2020年07月25日

ブランド品を買いあさる


与太話の動画を撮ってみれば15分間のイヤミな話になってしまったのでボツにしましたイノウエです。

さてさて。

最近ワタシの動画の投稿が滞っていたのは、意外と忙しくしていたからです。

様々な方がYouTubeで発信されるようになり、その相乗効果でしょうか窯のお問い合わせと注文がちょっぴり増えてきました。

様々なスタイルの作家さんや、陶芸教室の講師の方の動画による発信が、以前よりもあきらかに増えていますし、とても良いことだと考えています。

彼らの技法や作陶方法をYouTubeで視聴している人たちの中に「これだけ公開されているなら、ひとつ窯でも買って家でやってみよう!」と思いはじめた人が出てきたのではないか、というのは友人の予測です。

でも確かにその通りかもしれません。

学校や教室と別に、家に自分専用の小型炉があるのは理想的です。

また自営業でもあるプロの方であれば所得扱いになってしまう国や自治体からの個人事業主向けの給付金もあります。所得扱いなら設備投資に回した方がいいですもんね。また、なかなか学校や教室が再開しなかったということも影響しているのかもしれません。



でもやはり。

やきもの業界を思う様々なプロの方の発信が増えたことによる相乗効果が大きいと思います。それぞれの発信がそれぞれの仕事を応援する形になっていくと理想的ですね。

梶田絵具店さんのYouTubeチャンネルもコツコツと動画が増えています。



村上金物店さんもネットショップをいつの間にかオープン。
先日紹介させていただきましたよね。

★陶芸道具むらかみ https://ceramictools.shop/

わたしもお問い合わせには、これを観るといいですよ、と他の方の動画などを紹介することもよくあります。

イイですね、この感じ。
(山が動いたね)


わたしはもう役目を終える時が近づいたのかもしれません(笑)。
(フォースと共にあれ)


というわけで自分へのご褒美にブランド品。

IMG20200725074320.jpg
(ハンズマンはレジ袋くれるのさ)

IMG20200725075708.jpg
(持ち歩けるモデルにしました)


IMG20200725075631.jpg
(現場でおもむろにポケットから出すじぇ)


こういう測定機器はメーカーのヤツを定期的に買い替えるのが正解だと思っています。どんなメーカー品でも誤差はあります。

サンワなどでも1~3%の誤差が電圧の測定でも電流の測定でも生じてしまいます。

IMG20200725091423.jpg



IMG20200725091431.jpg
(これは電圧の誤差はこの程度あるよ、という意味)



仮にアナタが1250℃±1%という精度で計測できる温度計を使用しているとします。
(これは相当優れた測定器です)

しかし実際に測定した温度は「1237.5℃〜1262.5℃の間のどこか」ということしかわからないのです。違う環境の人のいう温度は、もっとズレている可能性もあります。

そしてみなさんご存知の通り、1200℃以上の世界での25℃の温度差はかなり大きいですよね。ゼーゲルコーンの番数1つ分ぐらいの差です。

ですから、アナログからデジタル温度計に買い替えても誤差はあるし、人の言う温度は全く当てにならないと言うのもこのためです。自分の焼成温度を確定するにはゼーゲルコーンやオルトンコーンを正しく使用しましょう。




う〜ん。

文章でもイヤミったらしいなぁ。

歳だ…。







posted by inoueseiji at 10:32 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年07月19日

村上金物店あらためセラミックツール!?


やきもの作りを趣味や仕事にしている方々が必ずお世話になっている村上金物店。

そんなお店知らないよ、という方もそこで作られた道具やそれを劣化コピーしたものを間違いなく目にしているはずです(笑)。

ネットショップをすればいいのでは?とは以前から思っていましたが、取り扱う点数が多く、なかなか難しいだろうとは思っておりました。

ところが、先日お電話してワタナベさんと話していたらネットショップができつつあって、とのこと。そろそろお知らせをコチラにも送ろうかと思っていたとか。

いつの間にかサイトが構築され、徐々にアップされる製品の数も増えてきているようです。

★陶芸道具むらかみ

スクリーンショット (154).png

https://ceramictools.shop/

セラミックツールス!

是非みなさんも商品をチェックしてガンガン電話してください!
もちろんまだまだ掲載しきれていない商品がありますから、これからは随時アップロードされていくようですよ。
実店舗も楽しいですから、瀬戸観光の際にはお立ち寄りください!


★実店舗の紹介動画はコチラ!
↓↓↓↓↓↓↓↓


posted by inoueseiji at 05:31 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年07月14日

遅くなりましたが、有田に行ってきました その1


え〜いろいろとあって発信が滞っております。
予告していました有田行きのご報告その1。

先月末に仕事も絡めて行ってきましたよ。

IMG_5508.JPG


週末は佐賀銀行の駐車場が開放されていますよ。

IMG_5510.JPG


陶山神社のホームページがありました。

IMG_5515.JPG


遮断機が無いんですよ。

IMG_5548.JPG


偶然電車が通って嫁大興奮!

IMG_5528.JPG


けっこう勾配がキツイです。

IMG_5530.JPG


磁製の鳥居。明神形ですね。
鳥居ってホントに鳥がとまるためのものらしいですね。

IMG_5532.JPG


呉須の濃さが上品ですね。

IMG_5531.JPG


昔台風で半壊して補修したのだとか。

IMG_5533.JPG


磁器の狛犬。乾燥が大変だったでしょうね。

IMG_5536.JPG


有田界隈を見下ろすところにあります。

IMG_5538.JPG

社務所にて磁製のお守りとかあるみたいですよ。



というわけで、その2に続きます。

posted by inoueseiji at 09:42 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年07月08日

乳棒はどっち回転なのか?


梶田絵具店さんの動画が続々とアップされております。

もう誰にも止められない(笑)。




それを観るための補足動画を作ってみました。
モルって概念はワタシが本当にわからなくて、苦労したところ。

はっきり言っていまも完全に理解しているとは言えないと思います。

それでも。

あれだけのお店を切り盛りして、さらに数千のテストピースを作っている梶田さん。

乳鉢が擦り切れて穴が開いたという伝説をもつ男です(ウソ)

動画がまだまだ難しいと思っている方のために、多少は助けになるかもしれない動画を受講生の方と撮ってみました。


梶田絵具店のホームページのデータを活用しない手はない。



◆梶田絵具店のホームページ


◆店長の部屋(釉薬)



みなさん釉調合しましょう!



続きを読む
posted by inoueseiji at 09:08 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月28日

撥水剤を塗るだけでもこれだけの知識と技術が必要なのね




木山くんは水で筆を洗っているということで、オジサンはちょっとびっくりしております。

でも許す(笑)。


さて、撥水剤をきれいに塗るには手ロクロで芯が出せないといけませんね。




この二人のやり方は根本的に違いますが、その違いがわかりますか?
(回転方向とかじゃないよ)
まぁロクロは回転運動をしているので芯が出れば問題ないですよ。


そこまで出来たらいよいよ撥水剤です。






今年になって初めて水性の撥水剤を使用しました。

新昭和コートさんの水性撥水剤。
CP-A2

これとてもいいですよ。
ニオイもほとんどないですし、水性ですから後始末も楽です。

IMG20200628081406.jpg

青いCP-Eはアセトンやトルエンが主成分なので、ご存知のようにニオイがきついですが、これならば一般住宅で作陶されている方や子供の教室でも大丈夫でしょう。

お勧めします。

購入はコチラでどうぞ。



ネットのなんとかドットコムもいいけれど、こうしたプロの専門店とコツコツと取引を積み重ねていくことは必ず将来アナタを助けてくれると思います。




★梶田絵具店のYouTubeチャンネルもよろしく!

posted by inoueseiji at 08:26 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月25日

100円ショップで使えるものはあるのか?


先ほどお客様に電話対応していて出てきた話題ですが。

みなさん100円ショップで購入したものをどれぐらい仕事や作陶で使用していますか?

わたしは昔の瀬戸時代に100円ショップの製品を焼いている土岐の製陶所で仕事をしたことがありますが、それも廃業前の最後のひと仕事というお話でした。

跡取りもいないし、単価がめちゃくちゃ安いけれど数がめちゃくちゃ多いから、工場の取り壊し費用を稼ぐに!と言われていたのをとても覚えています。

100円ショップの器、当時すでに中国で製造がすすんでいましたし、スリランカやベトナムとかの製品も入ってきたようです。

100円ショップのことは以前、動画ネタにしようかと思ったことがあり、ダイソーに赴いて調べたりもしました。ダイソーさんは写真とか撮り放題で、積極的にお客様からの発信を後押ししているようでしたので、わたしもその時に写真を数枚撮りました。

IMG_20191125_150850.jpg

その気になって器コーナーを見てみると、一昔前では考えられないぐらいクオリティが上がっています。

中には100円以上の単価ですが国産食器も結構ありました。

IMG_20191125_150915.jpg

IMG_20191125_150905.jpg

IMG_20191125_150857.jpg


器はもうこれでいいじゃん!



と思っている人を、どうやってお客様にすればいいのでしょうか。

そんな人にぐい吞みに1万円とか、マグカップで3000円の代金を払ってもらうには?

作家さんならば、だれでも一度はそんなことを考えたことがあるのはないでしょうか。わたしはあります。

結論から申し上げますと、これでいいじゃん!と思っている人がお客様になることはほぼないと思います。


気にしてはいけません。



同じように我々だってメシャムのパイプに5万円とか、グレッチに30万とか、ハンドバッグに20万とか、望遠レンズに140万とか、カーボンロードバイクに90万とか出しませんよね。



それと同じことですよ。

もっとも、これはわたしの感覚ですけども。


自分にとってソレの価値をそこまで認めていないから、わたしたちは100円ショップで済ませるわけですよね?

もし価値があると思っている仕事に100円ショップの筆とか使っている(←昔のNさんだ)のならば、即刻専用品を手に入れてみましょう。

実は専用品の方が長持ちするし、当然質がいいわけですから、結局は安くつくのです。なによりも良い道具で仕事するのは気持ちいいものです。

まぁ、買ってきてそのまま使えるものであれば100円ショップもアリでしょうが、ダイソーの300円スピーカーを数千円分の道具と時間を浪費して改造するとか(笑)は辞めましょう。エントロピー増大です。






わたしの仕事場ではプラスティックのボールが100円ショップのものですが、これもまったく同じものをホームセンターで84円だったのを発見してしまい、立ち直れないぐらいのショックを受けてしまった辛い過去があります。

IMG20200625111651.jpg
(このゴムヘラも以外と使えます)

ある俳優さんは、なるべくコンスタントに時代劇映画を撮るように尽力していると知人に伺ったことがあります。それは時代劇映画が無くなればそれに関わる職人や職業も無くなってしまうから。

やきものの世界も、かなりそれに近いと思います。

わたしのお気に入りの拭き刷毛はもう無くなり手に入りません。
たった300円の筆でしたが買う人がすくなくなれば無くなります。

我々が知らないだけで、実は無くなっている絵具や道具がいくつもあるのです。



少なくともわたしは自分の愛車を100円ショップの工具で弄ろうとは思えません。





過去記事「100円ショップの器よりも」


posted by inoueseiji at 11:28 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月20日

エントツは大事?


エントツ、エントツと動画でもたくさん言っていますが、要素としてのエントツも重要ならば、設備工事としてのエントツの取り付けもまた重要です。


とはいえ。

技術的なことや作業など、どこまでオープンにするかを最近は考えてしまうようになりました。


ニクロム線で電気炉(800℃程度)を自作する企画も考えていましたが、知識の無い方が事故をおこす恐れのほうが怖いと思うようになり、ボツにしました。

いろいろな事例を知ることがあり、窯と電気を甘く考えている方が多いことにも気がついたからです。

それについてはまたいつか発信することがあるでしょう。



エントツについては、各地で隙間の空いた雨仕舞工事を見るにつけ、これぐらいは出すべきだろうと思うようになった次第です。

屋根の張替えついでにエントツも動画撮影して、どこかの誰かの参考になれば幸いです。
ふくおか陶芸窯では、こちらでエントツの雨仕舞を行いますが、板金屋さんに頼まれたほうが確実だということは必ず伝えます。また雨漏りする可能性が5%ほどあることも伝えるようにしています。


ただ、道具を揃えたりしていけば、近くの方なら頼んでもらったほうが安いかもしれません。




たとえば、遠方に窯の設置に赴く場合、窯本体を設置した後に位置を決めて屋根に穴を開けてエントツを立てることになります。

全員が仕事の流れを把握してとりかかってなるべく短時間に終わらせるようにしなければならないのですが、雨漏りしてもいけません。

今回は経験値アップのために息子に教えながら3時間近くもかかってしまいました。



屋根の張替えとエントツの補修、その後の設置を終えて梅雨本番となりましたが、一滴も漏れることなく快適です。





posted by inoueseiji at 10:36 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月16日

梶田絵具店YouTubeデビュー。


これまで数年YouTubeの発信を続けてよかったと思ったことはたくさんあります。

様々なプロの方々と知り合えたこと。
これは本当にありがたいことでした。

たくさんのお客様にも出会えたこと。
これにも心から感謝です。

また発信する人が増えたようにも感じています。
やきものの世界からドンドン発信があるのがいい。

いろんな考え方、レベルがあっていいじゃないですか。
(事故に繋がるような間違いはイカンけど)



そして。



とうとうこの人も動きました。




梶田絵具店、店長の梶田さんとトキちゃん(笑)。


梶田さんのお店で働けた半年間。

わたしの人生であんなに濃い期間は無かったように思います。
それが大袈裟であれば、窯屋の6年間と同じぐらいのインパクトがわたしの人生にはありました。


この世界にはこんな人がいるのか。
こんな仕事の在り方、店の在り方があるのか。
ディープな瀬戸やきものの世界を配達した毎日で。

そんなことを思い知らされたものです。


わたしが梶田さんに勝てることなんて顔の作りぐらいしかありません。


昨年は福岡にも来ていただきました。

P_20190210_185725.jpg


実は梶田さんは動画発信をしようとここ数年計画されていたようです。
それがようやく実を結び、チャンネルがスタートしたことは本当に素晴らしいことです。







梶田さんについてはまた話をすることがあると思います。
本当に凄い方です。



是非チャンネル登録してくださいね。




★梶田絵具店


〒489-0805
瀬戸市陶原町2-22
tel 0561-82-2765
fax 0561-82-1278



posted by inoueseiji at 19:33 | イノウエセイジの頭の中

2020年06月13日

腰痛部じゃなくてYouTube


先日とある方がロクロで背中が変な感じというお話をききましたので過去動画。



これまでさまざまなロクロ名人を見てきましたが、うまい人ほど背中が気をつけ気味に立っています。
ロクロを真上から見るような感じでしょうか。

仕事でロクロをする、それも作家ではなく、ロクロ師として回している方々は本当に凄かったです。

今ではそういう職人さんもほとんどいなくなりましたが、技術は連綿と続いていくのでしょう。

同じものを何千何万と作ることでしか見えない世界、気づけない世界、身につかない感覚があるとわたしは思います。

まぁそれができないからワタシはこんな仕事をしているんだろうと思います(笑)。






posted by inoueseiji at 09:18 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月11日

おっさんずラブ?


付き合いが長いのは吉田さんだけれども。





けっこうイノウエをほったらかして県外の作家さんに浮気することがあり。
そうした作家さんがいかに素敵なのかをイノウエに熱く語るものだから。




イノウエも若い後輩を篭絡しようと画策したり。

00002_Moment (2).jpg




文通相手のために動画作ったり。

IMG_6727.JPG



仕事にかこつけてイノウエが先に本人に会ってきたりして。

IMG20200607115827.jpg





互いの悋気と傍焼きで疲労困憊したけれど。

なんだかんだで今日も仲良し。


SnapShot(17).jpg



※ このブログはフィクションです。登場する中年・オジサン・個人事業主の愛憎劇とは関係ありません。


posted by inoueseiji at 17:12 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月07日

焼成指導


先日は県外にて焼成指導を行ってきました。

少し古めですが、キレイな台車付きのガス窯です。
0.7㎥とまぁまぁなサイズ。

IMG20200606214639.jpg

購入後ほとんど指導がない中、持ち主の方は苦労してこられたとのこと。

動画発信からふくおか陶芸窯を知っていただき、焼成指導の依頼をしてくださいました。

しかし例のアレのせいで県外への出張は伸び伸びに。

やっと今回実現したということです。

IMG20200606215153.jpg

焼成指導とは、点火から火を落とすまでの間の操作や考え方などを指導することです。

当然安くはない料金と経費をいただきますので、こちらも全力です。
https://www.fukuokatougeigama.jp/guide.php (HP参照のこと)

そもそも初めての窯を持ち主よりもピシャリと焚くというわけですから、イノウエのプレッシャーはまぁまぁ高めです。

IMG20200606160315.jpg

窯の操作一つ一つについて、なぜ今これを行う必要があるのかを説明しつつ、次回へのヒントをお互いに考察したり。関係ないお話や食事をご一緒したりして、半日以上過ごすわけです。

また、事前の準備や伺う前の電話等での窯について、作陶についての聞き取りなど、当日前の期間の方が気をもむことが多かったりします。


写真の通り、今回も無事に焼成は終了し、持ち主さんには感謝していただきました。
そしてわたしもまた経験値をアップさせて、現場をあとにしたのであります。


Sさん、本当にありがとうございました。


posted by inoueseiji at 07:57 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年06月05日

七輪陶芸≒100V電気炉


浜勝ごちそうさまでしたイノウエです。

さてさて、なんだか七輪陶芸の発信が増えているようです。
とてもいいことだと思います。

510YS5M7W7L._SX329_BO1,204,203,200_.jpg

では、

なぜ故吉田明氏が七輪陶芸の本を出したのか

を、ご存知の方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか?

残念ながらわたしはお会いすることができませんでしたが、氏の本や、実際にお会いしたことがある先輩などの話を総合し、さらに想像も交えて書いておきます。そのつもりでお読みください。


わたしは年齢的に雑誌の陶磁郎どストライク世代。

瀬戸に行くことが決まったので本屋さんでやきものの本でも買うかと立ち寄った時に丁度陶磁郎が創刊されたており、その第4号「瀬戸」を購入したのをはっきりと覚えています。来年オレは瀬戸にいるんだなぁと思ったように記憶しております。

その陶磁郎の編集長とのつながりにより、故吉田明氏は頻繁に「陶磁郎」や、その後の「つくる陶磁郎」に登場することになっていく。
もちろんコネだけではない。独自の実体験と実践をもとにした考察と実験がメディア向きだったということもある。

知らない人も多いだろうが、実はコッソリ「笑っていいとも!」にも出演したことがある。瀬〇瑛子のロクロ体験を実現してあげる的なコーナーで、実にきめ細かなサポートで笑顔で無言で瀬川〇子にロクロ体験をさせていたのは見事だった。生放送の数分のコーナーである。

さて、七輪陶芸の話だが、技法書や謎のビデオとか雑誌などでやまのように発信した吉田氏には、

「で、どうやって焼くのよ?」

「ウチには窯ないんだけど?」

みたいな声が届いていたようだ。

極論言えば、こうした声は今でもどの先公もとい先生や陶芸講師にも聞こえているはずである。

みんな焼成代金を取らないといけないので、ふんわりと沈黙しているのであろう。
それもよく理解できる。大人の情事もとい事情というやつであろう。

しかし、心ある人間には無視できない根本的な問題だ。
やきものは焼かないとやきものにはならない。だから、


やきものとは窯である。


焼いてこその「やきもの」なのだ。




きっと吉田氏は考えたに違いない。
何日も何日も様々なことを考えたのだろう。

自分の生い立ち、やきもの人生のスタート、火と戯れた日々、火を見くびったこと、火に怯えつつ感謝した日々を。

ある日、思わず膝を打って叫んだのかもしれない。

「七輪がある!」

日本の生活においては忘れられつつあるが、完全に忘れられたわけでもない。
あれならやきものは出来る。誰にでも出来る!


企画といっても口述で喋りまくっただけだったのかもしれないが、それは陶磁郎系列の本になる。
そしてその本はたくさんの人に衝撃を与え、瀬戸で妻子を抱えて悶々としていたイノウエに火を点けるのである。


窯が無いって?だったらさぁ

七輪で”やきもの”は出来るぜ。


それが吉田氏の言いたかったことだ。

やきものの最大のネックは窯だ。当時は特に、陶芸窯はアマチュア向けであっても大き過ぎて高価すぎるものだったのだ。

それを一番かんたんに解消するには、と考えに考えた末に出た答えが「七輪陶芸」だったのだろう。


それを実践して数年経ったときにイノウエはこう考えた。



七輪が使えない環境の人もいる。
でも100Vの電気炉なら置けるはずだ。




やきものの「焼き」を肌で感じるしかない。
教室何年の陶芸歴などなんの意味もない。

自分一人だけで、何回「焼いた」のかが「陶芸歴」だ。


電動ロクロは新品を買って窯は中古を探し回る人間には理解不能だろうが、「やきもの」から目を背けなかった人間の連鎖は、それ以外にもおびただしいほどある。



たとえば故芳村俊一氏。

情報がない中果敢に挑戦してきた国内外の作家たち。

吉田氏を鍛えてきた各産地と職人の蓄積。

専門書の著者として名を連ねる先生方。

産地を支えてきた様々な専門職や店舗の方々。


そして、それぞれの人には必ずきっかけと導きがあったはずだ。



アナタはなんでそんな仕事をしているのよ?




七輪陶芸を馬鹿にするのは勝手だ。
別に無理してやる必要もない。

ただ出来ないとか、やったことが無いなら語るなってことかな。
こっそり素焼きを別の窯とかも論外だと”あえて”ここではしておこう。



わたし個人は、七輪陶芸で素焼きが出来ない人には「そういう人」というレッテルを心の中で貼っている。かもしれない、じゃないかもしれない?という恐れあり、という話だったような、なかったような。


posted by inoueseiji at 18:20 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月31日

窯小屋の雨漏り


これまで仕事でさまざまな場所で窯のエントツを立ててきました。
新規の設置であれば、本体を設置して屋根に穴を設けてエントツを立てますし、エントツだけやり直したりする仕事もありました。

穴を開けてエントツを出せば当然雨漏りがしないようにしなければなりません。これを雨仕舞いと呼んでいました。ブリキなどを加工して、その屋根に合わせてエントツの穴をふさぐ作業ですね。

大きな製陶所の仕事では窯も3㎥など大きくなり、エントツ自体も太く長くなりますから、自分たちで雨仕舞いを行わずに板金屋さんにお願いすることもよくありました。

特に心配なのは遠方に搬入設置工事に赴いての雨仕舞いです。雨漏りがしたと連絡がこないように、より慎重になったものです。

これまでのたくさんのエントツ仕事の中で、派手に雨漏りさせたのは2回しかありません。細かい事例はいくつかありましたが、98パーセント程度の成功率は保ってきたはずです。

では、その2件はというと、作品上の師匠であったKさんの仕事場のエントツ補修工事と、恥ずかしながら今の自分の窯小屋でした(笑)。

福岡県の実家に戻って15年になりますが、この窯小屋は単管パイプで自分で組み上げたものです。当時のわたしはまだ30代なかばで陶芸の事以外はあまりよく知らないのに、なんだかある程度なんでも知っていると思っているお年頃でした。

また資金も乏しく十分な資材で作ったわけでもありませんでした。この窯小屋はその後少しづつ棚を作ったり補強したりして成長してきたのです。

とはいえ、長年の窯屋修行で行ってきたエントツ工事を自分の窯小屋でやってみれば、何年経ってもポタポタと雨が滲み出るありさま。何度も補修したりさまざまなことをやりましたが、もう最後は諦めていました。

そして屋根自体の傷みもある程度進んだため、今回は大規模張替え工事を息子とすることにしました。

ガルバルーフという素材にアップグレードして、垂木やフレームも改修しました。屋根材を何にするかなどを調べていくうちに、なぜウチの雨漏りが起きたのかがわかりました。

そもそも屋根には適正な勾配が必要で、さらにいえば使われる屋根材によってもその角度は変わってきます。また、そもそもお金が全然ない時の素人工事であって、屋根のレベルがしっかりと出ておらず、緩やかにエントツにすべての水が集まるような状態になってもいました。まったくお恥ずかしい話です。

あれから15年、友人のプロとともに子ども部屋や、リビング、廊下などのフローリングの張替えなどで腕を磨き、電気工事士の免許を取ってからは電気配線工事やLANケーブル工事などを施して、実家の母屋もイノウエも、中身が大幅に改善されてきました。

50歳になった今の自分の眼で見て原因を追求し、屋根のレベルを補正して、小屋自体のフレームもこれまでより強固に補強し、使うべきところにしっかりと予算をかけることとしました。仕事の合間に息子と数日間かけて無事に終了です。

すでに九州南部は梅雨入り宣言が出ましたが、今年の梅雨は安心して窯小屋で作業が出来ることでしょう。

わたしはDIYが好きですが、それには自己責任というものが伴います。そしてDIYを行うにも、電気工事士免許まで取って行うのか、そこはグレーゾーンと考えて勝手に行うのか、その違いは恐ろしいほどにあると今回も思い知りました。








posted by inoueseiji at 08:08 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月30日

ネット講座閉講


実は今月末でナレッジサーブさんにて開講していました「目指せ陶芸家! ネットやきもの講座」を閉講します。

ネットで陶芸を教えることは不可能だと考えていたわたしに声を掛けていただき、動画データを用いてという方法で11年前にスタートした、おそらくは本邦初のネット陶芸講座でした。お月謝いただいていましたから。

しかし、ここ数年はYouTubeでの発信が主となり、データの更新も行っておりませんでした。
ときどきは受講される方もいて、ゼロということはなかったですが、やはりYouTubeとのバランスはとれていませんでしたし、逆にYouTubeからこの講座を見つけてご覧になった方も多かったようです。

わたしとしてはもうネット講座でやることはやった、という気持ちでした。

今は誰でもいくらでも発信できます。
しかも視聴するのは無料。

それは素晴らしいことです。
こんな世の中になって良かったなと思っています。


ただし、無料の情報は正しいものばかりではありません。
それを忘れてイタイ思いをされませんように。

お金を払うこともとても大切だと思います。
教える立場の人でも、プロの作家でも、誰かに有料でアドバイスを受ける意義はあると、自分の経験から強く思います。


そんなことをいろいろと考えさせられたネット講座でした。


感謝もされましたが、制作例をもっと出せ、ともよく言われました。
今でもわたしのYouTube動画の人気はロクロ絡みですが、窯がないのに、作り方ばかりを覚えてもなぁという思いが、今のYouTubeでの窯に関する発信に繋がっているように思います。


P_20190604_131756.jpg


カメラを買わなきゃ写真は撮れません。
そんなことを言っていたら、スマホでいい写真が撮れるようになりました。

同じようなことが窯でもおこっているんじゃないでしょうか。

わたしが若い時に、こんな100Vの電気炉は無かった。
年に数回のチャンスを待つしかなかったし、思い通りに焚けなかったりもした。

いまではこの電気炉でマンションの13階とかで窯焚きをしている人がいる。
アパートで作陶しプロとして活動している人がいる。

これってホントにスゴイことです。




この先10年はどうなるかな?



posted by inoueseiji at 08:39 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月27日

七輪でもレンガ組の簡易窯でも同じこと

七輪陶芸を何度も行うようになってわたしが思ったのは、素焼きがいかに大変か、ということでした。
かいつまんでいえば、土がやきものになるところ、です。

素焼きなんて800℃で焼くだけだ、とかんたんに思いがちです。
というかわたしもそう思っていた時期がそうとうあります。

土器や野焼きの難しさを体験することは、かならず陶芸の仕事全般によい影響をあたえると思います。

それから火を扱うこと。

土の選定や割れないための工夫。

これらは紀元前の人も行っていました。
われわれはどうでしょうか。

鍋土が野焼き向きとか誤解していないでしょうか(笑)。
耐熱土とか鍋土は「焼けたら耐熱」であって生の状態で急熱急冷に耐えるわけではありません。


縄文人に勝てそうにないイノウエです。

緊急事態も解除ですから、九州国立博物館などで甕棺墓などを見てどうやって焼いたかに頭を悩ませるのもいいと思います。


この子達よりも上手にできるかな?

posted by inoueseiji at 07:55 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月26日

今さらなんて言わないで


陶芸家度(なんじゃソレ!)を測る簡単な方法は七輪陶芸で素焼きができるかどうかですかねぇ。

はじめから出来た人なんていませんから。
失敗したら則BBQでいいじゃないですか。



これは個展に来てくれたはるか後輩の子のために作ったものです。
全編ノーカット。

今観ると死ぬほどハズカシイ!



素焼きも七輪で出来なきゃねぇ?


posted by inoueseiji at 17:52 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月19日

数値で管理できるかな?


どうも〜”とある方”です。

知人が釉薬の濃度調整をかなり誤解しているというか、まったく理解していないようなので紹介しておきます。




薄くて失敗は濃くて流れるよりもダサい!
とはある織部作家さんの発言。

とはいえ棚板にくっつけるのは避けたいからうすうすで行くのかな?
それから釉薬のバケツなどは手を入れて底を確認することをするのが面倒くさいけど重要です。

オッサンは頭が薄くなってきて不安を感じている毎日です(笑)。


posted by inoueseiji at 15:34 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月15日

プロの仕事



この方、木山拓さんは大学の後輩にあたりますが、別にわたしがどうこうした人ではありません。
でもなんだか後輩がスゴイって嬉しいですよね(笑)。

緊急事態宣言が解除とはいえ、まだまだ厳しい状況が続く中、発信することを選択した木山拓さんに感謝です。
彼のことを特段よく知っているわけではないですが(今度呑みに誘うけど)、やきもの屋らしさがある良い作家さんです。
なんだか三ツ星のお店などにも卸しているらしいですよ。


そしてなにより、イノウエを前々から応援してくれているのは吉田崇昭さんです。
彼の動画も作らせていただきました。

これも良い。
(自分のヤツより人のためにやったヤツの方がイイってどういうわけだ?)




ちょっと遅めの春が来るのか、福岡県。

って感じでしょうか?
posted by inoueseiji at 18:28 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月13日

壺を挽く

今日は動画発信はお休みです。
献血に行ったりしておりました。

ということで、大学の後輩にあたる木山拓さんのチャンネルを勝手に紹介です。

この動画は壺を3キロの粘土で挽く全行程をノーカット解説入りでアップしています。
これ、なかなか難しいヤツです(笑)。
木山さんの器は一つだけ持っていますが、とても丁寧な仕事です。
それがロクロにも表れている。

壺が作りたいという方、この動画の工程を粘土2キロぐらいからスタートすると絶対に技術の向上があると思います。


posted by inoueseiji at 19:47 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年05月12日

初級クイズ


陶磁器製造における素焼きの焼成温度(陶器・磁器)とその根拠を答えよ。【配点 20点】

posted by inoueseiji at 18:20 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中