2021年06月14日

トランスフォーマーって観たっけ?


こんにちは、イノウエです。


この数ヶ月の間に複数あった質問や発注。
それがパワートランスについてです。


IMG20210614102035.jpg


ふくおか陶芸窯仕様のKCシリーズは3種類の100Vの電気炉があります。

ようするにサイズが3つということですが、その熱源となるのは3つとも同じ100Vの家庭用電源。
鍋はおおきくなっても、コンロのサイズは変わっていませんよ、ということですね。

ここに関しては過去動画があるので御覧ください。

(男性も観てネ)

この動画ではトランスの説明をあえて間違った言い方でしています。

不安定な家庭の電気を一度トランスに”溜め込んで”みたいなニュアンスで話しました

これは間違った表現です。実際は変換しているのですが、誰にでも理解していただくためにあえてこのような言い方をしました。

トランスの仕組みは実はシンプルで、コイルの巻数の比で電圧を変化させるわけです。
これについてはこちらのPDFファイルがわかりやすかったのでリンクしておきます。

(別ウィンドウで開きます)


以前、日本の供給電圧は世界一低いという話を書いていますが、それがさらに不安定になってしまうと1200℃以上の温度をプログラムの時間通りに得ることが難しくなります。

特にK-3030Cモデルを希望される場合は必ずパワートランス(昇圧トランス)も併用していただくように資料と見積に記載しております。



実はこのトランスに関しては、これまでも複数の質問をいただいてきました。ご購入を検討中のお客様にはその都度ご説明させていただきましたが、一度書いておこうかなと思った次第です。

また最近増えた質問は「ネットでもっと安いトランスが販売されていますが、アレではいけませんか?」というものです。


これは確かに疑問に思ってしまうと思います。

ネットや大き目のホームセンターには様々なトランスが販売されていて、共栄電気炉製作所のオプションのものよりもみな安く、ネットでは外国製なのか、かなり安いものもあります。


しかしこの世の中、そんなに甘い話はありません。


販売されているトランスにも様々な種類、容量や定格があります。
その中から適正なものを選べるでしょうか。安い方から選んだりすれば事故につながる可能性もあると書いておきたいと思います。

定格という言葉も一般の方には馴染みが薄いかもしれませんね。例えば定格10分と書いてある電動工具があったとすれば、それは10分以上連続で使用しないでくださいね、ちゃんと注意書きしてますからね、ということなんです。

連続使用してモーターが焼けて壊れたらアナタのせいよ、とメーカーに言われても文句は言えません。

また、一部の定格が合致しているように見えても、トランスに必要な容量がなければ意味がありません。



問題:1.5kWの電気炉で12時間焼成する場合、トランスに必要な容量(kVA)は?



答え:1.5kVAじゃないのは確か




たとえば、高速道路の制限速度の規制が緩和されて時速120キロメートルで走行できるようになったとします(昇圧したのね)

そして福岡から名古屋までノンストップで走り続けたいとすれば、選ぶ車はもうウチの軽自動車ではないということです。そもそもスピードメーターが時速140キロメートル程度の表示の自動車であれば、巡航速度の設計上の設定は時速100キロメートル前後でしょう。

家庭用の100V電気炉では、1500Wで12時間以上稼働させることになります。
ホームセンターなどでトランスを販売している国内メーカーはおそらく100Vの溶接機や電動工具などでのバックアップを想定していて、どこも「100V電気炉の12時間以上の本焼成」を想定には入れていないと思われます(間違いなく)


「そんなの販売側の論理じゃねぇか」という方もいるでしょう。


ということで、わたしは電気工事士ですので、トランスの筐体をばらしてみました。

IMG20210614083602.jpg

容量とメーカーを確認してその入手先を調べてみると、このトランス自体は購入できるようでした。しかもこのオッサンが販売する金額の半分程度でいけそうです。

しかし、それはあくまで「トランス本体のみ」の話。

トランスを納めるための筐体を制作して、配線して、コンセントつけて、ケーブルに端子圧着して…となると購入したほうが安いと思いましたが、みなさんはどうでしょう。

ハント君。今回も対応していないトランスや、そもそも容量が合っていないもので事故を起こしても当局は一切関与しない、って感じでしょうか。

知識のある方が探せば、使える市販のトランスはあると思いますが、あくまでそうしたものの使用については自己責任となってしまいますのでご注意ください。


トランス自体はいろいろな世界で使われています。
オーディオマニアの方などは詳しい方も多いのではないかと思いますね。
電圧を上げるだけではなく下げたりすることにも使います。

原理を見つけたのはあのファラデーさんです。



100Vの電気炉のお客様で3030Cでなくても、設置場所の電圧に不安があるとか、温度の上がりがいつもウェイトかかり気味とかであれば昇圧トランスを導入するのはオオアリです。









posted by inoueseiji at 12:15 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年06月13日

ゴルゴ13ルール


お久しぶりです、イノウエです。

さて、わたしは一人自営業。
これまでいろいろな目に遭ってきて、いつの間にか自分なりのルールがあります。

  • 作陶する人を応援する
  • 技術や知識はすべてオープンにする
  • 窯と焼成についての発信を優先する
  • 誤解や危険な内容の発信はその限りではない
  • 業界の迷惑になることはしない
  • 背後に立つものは条件反射で倒す
  • 常にお客様の利益になる方を選択する
  • 自分は無知であることを知り学び続ける


そして迷った時にはアメリカ大統領が「リンカーンならどうするだろう?」と一人執務室で考えるように、「ゴルゴ13ならどうするだろう?」と一人アトリエで考えるのです。

別に冗談じゃなくて、わたしは最強の一人自営業者がゴルゴ13だと思うからです。
相手を主義、主張、性別、年齢、経験、釉薬、宗教などで差別することはありません。

陶芸の世界ってたまにとんでもないお金持ちがいますが、わたしは動画発信やホームページを通じて販売する窯は統一価格です。フェラーリ3台お持ちのお客様でも見積り金額は変わりませんし、実際にそういう方へも無償でアドバイスをしたことがあります。またいくら言われても価格を下げることはありません。

そもそも値切ったりされるのも、自分がするのも好きではありませんし、嫌な目にも遭ったからです。朝市で野菜買ってるわけじゃないんだから。


ちょっと想像してみてください。

ゴルゴ13のギャラ値切れますか?

無理ですよね。

かといって。
実はゴルゴ13が金額のみで動いているわけではないのも有名な話。

わたしも依頼とあらば、老婆が家財道具を売りはらった雀の涙のギャラであっても、数千万円の経費と自分の命をかけて仕事を完遂するゴルゴの心意気はもっているつもりです第136話 海神が目覚める )

そんなわたしもルールを無視されると悲しい気持ちになりますし、時々は自分で自分のゴルゴ13ルールを破ってしまうときがあります。

まだまだ修行が足りません(まだ2巻のゴルゴレベル)

先日もやらかしてしまいました。
早朝、古いお客様から電気炉のとある部品が破損したという連絡がありました。焼成には問題の無い大型炉だけのフレームのパーツの一部分です。

状況を聞き、すぐに行きますとお答えしましたが、電話をいただいたのはあいにくの出張工事のための移動中。その日は対応不可能でした。

翌日の朝改めて電話した際に、ふと思いついて「…そういえばホームセンターでこういうものを購入して付けていただければ応急処置になるかもです。」と言ってしまったのです。

その方はわたしより少しお姉さんのお客様。とても器用な方というのもわかっていましたし、そもそもその窯は昨年大規模補修をしたばかりだったからというのもありました。

設置場所は県外ですから、また出張費をいただいて数千円の部品代のために赴くのは気が引けたのです。なぜならこれまで、

 お金はかけたくない
 できればタダがいい
 てか、タダで教えろ
 中古の窯はないんか

という一部の陶芸ファンとのいろいろな楽しい記憶がよぎったためでした(笑)

長いお付き合いの方ですので、こちらのスタンスもご理解していただいていると思ったのですが、さらに次の日に
「よその窯屋さんにきいてみようかなと思っている」と電話してこられたので、ちょっと待ってください、と改めて説明しなおしてお互いの認識を確認し、すぐに伺ったのでした。

そして現場に行ってみれば錆びたボルトを女性が回せるはずもなく、わたしでも無理でした。
結局は電動工具で破壊して付け直し、せっかく来たので不安がある部分をすべて交換して帰ってきました。他の部分もしっかりとチェックすることもできました。


そして帰る前にお客様に謝りました。

こんなことを考えて、お金のかからない方法を伝えようと思ってしまった、と。

お客様には許していただき、逆にだからお前は信用できると言っていただき、ホッと胸を撫で下ろしました。実際に多数の生徒さんを抱えているお客様ですので、お金はいくらかかってもいいから、不安を払拭してほしかったということです。

これは完全にわたしの悪いクセがでたなぁと思ってしまいました。
貧乏な自分を基準に世界を見てはイケナイということですし、お客様が不安に思っている部分を理解しきれなかった、そして窯の補修は安全につながるということを一瞬でも失念してしまったという失敗です。

器用貧乏キャラあるあるですかね。


お客様にしてみれば確実にこなしてくれるゴルゴ13に依頼の電話したのに、

「ホームセンターでさぁ〜
 安いショットガン買って〜
 自分で撃った方が早いって!

 俺まだジンバブエなんよ!」

と答えられたようなものだったのです(ホントかよ)

それができないから依頼している
のにってことです。

ゴルゴ13に電話してタダのわけはないのも承知の上ですから、お互いにプロとしてそこはキッチリと依頼を受けるべきでした。

自分の軽口に深く反省しました。
ただお客様を不安にしただけでした。
本当にすいませんでした。



アナタも一人自営業ならゴルゴ13と同じです。
自分のルールがあると思います。

そして自称の方も他称の方もプロはプロです。
相手もゴルゴ13と思って接していきたいと思います。


「ゴルゴさぁ〜、
 ついでによ〜、
 あの隣のヤツも撃ってよ。
 高い金払うんだからさぁ、
 いいだろ〜?ダメ〜?」

さて、それにゴ、いやデューク・東郷はなんて答えるかな?

IMG_20200111_151855 (1).jpg



posted by inoueseiji at 08:44 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年05月26日

一所懸命に大間違いするとプロが動いてくれる話


いつも大変お世話になっております、イノウエです(笑)。

先日の熱伝導率の話、実は熱伝導のほうだろうが!というツッコミと、その素晴らしい補足記事をつくばセラミックワークスさんに書いていただきました。

まずは下のリンクをご覧ください。
別ウィンドウで開きます。


ジャグリングも作陶もイノウエが足元にも及ばない福田さんのホームページ https://tcworks.blogspot.com/





そもそも人間としての基本OSがわたしとは全然違う、イノウエの三大抑止力の一人である福田さんのツッコミと、この記事には正直ありがたく、内心ホッとしております。

梶田絵具店さんのYoutubeもそうですが、わたしの話でまぁまぁ信用できるのは窯の話ぐらいということです。

それでもレベル低いなりに一所懸命に発信を続けていくことで、

「ちっ、しょうがなぇなぁ〜イノウエは〜!」

と忙しいプロも腰を上げてくれるということなのでしょう。
本当にありがとうございます。

シリカと珪酸の使い分けも結構適当なオジサンですから、優しい目で見守っていてください。

熱伝導と熱伝導率がぐちゃぐちゃな記事を書いたことを反省もしますが、両方について伝えたかったことも事実であり、下手なロクロ動画をいくつもYoutubeで野晒しにしているように、先日の記事のタイトルもそのままにしておきたいと思います!

カッコつけて「馬鹿が専門用語を使うとロクなことはない」という悪い見本としてご記憶ください。


また棚板の熱伝導率が粘土と大きく異なるという点においては、焼成時にそこまで気にすることはないかもしれないと山内陶料さんをはじめプロ数人の方の助言をいただきました。ありがとうございました。

それでも築炉や焼成技術の視点からみるとレンガが耐火断熱レンガになっていったように、あの土のまな板のような窯道具から、カーボランダムに置き換わっていったことで焼成時間の短縮や均一な熱分布などが可能になったのは間違いないと想像しています。

早く焼成しようとすればいくらでも可能なのが現代の窯炉でしょう。ゆっくり行うほうが難しいという部分もあるかもしれません。素焼きも韓国の人が驚く8時間800℃はじつはもっと長くてもいいのかもしれないし、形状によっては韓国バリにゴリゴリと攻め込んでもいいのかもしれませんね。

tsukuba01.jpg
(勝手に画像を転用するのはイケないルージュマジック)


さてさて話を戻して。


素焼き、もちろん本焼きでも、モノによっては棚板の上直接というのはあまりよろしくないことがある、そういうことを知る方が増えただけでも素晴らしいことだと感じております。

実際に大物の素焼きの窯詰めは、より土の団子などを底につけて浮かせたりしますし、同形の器を重ねるにしても密着が強い形状であれば、隙間ができるようにやはりより土や断熱ウールの切れっ端を挟んだりすることがあります。

わたしのブログ記事で書いたように、棚板の上に大物をベタ置きすると、作品と棚板の熱の差が大きくなりすぎるのか、単に温度の上がりが悪くなるだけなのかはわからないとしても、次の福田さんのアドバイスこそ最強でした。


 焼成の基本は「出来る限り品物全体一様に熱を伝えるほうがいい」のハズ!


とのお言葉ですので、みなさん額に入れて窯場に飾っておきましょう(笑)。


わたしのブログ記事は経験則からの発信でしたが、次回の福田さんの記事は窯詰めの具体例を示してくださるようですから、楽しみにしておきたいと思います。

またこれを機に、つくばセラミックワークスさんのページのメニューから興味のありそうな記事をいくつか読んでみてください。

内容も素晴らしいですが、福田さんの文章がそもそも面白いんですよ。

イノウエは、このネタについては動画を作成中でしたが、即ボツにします!

だって全然まとまらなくて撮りなおしてばっかりでしたから。
単純に窯詰め動画を考えていきたいと思います。

あぁ〜良かった!

イノウエは基本一発撮りなんです。
一発で話せないことは「腑に落ちていない」という判断と、「面倒くさい」という理由からです。


福田さん、今回も本当にありがとうございました。

第二部にも期待しております!






posted by inoueseiji at 08:14 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年05月24日

熱伝導率のはなし2


ものを焼成する、加熱するということでやきものもお肉も美味しくなるわけですが、その時に大切なのは熱伝導率のこと。

バーナーの炎やヒーター線の熱がどのようにアナタの作品やお肉の塊の中心部分に伝わっていくのか、ということを意識することです。

また窯や炉の中の熱の動きや伝わり方と想像することができれば、素焼きで爆ぜることもなくなり、本焼きでの意識もかわることでしょう。

たとえば素焼きは重ねて焼成できるからといって、ギュウギュウに窯詰めすると、中心部分にはうまく熱が伝わりません。

体験されたことのある方もいるかと思いますが、同じ形のタタラの丸皿などを重ねまくってベタ置きで素焼きすると皿の中心部分の色が灰色のままだったり、ガス窯などであれば接触面にススが残っていたりすることもあります。

また分厚い鉢のようなものをいくつも重ねたり、蓋物で蓋の中の色がすこし薄かったりしたことを確認されたことのある方もいるでしょう。

熱や炎がしっかりと各作品に伝わるように、窯詰めを考えなくてはいけません。たしかに素焼きは重ねて焼成できます。ですが、重なりが密でその奥まで熱が伝わらなければ均一に焼成できないことになります。

色が違うということは焼成によって到達した温度がその場所は他とは違う、ということになるのです。


炉内の温度の均一化のためにもカーボランダムの棚板は一役かっているわけです。熱伝導率が粘土よりも非常に高く、それが何枚も棚組されています。作品を置いているのも棚板の上、その作品の上にも次の棚板が載っているわけですから、ムラなく加熱されることになります。

逆に高台が分厚くなった作品を素焼きで急熱すると、底の棚板だけが熱くなり、分厚い底が爆ぜてしまいます。思い出していただきたいのですが、分厚い作品が爆ぜても、かならず底の部分だったはずです。それは窯の中で棚板が先に熱くなるので、作品の底が急激に加熱されることになるからなんです。

それを防ぐには、均一な厚みの作品づくりを意識するだけではなく、素焼きであっても棚板や各作品通しの間隙を考慮して窯詰めをすることだと思います。

またこれに関しては動画にしていきたいとも思っております。


posted by inoueseiji at 11:14 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年05月20日

熱伝導率のはなし


な〜んて偉そうなタイトルにしましたが、別に専門的な知識があるわけではありません(笑)。
いつものように、へぇ〜そうなんだ、程度にお読みくださればと思います。

素焼きの焼成で窯から「ボンッ!」という鈍い破裂音が聞こえたりした経験、窯出しの時に自分の作品だけ爆ぜていた経験が、陶芸を楽しまれてきた方なら一度や二度はあることでしょう。

もちろんわたしも何度もあります。
最高記録は1メートル近い大作でした(泣)。

そうした事故現場(笑)を丁寧に検証してみると、だいたい底も部分が爆ぜています。
もちろん、削りが下手で高台部分の厚みがかなりあることや、そもそもの乾燥が不十分なことなども大きな原因です。

爆ぜると空気のせいにする方も多いと思いますが、空気で爆発するほどのエネルギーは生まれません。

問題は水。
そして熱伝導率です。
(映画ならここからオープニングテーマ!)

日々当たり前だと思って使用している棚板。
陶芸だとカーボランダムのものが多いです。黒くて固くて表面が白いアルミナコーティング。
アイツです。

大昔、イノウエもまだ生まれていない頃、ほとんどは土で作った俎板のような分厚い棚板を使用していました。
重たくて、寿命も短く、窯詰めも非常に大変だったそうです。
その再利用として、石の代わりに窯垣として使用され、今でも瀬戸や常滑、有田などの産地にそれが残っています。

190326_315.jpg
(公式サイトから拝借)

わたしははっきりとは知りませんが、いつのころからかカーボランダムの棚板に置き換わりました。

※いまググってみるとカーボランダムは会社の名前で19世紀末に発明・製品化されたようです。国内での初製造は1917年に鹿児島県においてとのことです。モース硬度ではダイヤモンドの二つ下、ご存知のようにカッチカチですもんね。いつ板状になって陶磁器の製造現場で一般的に使用されるようになったのかはわかりません。


一つはっきりと言えることは、カーボランダムの棚板によって、焼成や築炉技術はすすんできたはずです。

熱に強く、熱伝導率が非常に良い素材だからです。うろ覚えの知識ですが、確か土や粘土の二十数倍の熱伝導率だったと記憶しております。

ここから本題。


素焼き前の作品、しっかりと乾燥させたし、外に出して日に当てて一週間以上乾かしました。
それでも爆ぜるときは爆ぜます。

なぜでしょうか?

素焼きの温度の話のときにもしていますが、いくら乾燥させても粘土鉱物がもつ分子レベルで結合している水はなくなりません。

ですから点火してからの焙り初期段階は非常に重要です。
ここで急激に温度を上げると爆ぜてしまうことがあります。

もう一つ重要なのは粘土と棚板の熱伝導率のちがいです。

確か26倍程度の差があったように記憶しておりますが、ようするにアナタの大切な作品よりも20倍以上早くカーボランダムの棚板には熱が伝わっているのです。

素焼きが爆ぜる前の状態とは、熱い鉄板の上に「分厚くて冷たい豆腐」を置いている状態とも言えるでしょう。底が焦げてはこまるのどころか、豆腐の中の水の一部が沸騰すれば水蒸気爆発を起こしてしまいます。


ではどうすればいいのか、は次回の続きとしましょう。
posted by inoueseiji at 05:29 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年05月16日

お客様の声


ユーザーレビューを載せた方がよいと散々ホームページ制作をしてくれた方から言われていましたが、なかなか実現せずに日々の仕事に追われておりました。

しかし、いつまでもステイホームの期間が続く中、ネット陶芸展の2回目を開催するのを機に、お許しをいただいた方々の写真や感想などをようやく載せることができました。

ご協力いただきましたみなさま、この場を借りて深甚なる感謝の意を表したいと思います。
みなさん本当に素晴らしい作陶生活を送られていて、なんだか羨ましいほどです。

自分にもこんな気持の時があったようななかったような(笑)。

こうしたレビューは多くの方の気持ちを動かしてくれるのかもしれません。

また、掲載は勘弁してね、という方からもたくさんの温かいお言葉やメッセージをいただきました。

ありがとうございました。

どうか今後とも「ふくおか陶芸窯」をよろしくお願いいたします。

★お客様の声はトップページの窯の写真をクリックして御覧になれます。




kilns.jpg
posted by inoueseiji at 10:46 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年05月07日

ネット陶芸展2!【参加者倍増】




たくさんの方の協力を得て、第2回ふくおか陶芸窯展を発表しました。

本当はリアルで行いたいですね、というお話をいただいておりましたが、このコロナ禍で2年越しで2回目の開催となりました。
まぁこれはこれで良かったのかもしれません。

遠くの方とも一緒に出来るというのはいいものです。

どこか遠くにいるお客様がいつも動画を観ているというつもりで発信しているイノウエです。

お客様各人も、どこかに同じ窯で作品づくりをしている人がいると知ることが励みになれば幸いです。

とても良い動画になったと自己評価しています。



ファーストもヨロシク!


posted by inoueseiji at 07:49 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年04月22日

日本の電気は意外と意外と!




この一週間でお問い合わせいただいたお客様へご説明した内容を少しまとめておきます。

今日の内容は以前のブログ記事と重複する部分があります。

◆陶芸に必要な電気の知識 http://inoueseiji.sblo.jp/article/187843247.html


さて、日本の家庭で使用している電気の電圧は100Vですよね。

実はこれは世界的にみてかなり低い電圧で、日本と北朝鮮ぐらいだったと記憶しております。
ちなみに、エアコンやIH調理器で使用する家庭用単相200V、工業用の三相200Vもブッチギリの最下位です。

電圧とは電線を流れる電子のスピードのようなものですが、わたしはもっとイメージしやすいようにお伝えしています。

これは電気的な現象をイメージしやすいように例えており、厳密に正しいわけではありません。決して電気科の試験などで解答に引用しないようにご注意ください(笑)。

また電気のプロの方々は、2電工取得10年たらずの陶芸オヤジに突っ込みたくなったら、一般人にわかるように説明する例えを教えていただけれると幸いです。

発電所では電気を作っているわけですが、この電気をお湯に例えて説明します。

そして送電鉄塔では数十万ボルトで電気を送っています。

この電圧をお湯を送るパイプの太さと考えてイメージしてみてください。

つまりどこか遠くにある発電所でできたお湯を冷めないように街まで送るには、パイプを太くして勢いよく流すしかありません。

かりに50万ボルトで送電しているとして、それをパイプに置き換えて直径50メートルだとします。

こんなに太いパイプでお湯を送れば、遠くまで冷めることはなさそうですね。変電所などを経て太さは徐々に細くなりますが…

P_20171026_060046.jpg


街にある電柱と電柱を結ぶ電線には6600Vの電圧ですから、まだ66センチのパイプです。


これが家庭に引き込まれるときに200Vになります。

66センチから、いきなり2センチになり、分電盤から各部屋へは100V、たった1センチになってしまうのです。発電所で沸騰させたお湯はいったい何℃になっているでしょうか。

100Vの電気炉というのは、はるか遠くから運ばれてきたお湯を使って、再び何かを沸騰させようという試みに近いわけです。


しかも共栄電気炉製作所の小型炉ではそれが可能なのです。
昇温可能というだけではなく、耐久性も必要です。

いかにヒーター線の性能や断熱性が重要かわかりますし、なぜ配線の距離や延長コードが危険なのかというのもご理解いただけけると思います。


IMG_1513.JPG



ほとんど石油が取れない日本のクルマが異常に燃費性能がいいように、100V・200Vという世界一低い電圧下で開発と研究がすすんだ日本の電気炉はスゴいんですよ。


こんな豆知識的なこともおさえつつ、電気炉をたのしく使っていってください。

国産電気炉が最強なのも納得ですネ!




※ ちなみに日本の電圧が世界一低いのは感電事故が起きたときの死亡率を抑えるためという国民想いな判断によるものです。

posted by inoueseiji at 06:47 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年04月21日

あとはVシネのみ?




まったくの偶然でみつけたこのアニメ。

パソコンで一気見しましたが、賢いウチのテレビは「陶芸」というキーワードで自動で録画しておりました。エライ(笑)。

まぁこういうアニメはこれまでも自転車版なんかもあり、一連のパターンがあります。


高校入学直前になぜか引っ越して新天地で新生活をすることになる主人公。
話の展開上、中学以前の過去を一切排除するということなのでしょう。

そして偶然に新たな世界に触れるか、才能の片鱗を認められます。そして入部などで本格的にかかわるようになります。だいたい天才肌の先輩とか、ハチャメチャな同級生とか、堅実なクラスメートなんかがいて、その世界のあるあるネタと、高みを目指すもの同士のぶつかり合いなんかがあって、いよいよ全国大会…みたいなところが定番でしょう。

「やくならマグカップも」も主人公が高校入学を機に多治見に移り住んで、しかも幼い頃になくなったお母さんは、当時気鋭の女性陶芸家、お父さんも脱サラして多治見で喫茶店を始めている、という設定と伏線があります。

まぁ東海・東濃地方で喫茶店を新規開店するのは陶芸家になるよりも難しそうだというのは置いておいて(モーニング!)、あと陶芸部の部室が異常に立派なのも置いておいて、純粋にこの作品を楽しみましょう。とても良くできていると思います。

決して表に出なくても、様々な援助やサポートを地元各社や窯元、当然共栄電気炉製作所さんも関わっていることでしょう。

「やくもの放課後」なんてコーナーが最後にあり、各キャラクターの声優さん4人が多治見を案内するのも面白いです。知っている通りや看板なんかを見つけて嫁と懐かしがっておりました。


信楽はスカーレットで朝ドラ、波佐見はいま小玉ユキ先生の漫画連載があります。陶芸関連かどうかは置いておいて、寅さんでも京焼を舞台にした回がありますし、サスペンスもので窯元殺人事件とかあった気がする(笑)。




有田瀬戸はなんか映画あったかなぁ?


ある意味まとまりが悪そうな産地って気もするので。

逆転の発送で対抗していくには渋めのVシネ路線はどうだろう?





ということで、考えておきました!


タイトル案いってみよう!
(怒っちゃダメよ)






「磁器なき戦い 陶石戦争」


「陶器なき戦い ロクロ作戦」


「窯炉の掟2 溢れた撥水剤」


「ベンガラ・ファイル」


「地獄のコバルト3 ダミ筆で描け!」


「地獄の七釉 赤津作戦」





※ どっちの産地も絵具店で発砲するのはご法度という設定です。




大人のみなさん怒っちゃダメ。
陶磁器業界の盛り上がりを応援していきましょう。






posted by inoueseiji at 06:07 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年04月17日

失礼よりは嫌味な方がマシ



YouTuberあるあるでしょうけども、新しい動画のコメントに過去の別の動画についての質問が書かれることがあります。

それはそれでありがたいことですが、内容に即した場所にコメントしてくれた方が次の人へのヒントにもなっていいのになぁと思ってしまいます。先日も同じ様なコメントがあり、そのコメントに返信しました。

わたしの発信について春先の質問で時々あるのは窯の移動等についてです。
知人から窯を貰えることになったから、中古の窯を個人売買したから、安く済ませたいから、などの理由だと思います。

先日のコメントを書いた人も、その質問の内容から、そうした作業への理解はあまりないか、自分は多少出来ると誤解している方だと推察できたので、

「無資格は危ない、未経験も危ないよ、そもそも有料相談案件だから」

みたいなことを書いたわけです。

すると、

「あんたがそんな嫌味なヤツとは思わなかった、聞く人間を間違えた」

みたいなことを書かれてコメントを削除されました。





あのね〜。







世のオヤジというのは、
嫌味なものなんです(笑)




タダで聞こうとしているんだからそれは我慢しなくちゃ(笑)。



わたしの動画発信をご覧の方なら何度か与太話でお聞きになっているかと思いますが、ホームページに謳っている有料相談の案件について、実は礼を尽くしてくださった質問者からお金を取ることはほとんどありません。

そんな人が殺到しても困りますが、これまでも何時間も電話で話したり、メールのやり取りを数ヶ月に渡って続けたり、ラインで半日窯焚きに付き合ったりしてきました。

それはそうした質問者の方々が礼を尽くしてくれたからだし、わたし以外に迷惑がかからないことだったからです。


無資格で陶芸窯の搬出中に事故が起きたとしましょう。

どんな事故の可能性があるかもわからないから無資格でゴー!と思うのでしょうが、全工程で複数の事故の可能性があるんです。

そもそもこの動画だって多少はどこかの業者の迷惑になっていく可能性があると思います。だから実際の作業のキモになる部分は編集してトウシロには真似できないように配慮しています。全体で6分の動画ですが、実際は搬入当日だけで5時間ぐらいの作業をしています。

二人合わせて1ダースぐらいの資格と免許を持っていますし、二人合わせて150基以上のありとあらゆる窯造りの経験があるんです。

事故を起こせば、レンタル建機屋さんや被害者だけでなく、窯を譲ってくれた人、やきもの業界も迷惑します。万が一、死亡事故にでもなったら保険もおりません。

たくさんの人に迷惑がかかる可能性がある質問だともいえます。自分で運んで窯を壊した人って結構いますし、そもそも貰える窯が、ちゃんと使える窯なのかも疑問だったりするんじゃないのかねぇ(そうか、これを嫌味というのか)

一回こっきりの移動であれば道具を揃える金額でプロに頼む方が安くつくことの方が多いと思います。


ラーメン屋さんに、そのスープのレシピを教えろ、といって教えてくれますか?

いやぁ〜ないよね。

でも、こういうのどうでしょうか。

「〇〇と申します。そちらの△△ラーメンに衝撃を受け、自分でも作りたいと思って地元の店で8年修行しています。いよいよ独立と思い、△△ラーメンさんのスープを目指して研究を重ねていますがどうしてもタレの醤油が決まりません。今は出汁を〇〇と〇〇でとり、醤油は〇〇産のものが合うと思って工夫しています。今のレシピは〇〇〇〇です。ご多忙の折、大変不躾な質問で申し訳ございません。何かヒントになることでもありましたらご教授願えませんでしょうか。」


まぁこれでも失礼だと思いますよ。
でも多分、五人に一人ぐらいはヒント教えてくれるんじゃないかな?



わたしならこの一人のために動画にするかもね。


2009年の過去記事:中古の窯を運ぼう http://inoueseiji.sblo.jp/article/28349546.html

posted by inoueseiji at 09:58 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年04月15日

自転車とカメラと目玉焼き



ロクロの正統?な技法を訓練校で叩き込まれたイノウエです。

技術系の世界、いわゆる職人の世界の入り口で、人とスピードと技術を競い合い、磨きあっていた時期があります。

どうにかこうにかトップ集団に食いつき、ロクロ場でふと気がつけば菊練りした土を担いだ◯ライさんが、殺しを決意した眼でわたしのロクロをギラギラと観ていたことも懐かしい思い出です。視線が合うとスッと自分のロクロへ。

半人前同士のプライドと技術がぶつかり合うところで磨かれたわれわれのロクロ技術、そうそう自称プロ職人さんに追いつかれることはないでしょう(職人はプロしかありえないからこの言葉にいつも失笑(笑))

みんな今はプロの作家として活躍しているようです。

とはいえ、このころは窯焚きの経験もなく、ただ単にロクロだけでした。
そして量とスピードに意味を見出していた危ういお年頃でもあったのです。

わたしのフリーカップのこの作り方は瀬戸の友人であり大先輩でもある小川さんに直接教わった方法です。もちろん、昔からある作り方ですが、わたしが知ったのは彼の指導のおかげでした。

そのころに作ったものもどこかに残っていますが、いや、ヒドイものですよ(笑)。

このフリーカップは窯詰めに向けての最終段階で量産することが多いですね。
切りっぱなしですし、わたしは織部なので歪みはアリという姑息なスタイルですから、ガンガン作って窯詰めです。削らなくていいというのはラクですよ。削っていくスタイルにしてもいいし、動画内でお話しているように二つくっつけてもいいのです。

これまでこのフリーカップで稼いだ金額は今の自転車とカメラの代金以上なのは間違いありません(やったぜベイビー)

また自分が使用しない器は本当にどうしようもないですが、酒飲みが作るフリーカップは酒飲みが反応して評価も高いようです。フリーカップで始まったご縁もいくつもあります。


この一個挽き、底の厚みはロクロの天板を基準に眼と手ではかります。最初は穴が開くぐらい攻め込んでほしいものです。そして意外と重要なのは円筒の土の下二割ほどの土の厚みです。これをコテを用いて均一に伸ばせれば驚くほど背が高くなります。

初挑戦の人は、潔く半分に切って厚みを確認してみてください。そうして感覚を修正していけば通常の方法でのロクロも徐々に上達していくと思います。


まぁ何でも薄く軽く作れというわけではありません。それぞれのスタイルがありますからね。

ただし、

薄く軽く作れない人が、分厚くてもカッコいいものは出来ない

ので要注意です。

味がある、とか雰囲気とか、世界に一つだけ、とかに逃げないようにしましょう。
必ずこの重量でYouTubeのオッサンは12センチだったなぁと確認してください。

わたし自身は、意外と分厚くでゴツいのに使いやすい、なんて作品を焼ける人を尊敬しますが、それは本当に難しいことだと思いますね。

上手くなる方法はいくつもあるでしょう。
ただし、プロの作品は買わない、数値化して現実を直視しない、そんなロクロマスターベーションなら、最低でも20年ぐらいの遠回りを覚悟しておいてください。


プロは納得してくれるでしょうが、このフリーカップづくりを目玉焼き調理に置き換えれば、ロクロ工程は卵を割るところです。


卵割り名人?

まぁいるでしょうね。
フライパンは持ってなさそうですが(笑)。














posted by inoueseiji at 07:07 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年04月13日

ネットでの購入熱が冷めつつあるのかも


ご無沙汰しておりますイノウエです。

ピアノの発表会もなんとかやりこなし、メームスは無事に高校生になり、家が少し落ち着いてきたと思ったらもう中旬です。

00006_Moment.jpg

動画撮影するのも久しぶりでしたが、モチベーションは続いているようでコツコツと撮り続けています。

さてわたしはこれまで様々なものをネットで購入してきました。
20年ほど前に計算尺を2000円で購入したのを皮切りに、パソコン本体に子供の自転車、ビデオカメラから専門書に至るまで、実に様々なものをクリックしてきました。

そんな中、意外と近所の家電量販店でも買い物をしています。

いやらしい話ですが、ネットで購入を検討しているものの実物を確認しにいって、そこでそのまま購入に至ったものが案外とあるのです。カメラやビデオなんかはそうでした。

当然どこの家電量販店でもネットの販売価格は確認しているわけですから、ある程度価格を合わせていこうという努力はしているようですし、価格ではかなわないが、カメラケースや小さな三脚、アクションカメラならホルダーなどをサービスとしてつけてくれたりします。


まともに購入すれば一万円近くかかる備品をサービスとしてつけてくれるのならば、ネットより10%程度高くてもお得です。

単純に値段にこだわり、しつこく交渉するのは損でしかありません。
販売価格を下げるのはある程度の裁量権が必要でしょうが、おまけをつける裁量権はそれよりもゆるいでしょう。

さて、仕事クルマの買い替えは結局次の車検までに伸ばしましたが、見積をもらってこの金額でお願いすると思うけどと、伝えたときには値引き交渉しないことに少し驚かれて、ディーラーの営業マンとお互いに商売のことを少し話しました。やはりその若い営業マンでもスッと決めてくださったお客様には自らサービスをしよう、もっと喜んでもらおうと自然と思ってしまうそうです(結局買わなかったので整備費落としてきましたゴメン)

かなり前に建築関係の知人に聞いた話ですが、かるくボッタクリ気味で儲かった現場のお客様は泣いて喜んでくれるのに、値段や仕様についてグダグダをやりあった人に限ってほとんど儲けもないし、住み始めてからのクレームも多くてロクなことがない、とこぼしていたことを思い出します。


今こんな仕事をしていて、実感としてそれを感じます。

「ネットのなんとか.comで売っているのとアナタのとどっちがお得なんだ?」というメールをいただくこともありますが(笑)、買い物だけならどこでも可能でしょう。

ネットショップがふくおか陶芸窯仕様をパクってくれているのも微笑ましく思っております。多くの人が本当のやきもののスタートをきること、KCシリーズや各窯が普及してくことが重要なことですから、それについてはなんとも思ってはいません。コイツからだけは絶対に買わないという人だっているはずですからね。

何を得と思うのかは人それぞれです。少なくとも誰かが窯を購入しようという気持ちになってくれたということを業界としては喜ぶのみです。これが重要なのです。

ぶっちゃければどんな窯でもいいんですよ。
だってロクロだけじゃなくて窯に意識が向いたのですから。
ただワタシは、その買い物で痛い目に会わないほうがいいのでは?と発信しているだけです。


窯は家にちょっと似ているかもしれません。
(本来作家にとっては家よりも重要なのだとか)

価格だけで◯◯ホームとかでマイホームを購入するとロクなことがないように、窯についての知識があまりないのならばアフターケアやサポートを考えておくべきです。どこの誰だか分かっているというのも大事なことですね。

ワタシはこのアトリエを建ててくれた人の名前を知っています。

それはとても大切なことだと考えています。









posted by inoueseiji at 09:56 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月31日

三月にいつも思うこと


本日で三月も終わり、今年度も終わりですね。

この数日は黄砂が凄いことになっています。せっかく桜が咲いているのに、数百メートル先が霞んでいるような福岡です。

さてさて、何年目かの電子申告をしましたが、終わってみればう〜んという感じです(笑)。
ギリ水平飛行という感じでしょうか。


さて、わたしのようなものがモノを申すのもと思い控えましたが、今年は東日本大震災から10年目の年ですね。
あの時わたしは瀬戸にいて、ガス窯を積み込んでいました。

そのあと梶田絵具店でお父さんと話しているときに、ぶら下げてあるテストピースがやたらと揺れているなぁと思ったのをよく覚えています。そしてお店の時計を見て、もう3時前だ長居してるなぁと思ったことも。

次の日に高速に乗って福岡へ戻るまでの間、対向車線はほとんど自衛隊車両でした。
あの異常さは忘れられません。

そして相馬焼の里のことを思い出していました。
瀬戸の大沢ガス炉商会で勤務した約6年間、ほぼ毎年相馬焼に赴いていました。

先日NHKのBSの番組で窯元の10年を追跡した番組がありましたが、知っている方の顔や風景、自分が仕事をした場所、登窯などがたくさん映りました。帰還困難区域に指定されても別の場所で再スタートした窯元がたくさんあり、これからも新たな伝統として継承していかれる方々を知り、福岡からエールを送りたいと思います。


やきものとは地域に根ざした産業であるべきでしょう。
ではその地を追われ、原料の採取もかなわなくなった時、それでも残る伝統とはなんでしょうか。

勝手にやきものの世界に入り込んだわたしには、受け継ぐ伝統があるわけではないと思いかけたところで、いやいや、けっこう受け継いでいるのかぁとも思いました。

変な例えですが、われわれ一般の人間が受け継いでいるのは食文化のようなもの、窯元が受け継いでいるのは店舗そのもののようなものなのかもしれません。この例えに反感を持つかたもいるかもしれませんが、そう考えることでわたしはたくましい窯元の未来を想像できるのです。

原料も店の場所も変わったけれど、あの味を超えるメニューを提供します!っていうのはカッコいいと思いませんか。


(偉そうにラーメンば語っとったくせに、フランチャイズ展開やらしてから、カップ麺まで出しようごたぁ、有名ラーメン屋とは大違いばい)


土地が変わろうとも、窯が変わろうとも、燃料や原料が変わろうとも、われわれは土を窯で焼くという揺るぎない工程とそれを支える技術と知識があるのです。

自分にできること、できそうなことをコツコツとやっていくしかないですね。

どうか明日からの来年度もよろしくお願いします。


s-IMG_3779.jpg

posted by inoueseiji at 07:31 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月30日

窯の焚き方に秘密はない


(やっぱり全然伸びません〜)


おはようございますイノウエです。

わたしが何が許せないって窯で適当なことをする奴が一番許せません(もう怒ってる)

隙間があいている雨仕舞工事で工事費を請求するエ◯業者とか、窯ひとつ焚けないくせに陶芸教室の講師とマージンを分け合うようなク◯業者とか、自分も裏では結構使っているくせに小型炉をディスってる自称プ◯職人とか。頑張っている若人に窯のサイズでマウンティングする三流作家崩れとか、薪じゃないとダメだとかいう薪割りしない◯代目とか、一人ぼっちでは何もやったことがないご立派な准◯授とか。

このような方々には、おととい来やがれどころか、ぜひ余生はどこかの時空の歪みでひっそりと過ごしていただきたいと切にお願い申し上げます。

窯と焼成を伝えずにきたことがどれほど陶芸教育や窯業界の足を引っ張ってきたことでしょう。わたしの講座にいた方でも、窯と焼成にかんしては知りたくないような、あえて向き合わないようにしているような人もいました。ただ下手なロクロを回したいだけ。

でも、この世の中で窯が一人で焚けることぐらい凄いことはないのです。

自分ひとりで窯焚きができるようになれば、いざとなったら造れるぐらいになれば、もうこの世界で怖いものはありません。

この地球(ホシと読んでくれ)を自分で好きなように調理できる感覚を持った人は、変な都市伝説にもヒアルロン酸配合とかの怪しげな化粧品にも騙されることはなくなります(笑)。それどころか窯業を通じてこの世界を作った人類の健気さと文明の積み重ねに畏怖と尊敬と誇りも持てるようになります。

自分で焼成を噛み砕いて理解した人は、この世界がまったく違うものに見えるようになるものなのです。その人の使用する窯がどんなに小さかろうと構いません。そういう問題ではないこともわかるでしょう。

身をもって焼成を経験していくことで、知っていることを知っていると言える揺るぎない自信と、知らないことを知らないと言える正直さを身につけることができるのです。



わたしは窯に関する質問にはいくらでもお答えします。

その代わりにそれは次の方のために公開する形での返答となります。

以下、ご質問していただく際にお伝えしてほしいことです。

・窯のメーカーと容積、台車の有無など
・焼成時の設定温度と焼成時間
・還元焼成と酸化焼成のどちらか
・もとめる焼き上がりや釉薬の種類
・質問者のこれまでの焼成経験回数
・用語の統一もしくは補足説明
・これまでの窯焚きについての動画を確認しているか否か


理想的にはこれまでの動画を確認していただき、あの動画のアレはどういうことですか、とかコレを観てこうしたけれども上手くいかない、こうするためにダンパーとドラフトをこの考えで操作しているがどうか、などと具体的に言っていただければたすかります。


窯の焚き方なんて秘密でもなんでもありません。


すくなくとも普通の酸化・還元焼成はしっかりと伝える必要があります。
電動ロクロで死亡事故がおきたことはないと思いますが、窯と焼成では様々な事故が起きてきました。ですからわたしは自分が知っている程度のことであればなんでもオープンです。








posted by inoueseiji at 06:05 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月28日

そうそう裏ワザはないのよね



本当に小忙しく過ごしていて、しかも家族のことなどで時間も取られてすっかり動画を作れておりませんでした。決算時期で梶田絵具店さんの動画も止まっていることだし、久しぶりにアップしました。

こうした発信ネタのほとんどは、100V電気炉のお客様とのやり取りから生まれたものですが、実は別に裏ワザでもなくきちんとした釉薬の本には記載があるごくごく普通の知識です。冷却時に釉調は決まります。だから瀬戸黒みたいに窯から引き出して水にぶち込んだり、染め付けの仕事をするひとが窯焚きの直後にいきなり扉を開けて急冷したりすることがあるのです。

モノが冷めていくスピードを意識する。
これは例えばガス窯などでの炉壁の厚みをどうするかという話にも繋がります。

耐火断熱レンガ180ミリの炉壁が標準のメーカーさんに、作家や運用側が「こういうのを狙うから150ミリにしてくれ」とか「230ミリで扉はこんな感じにしてくれ」「耐火レンガで組んでくれ」などと指示をすることもあるし、本来はそうあるべきなのです。

自分の作品や、その産地の仕事として、徐冷気味がいいのか急冷気味がいいのか、それぞれでどう釉調が変化するのかを理解しておくのはとても重要でしょう。

産地に赴いても、こういうのを作っているからこのメーカーの窯が多いのか、なんて思うこともあったりしたものです。同様に窯跡と陶片から稼働していた窯の姿を想像することもあるとも聞いたことがあります。

小型炉では重量などの関係から耐火断熱レンガを使用しません。その代わりに高品質の特殊な形状の専用に製造してもらっている断熱材を使用します。炉内は丸いので適当にボードを切った貼ったで作れないわけですね(他所は知らんヨ)


断熱材は実はあまり蓄熱しません。

耐火断熱レンガと耐火レンガでも大きな違いがありますが、より断熱効果を求めると全然蓄熱しないのです。つまり断熱と蓄熱は相反するものともいえるかもしれません。

むかし建材の試験炉を福岡の企業の依頼で製造したことがありますが、その時の防火壁の試験炉に使用した断熱材のみで造った試験炉は、バーナーで30分もかからずに900℃に達し、バーナーの火を止めると、あっというまに50℃程度まで下がってしまいました。つまりまったく蓄熱しない、ということですね(こういう建材の壁が商業施設に使用されていますので火事では慌てずに逃げましょう)。

話が長くなりましたが、今回の動画は100V電気炉のお客様への一つのヒントとして、また窯だけではなく釉薬、釉調への意識を持っていただきたいと思って発信しました。再焼成や冷却スピードについては複数の書籍に記載があります。

やきもの作りのレベルが上がれば、作り方や最高温度だけではなく、こうした部分にも目を向けられるといいですね。


アルミ鍋と鋳物鍋みたいな話でした(笑)。

なにかのヒントとして楽しんでいただければと思っております。



posted by inoueseiji at 07:22 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月20日

コロナですったもんだしたけれど講座発表会開催


おはようございます、イノウエです。

今年度はコロナにより7月スタートで、年末年始も非常事態宣言で欠席も多く、まったく思うような講座はできませんでした。

また毎年のように思い知らされる生涯学習センターの諸問題、講師の指導は無視・スルーする受講生をどうするのか、理念にこだわり厳密にルール化すれば各講座とも受講生の大半は消えてしまうという切実な問題などなど。

15年も関わっているからついつい見えてくるスタッフ側の苦労。
チョコレートでも差し入れしたくなるってもんです。

とはいえ、いつの間にか三月の年度末、昨年は中止された講座発表会を今年度は開催されます。
小さな講座、一地方都市の生涯学習センター数十の講座の共同発表という小規模なものですが、毎年うれしく思っています。

ある意味、ここでの15年間に起こったことしか陶芸教育の現場は知らないともいえるのですが、それをYou Tubeで発信して全国の人が反応したり笑ってくれたりしたのですから、どこも似たようなものだろうと思います。

最近は講師のやる気が停滞しているからか(笑)、受講生のレベルも頭打ち気味かも。

IMG20210121134627-COLLAGE.jpg


「大野城まどかぴあ」でやってマス。



posted by inoueseiji at 08:12 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月19日

焼成中のガス炉本体の表面温度



【焼成中のガス炉本体の表面温度】

先日お問い合わせがあったので、過去データを引っ張り出して確認しました。
ガス炉をご使用の方の参考になれば幸いです。

測定は赤外線温度計によるものです。

◆本焼き還元焼成時 1160℃の時のデータ

大沢ガス炉商会製 0.2㎥ 壁厚180ミリ 台車なし

扉表面 53℃
本体横中央部 70℃
横バーナー式のバーナー付近 92℃
煙道後部 57℃

エントツ部(窯本体から約1m上で)93℃

※ エントツは自社製造 Φ170 厚み1.6ミリ+アルミニウムメッキ
※ 1mでこの温度ですからさらに先の温度は下がるはずです


エントツが赤くなっている、壁や屋根のエントツ取り出し口が変色している、焦げている、は明らかな焼成方法の誤りです。 特に酸化焼成においてエントツに熱を逃しすぎていると異常な高温になる恐れがあります。
また、それだけ熱が逃げていればガス代もロスしていることになります。

適正な焼成方法は各メーカーが指導しているはずです。

またわたしの拙いガス窯の発信でもご理解いただけると思います。

安全第一で焼成していきましょう。

posted by inoueseiji at 09:13 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月09日

道具を自作する必要性についての考察


いつかこの話を書いたほうがいいのかなぁと思っていましたが、とうとう知人同士のネタが交錯したのを見て書いておこうと思います。

(また呑むばい!)

今日の記事はあくまで一つの考察と捉えていただければと考えています。

イノウエは所詮この程度までしか考えていないのか、と読んで笑っていただき、アナタの深い考察と作陶の参考にしていただきたいと思います。そしてそれがワタシの発信の基本ポリシーです。


「道具は自作するものだ」などと言われたことがある方も多いと思いますし、自作した経験がある方も多いでしょう。訓練校ではヘラやコテ、トンボなど自作させられます。カンナも帯鉄から作らされます。


これはプロになること前提の訓練カリキュラムですから、器形に合わせて自作するためでしょう。また他の教育の現場においても先に道具作りがあることもよく見られます。


わたしの週イチの講師業も14年目?ぐらいになりますが、アマチュアの男性は本当に細々した道具が好きす。よく作っているし、買っています。

講座中はウロウロしてくっちゃべって全然作陶しないのに、デカイ道具箱に道具を満載して講座に来る方が多かったものです。いまでも受講生もそういうタイプが多いように感じますし、講師も道具好き男子ではあります。


まぁ道具を最小限にするべき敵地潜入においても空挺部隊は一人60キロぐらい持ってパラシュート降下するので、日の本のオノコの道具好きはイタシカタナシなのやもしれませぬ。


しかしこの動画のような発信に孕む問題はというと、受け取り手のレベルを選べないということになるのではないでしょうか。削りへの意識や自作の意味を取り違える可能性は非常に高いと思います。

また本人が本家本元の動画を観ていないのがよくわかります。
「よくわからないけど」と本人も言っていますから。


だから尚の事この発信の目的がボケまくっている気がこのオジサンにはするのです。

もちろん視聴者さんからのコメントに応えてのことですし、本人も新しいチャレンジが出来て楽しんでいるようですので全然アリです。彼が相変わらずのナイスガイなのはかわりません(ハイボール!)

ただ本来の道具がそれじゃないといけないのよ、という意義は完全に薄まってしまい、元が何味だったのかもわからなくなっている気がするのはワタシだけでしょうか。

キツい言い方を学籍番号90AAの先輩がするとすれば、安いクロスバイクに一点だけレースパーツを付けているような、丸善に檸檬じゃなくてブックオフにオレンジを置いてくるような、規定外のリングでダンクシュートしたと言っているような、なんとも言えない中途半端な愛好家を量産しそうな危うさ感じています。

先に道具ありきか、ゴールを設定しているのか。


強えぇからと44マグナムを購入しても護身用にならないし、枕の下に置いたら寝れたもんじゃないということダス。

51aOzNeOVnL-1-1024x705.jpg

「うっかりSK6aだかSK7だか忘れちまってなぁ」


むかしゴローさん(雑誌じゃないヨ)が、陶磁郎のDVDかなにかで、ハマグリの貝殻をロクロのコテに用いているのを紹介されたことがありました。なるほどねとわたしは思っていましたが(このなるほどを説明するとこの記事の倍になる)、翌週のわたしの講座でもうハマグリを持ってきている人がいたのには、苦笑を通り越して発信の恐ろしさをマジマジと思い知らされました。


丁稚奉公からスタートして初めてロクロに触って、職人として周囲と張り合い、やがては頂点を極め、なんやかんや、すったもんだあってハマグリに行き着いたゴリゴリの作家と、DVDで観ただけの受講生ではハマグリの意味が違いすぎるということです(蛤御門の変1864年)


土練機など使わないあの土で、電動ではないあのロクロで、手作りの竹のカンナで、あの窯で焼成する、ということがシッカリとつながっていないと本来は意味がないと思うのです。


五十路のオヤジは相変わらずの嫌味な物言いですが、やるな、自作するな、という意味ではないですよ。やると面白いのは間違いないでしょうし。

別に格好から入っていいと思いますし、そうあるべきでもあります。


言っておきますが、わたしだって同じようなことをしてきました。


牛ヘラ買ってみたのもそうだし、未だに手付かずの絵具があったり原料が積読状態になっていたりします。それでも自分が行う発信の基準は基本的なこと、視聴者がなるべく上達するようにと願っていて、根本や根幹を伝えたいと考えています。


発信の受け取り手が自己満になってはいけないということです。

趣味だから自己マンでいいのだけれども、厳密にはちょっと違う。


太い粘土の紐を作務衣の肩に担いで紐作りする、なんて写真でも見たのでしょう、やっぱりその真似をする受講生もいましたね。穴窯の作家が1300℃の窯の中から鉄の棒で真っ赤な花器を引き出し、夜空のもとで逆さまに掲げて花器の中に溜まった真っ赤な熾を撒き散らす(やっぱり作務衣)。それをテレビで観ていきなり穴窯を造ったひともいました(中部地方)

それはそれでいい。

本人も周囲も幸せでした。


で、その先は?ということです。



われわれ男子は、芸術だと言われたり自分で言ったりするけれども、ちょっとフシダラな心でヌードを見てしまうものです。だからマネとルノワールとサンタフェは少し大人になってからのほうがいいのです(なんのこっちゃ)。ヌードの向こうにあるモノに気が付かないからです。


そして道具を自作する意味はどこまであるのか。


スタイルによるとは思いますが、電動ロクロで粘土は購入なんて方が多いわけですし、わたしは普通に手に入る道具を、チマチマと自作する意味はあまり無いようにも思います。トンボとコテ、ヘラはどうしても自作になることが多いでしょう。暇つぶしというのはわかるけど。


コテやヘラなどどうしようもないものを除いて、なるべくプロの作家はプロの道具を使ってほしいとわたし個人は考えています。一般の方もガンガン買い物して陶芸関連の経済を回していかないと、めぐりめぐっていつか自分たちが困る気がするのです。また「オレは道具を作れるぜ自慢」だとすればそれこそ意味はなく、仮にプロなら、イケてる男子なら、作れて当たり前です。


本来のやきもの屋というのは窯から全部自作することが出来なければなりません。
自作までいかなくても古い方は、窯の設計が出来たり築炉屋に細かい注文をつけることが出来たものです。わたしも過去メーカー時代にそういうお客様の窯を造ったことがあります。何故そのような仕様にするのか、直接お話を聞かせてもらったこともあります。

そういう方が講師や技術指導にあたったよき時代もあったでしょう。

今はどうでしょうか。
窯の設計図よこせというセンパイならいるみたいですけど(笑)。



小道具よりも本気で自作すべきは土練り台という気もしますね。



電動ロクロは新品買うけど窯は中古を探し回るのだけはいただけない(笑)。





さぁ買い物しよう。






posted by inoueseiji at 10:40 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年03月07日

ロクロって楽しいな!


先日仕事で有田のお客様の所へ伺い、初めて磁器土の土練りとロクロを体験させていただきました。
Aさん本当にありがとうございました。

いやぁ〜全然違うし、出来ない(笑)。


でも出来ないってこんなに楽しいんですね。



土練り。

これ絶対おぼえるのに時間がかかるヤツ。

お客様の「磁器の土の正しい土練りを動画で観たことはほとんど無い」というオフレコ発言も刺さりました。実際菊練りでもそれに近い状態でしたしね昔は。

この練り方は菊練りとも全然ちがいますし、多分習得にこれこそ三年ぐらいかかるのかもしれませんね。全行程を説明して実際に発信しているのはホント、この動画と以前の吉田さんの程度ではないでしょうか。

まぁ土練りについてはその人が土を練っている台とか見ると如実にレベルが現れていますね。

あ、わたしは200回も土を練ったことはないとハッキリと申しておきます。
記憶にございません!(笑)


どちらかというとやりたくない仕事です。



そしてロクロ挽きと牛ヘラ。

牛ヘラは種類がいっぱいあるって言われても「形はぜんぜん変わんねぇじゃん!」(暴言)なんて思っておりましたが使えばわかる大違いでした。

逆に友人吉田さんが道具の数を絞るのもよく理解できましたし、こうした道具にこだわる轆轤師さんたちの気持ちもよくわかりました。

こうした仕事や蹴ロクロを体験してからの道具の自作とかはありかとも思いますが、見様見真似で自作するのは百害あって一利なしですし、われわれプロ筋の人間はガンガンいろいろなものを買い物して業界を回していくべきでしょう。

実際に自作すると購入価格以上のコストがかかっている(断言できる)し、クオリティは本モノに絶対に負けるものです。

ちなみにこのロクロを造りたいという方がいらっしゃったら、ご連絡ください。
その筋を紹介できると思います。

本当に今回は勉強にもなり、初心を思い出す良い経験でした。



posted by inoueseiji at 08:55 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2021年02月20日

独立を目指す人におきるササヤカな奇跡


昨夜テレビ東京系列で「たけしのニッポンのミカタ」の放送がありました。
そこでわたしが大変お世話になっている先輩の志村正之さんが紹介されました。

IMG20210220061217.jpg

IMG20210220061158.jpg

この一年ぐらいでしょうか?
やたらとテレビに出ているイメージがある志村さん。

なぎら健壱さんの旅番組とか所ジョージさんのやつとか、今度はたけしさんに国分太一さん。
しかも一回見たら忘れない作品とキャラクターですから、さらに大化けする恐れがある志村さんです。

この番組中の窯焚きに参加する予定でしたが非常事態宣言下で遠慮してしまいましたが、行けばよかった(泣)。

しかしこの番組で改造された窯の中も映りましたし、ヤザワの兄貴の後頭部も映ったのでよしとしましょう。

わたしが志村さんに初めてお会いしたのは築炉メーカーを退職した次の週。
いきなり小川さんに連れられて窯焚きに参加させてもらったのです。

あれからいろいろな窯焚きや電話でもいつも(今でも)相談にのっていただき、大変お世話になっております。

もしあのとき退職してボ〜っとしていたら挫けていたかもしれないワタシの弱腰は、志村さんの窯と松田山で昇華されたと思っています。

実は昨日は別のお客様(これからお客様になる方かな)から嬉しいご連絡やご訪問を受けました。

一人の方は設備投資のための資金の目処がついたという連絡、そしてもう一方は仕事場が決まって窯の相談に来られたという、どちらもプロの方です。

詳細はそれぞれのお仕事にかかわることですので伏せますが、恥ずかしながらイノウエを例に、独立や事業拡張などでアナタにおきるであろう、ちょっとしたミラクルのことをお話しましょう。

ワタシの瀬戸10年間で人脈が爆発的に広がったのは9年目頃です。
もし3年で辞めていればなにも起きなかったでしょう。
梶田絵具店で働く機会をいただくこともなかったはずです。

作品上の師匠にも窯の修理で出会いました。
即呑みに連れて行かれました(笑)。

わたしの家のガス窯はその方を経由して譲っていただいたものです。
謝礼金は気持ちをお支払いしましたが、まぁタダです。
「お前ならきちんとこの窯を直して使いこなすだろう」と紹介してくださったのです。

次に窯を愛知県から福岡県まで運搬しなければなりませんでした。
当時まだ福岡県に戻ったばかり、いくら地元とはいえトラックのレンタル業者はまったく知らず、トラックメーカー勤務の友人に聞こうと思って電話すると、「ウチにあるから使いぃよ」と、新車の代車の4tユニック車を正規の手続きをとって貸してくれました。

無料です。


このトラックで窯を運びました。
高速料金とガソリン代、先輩二人で窯の搬入ができました。
持つべきものは幼馴染と先輩です。

その後も、志村さんたちと関わる窯焚きの仕事先が偶然知らずに師匠の修行先だったり、電気工事士の免許を取得しようとあがいていた際に生涯学習センターの課長に来れれた方が工業高校電気科定年退職したばかりの電気の先生だったり。本当にいろいろと不思議なことが起こりました。

別に特定の信仰をもっているわけではありませんが、こんなことが起きるとき、わたしは自分が正しい方向を向いているんだなと知ることができます(向いているだけで進んでいるとは思わないのがポイント)


やきものの神さまありがとうございます。




家賃がタダの家を紹介された

伝言ゲームのように人が繋がりだす


突然ご懐妊


軽トラをもらう


思いもかけない人から焼酎が6本届く


馬鹿(わたし)がフェリーに乗ってやってくる


使っていない電気炉をもらう


牧野組合が土地使用を許可してくれる…





そんなことがアナタの身に起こりだしたら。











きっとアナタは正しい方向を向いている。




posted by inoueseiji at 07:27 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

あなたのクリックでオジサン泣いちゃいます→ にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ