先日メルマガに書いたことですが、改めてこちらに書いてみます。
やきものを勉強する上で、どうしてもさけて通れないのが釉薬の勉強です。普段は買った釉薬を使っていても、陶芸を志すものとして、釉薬の調合ぐらいは出来なければなりません。
でも世の中には、たくさんの優れた釉薬が売られています。それなのに、どうして自分の手でで釉薬を調合する必要があるのでしょうか。
その答えはいくつかあると思いますが、わたしが勉強中に先輩に言われて非常に納得したのが、「釉薬のソロバン」を頭の中に持つ、という考え方です。
残念ながら珠算の経験がないわたしですが、珠算の上級者になると頭の中に強いイメージとしてソロバンを持っているそうです。そして計算が必要なときは、頭の中でそのイメージのソロバンをはじいて、高度な暗算をすることができるのです。
このソロバンのイメージを陶芸の釉薬調合におきかえてみましょう。
何度も何度も、いろいろな釉薬を調合をしていると、人の作品などでも、これはきっとこういう調合であろう、と推理できるようになります。例えばその釉薬の鉄分の量を推理することができたり、ゼーゲル式でこのあたり、と推察することが出来たりするようになるのです。
また、自分で掘ってきたり、作ったりした原料や灰を、どのように作品づくりに活かすか、その具体的なところへ考えがおよぶようにもなります。
わたしの例で恐縮ですが、テレビで陶芸家が仕事をするのを観ていて、その釉薬の大雑把な調合が、理解できたことが一度ならずあります。また、博物館などの収蔵品の釉薬のマチエールを見て、自分の作品のヒントを掴んだこともあります。
すごい人になれば、歴史的な作品や他人の作品でも、「この作品の調合はこれこれこうであろう」と看破されるそうですし、写しとして再現することも可能になるのです。
これらが「釉薬のソロバン」ということなのです。
自分があるものを焼き上げたとします。それに対して、こんなものが出来た、はい、おしまいと思うのか、次はこういう方向へ持って行こう、と釉薬の調合を考えることが出来るのか、その差の大きさはいうまでもないでしょう。
陶芸を勉強する道を選んだあなたは、釉薬を勉強することから逃れることはできません。釉薬を調合するのは、あなたの仕事全般のレベルを上げるためなのです。わからないこともあるでしょう。理解できないこともあるでしょう。でも大丈夫です。
30を過ぎて化学式に取り組んだ男がここにいます。こんなわたしでも数年かけてイメージだけは掴みました。若いあなたならもっと早いですよ。
がんばってください(若くない人もね)。
釉薬の勉強は、読書からでも始められます。芳村俊一さんや大西政太郎先生、津坂和秀先生の本がおすすめです。けっこう絶版になってきているので、買うならネットなどで探してお早めに!
posted by inoueseiji at 17:05
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イノウエセイジの頭の中