどうするかはそれぞれの副業職人が考えることになるのでしょうかね。

このニュースで見落としてしまいそうなことは他にもあります。

本家の看板の力も多少影響しているでしょうし、そもそも、これだけしっかりとした店舗があるというのも大きい。なによりも地元の魚があってこそ、各寿司店が成り立っているということも忘れてはいけません。このお店はある意味、ここでしか成り立たないのかもしれません。

それでは。

このニュースのお寿司屋さんを「副業陶芸家」に置き換えた場合、という話をしてみたいと思います。

これまでも淡い夢のようなアマチュア陶芸オジサンの相談にのったことが何度かありますが、すべてみなさん勘違いされていました。誤解のないように書いておきますが、わたしは応援して前向きなアドバイスをいつもしていましたからね笑。

過去にもそこら辺を書いた記事がありますので、ご参考までに。
(福田さんのコメントがほぼこのネタになっている)



副業陶芸家になるのに必要なエッセンスは、作る技術でもデザインでもありません。


では何が必要でしょうか?


答えはいくつかあると思います。
でも電動ロクロはその中にはありません。

ここ重要。





自分が副業陶芸家をプロデュースするならば、

  1. 乾燥工程
  2. 施釉
  3. 焼成
以上の3点を集中してやらせると思います。

その先にそれぞれの作陶方法、技法があるということでしょうか。


お客様で小さな電気炉を購入されてプロになった方々は皆さん以上をしっかりと押さえてプロになったと思われます。

プロにはなっていなくても、それこそ副業陶芸家のような方はもっとたくさんいらっしゃいます。

また、副業寿司職人は寿司しか作らない。ところが副業陶芸家は何を作るのか。

実はこういう部分もとても重要で、小さな電気炉しかないという不利な条件でプロになっている方は、明確な作品のカラーがある方ばかりです。ああ、この人ね、とインスタなどで写真ですぐに分かる。


副業寿司職人は副業料理人ではない。これは重要ではないでしょうか。
何かに特化していくのはスタートラインとしてありの考え方だと思いますが、どう思われますか?

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(ロクロが下手なオジサンの言い訳ではない)
posted by inoueseiji at 07:36 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月07日

陶芸家になる最短の方法【2025】ロクロ編3

雪は好きだけど凍結はキライ!なイノウエです。
はいおはようございます。

また久しぶりの筑前工房実験教室。
土練機を出してきてお掃除して開始です。

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それぞれの手の感覚でやってもらいます。
250グラムを基準として練習開始。

写真は同じ人ですが、奥の8個は「重さだけを意識して」の玉取り。
手前側は「その形では次の工程以降で作りにくいことになりますよ」という説明をしてからの形。

指導する側がそういう部分に気が付けるというのも実験的な教室の有り難さです。
マジサンキュー。

重さを揃えるしか説明していなかったら、形は好き好きになってしまう。
でも実際にはその先に親指で器のきっかけとなる穴を開ける工程がありますので、縦長の玉では作れません。
みかん形の玉取りにしないとイケないわけですね。先の工程も考慮して説明することも必要なんだと思いました。

説明するということの難しさはいつも感じます。出来る人やプロを相手にするのもまた難しいものです。
勝手にこっちが相手の理解度を高く見積もってしまい、相手もわからないと言わない、言えない場合など、あとでトラブルことにもなります。

生涯学習センターの講師とYOUTUBEの発信で自分は説明力が上がったのは間違いない。しかしそれでもまだまだ足りないと思い知らされることがよくあります。


(プログラムって難しいのね笑)

ロクロを通じて、陶芸を通じて、いろいろな気付きや成長があるものです。
特に説明をすることやされること、技術の伝達なども難しいものがあります。だからわたしは事細かに説明することにいつも尽力しますが、黙々と住み込みで弟子入りしているような人のことも肯定的ですし、大きな意味があると考えています。

そんなことをいうとこれまでの発信と矛盾すると思われる方もいるかもしれませんが、要するにアナタがどのポジションにいるのかで正解はコロコロ変わるということです。年齢やプロかアマかでも変わります。プロでもどのジャンルやレベルで行うのかでも変わります。

ただ一点、そこで使われる機材の使い方や整備については変わることはない。
それだけはブレずに発信しているつもりです。

ということでよろしくメカドック!
posted by inoueseiji at 07:27 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月05日

陶芸の各工程を考える【陶芸ブログ】

友人の吉田さんに「電気工事士ブログ」と言われました笑。
おはようございますイノウエです。

そうそう、これは陶芸ブログでしたが知ってましたか?

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(レッツ・ロックンロール!)

ということで陶芸ネタを無理矢理にでも書いていこうかと考えたのですが。
各工程のつながりが意外と最初は理解できなかったなぁと自分のことを思い出したので、いったんまとめておきましょう。

電気工事士ブログのコンセントじゃないけれど、自分たちにとって当たり前すぎてネタにしていないことが結構あるんだと思います。

その辺りをこんなブログを読んでいる優秀でセンスあふれるみなさんにも考えていただき、ぜひイノウエを叱咤激励していただければと願います。


というわけで陶芸の各工程。


  • 土の用意と調整
  • 成形と成形時の加飾
  • 成形後の乾燥
  • 素焼き
  • 下絵付
  • 釉薬の調整と施釉
  • 本焼き
  • 窯出し後の仕上げと加飾

寝ぼけ眼で考えてもこれぐらいあるのかな?

でそれぞれにまた工程があり、


  • 土の用意と調整

    原土の採取とかは勝手に勉強して
    粘土とはなにか
    土練りのメカニズム
    実際の方法
    土練機の構造や使用方法・メンテナンス

  • 成形と成形時の加飾

    ここは言わなくてもやるでしょ
    削りの道具やタイミング
    化粧土について

  • 成形後の乾燥

    乾燥のメカニズムの理解
    季節や環境による手順や方法
    作品の水分量をコントロールできるか

  • 素焼き

    素焼きの条件
    窯詰め方法と排気
    窯の種類と形状による排気への意識

  • 下絵付

    酸化金属と下絵具の種類
    筆や用具の選定
    絵具の用意と加飾
    用具の片付け方や洗い水の処理

    ※追記 素焼き後の化粧土掛けもある

  • 釉薬の調整と施釉

    自作はとりあえず後で
    釉液の取り扱い
    濃度調整の方法
    CMCなどの糊分
    施釉方法とその道具

  • 本焼き

    棚板と耐火物
    窯詰め方法
    各種窯炉での焼成方法はまた今度

  • 窯出し後の仕上げと加飾

    ハマスリについて
    上絵付については今日は割愛
    金銀彩・パラジウムなど


  • 窯や成形道具の選び方

    各工程への理解とは別に道具や窯については知る必要がある




なんかパッと書いてもこれぐらいあるなぁ。

こうして書いてみると、各工程をつないで指導できていなかったと反省するばかりである。

自分の経験値でどこが高くてどこが低いのかを把握しておくといいのかもしれません。それで自分の弱点がわかるけれども、なによりも強みがわかります。

下絵や上絵はまったくしない人もいるでしょうし、これを機にやってみてもいいでしょう。
陶芸脳ができた人というのは、ロクロなどで成形している時に、この先の工程を理解しているということです。



ロクロ上の形が
作品のゴールに
ならないように笑。
posted by inoueseiji at 07:28 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月04日

思い込みは誰にでもある【電気炉:電気工事】

何故か根拠のない自信を持てるときというものがあります。
二三年で一二台しか乗ってないのにいっぱしのライダー気取りとかさ笑。

若いときのそれは微笑ましい。

でも。
いい歳してからの違法な電気工事はダメだって笑。

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芯線が見えてます笑。

実技試験では重大欠陥で一発アウト。
要するに不合格になります。
だから誰も見ていなくても、無意識レベルでも、最底辺の電気工事士でも、絶対にこんなことはしない。
つまりこれを行ったのは無資格のシロウトということがわかる。

筑前工房でこういう補修を続けていると、赤信号みんなで渡れば怖くない、という陶芸オジサンたちの集団心理が見えてきてマジで怖い。

以前相談のメールがきた港区かなんかのガス窯の話を思い出す。
この過去記事はぜひ読んでいただきたい。こんなノリになることは誰にでもある。今の自分にもあると思う。

気持ちは痛いほどわかるけれども(2021.11.19)

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陶芸家になるとか、なれそうとか、そういう根拠のない自信は絶対に必要です。
思い込みはパワーでもあるし、前進する勢いでもある。
そんな人はいくらでも応援する。
マジで全力で応援するし、してきた。

だけど電気炉の補修とかガス窯のメンテナンスとかでの、根拠のない作業への自信は危険でしかない。

百歩譲ってアマチュアはいいとしよう。でもせめてプロならそれはやめようよ。
厳しい言い方をすればプロとしての自分の仕事をないがしろにすることに等しいんじゃないかと思う。

めちゃくちゃなメンテナンスや補修で取り返しがつかないようになっている窯は多いんです。

思い込みは誰にでもあって必要なエネルギーのひとつだとわたしは思う。
だけれども他人に迷惑がかかる部分、わかりやすくいえば免許や資格が存在している作業への思い込みは危険でしかない。

そんな無茶をするぐらいなら。




作品でやってクレイ!
posted by inoueseiji at 08:02 | イノウエセイジの頭の中

2025年02月01日

プロコンにもいろいろあります【電気炉:自動制御】

天災も怖いですが人災も怖いですイノウエです。

納入された電気炉の操作説明やお問合せがよくあったここ数日。
そういえばプロコンにもメーカーでいろいろです。

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(これは相当古いヤツ)

↑ これは明らかに昭和じゃないの?

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(アイツは写真の撮り方も下手だぁ)

↑ これは30年ぐらい前のヤツかな。平成ってことか?
最高温度の設定と弱運転とキープ時間だけ設定できるタイプ。
まだまだ使われているところが多いです。プロコンも汎用のものですね。


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↑ 共栄電気炉製作所さんのはコレ。オリジナル。
これも30年近く使われているのかなぁと思いますが。
これ一つで全部出来るタイプですね。

標準で2パターン8ステップは楽勝です。
ようするに素焼き・本焼きの2パターンと、それぞれの温度と時間の設定を8つ入れられるということ。
詳しくステップを解説しておきましょう。

あくまで一例ですが、400℃まで4時間、という入力がステップ1となります。
次に400℃から800℃まで4時間でステップ2。

800℃で1時間キープのステップ3もできます。
もっとも素焼きは800℃8時間のステップだけでも大丈夫です。
結晶釉のお客様も何人かいらっしゃいますが、8ステップもいれることは無いようです。

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(スタート直後はズレ気味です)

それよりも測定温度と設定温度の同時表示が出来るのでとてもわかりやすい。
選択したパターンと温度を点滅しながら交互表示するやつなどを他メーカーは採用しているようですが、同時に表示されている方が絶対に使いやすいと思いますし、強制終了できる運転ボタンがあるのも重要でしょう(個人の感想です)そんな事件がありましたね。

この2つの数字がもし最高温度付近で大きくズレてくればヒーターの寿命が近いと判断できます。
もしくは設定や窯詰めに無理があるかですね。

ここを液晶の日本語表示にしたり、山のようにボタンを作ったりすれば焼成能力に関係のない部分でコストが上がります。お金をかけるべきはヒーターの素材や断熱材の方でしょう。
共栄電気炉製作所さんのものは見た目はシンプルなプロコンですが、自動で延長したりするウェイト機能などがあって流石電気炉メーカーさんオリジナルのものです。

プロコンの部分にグラフ状の表示があるモデルもありますが、それはプロは必要ないんじゃないかとも思います。
それよりも電気炉とはいえ、パターンやキープ時間などをグラフに手書きして検討することをオススメします。ついでに窯詰めしたものなどを記録しておけばさらに良い。

ガス窯のお客様に比べて電気炉のお客様が意外と本焼き回数を把握していないことが多いです。
何回本焼きしましたか?と聞いてもえ〜何回だっけ?という方がよくいらっしゃいます笑。

焼成記録表_電気炉用.pdf

↑↑↑ ホームページにも公開してますが、よければこんなの活用してください。

自動制御は便利ですが、電気炉では炉内の排気はしっかりと意識して、窯を長持ちさせてくださいね。
ボタンを押すだけで、という誤った営業トークは信じないこと笑。
電気炉で重要なのは排気への意識です。

ご安全に〜!

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posted by inoueseiji at 07:41 | イノウエセイジの頭の中

2025年01月30日

陶芸家になる最短の方法【2025】ロクロ編 2

老眼が激しいお年頃、イノウエです。

さて。

マジで老眼が激しいので一昨年ぐらいからオーディブルを愛用しております。
作業や草刈りの時に小説やビジネス書を聞きまくっております。

最近では「失敗の科学」マシュー・サイド著がなかなか面白かったです。

その中で組織だけではなく、技術に関する記載もいろいろとあり、陶芸のこともありました。

アメリカの大学でだったか、うろ覚えですが、陶芸サークルの2つのグループでそれぞれの評価基準を、

  • 作品の質で評価するグループ
  • 使用した粘土の量で評価するグループ

に分けたそうです。


するとどうなったでしょうか。
いったいどちらのグループが良い作品を作ったと思いますか?

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答えは書籍で!と言いたいところですが笑。
検索するとビジネスブログにたくさん引用されていたので書いておきましょう。

ご想像の通り、量のグループの方が平均して良い作品を生み出したそうです。

それに比べて作品の質で評価すると伝えたグループは考える時間が多く、手を動かす時間が量のグループよりも少なかった。

量のグループは徐々に粘土の取り扱いや技術が向上し、様々なチャレンジをしていくことでアイデアも生まれ、結果として良い作品の質も良くなったということです。

これは作陶だけではなく、モノづくりやクリエイティブな仕事に共通の考え方やアプローチです。

このはなしからは少しズレるのかもしれませんが、ロクロの技術を向上させる初期段階でもやはり量、それも同じ形で量をこなすしかありません。

量をこなすしか身につかないもの、気が付かないことがあります。

そして重要なことですが、


粘土の量とは、

時間の量、
でもあります。



つまり期間ということです。

24時間連続よりも、毎日1時間24日の方が上達します。
短期間では上達しないのです。

そして質よりも量の場合、これはもう本から離れたロクロ技術のはなしですが。

ひたすら同じ切立形を作ることです。
同じ粘土の量で同じ手順で。

ある程度挽けるようになったらトンボで寸法も合わせるようにします。
つまり揃物をつくれる技術を身につける努力をすることです。

やきものオジサンラジオ(仮題)でアイデアの出し方みたいなことをやりましたが、それはそのさきの話です。


誤解のないようにお伝えしますが、揃物をつくるプロになる必要はありませんが、一品物作家でもその技術が必要だ、ということです。アクションペインティングとか、妙な崩しとかを最初からやると片◯鶴◯◯郎みたいなことになってしまうということです。

そこをいい加減にやった人と、そこを歯を食いしばってやった人は、5年後10年後にもう取り返しがつかないほどの差がついてしまいます。

やってきたプロの人達は相手の技術が見てわかるんです。
動画はもちろんですが、下手したら写真でもわかります。

怖いでしょ?

見ただけでバレているってこと。
(でも応援してるからな〜)

だからプロになってもトレーニングは必要です。
仕事がトレーニングにもなりますが、その意識が必要だということです。

練習しないでリサイタルをするピアニストがいないのと同じです。陶芸家になること、陶芸家であることは、ピアニストになること、ピアニストであることと全く同じです。

基礎の練習でしっかりと量をこなす。

こなしていないオジサンは正直焦っています笑。
だってどんどん下手くそになっているのを自分で感じ取っているからです。

今年はロクロ動画でもしようかな。

下手をさらしても損しないポジションにいるから笑。

誤解しないでいただきたいのは、目くじら立ててやることはないということです。訓練や練習、トレーニングとはいえ、楽しんでやっていってください。

ガチ勢ではないという方が圧倒的でしょう。でもアマチュアの方でもロクロをやるときには、最初の5分とか、1キロ分とかは、引き上げのトレーニングをしてから好きなものを作る、とかを意識すると良いと思います。

アマチュアの方ならその程度でも全然変わってきます。

プロを目指す方なら、どこかでしっかりとトレーニングの時期を持ったほうが結果として早道だとオジサンは思います。


信じる信じないはアナタ次第ですけど笑。


(失敗を楽しめ!)
posted by inoueseiji at 07:34 | イノウエセイジの頭の中

2025年01月29日

√とかいつ使うんだ?という学生諸君、結構大人になっても使います。【電気炉制御・陶芸窯】

別府の居酒屋で長渕談義した不動産屋さんは商談成立したかな?

てことで。
おはようございますイノウエです。

先日三相の制御盤をチキチキとやってきましたので今日は電気のはなし。
読者置いてきぼりって回デス!

電気炉のサイズは容積ではなく電気容量で表すということは以前にも書いております。

コチラを参照のこと→窯のサイズをどう表現する?


ということで電気炉には8kWぐらいから、単相200Vと三相200Vのモデルがあるわけですが。

その電流値が三相になった途端にわからなくなる陶芸家と独学2電工が多いわけで。

その辺りを書いておきましょう。

単相の電気炉で10kWなら電流は50Aです。
共栄電気炉製作所さんの電気炉ならLR‐10とかですね。

200V ✕ 50A = 10000W = 10kW

ここまではいい?

カタログなどでは10kWの場合、

単相 50A
三相 29A

と記載されます。
これは電気のことですからどのメーカーの電気炉でも同じ。

では三相200Vの10kWがなぜ29Aなのはわかりますか?

わたしはじぇんじぇん分かりませんでした笑。

仕事を通して現物を見て触って工事して。撮影した写真を見ながら夜な夜な勉強して。
どうにかこうにかデルタ結線の√3の意味が分かってきました。

単純に言えば、単相の50Aを√3で割ればいいのです。

50A ÷ 1.73 = 28.9 ≒ 29A

また電気炉側の配線で電流値を取ると29Aではないのですが、これは測定値に√3をかけると29Aの近似値になるはずです。

電気炉のネームプレートやカタログの電流値からもう一度計算してみましょう。

200V ✕ 29A ✕ √3 ≒ 10kW

ということになります。


デルタ結線と三相に√3が出てくるのは次の動画がわかりやすかったです。



三相にはいくつかの結線方式がありますが、まずはコレだけへぇ〜と思えればいいと思います。
こういう動画を電気工事士の試験勉強の時に観れる人は恵まれていますね。

わたしも窯でそんな発信ができるように今後とも頑張っちゃうもんね。


こっちはダライちゃんが好き?だったヤツ。


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(チャック・チャック・ノリス!)


まぁデルタ・フォースのラストシーンのことは置いといて。

大人になっても√は結構使います。
ものづくりする人なら√2はかなり使うし、電気ならこの√3も出てくる。

ちなみに窯造りではフレームの最初の枠を溶接で組むときに対角を測ります。これも√2につながる確認作業ともいえるでしょう。

ヒトヨヒトヨ。

オジサンは、こんなもんいつ使うとやぁ〜というモノを全部使う人生を送っております(泣)。
(オームの法則とかゼーゲル式とかさ)
posted by inoueseiji at 07:39 | イノウエセイジの頭の中

2025年01月28日

電気炉の補修やヒーター線交換に免許は必要ありません【陶芸窯:電気炉】

は〜い、イノウエです。

そんなわけねぇってば笑。

陶芸窯の補修で資格がいらないとか誰が言ったのかね?

(あ〜そういえばアイツが言ってたなぁ。)

それから相手が明らかに200Vの電気炉のヒーター線を「無資格で」交換しようとしているのに、部品を供給している何とか◯ット◯ムとか大丈夫かな?

まぁそれは放っておきましょう。

こちとら忙しいんで。

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先日はこんな時代のヤツを。

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こんなふうに改造してもらって取り付けてきました。

第二種電気工事士のわたしが出来るのは盤の改造ではなく、あくまでその取り外しぐらいです。
それでも現地では電気屋さんとわたしの配線が違っていたのに気が付かず、あれ温度上がんない?とちょっと焦りました。
すぐに解決しましたが、別に工業高校電気科出身でもないですし、芸術学部と訓練校出身のわたしとしては第二種電気工事士を取得しただけでも褒めてほしいレベルでやんす。

工事士取得だって友人に電気関係が3人もいたからどうにかなったのであって、DIYのために電気工事士でも取ってみようかな、というレベルであればこんなことは出来なかったと思います。

小さなレベルで言えば、ネジの締め付け方法とか、マーキングとか、ワッシャーに向きがあるとか、テスターの使い方とか、免許取っても知り得ない業務上の常識は山のようにあります。
(無資格の上にサビたネジも外せないような人は電気炉の補修はやめておこうね)

わたしは友人のバイトで配電盤の改造や組付けなどに付き合ったから「なんとなく」わかるのであって、実際にはこの「なんとなくわかっている」というのは作業者として非常に危険な状態です。

現場では共栄電気炉製作所の方々に電話先でサポートしてもらえるから出来ることがあるのであって、一人で自信満々に出来るのは100Vのコンセントをチキチキ交換するぐらいのことですわい。

正直電気は怖い。毎回怖いです。
その怖さがあるからまだマシなのかもしれませんが、怖いです。
国内で発生する火災の2割程度は電気が原因です。


それから電気炉の制御なんて自社で製造しているのは共栄電気炉製作所さんだけじゃないかな。
他のところは外注されていると思います。ヒーター線もね。

それよりなにより。

まさかとは思うけど電気炉の製造販売していて社内に誰一人電気工事士がいないとか〜はないよねぇ?
だって設置後に自分たちでヒーター線の交換なんかのメンテナンスできないってことになる。
無資格でも出来るって言いたいのかもしれませんが、それで事故が起きたら会社は終わりだ。

ヒーター線の交換には資格が必要ですよ。

試験は年2回になったし、液化石油ガス設備士の半額以下の受験料です。
工具はホームセンターで全部揃う。

電気工事士の情報は動画も含めたくさんあります。
動画や書籍も大変多いので、勉強しやすいですよ。
オススメします。




ご安全に!
posted by inoueseiji at 08:34 | イノウエセイジの頭の中

2025年01月26日

免状が届きましたぜ【液化石油ガス設備士:ガス窯は任せろ】

おはようございますイノウエです。

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合格通知がきてすぐに申請書類を送りましたが、昨日ようやく免状が届きました。
2週間ちょっとかかりました。これで業務を行えるようになりました。

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(顔出ししないユーチューバーは信用しない)

液化石油ガス設備士は定期的な講習の義務があります。
そのため電気工事士よりも免状がデカいし、講習修了時の記載スペースがあります。

こうしてみるとタダの紙切れですが、取得するのは大変でしたね。
まぁでも取得したモン勝ち。
もうガス窯の配管でもバーナーでも圧力計でも何でもござれでござんす。
もうガス屋さんを呼ぶ必要はありません。
オイチャンが一人でやっちゃるばい。


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(ゲージがmmAqの人はいないかな?)



液化石油ガス設備士の免状は定期的な講習の義務がありますが、ガス窯には定期的な点検義務やメンテナンスの義務、いわゆる車検のようなものはありません。

これは業務で使用される機器であり、中圧で供給されているために低圧とは法律がちがいます。家庭用の低圧設備のようにガス供給会社が定期的に点検することもありません。使用する陶芸家さんや窯元さん、製陶工場が管理する必要があります。

⋯そんなこと陶芸の世界でも築炉の世界でも習わねぇってば!

誰も危険なことをするつもりも、いい加減な操作をするつもりもない。
知らないなりに安全に留意して、アンポンタンなメンテや操作をしている人がいただけ。


このあたりのグレーな部分は免許を取得したからには明らかにしていきたいと思います。
毎年ガス窯での事故は起きています。昨年は残念ながら死亡事故もありました。

電気工事士免許取得のときもそうでしたが、勉強や経験はここからはじまると思っております。

どうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。


ご安全に。



posted by inoueseiji at 07:44 | イノウエセイジの頭の中

2025年01月23日

陶芸家になる最短の方法【2025】ロクロ編


(今観るとちょっとキレ気味笑)

ドツボにいくつも嵌まってYOUTUBEに手を出さざるを得なくなった40代。
この動画は過去の自分に向けて、というコンセプトで制作したシリーズです。

陶芸家になる最長の方法で失敗したモノとして、陶芸家になる最短の方法へのヒントを提示したかったということですね。
思えばこのあたりから自分の中のOSが「ONISAN 8.1」から「OJISAN 10」になったように思えます。知らないひとの応援なんて若いときはできたもんではありませんぜ。

実際にこの動画をきっかけに本当に陶芸家になった方も出てきたりして、オジサン的には多少は世のため人のためになったのかなぁと思いますが、いかんせんもう8年近く前のもの。

その8年の間に自分も多少は仕事が安定して経験値も上がったし、様々な現場を知り、プロアマ含めさまざまな人に会ってきました。

市の生涯学習センターの講師も続けてきましたし、その形態も変遷しました。そこでアップグレードした知識もあるし、初めて意識した考え方などもいくつもあったと思います。

というわけで今年は2025年版の「陶芸家になる最短の方法」をちょこちょこやっていきましょう。

ブログはとりあえず発信ネタを書いておくような感じですかね。

窯のはなしばっかりでもなんなので、今回はロクロのことを書いておきましょう。

陶芸家になるかならないか、プロかアマをわけるのはロクロの技術ではありません。とはいえ、下手な人より上手い人の方がいいに決まっています。この場合の上手い下手は福田さんが言うところの「プロ野球選手の中での上手い下手」ということであって、芯が出せないとかそういうレベルではないです。念の為。

陶芸家というプロになりたいならば、

  • 基礎を大事にする
  • 円筒形(切立湯呑)を挽きつづける
  • 寸法と重量をあわせる
これだけです。

なぁ〜んだと思いますか?


わたしが一応いまでもロクロが挽けるのは、訓練校でこの地獄の訓練を受けたからです。

土殺しと芯出しが出来たら次の段階として(ここまでも数週間かかってるが)、

  • 玉取りしてしっぴきで切って測る
  • 玉取りから皿割りしてしっぴきで切る
  • 玉取り皿割りからぐい呑で切る
これを各一週間づつやります。
他のことは出来ません。

自分の身体に300グラムの感覚が出来るまでひたすら行うのです。
この感覚ができれば茶碗だからこうしようとか、徳利だからちょっと多めとか加減ができるのです。

そして次に引き上げです。面白くもなんともない円筒形の切立湯呑を永遠に練習します。その次の段階に進めるかどうかは先生が判断します。引き上げが安定してきたらコテの使い方、ヘラの使い方、そして削りへと進みます。わたしの時代では初夏から秋までこうしてロクロで過ぎていきました。

切立から筒花、小鉢や袋物などやっていきましたかね。訓練修了時に壷までいく人もいれば、切立湯呑のままの人もいます。進度は人それぞれです。安心してください、ここで進度が早くても成功するわけではありませんし、遅くても失敗するわけでもありません。

要するに、大切なのは基礎を大事にしてこれからの基準となる技術を身につけるということです。

わたしのロクロは下手な方だと思いますが、こうしたことを体験し、様々な職人さんや作家さんを見てきたので、画像や動画でも相手の基礎がどのようなものかはわかるようになりました。自分も動画で下手なロクロさらけ出していますが、こういう部分、技術って怖いですよね。

とはいえ。

あれもこれも作りたいですよね。
楽しい作陶の方がいいでしょう?

でも薄茶三年じゃないけれど、本当にレベルを上げたいひとはこんな訓練の時期を持つべきだと思います。ロクロができるようになるというのは、楽器ができるようになるということと変わりません。

一週間でもいいからやってみると変わりますよ。
重量や寸法の数値化と合わせてやってみましょう。

土練機もあるし筑前工房でロクロ教室やろうかな。

本当に上手くなりますよ。

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posted by inoueseiji at 07:51 | イノウエセイジの頭の中

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