9月ですねぇ。まだまだ残暑が厳しいです。
さて、そもそもわたしがネットで発信をしようとしたのは、景気の悪かった世紀末頃の務め先をなんとかできないだろうかという気持ちからでした。
ホームページを作った経験もなく、そもそもパソコンもない中(使用経験はあった)、社長に掛け合い、勝手に作ってもいいでしょうか、ということで夜な夜な作った築炉メーカーのホームページが最初です。
小規模な会社だからできたことかもしれません。
さらにわたしは自分のボーナスをかけて「つくる陶磁郎」に広告を出してもらいました。
知ってもらわなければいい仕事は埋もれるだけだと考えたからです(結果HPで売れました)。
そもそもパソコンも自腹でローンで購入してますし、これで窯が売れなければボーナスもなくなってしまう状況。小さな会社だからこそ、自分の給料がどこから出てくるのかリアルに感じ取れるわけですから、「あ、17時になりました、あとは知りません、お疲れ様〜!」とは出来なかった部分もありました。そういう人の方が少数派らしいですけど。
その時に感じていたのは、たった一つ。
使い方のわからないものを誰が買うの?
ってことです。
窯は高価な買い物で使用方法もねぇ。
やきものに窯が必要なことはわかっていることだけれども、誰もその使用方法を懇切丁寧に教えることはなかったし、ましてやその製造方法や市販されている窯それぞれの違いや価格差がどこに現れるのかなんて、誰も知りませんでした。景気がよければ勢いで購入した人もいたんでしょうが、本当に不景気でした。
そりゃ売れないわ。
そもそも無名な各築炉メーカー。
某ロクロメーカーにどれだけ窯のお客を取られたことでしょう。
のちのちお客様を取り返したこともありましたが、最初の窯が最悪だとお客様自体が取り返しのつかないことになったりもしていました。そんな陶芸窯のイヤなお話もある年齢以上の方は聞いたことがあるのではないでしょうか。
多くのプロ予備軍が窯の選び方を知らなかった。
おそらく今でもそうでしょう。どの学校や大学に行ったとしても、まだまだ窯の情報を得ることは難しいと思われます。だから、わたしの発信を教材にしたいというオファーが来たりするわけなのでしょう。有難いことでしたが無償でお応えした分、あえてキツイこと言わせていただければ、美大の先生が人の動画に頼るなんて情けないと、忸怩たる思いで授業していただきたいのです。
さて、築炉メーカー時代の話にもどりますが、お客様の多くは、先生がこのメーカーだったからとか、教室で紹介されたからとか(抜かれてるゾ)、あの作家さんが使っているからとか、どちらかというと弱い理由で選ぶ人が多かったように記憶しています。
あの人が使ってますで言えば、大沢ガス炉商会の顧客には誰もが名前を知る有名な作家さんがたくさんいました。けれども初代社長は絶対それを営業で口にすることはありませんでしたし、わたしがホームページに記載したい旨を伝えると、そんなことは書かなくていいと不機嫌にこたえたものでした。おそらくは前述のような弱い理由で選んでほしくなかったというのもあったのでしょう。
窯選びについて我々は自転車選びほどの経験さえありません。
自慢でもなんでもなくて、わたしはパッと見ていい窯か悪い窯か感じ取ることができます。それはガス窯だろうと薪窯だろうとわかります。それがプロとして当然持つ感覚です。
似たようなことはみなさんも経験があるのではないでしょうか。自分が仕事にしてきた業界、陶芸以外の趣味、専攻してきた教科の書籍などについて、このような感覚を持つことは多いと思います。ヤンチャな男の子だった方ならば、同じノーサス直管やハの字のシャコタンでも微妙な良し悪しがあることを感じ取ることができたことでしょう。
ではそうした感覚は、どうすれば身につけることができるのでしょうか。
経験と言ってしまえば、先に始めた人に勝つことは理論的に出来ないことになります。
それは明らかにオカシイ。
1年生でもレギュラーとか有り得ることでしょう。
では3年生でも補欠と1年生でもレギュラーの差は何でしょうか。
野球ならば打率などの数値、バスケなどではゲームセンスみたいなものでしょうか。それも数値化できそうです。
技術と知識にもかならず数値はあるとわたしは思っています。
ではその数値化はなんのためにあるのか、といえば「アナタの感覚を研ぎ澄ます」ためです。
たとえば同じ工作機械を使用しても、人が変われば完成品の精度がまったく違うことはよくあることです。また、突撃お料理番組(あるのかな)でプロがわたしの台所にあるもので調理したのに味が全然違う!みたいなことですね。
とにかく全力で、アナタの感覚を研ぎ澄ますことに意識を向けていただきたいと思います。
そのための数値化や計測、記録であって、ここまである程度わたくしの発信をご覧になってくださった方には、その先を感じ取っていただける能力があると思っております。
たとえばアナタが感覚的に英語を喋れるようになりたければ、まずしっかりと文法を押さえ、映画などで発音や用法を身につけ、YouTubeで生の言語に触れて、さらに引き出しを増やしていけばいいと思います。
やきものも同じです。
無視できない文法みたいな部分があります。
かっこいいけど思いっきりスラングもあります。
そしてそもそも「何のため?」も必要です。
例えば英語なら、友だち作りなのか、海外に販路を広げたいのか。
自己満なのか、ビジネスなのか、ですね。
そうなると自分で覚えるのかプロに外注するのかも視野に入れて考えなくてはなりません。
そこを考えずに後で編集できないところに前衛詩人みたいな文章を残さないように気をつけましょう(笑)。
★本日のまとめ
アナタが求めるものは本やネットにはありません。
そこには手掛かりがあるだけで答えを探すのは無意味です。
答えはすべて自分の中にしかありません。
感覚を研ぎ澄ます!