2022年01月20日

今年はカンタンに


電子部品の世界的な供給不安定のために、自動車だけでなく電気炉の製造も滞っております。
ふくおか陶芸窯においても次の納期は下手すると3月初旬にまでズレ込む恐れがあります。

収入源は複数確保しておりますので、とりあえず他のことをしましょう。

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(めんどくさいから肩書は「陶芸家」でと係長に言われた)


これまでお客様をはじめ視聴者の方には焼成と窯に意識を向けてほしいと考えて発信を続けてきました。
もうそろそろ自分のためだけに発信してもいいかもね、と思っております。

カンタンに制作できるロクロ動画を軸に、その作品を小型電気炉でこんなふうに焼成できますよ、と見せれば、また電気炉や窯へのお問い合わせや発注が増えるでしょう。これまでそれをしなかったのはあまりにもビジネスライクな動画になりそうだと考えていたからです。気づいていなかったわけではありませんヨ。

コロナにも困ったものですが、逆にそれによって独立のきっかけを得た人も、電気炉購入に踏み切った人もたくさんでてきたのも事実です。また器への興味もステイホーム下に深まったのもあるでしょうし、それをネットで購入することへのハードルも下がったのも間違いありません。

だったらさらに六歩か七歩進んで自分のため、家族のため、誰かのための器を自宅で焼成するというライフスタイルを提唱してみようと思います。実際にそのように作陶されているお客様もいてインスタグラムなどで確認させていただいています。

たとえばこんなお客様です。


コロナで陶芸教室が閉鎖したのを機に、都心のマンションで100Vの電気炉を設置して日々焼成を楽しんでいる。先日はじめて職場の友人からぐい呑みを受注したばかり。いくつものデザインを考え、釉薬には先日郊外でトレッキングを楽しんだ際に採取した一つまみの赤土を調合する。試行錯誤の末、なかなか渋いぐい呑みが完成した。職場の昼休みにコッソリと納入すると友人にも大好評。オンライン飲み会で使用するそうだ。

仕事と陶芸それぞれの満足感を胸に帰路につきながら、まさかスーツ姿のわたしが家に窯を持っているとは誰も思うまい、と一人ほくそ笑む。
(90年代ブルータス風)




そんな人を増やしていきたいと思いますね(笑)。



これについてはホームページにも過去のブログ記事をリンクしております。



2020年10月14日

「一家に一台、陶芸窯」というキャチコピー












posted by inoueseiji at 08:41 | イノウエセイジの頭の中

2022年01月19日

都合の良いオトコ

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むかし福岡へ引っ越すまでの一ヶ月ほどのことですが、瀬戸の外構屋さんでバイトをしていたことがあります。その時に入っていたマンションの新築現場で、自分よりも若いぐらいの、段取りが下手な、どうしようもない若い現場監督がおりました。

いつも社長や職人さんたちも彼をバカ呼ばわりしておりましたが、とうとうある決定的な失敗がおきてしまいました。当時今よりも血気盛んなイノウエは「ちょっとこれはガツンと言ってやりましょう!」と周囲に訴えました(オマエは短期のバイトだろ)。しかし社長の一声でみんなでその失敗を残業してでもカバーすることになり、結果として工事は無事に納期通りにおさまりました。

そして、わたしよりもちょっと歳上の社長がポツリと語った言葉が今も忘れられません。


「こういう仕事をしていると、またどこかの現場で必ず一緒になる。
仕事で喧嘩するときは本気でするが、失敗した相手は追い込むなよ。
ちゃんと助けてやるんだ。いつか助けてもらうときがくるから。」

一字一句同じではないですが、このようなニュアンスの言葉でした。

大切なのは仕事の喧嘩は本気でする、ということです。失敗を見逃すということではない。
喧嘩になるとしても怒られるとしても悲しませるとしても、ちゃんとディスカッションして現場と納期は死守するということでしょう。



とはいえ。
相変わらずイノウエは安く見られるようで困ったものです。
優しすぎてフラレてしまう都合の良いオトコです。


ビジネスとして陶芸に関わっているみなさんならば費用や経費に厳しくなるのは当然です。
そうした厳しい判断のもと、わたしから買ってくれるのかなぁ〜と思っていたら見積も出せずに他所の窯を購入されていた、なんてのはよくあります(修理だけたのまれても知らんヨ)

まぁそれに乗用車だったら、いつもホンダ車を買っていたのに、まさかジムニーが再び販売されるなんて、ということもあるでしょう。

黙って乗り換えてもいいでしょう。
不義理をしても車屋さんなんていくらでもありますからね。


陶芸窯の世界もそうだったらいいですね。


個人的に独立の応援などでその人のために無償で動くことはよくありますが、それで決まらなくても仕方ありません。

というか決まらない方が多い。

無駄足であっても、その出会いでいろいろな学びがわたしにもありますし経験値にもなります。200Vの電気炉に24Vの部品突っ込むような奇特な方や、安いプライドに一万円も払えないボンビーな准教授にも出会えます。

ときにフェイスブックやブログに感謝の言葉とともに載せていただく人がいたりすると、恥ずかしいやら嬉しいやらです。





数年前でしょうか、何度が補修の仕事をもらっていた陶芸教室の講師が自分個人のガス窯を購入したいとのことで対応したことがあります。当時心当たりもあり、その窯を案内しに行ったりしましたね。その後それっきり。

後で知りましたが結局その人は別のところから中古のガス窯を購入されていたようでした。安かったからなのかタイミングだったのかはわかりません。

だったらメール一通送ってくれればそれでいいのですが、ご丁寧にわたしのコメントと写真だけ削除して、新しい業者さんの工事の様子をアップしてあり、それ以降お仕事をいただくこともなくなりました。

そんなことをされれば普通カナシイよね。

プロになりたいのならば、営業活動とはいえ無償で半日潰した相手に、すいません、予算の関係でコチラの窯に決めることになりました、とか、その節はお世話になりましたがあの窯は大きすぎたので申し訳ない、とか、断りの連絡はしたほうがいいと思います。またいつかそちらに話をもっていくことも有り得るわけですから。

それでホントに数年するとその設置業者が廃業。
本人の窯も教室の窯も、対応する業者が突然いなくなったわけです。

先日、仕方なくなんでしょうが、かつてわたしへの不義理はなかったかのように連絡をしてきました。ネットというのは恐ろしいものですべての証拠が残っています。先ほどの窯や業者の件も、この連絡の後に調べてみて初めて知りました。そしてもちろん心情的にこの方の対応することはできないとお伝えしました。

そもそも設置業者が廃業したとしても、「世界に誇る」京都の製造メーカーは存在していますので代理店と修理業者を紹介してもらえばいいだけでしょう。高くつくでしょうが。





そもそも設置業者である福◯釉薬の福岡営業所が一年ほど前に突然のように閉鎖されたあと、多くの困った顧客の方々から連絡をいただいていました(広島本社は残っている)

中には「ふくおか陶芸窯さんが修理してくれると思いますよ」と言われたから、という方もいましたがに◯島釉薬からワタシに何か連絡がきたことはありませんでしたし、それを聞いた時にはちょっと虫のいい話のようにも思えました。

廃業はお客様には関係のないことですから修理対応は誠意をもって行いましたが、せめて福岡の営業所は閉じることになったので申し訳ないがお客様のことでお願いすることもあるかもしれない、といくつか存在する地元業者に連絡を入れておけば、対応するコチラの気持ちももっと違ったでしょう。それがお客様のメリットになることなのではないでしょうか。

もっともそういうことが出来ない、やらないという業種だったのかもしれませんが、これって大事です。状が回る業界はいくつかありますが、築炉業界もそうなったらいいですね。お客様視点で考えれば取り扱い業者が廃業しようが拡張しようが関係ないのですから。


で、この記事は何が言いたいのかというと、相見積もりをするならば断りもきちんと入れることが大切だよ、ということです。

プロの作家として独立したり陶芸教室を運営したりするならば、義理と人情と筋目は一応通しておくといいですよ、というお話なんです。仕事をやりとりするという意味ではありません。

わたしの同期の仲の良い人でも一切窯の仕事のつながりがない人もいますし、他メーカーさんの窯でもずっとワタシが対応している方もいます。正しい人間関係を構築しておくということがいつか必ずお互いのプラスになるのです。みんなビジネスだけどそれだけではない。

窯でつながっていないけれど仕事で協力することもあるし、廃業した他メーカーの修理を対応して新規の話につながることもありますし、知人を紹介されることもあります。

極端なたとえをいえば、明日ワタシが人間失格もとい廃業するかもしれませんし、10年後には西日本ではイノウエ以外の業者がすべて廃業しているかもしれません。


その可能性をアナタもワタシも想定しておかなければならないのです。




プロならばね(笑)。





posted by inoueseiji at 09:44 | イノウエセイジの頭の中

2022年01月16日

ちょっとしたお知らせ


この数年、当ブログに某アジアの国の方々から毎日まいにち夥しい数のコメントをいただくようになってしまいました(笑)。

このブログにコメント入れるのは結構面倒くさいはずなのですが、いちいち手入力しているのでしょうかねぇ?


管理画面にて禁止設定などを強化して対策を講じておりますが、それで余計にアクセスがふえていっているような状況です。これではアクセス解析もまったく役に立ちませんので、しばらくコメント自体を受け付けないようにすることにしました。

ブログサービス自体を変更しようかなとは以前から考えていましたので、いい機会かもしれませんね。

まぁコメントをくださるのは知人の方がほとんどで、そもそもコメントを入れるような方自体あまりいらっしゃらないブログですので、特段問題もないかと思います。

どうしてもなにか言ってやりたい!という方は電話でもメールでも直接どうぞ。


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posted by inoueseiji at 15:07 | イノウエセイジの頭の中

2022年01月06日

電気炉の納期がのびます


すっかり仕事モードですイノウエです。

年末に2022年よりKCシリーズが値上がりしますとアナウンスしておりました。
まっとうな電気炉の素材は特殊で高価なものばかりですので、企業努力だけでは価格の維持は難しい部分があります。
どうかご理解いただき、ご検討の材料としてください…などとメールを送ったりしておりました。


実はさらに年末に、共栄電気炉製作所さんから電気炉の制御部分に使用するリレーにおいて、工場だけでなく、供給メーカーの在庫さえも底をついてしまったため納期が大幅に伸びると連絡をいただいておりました。

つまり本体が完成しても、肝心の制御部分が完成しないということですので、大型小型関係なく全ての電気炉の納期が延長するということになります。

これも販売する側には寝耳に水でしたが、誰の責任でもありません。まぁ極論をいえばコロナのせいですよ。

今の製造業はジャストインタイム生産システムがほとんどでしょうし、電気炉自体も受注生産が基本でした。別にリレーなんてどんな産業機器にも使用するものですから、特定の業種の問題ではありません。いま自動車メーカーさえ部品が来ないといっている世界情勢です。たった一つの機器が納められずに工事が完了しないということも頻発しているようです。

コンテナの流通もまだまだ安定しないようですし、2月には中国などが旧正月を迎えてさらに停滞するのかもしれません。
いまこのときは情報発信や電気炉の選定に時間をかける時期と割り切ってロクロなどを頑張ってみることにしましょう。
寒くて粘土に触りたくない方には釉薬についての書籍を読んだり、調合実験などをオススメしますよ。

さて、KCシリーズですが、ネットでは他所でも販売されています。
ふくおか陶芸窯仕様へのリスペクトをいただき、同じような制御装置変更モデルもあるようですよ(その質問だけウチにするのやめてほしいわ)

価格も納期も表記が変わっていないようですから、そこで発注してもいいかもしれませんね。

その際には発注画面の画像保存をお忘れなく。Windowsキー+プリントスクリーンキーです。
あとで価格と納期を変更すると言われても証拠が残ります(笑)。


まぁまぁそれは冗談としても、世の中まだまだ予断を許さない状況が続いているようですので、笑顔でやきものを楽しめるようにみなさまご自愛くださいませ。

本年も窯と焼成を軸に仕事と情報発信を継続して参ります。

どうかよろしくお願いいたします。






厳しい状況がつづいても共栄電気炉製作所さんのクオリティは守られています。
受注生産が基本なのはよりよい品質を守るためでもあります。
断熱材とヒーター線に妥協するようなことはありません。
それが電気炉でもっとも重要なパーツだからです。


コンテナ流通が不安定になったいま、あそこの土練機とか電気炉は大丈夫なのかしら?
posted by inoueseiji at 08:48 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2022年01月05日

2022年

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あけましておめでとうございます。
どうか本年もよろしくお願いいたします。

初ライド初詣は坂本八幡宮と大宰府政庁跡でした。

一月もいろいろと予定が埋まっておりますが、発信も意欲的に行って参りたいと考えております。




令和も4年目ですかぁ。

それにしても2022年って。
年代が子供の時のSFだよ(笑)。
posted by inoueseiji at 11:15 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年12月31日

みなさまどうか良いお年をお迎えください

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(みかんじゃないぞ)


本年も大変お世話になりました。
いつもこのブログをご訪問くださるみなさま、ありがとうございます。

来年もコツコツと窯と焼成に関わる発信を続けて参ります。
どうか応援よろしくお願いいたします。

今年は結構忙しくさせていただきました。
四国にも何度も伺いましたし、やっと瀬戸や多治見にも行けました。
諸先輩や大切な方々にも直にお会いすることができました。

来年もこの業界が少しでもさらに良くなるように頑張っていきます。


みなさまもどうか良いお年をお迎えください。



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(ギタリストのような鏡餅飾りですね(笑))


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(アトリエにはアラジンのストーブ)



posted by inoueseiji at 09:21 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年12月24日

京都のお土産美味しかったです。



え〜ご意見や感想は受け付けません(笑)。

そうそう、京都のお土産とても美味しかったです。
ありがとうございました。

みなさまよい週末を。
posted by inoueseiji at 17:56 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年12月15日

KCシリーズ価格改定のお知らせ

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今回は残念なお知らせですが、以下ご確認ください。

★KCシリーズの価格改定のお知らせ


昨今の原材料価格などの高騰が続いている中、製造メーカーの共栄電気炉製作所さんも様々な価格維持に努めてくださいましたが、それもいよいよ限界となってきました。
炉内に使用する部材価格の大幅な値上げなどもあり、電気炉本体も従来の価格を維持できない状況となってしまいました。


誠に不本意ではございますが、来年より製品の価格改定を実施させていただきたくご案内申し上げます。



1.対象:上蓋式電気炉K-Cシリーズ

               前扉式小型電気炉YKシリーズ


2.値上げ幅:15%前後(一部除き)


3.実施日:2022年1月1日御注文分より


※ これにより240Cと2430Cの価格差が小さくなりました。また3540Cはそのサイズのため大幅に価格が上がります。4045Cは据え置きです。

まずはホームページ等ご確認ください。資料・見積は無料で発送いたします。




posted by inoueseiji at 17:55 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年12月14日

ガス窯の搬入の様子です





ようやく香川県での搬入の様子をアップいたしました。

やっぱり窯に関する動画ということで伸びが悪いですが、今後の記録として残せて良かったと思っております。

正直かなり難しい搬入工事で、撮影するゆとりはなかったのですが、固定した三脚のカメラとお客様自身に撮影をお願いしたりして、良い記念、記録になりました。

このガス窯は0.5㎥の台車付、重さは2.5トン以上あります。
煙突は建物の条件から中間が曲がりとなり、その取り出しも厳密な寸法が要求されていました。当然ながら製造前に現地にて寸法取りを行いましたし、工務店さんともやりとりがあって本体や煙突の製造に入りました。

動画ではカメラの広角が効いているのであまり感じませんが、実際にはかなりスペースも厳しく、狭さは危険につながりますので非常に神経を使いました。

お気づきの方もいたでしょうが、クレーンも場所をその都度変えながら、庇や電線に気をつけながら重量的にもギリギリの作業でした。突発的な訳のわからない「陶芸の窯の搬入?」なんて現場には、ベテランのオペレーターさんが来ることが多く、このときも手伝いまでしてくれようとする経験豊富なオペレーターさんに恵まれて、現場もピリピリすることなく動画の最後のシーンのようにいい雰囲気で仕事を終えることができました。ありがとうございました。

そうそう、また嫌なことを書いておきます(笑)。以前自分で窯を移動させたいから必要な道具を教えてほしいとか、あ〜だこ〜だコメントが来たことがありましたが、自分でできるのはせめて300kg以下ぐらいまでだと書いておきます(それでも器用な力持ち限定です)

陶芸窯など重量物の移動にはユニック車やラフテレーンクレーンなどの様々な車両、このときにしか使用しないような特殊な道具が必要で、それぞれに免許や資格、ある程度の期間の経験が必要です。作陶の経験はなんの役にも立ちません。プロに頼んだほうが安く安全に間違いなく施工できます。ガス窯の移動や設置工事は薪窯を自作するのとは次元が全く違います。そこだけはお間違いないよう。

こうして動画で観るとあっさりと終わったようにみえますが、実際には一日半かかっています。写っていない作業もかなりあります(マキタの18Vが大活躍)
次の日は福岡県まで戻る気力もなく、オガワさんを見送って砥部まで移動してバタンキューでした(笑)。


またこちらには配管工事終了後に焼成指導など何度も伺うことになるでしょう。



次の朝うどんは小玉にしようと思います。

posted by inoueseiji at 07:29 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年12月02日

四国大好き・香川県編

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お仕事のついでに四国移住も考えてますイノウエです。

先週は香川県にてガス窯の搬入を行ってきました。
その様子はまた許可を頂いておりますので動画にしてみたいと思います。


ということで今回は香川県での朝ごはんの話。


現場近くに宿泊し、朝食はぜひ朝うどんに行かれてください、と言われていました。

香川県に数多くあるうどん屋さんの何割かは朝の6時ぐらいからオープンしています。朝ごはんにうどん、製麺所やうどん店でツルっといくなんていいですね。

ということで。

朝起きてから調べてみると、以前お昼に赴いたら車が多すぎて入れなかった現場近くのうどん屋さんも6時オープンなのを確認。

搬入の手伝いにきてくれていたオガワさんと朝食へ。

さすがに朝6時過ぎたばかりですので、人気店でもお客さんはまばらです。

引き戸をガラッと開ければすぐに注文口。
元気なお兄さんの「どれにしましょう!」という問いにマゴマゴしてしまう他県民二人。

讃岐うどんの発注にまだまだ慣れず、注文口でオタオタしてしまいます。
温かいうどん、というところを見ると「小玉・中玉・大玉」とあり、ようはまずうどんの量を注文しないといけないようです。

振り向いたオガワさんが「中玉二つでいいかな?」と言って、「ですね。」とわたし。
お兄さんがうどんを巨大な釜で温めてくれる間、カウンター周りを見ると、全部具が違うおむすびと卵焼きのお皿がたくさん。

「オムたまセットげな!」

「セイさん、僕もそれとって」

「じゃあ俺昆布でいく」

注文カウンター周囲の罠にもきっちりとはまり。

カウンターをレジまで移動する間には美味しそうな揚げたてトッピングがズラリ。

「ゲソ天うまそう」

「あ、玉子の天ぷら」

「ちくわの磯辺揚げ!」

「鶏天!」

なんて好き放題にネタを取って、レジまで到着すると二人で1500円という金額に。

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(イノウエの朝ごはん)


五十路を過ぎても男とは哀しい生き物。


お前は



小か?


中か?

大か?




と聞かれれば小とは言えず。
かと言って大と叫ぶ若さもなく。

実は「中」はうどん二玉ということ。
そう、きっちりと二玉分の麺。

しかも腰のない博多うどんとは違い、麺一本づつ全部つないだら梶田さんが縄跳びできるぐらいバシッと腰の入った美しい讃岐うどん。全国展開している丸亀製麺のもっと気合の入ったようなヤツだと想像してください。

また香川県は海の幸にも当然恵まれています。
ゲソ天も捕まえた宇宙人から取ったのか?というぐらい太くて弾力がありました。

本当に美味しかったです。
次もまた朝うどん行きたいですが、このときは朝食後1時間ぐらい何もできませんでした(笑)。

あとでお客様にも「二人で1500円ですか〜!」と笑われる始末。



そこは小のかけうどんなら170円のお店。
確かに朝からそんなにたくさん頼む人はいないでしょう。


香川県は降水量が少なく晴れの日が多いとも聞きました。
やきもの屋だけではなく、バイカーやチャリダーにもお勧めです。





一緒に移住しません?









posted by inoueseiji at 06:03 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年11月26日

ドキがムネムネ




先日100Vの電気炉から始まった福岡県のお客様のところへ10kwの電気炉を納めてきました。
段差がかなりあるのですが、動画であるように足場を作って搬入します。

(念の為に記載しておきますが、この電気炉のサイズだからこの足場です。1トンを超えるガス窯であればブロックは使用しません。)


工房の名前の由来をお聞きしましたが、いろいろな楽しい「オノマトペ」がこの場で生まれるようにとのことでした。

いいネーミングだと思います!




★オノマトペファクトリー

これから宗像市にて本格始動です! みなさん応援よろしくお願いいたしますね。


posted by inoueseiji at 06:58 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年11月19日

気持ちは痛いほどわかるけれども


先日質問のメールをいただいた件で、いろいろと考えておりました。

場所や個人・団体などは伏せますが、みなさんのご考察の一つになればと思います。

ガス窯において、焼成初期段階において一酸化炭素警報器が発報したという事例です。


【設置状況と設備】

  • 公共の施設である
  • メーカーの型番から推察すると0.3㎥前後のガス窯
  • 施設としては数基目で設置後10年程度
  • 窯小屋は施設本館とは独立したブロック組の広さ20uほどの建物
  • 最近一酸化炭素警報器を設置
  • 焼成時には換気扇を使用し扉なども開放
  • 高齢者を中心とした複数のグループのべ数十人がグループごとに窯焚きを行う
  • 知識のある焼成の指導者はいない



【警報発報】

  • 還元焼成に移行する前段階の低い温度で警報器が作動
  • 施設の管理側やガス供給会社なども駆けつける事態になった
  • ガス供給会社の担当が焼成中のガス窯付近で一酸化炭素を確認した
  • 施設側は今後還元焼成は一切禁止と判断
  • 電気炉へ交換する計画がある

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還元焼成が出来ないのは残念だということで、ネットの発信から存在を知っていたわたしに質問者の方がメールを送ってこられました。施設側の判断はなにを根拠としているのか、メンテナンスは可能かというのが主なメールの内容です。

また複数いる使用者の中には、警報器の電源を落として使用すればバレない、そもそもこの警報器がおかしいのでは、という発言もあったそうです。また質問者の方もこれは本当に異常な事態なのか、セカンドオピニオンがほしいということでした。

メールの返信ですが、わたし個人としては遠すぎてメンテナンスすることは不可能とお伝えし、何度かのメールのやり取りの後、意見をまとめたメモを送付しました。

もしかしたら使用者として質問者の方にも、ガス供給会社の人間はどこまでわかっているのかという気持ちもあったのかもしれませんが、陶芸愛好家の100倍ガスとその事故事例に詳しいのは間違いないのです。

わたしはメールのやり取りの中で、どこか警報器を発報させてしまった事態を軽視しているその集団のノリが非常に恐ろしいと思いました。と同時に、その気持も痛いほどわかるとも思いました。その集団に自分がいれば同じ言動をとっているかもしれません。

とはいえ、まず通常の還元焼成で警報が鳴ることはありません。
鳴らすぐらいモーレツ強還元の作家さんもいるそうですが、それはあくまでも例外中の例外です。

まず警報器が鳴るということは有りえないということを強くお伝えしておきたいと思います。他の警報器でも集団なら無視しますか?

そして助成金や税金によって運営されている場所において、管理側の決定に背くこともありえません。

もちろん、こうした今回の事故未遂のような事案は、全ての学習館や生涯学習センターなど、公設や半官半民の施設で行われている作陶活動に内包されている大きな問題だと考えられます。


わたしも地元の生涯学習センターに講師として、十数年の長きにわたって関わってきました。その中で陶芸窯、野焼き、危険な溶剤などを受講生とともに取り扱ってきましたし、さまざまなトラブルにも遭遇したからです。

きっとその公共施設の運営体制も、自治体の正規職員は全職員の半数以下もしくは数名で、あとは委託された管理会社の社員、どちらかといえば不安定な雇用形態の方が働かれている例が多いと想像します。のんきに見えますが実際は大変な職場ではないでしょうか。

さて、前述のようにわたしの講座でもいろいろとトラブルは過去に起きましたが、利用者側にそういうトラブルの元になってしまう考え方があると思います。それはこの施設だけではなく、公共施設でのサークル活動や生涯学習講座全般が抱えている問題の根幹になっている考え方かもしれません。的外れかもしれませんが、たくさんの高齢者の受講生と関わってきたわたし自身の経験をもとに書いておきます。

利用者によくみられる傾向として、公共の施設を安価や無料で使わせてもらっているという感覚の欠如、陶芸以外にもさまざまな講座やイベントなど煩雑な業務がその施設や事務局の人間にあることへの無理解、そして一番は自分にはその施設を利用する権利はあるが守るべき義務はないという甘えです。

わたしの講座でもツクや棚板の状態は放っておくとあっという間に悪化します。自分でお金を払っていない設備や道具を、人は本当に適当に取り扱います。過去には講座内容とはまったく無関係の自分の作品を焼成していた人もいました。ある程度なら眼をつぶることもありますし、テストピースなら大歓迎ですが、基礎をおろそかにして家で作ってきたロクロの大物を焼成する義理はないのです。


もちろんこの公共施設の管理側にも責任があります。

一酸化炭素用の警報器を設置したのは良かったですが、おそらくはそのガス窯の設置業者もしくはメーカー、施設の管理側も、ガス窯使用時のマニュアルやチェックシートは作成していなかったと思われます。

とりあえずは安全マニュアルで十分でしょう。点火や消火の手順、ダンパーとドラフト、換気扇の確認、そうした手順を毎回守らせることは非常に重要なことです。

わたしも小さな会社や職人の世界にいたことが多かったですから、いちいち書類とか面倒くさ〜い、と結構最近まで思っていましたが、その記録が事故を防ぎ、人を守ることになります。
そうした安全対策も考えていきたいと思います。

とはいえ、管理側の方々は仕事をはじめた時にはすでに陶芸の教室なりサークルなりが存在して、その管理方法もわからないまま日々の仕事に追われてきたのに、事故が起これば管理責任を問われかねない。かなり際どい事態が発生して電気炉へ移行しようとすれば利用者からは「還元焼成が出来なくなる!これまでずっとやってきたのに」と反対意見が出る。それではあんまりでしょう。


利用者の気持ちはすごくわかります。
みんなでワイワイ還元焼成したいですよね!



しかしです。何の指導もなしで不特定多数の、それも高齢者中心の複数のサークルがガス窯を運用するのは無理があるのかもしれません。プロだって30年デタラメな焼成をしてきた人がいたりするのですから。

せめて講習会をひらく、安全管理を行う、今後はそれが必須だと思われます。

わたしが確認しているだけですが、この数年の一酸化炭素中毒の事故は民間の陶芸教室と公共施設ばかりで起きているようです。


わたしはガス窯メーカーで鍛えられましたから、ガス窯が電気炉になると聞くとその寂しさみたいな気持ちは理解できます。しかし電気炉にしか出来ないこともあり、燃料で窯の優劣が決まるわけでもありません。

逆に還元焼成できないという条件でどれだけの作品を作れるのかを競いあっていこうじゃありませんか。


それに。






















 誰かが亡くなってからでは遅いと思いませんか。


posted by inoueseiji at 16:09 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年11月18日

日の名残り

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自分が窯造りを仕事として選んだ理由はある一人の在野の研究家に会ったからですが、大きなもう一つの理由は単純にガス窯の設置費用を貯金するぐらいなら造れるようになる方が早かろう、と考えたからでした。まぁ馬鹿ですからね。

わたしはいくつかの遠回りをして瀬戸の訓練校に入校したので、悠長に貯金をすることは考えられず、そもそも手仕事の修行中に貯金をするような賃金をもらうこともないことを知っていたのもあります。

他の仕事や変なトコロに遠回りをして良かったこととして、やきものには窯が必要だというシンプルな事実にすぐに気がついていましたし、それに気が付きながらもふんわり無視するということもありませんでした。

そんなわけで雑誌「陶磁郎」に載った芳村俊一さんの記事にも敏感に反応しました。関東方面から来た同期に伊豆なんてすぐだ、と距離感のわからない九州人のわたしに変わって一泊での伊豆行きの段取りをしてもらい、入校したその4月の終わりに同期数人と初めて芳村俊一さんにお会いすることになったのです。

わずか数時間のことでしたがその印象は強烈で「やきものをやるなら、まず窯をつくれ!」と直接言われたことは忘れられません。そしてわたしは在校中に結構あっさりと大沢ガス炉商会に就職することを決めました。また学校外でも薪窯の手伝いをする機会を得るように動き、また在学中には同期の有志十名ほどで穴窯を借りて自分たちの手で焚くこともできました。

これまでの動画やブログなどでもこの話はしていますが、わたしの発信なんて大した影響力もありません。もちろんそれでも動画で紹介されていた本を買いました、読みましたと言われることも何度かありましたが、最近若いお客さんから芳村俊一さんの名前を聞くことが何度か続き、それもまったく別ルートで知ったという方ばかりだったのには嬉しい驚きでした。そしてもう亡くなってしまったとはいえ、人生を変えて頂いたものの一人として、氏の発信がじんわりと広がっていることを嬉しく思います。

またそんなお客さんたちが羨ましくもあります。

二十代前半で芳村俊一さんの本を知り、100Vの電気炉を手に入れ、わたしや梶田絵具店さんのサポートを受けられるなんていいなぁ。別に二十代前半に限らず、三十代でも四十代でも何歳でもいいですが、そうした発信に支えられているという羨ましさを感じずにはいられないと言えば、どっかの穴の小さいヤツと言われるでしょうか(笑)。

あの資料館がもう見れないというのは大変残念ですが、バトンはずっと次へ次へと渡されているようですし、わたしもその中に参加していると自覚しています。

自分で掘った土を釉薬や胎土として小さな電気炉で焼成する。
窯も自分でというのは理想ですが、そんな本来のやきものの仕事をマンションの18階で行っているなんて考えると、いつかあの世で芳村さんにお会いすることが出来たら、ちょっとは報告するネタを作れたのかなぁと現時点でも思います。

まだまだ発信しなければならないことがありますが、焦らずにコツコツやるだけでしょう。実は工事や出張があり、合間に自宅での仕事や家事をさせていただいておりますので、動画はもう少し後かもしれません。

写真はウチにあるシブがき隊じゃなくて渋柿を窯場に干した様子です。ウチではこれを行うとああもうすぐ冬になるなぁと思ってしまいます。

皆様もご自愛くださいませ。







posted by inoueseiji at 10:28 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年11月11日

アナリティクスにションボリする


気が付けばYouTubeに300本以上の動画をアップしました。
いま現在6000人以上の方にチャンネル登録していただいております。

本当にありがとうございます。


YouTubeを発信している側には、YouTubeStudioという管理画面があり、自分のチャンネルの情報などを確認することができます。

登録者の数や視聴回数も重要ですが、チャンネル全体や個別の動画のアナリティクス(分析)を確認して、今後の発信の方向性や改善点を探ることができるのです。たとえばチャンネル登録者の男女比であるとか、年齢構成なども知ることができますし、動画のどの時点で視聴者が離れているのかを確認することもできます。

イノウエの場合、多くの方に焼成や窯へ興味を持って、自主陶芸に取り組んでほしいという明確な理由がありますので、基本言いたい放題ですが、それでも時々はこのアナリティクス(分析)を確認するようにはしています。

最近気が付いたのですが、マジメで重要な窯の話をしている動画で必ず登録者が減っているが、ごくまれに出すロクロ動画では大幅に登録者が増えていたという事実です。やれやれ。

視聴回数と登録者の増加を目論めば、週に一二度程度、コンスタントにロクロ動画を出すのが一番いいということですが、わたしは窯の情報発信がしたいのであって、登録者を増やしていきたいのとは少しズレたゴールを目指しているということになります。

それにしても窯の話は登録者が減少するという事実は結構凹みます。
やっぱりロクロは大好きだけど焼成には意識が向いていないという方が圧倒的に多いということでしょうか。

また年齢層もこの動画をはじめた当初はほとんど65歳以上でした。もう終わっているなと思ったものですが、今はこんな感じです。

視聴者の年齢

上段:視聴回数 
下段:総再生時間

女性
男性
26.3%
73.8%

13〜17 歳
0%
0%
18〜24 歳
0.2%
0.4%
0.2%
0.3%
25〜34 歳
1.2%
5.7%
1.1%
4.8%
35〜44 歳
3.0%
9.0%
3.1%
8.0%
45〜54 歳
4.8%
13.9%
4.9%
14.2%
55〜64 歳
6.7%
13.1%
7.0%
13.5%
65 歳以上
10.4%
31.6%
10.5%
32.5%


コピペしただけですから見にくいですが、これは多分ほとんどの陶芸動画の視聴者とそう大きくは変わらないと思います。
圧倒的に男性が多く、65歳以上の男性が一番多いようです。

また、注目すべきは「チャンネル登録」はGoogleアカウントを持っている人しかできません。そのアカウントの情報をもとに年齢や性別を分析しているのであって、そもそもチャンネルを視聴している人数のうち、カウントされているのは全体の三割ほどで、七割程度の人数はデータが取れないということです。

もちろん未登録者は、お前なんか嫌いだぁと登録していない人、あえてログアウトして視聴している人、たまたま観ちゃった通りすがりの人が大多数でしょうが、わたしが危惧するのはいつも観ているけれども「Googleアカウントって何?」という方が相当数含まれているのではないか、そしてそのほとんどは65歳以上ではないのか、ということです。

そうなると様々な方々が発信している各陶芸動画を支えている視聴者のほとんどは65歳以上ということも極論ですが言えそうです。

そこで何をどう考えて発信していくのか。

それを考えていかないと10年経ったら困ったことになりそうな気がしないでもない。

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posted by inoueseiji at 06:07 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年11月10日

「陶芸道具むらかみ」を訴える!


な〜んてことはしないイノウエです(笑)。

先日「陶芸道具むらかみ」のワタナベさんから丁寧なメールをいただき、わたしの動画を製品紹介に利用していただくことになりました。

タイトルに引っ張られてしまった方、すいません。サイトを見てほしいと訴えております。

★陶芸道具むらかみ


あの「世界のむらかみ」に関われるならば本望ですヨ(笑)。
そもそもわたしはネットに出したものを勝手に利用されてもいいと考えている部分もありますし、そのほうが業界のためにもいいと考えております。



タタラ成型機TSR




これがウチに来てから、タタラ成型への苦手意識は完全に消え去りました。
20万円以上するタタラマシーンはちょっと手が出ないアマチュア作陶家、仕事として作陶するプロの方にもお勧めできますし、お値段以上の仕事をしてくれます。

動画中でも説明しておりますが、ローラーの仕組みがよくできているので大きな力が必要ありませんし、それは結果として故障しにくいことに繋がるように感じます。

わたしが指導に関わっている生涯学習センターの工作室には、青くてデッカイあのタタラマシーンがあるのですが、面舵一杯やりすぎたのか、目盛りは狂っているし、厚みのあるものだと力がかなり必要です。そして機能の割には高額すぎて手がでません。

しかしこのシンポさんのタタラマシーンなら、お父さんの単焦点レンズとかお母さんの基礎化粧品セットよりは安いでしょうから、妙な中古機材をネットで探すぐらいなら小型タタラマシーンはコレ一択でしょう!



是非「陶芸道具むらかみ」にてご購入ください。
日本電産シンポさんの正規代理店ですから、ロクロなんかもありますよ!




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しかしTSRといえばイノウエの青春時代のコレですね。
スズキTS200R。これでウイリー覚えましたねぇ…。


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2021年11月02日

言葉って難しい

ちょっとした空き時間に大きめの書店をブラブラしてみれば、とある陶芸雑誌の表紙に

「耐熱レンガ」

という文字。

一瞬凍りついてしまいました。

BTSのファンが「チゲ鍋」という文字を見つけたような、アメリカ人が「I love Dog!」というポスターをペットショップで見たような、ベドウィンの首長に「サハラ砂漠」と言っちゃうような、何とも言えない強い違和感を感じました(ナベナベ・犬の肉が好き・砂漠砂漠)。

動画に変な英語字幕をつける方は放置しておけばいいとしても、専門誌が耐火断熱レンガを「耐熱レンガ」とあんなにでっかく表記してもいいのでしょうか。そもそも耐熱じゃないレンガってあるんですかね?

あれでまた読者が築炉メーカーとかに

「耐熱レンガありますか?」

とか変な電話をすることになって

「え?耐火レンガのことですか?

違う?じゃあ耐火断熱レンガの方?

それでもないの?

で何丁ご入用ですか?

え、たったそれだけ?


なんてことにならないかと心配です。



「より土」という言葉があります。

道具土のことですが、より土という呼び名で瀬戸周辺では通じます。
レンガクズとかシャモットで、なんて誤解して覚えておりましたが、先日電話で山内陶料さんに確認すると、ちゃんと鉱山でこのあたりは「より土」になるなと見極めて掘り出し、1300℃オーバーの焼成テスト後にさらに調整して製品化しているとのことでした。

ウソを聞いてしまったお客様、申し訳ございません。
意外と天然ものですね。目利きでより土を作る瀬戸のおじいちゃんのより土屋さんがありましたが今はどうなっているのでしょう。

昔の窯詰めは、まな板のような棚板に、粘土の棒のようなふといツクでしたので、その棚組の安定のために「より土」は文字通り手で撚って使っていました。それでいて耐火度があり、焼き締まらない、という特殊な性質が必要だったのです。

初めて船に乗り込むヤツに「もやい結びやってみろ!」とロープを投げるように(なんかの映画であったなぁ)、昔の窯詰め職人は「ちょっと撚ってみやぁ〜!」と新入りがザクザクで使いにくい「より土」をどの程度扱えるのか、紐状に撚る際の手付きで判断していたとか。

茶碗の目土にしたり、ゼーゲルコーンの土台にしたりするのですが、現在の製陶所や工房では使用頻度が低いものだろうと想像します。

また地域によっては「より土」が「道具土」とイコールになっていないところもあることを確認しております。そうなると動画や電話で「より土が〜」なんて伝えたつもりになっていても、「可塑性があり、耐火度があるが焼き締まらない粗い土」ではなく、単純に「紐状に撚ったウチの粘土のこと」となっていることもまま有り得るということだと推察します。

実際に瀬戸でいうより土ではないものでゼーゲルコーンやオルトンコーンの土台を作っている人は意外と多いのではないかと今回いろいろな事例を知り、想像しています。あなたはどうですか?

言葉は非常に難しいです。
わたしは言葉の専門家でもありませんから、そのあたりの表記がフラフラしていると思いますし、やきものの世界は世代や地域によって言葉や常識、非常識が大きく異る世界でもあります。

とはいえ、答え合わせは世代が違っても可能だと思いますので、今後とも発信には気をつけていきたいと思います。

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posted by inoueseiji at 07:00 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年11月01日

焼成指導の七つ道具とその考察

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立ち会いでの焼成指導が今年はやたらと続きます。

もちろん100Vの電気炉のお客様も電話でのご説明や焼成時に連絡を待機しておりますが、ガス窯で初窯であれば現地での立ち会い焼成が必須だと考えています。

それはわたしが焼成と窯のいろはを教わった大沢ガス炉商会の創業社長がそうしていたからですし、会社に設置していた貸窯の指導でも熱心に学生や訓練校の生徒に窯の焚き方を教えていたからです。

大沢社長に習って焚き方を覚えても他所の窯買ったりする学生もたくさんいたわけですが、それはそれとして、まずはガス窯焼成の出来る出来ないを伝えないといけない。

それが築炉メーカーの存亡に関わることになるということも、大袈裟にいえばあるということなのかもしれない。わたしも現在まったく同じように考えていますし、今後もそうしていきます。


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現場に行ってみれば圧力計が狂っていたり、より土がなかったりすることがあって、今では焼成指導には七つ道具のようなものを持参して望んでおります。ちょっと紹介してみますね。

  • 焼成グラフ用紙(ふくおか陶芸窯製)
  • 筆記用具(エンピツ・三色ボールペン・ナイフ・メジャー)
  • ゼーゲルコーン・オルトンコーン(#8、#9、分度器)
  • より土(道具土)
  • 熱電対・補償導線・温度計セット
  • 赤外線温度センサー(非接触式)
  • バーナーヘッド
  • 50kpaガス圧計・パッキン
  • レンガ・レンガノコ
  • モンキーレンチ等工具
  • 軍手・皮手
  • ライター2ケ
  • テスター・起電力表(熱電対R・K用)

じぇんじぇん七つじゃありませんけど(笑)。
現場の状況によってはさらに持参するものは増えていきます。

より土は最近よく活躍しております。
地域によっては使用しないところ、存在が知られていない場合もあるようですので多めに持参しております。

温度計測関係はいろいろと持っていくようにしておりますが、シブいのはテスターと起電力表でしょう。いまのところ起電力表を使用しなければならないような最悪の事態には遭遇しておりませんが、テスターがあればアナログの温度計が壊れていないのを確認したり、熱電対が断線していないのを確認したり、逆に発見したりするのに使えます。

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ライターが2個なのはお客様にプレゼントするためだったりします。シュッと擦るタイプのライターだと窯焚きが終わる頃には親指の皮がヒリヒリすることもありますので、カチッと押すタイプの電子式がお勧めです。

レンガとレンガノコはドラフトの栓を改めて作ったり、壊れている色見穴の栓を作ったりできます。既存のドラフトレンガをカットすることもあります。

モンキーレンチなどは引っ張り棒が締め付けられたりしているのを緩めたりするのに使用しますが、他にも基本的な工具があればだいたいのことができますよね。

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赤外線の温度センサーは窯の表面温度やエントツの表面温度を計測して、お客様と確認することができます。なにより数字で温度が確認できれば安心感があります。

焼成指導は長い時間がかかり、他メーカーのユーザーさんであれば有料での仕事となります。受ける側も責任感をもって望んでおります。

お困りの方がありましたら相談だけでもご連絡ください。


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(コロナ太りと日焼けで丸い)
posted by inoueseiji at 13:37 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年10月25日

1300

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先週も今週も焼成指導です。
温度計で窯を焚いてはいけませんが、1300℃の数字が表示されるとやっぱり興奮します(笑)。

磁器ということもあり1250℃と1280℃のテストピースの表情が全く違ったのは改めて勉強になりました。
そりゃ産地によっては温度高い方がエラい感じになるかぁ〜と実感もしましたね。

エントツのダンパーとドラフトの操作についてもお客様との焼成中のおしゃべりの中で新たな発信の気づきがありました。
それはまた発信していきたいと思います。
posted by inoueseiji at 07:20 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年10月17日

ノーヘルで走れるのは若さではなくバカさ

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禁断の、という覚悟で、これまでもいくつかの動画を発信してきましたが、特段誰にも刺されることもなく。
よくよく考えればそれは結局は正しい仕事をしている人への利益になっていると思うようになりました。

この動画で話しているような内容、先日のブログの記事に記載した補修内容、本当に当たり前なんです。
逆に「いやいや、待ってちょ〜す、アレもやっとかなイカンに!」と言っている方もいるのではと想像しています。

窯の情報の希薄さが、陶芸人口の減少に多少は影響していないでしょうか?

そんなことはない?

でも気になる。

未だに焚き方についても都市伝説みたいな話が飛び交っているようです。

勝手なことを言うのはまぁ勝手ですが、聞く方はソイツが窯焚き出来るか確認しましょう。

むかしの窯焚きでの笑い話ですが、こんなことがありました。

初めての若いのを先輩が応援に呼んだので、その若いのに「何回ぐらい薪窯の焼成関わったことあるんだ?」と別の人が聞いたんです。
それは彼の焼成経験を知り、何を教えるべきなのか、何をしてもらうのかを現場として把握したかったからです。別にゼロでもいいんです。経験者のクソ野郎よりも、未経験で素直な子の方がマシだからです(あれ?ブーメラン?)

その若いのは4回だと答えました。

ほう、なかなか経験しているじゃないのと思ったら、学生のときに見学したのが2回、どこかの窯場で1回薪を投入したことがある、で?あとの1回は?と聞くと。

「子供のときに親に連れていってもらってどこぞの窯場で見ました。」とのこと。

「あのね、そういうのは何一つ経験じゃないから」

あんなに冷ややかなシ◯ラさん、初めて見たっけなぁ(笑)。

自分が窯が焚けるから、焚けない業者をチクチクしているわけではありません。
わたしは基本的なことしか知らないし出来ません。でも、窯を取り扱うということを別なことに置き換えれば理解していただけると思います。

蕎麦アレルギーのそば打ち名人はあり?
免許がないディーラー営業マンはあり?
パソコンを販売しているけどタイピングできないとかは?
窯を販売しているけれど点火から消火まで窯焚きの体験がないのはどう?

百貨店の催事担当者でも、陶芸展担当になったから、と初めてのロクロを購入して回す人もいるんですよ。

窯を売るなら焚けるのは当然だと思いませんか?



中古の窯でも、もう絶対使えないようなものを流通させていたり、使える気になっていたり、電気炉以外自分ひとりで焼成した経験もないのに窯の選び方を発信したり、コントロールできない窯でデタラメに燃料を消費したり、壊れたバイクのレストア気分で窯をどうこうしようとか、これまで他の方の発信には呆れて物が言えなかったり、考えさせられたりしました。

情報に飢えている人はそんなものでも信じてしまいます。

そもそもアナタの修行先が本当に正しい作業をしていたのか、誰が判断できるのでしょうか。
師匠も弟子も全員圧力計をたたいてるっていいんですか。よくそこから外へ眼を向けたなと関心もするけれども、逆にそのままでいつづけたらと考えると怖いです。

電動ロクロの作陶動画なら、微笑ましい気持ちで観ることもできますが、誤った窯の販売や設置、情報発信は下手をすると人が死にます。

だからこれぐらいは出してもいいかと考えて発信することにしました。




参考になれば幸いですし、ご意見などありましたらお聞かせください。




posted by inoueseiji at 09:17 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年10月13日

10年前と言っていることは変わらない


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当時課金?して読んで下さった方には申し訳ございませんが、有料記事の中古機材についてです。







◆◆◆   中古陶芸機材について











とある業者の方からメールをもらった。とても嬉しいメールだった。
わたしの窯の仕事に共感と評価をしてもらったのである。遠く離れた地方だがそういう感覚を持っている人がまだいるということがわかっただけでも嬉しい。


陶芸の窯、ロクロなど中古で流通する陶芸機材はかなりある。

特に窯などは新品を購入したり設置したりするにはそれなりに費用がかかるのは承知の通りで、場合によっては新車1台分以上の出費を覚悟しなければならない。

そこで中古の機材を探そうとするのは自然なことだろうが、中古車と違い、陶芸の機材の場合はかなり気をつけなければならない。

必ずしもきちんとしたものが流通しているというわけではないからだ。

わたしは窯についてよく車に例える。あなたが車の免許を持っていようがいまいが、それなりに自動車についての評価を想像することができるであろう。たとえば年式、走行距離や傷などで、その価格と車の価値を考えることができるであろう(もちろん車屋もひどいのがいる)。

そもそも、車には車検というものがある。国と法律が介在している世界なのだ。
ところが陶芸の世界にはそんなものはない。しかも、ほとんどの人はそういう機材や道具をいざ買うぞ、という状態で初めて中古の窯や道具にむきあわなければならない。

はたしてそれで正しい判断ができるのであろうか。はなはだ疑問である。





◆中古機材の販売


わたしは瀬戸を離れて数年がたつが、これまで窯業界で経験したこと、また地元に戻って見聞きしたことから正直なところを書いてみたい。

まずは中古の窯がどういう経緯で売られていくのかということである。窯業地では工場が閉鎖したりした際に、そういう業者が介入してくる。この時、多くの場合はタダ同然で、重たくて面倒くさい窯や機械を引き取ってあげる、もしくは手数料を取ります、ということが多い。

それをどうするのか。

そこから業者の良し悪しが分かれてくるのだ。そして残念ながら、良い方よりも悪い方が多い。





◆悪いとはどういうことか


何をもって悪いというか、はっきりさせておきたい。

タダで手に入れたものを、数十万で売るのは悪いことか。わたしはそういう業者は好きではないが、ここでは悪いということにはしない。そういうものを手に入れるタイミングやチャンスに恵まれる要素もあったと思うからだ。また、人によってはそういう行為こそ良い商売と考える人もいるだろう。人間にはそれぐらいの振れ幅があるのはわかっているつもりであるが、嫌いなものは嫌いなのである。

ここでの悪いとは、手に入れたものに対する無知と無頓着である。

窯というものが、陶芸の仕事においてどういう意味を持つのか、実感として知らない、電動ロクロの整備の仕方がわからない、手に入れたものが寿命のどのあたりにあるのか理解する知識がない。

そういう無知を「悪い」という。

土練機の中の固まった粘土を除去もせずに現状渡しとしたり、錆びを落としてペンキを塗ることもしないで、ただ価格をつけてネットにのせるような無頓着も悪いんだ、とわたしは言いたい。




◆まともな商品はあるのか


30センチの高さの作品が焼ける小さな電気炉の中古で、20万円ぐらい。

よくそういう問い合わせがある。
結論からいうとそんなものはない。あるほうがおかしい。

以前ネットでその条件に合うものがあるので見て欲しいと言われたことがある。
わたしから買うわけでもないのに、見ず知らずの人にそんなことをする義理はない。正直腹立たしかった。それでも興味本位にそのページを見てみた。

なるほど現状渡し、20万円である。

しかしヒーター線の劣化が異常に激しく断線もあり、10万円単位での修理が必要であることが見ただけでわたしにはわかった。もちろん一般の人にはそんなことはわからない。


電動ロクロで、年式も不明なほど古い。整備もしてないが数万円する。
堂々とそれを売っている。はたして新品で高くても十数万円のロクロが数十年たっても数万円の価値があるのだろうか。

買う人がいる以上、それは余計なお世話なのかもしれないが、あなたは20年前の整備されていない乗用車に、その新車価格の十分の一を出せるだろうか。

すくなくとも整備はしてほしいとわたしは思う。整備をしないということは、整備できないということであろう。

古さが評価されるのは作品だけで十分である。





◆まともな業者はいるのか


いる。

わたしもそうなろうとしている一人のつもりだし、その努力を怠っていないつもりだ。わたしだけでなく同じような価値観を持つ人もいる。

特に自分たちで造っている人たちは信頼できる。つまりメーカーだ。

また、作陶の経験がある人(わたしもその一人:継続中)も、同様の感覚を持っていることが多い。

臭い言い方かもしれないが、陶芸をしっかりと愛しているかどうかということかもしれない。















平成23年 1月13日

井上 誠司

(一部編集済み)




まぁ有料メルマガなので文体は意識して硬い感じにしていたような記憶があります。
でもちょっとクドいかな(笑)。

陶芸窯についてのわたしの発信内容はあまり変わっていません。
それは窯というものが大きくは変化していないからです。

つまり変化の激しいパソコンやIT業界とかと違って、窯や窯焚きというものは、一度その太い幹を掴んだら一生モノの知識と技術になるのです。

それには実践して確かめるしかないのですが、逆にいえば誰にでも出来ることです。

そうそう、みんな大好き電動ロクロですが、シンポさんの標準機、現在のダイレクトドライブ以前のRK-88とかの部品はほぼ流通していないようです。特にゴムのリングなどは入手不可能ですから、補修できません。またメーカーにも在庫はありませんからご注意ください。

新しいのを購入してほしいというのがメーカーの願いみたいです。

posted by inoueseiji at 08:08 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

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