2008年10月05日

何焼ですか?


先日、注文の大物を完成させて、建設会社の方が取りに来てくれました。

「持ち帰って、社長に見せます。」「よろしくお願いします。」

そして、翌日、電話がありました。気に入らなかったのか、と少しドキドキして電話に出てみると、「これは何焼ですか?」と聞かれました。

わたしは瀬戸で勉強しましたが、伝統工芸の人間ではありませんし、織部を作陶の中心にすえているとはいえ、他のこともします。ましてや今回の注文品はオリジナルの調合の単純な釉薬をムラに刷毛塗りしたもので、特に既存のスタイルのどこかに属しているという感じでもありません。これは困った・・・。

おそらく、陶芸を生業にしている方は、個展会場や即売会場などで、何度か言われている言葉だろうと思います。皆さんはなんと答えているのでしょうか。

福岡で織部をやっていると、「オリベ」と読めない人もいたり、何焼ですか、とかこれは小石原ですね(どこが?!)などと言われることもよくあります。

こういう言葉が一般の人からでるぐらい、やきものとは伝統工芸のイメージと作品が多いのでしょう。個人で独自の作品をつくっている人もたくさんいるのですが。

ある人は、この「何焼きですか?」と聞かれるのが一番頭にくるそうです。わたしは頭にこないまでも、まあ聞く人の陶芸に関する知識がわかるなぁ、といつも思っています。そういうことを聞かれることがないように呪縛を解いていくのも個人作家の務め?でしょうか。

言葉におとすことで、理解したと安心したいのでしょうか。美術館や博物館でキャプションばかり見ている人がよくいますが、あの器のあそこの筆遣いがすごかったね、と言ってもそういう人は覚えていないものです。

わたしは個展の時などは「織部焼です」とか「瀬戸焼です」とか、本当に適当に答えています。それじゃいけないのでしょうが、そういうことを聞く人で買ってくれる人が今までいなかったので、なんとなく、そのままできています。

なにかうまい方法はありませんか。今日は最後にこの質問で締めくくります。










あなたの作品は、何焼ですか?



http://inoueseiji.com

 ↓ブログ村ランキングです。こちらにもたくさんの陶芸ブログがありますよ。

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 12:15 | Comment(3) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年10月02日

急須珈琲


先日作品を置いてもらっているお店を訪れた時のことです。

福岡県の情報誌がおいてあったので、なにげなく見ていると、「急須でおいしいコーヒー・・・」みたいな記事が載っていました。

福岡の老舗の珈琲店の方が紹介されていました。コーヒーのいれ方、ドリップ方式はテクニックにより、かなり味にばらつきが出るそうです。そこで、家庭にあるもので美味しいコーヒーをいれるには、と思いついたのが急須だとか。

やり方は簡単です。

豆を人数分挽いて、急須にいれる。一人6,7g(コーヒー用の計量スプーン1杯)が基準。熱いお湯を注いで、4分間待つ。茶漉しを使ってカップに注ぐ。

わたしも自分がつくった急須でやってみました。はっきり言って美味しいです。
お勧めしますよ!

実はわたしはコーヒーだけは贅沢していて、若いときからお世話になっているお店のマスターの自家焙煎のコロンビアを毎日飲んでいます。その豆がいつもよりかなり美味しくなりました。

これからはコーヒーを意識したポットも作ってみようかな、と思っています。

http://inoueseiji.com

 ↓ブログ村ランキングです。こちらにもたくさんの陶芸ブログがありますよ。

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 11:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年09月06日

何が売れますか?


わたしは芸術コースのある高校を卒業しました。

今年の個展ではひょんなことから、高校の同級生に知れ渡り、たくさんきてくれました。芸術系なので、女性が多かったので、きてくれたのも女性ばかりです。

その中で、いま福岡市中心部のデパートに勤務している人がいました。どんな売り場担当なのかというと、食器売り場だそうです。そこはわたしも天神に出れば必ず見にいくところで、香蘭社や深川を筆頭に日本と世界の様々なメーカーの物が売り場にあります。

昨日、ギャラリーに用事があって、嫁と街にでたので、こっそり彼女を訪ねてみました。ちょうど勤務中で、お客の振りをして、いろいろとお話していました。その中で、このフロアでは何が一番売れるのかと聞くと、なんとは答えは「急須」だそうです。

嫁と三人で分析してみると、やはりまわりで売っていないから、デパートで買うことになるのだろうという勝手な結論にいきつきました。そのフロアでは、常滑を軸に、有田、波佐見などがバリエーション豊かに展示してあります。

8月の個展で100個以上つくってうんざりしていた急須ですが、この話を聞いて、またがんばってみようかな、と思っています。



http://inoueseiji.com

 ↓ブログ村ランキングです。こちらにもたくさんの陶芸ブログがありますよ。

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 12:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年08月30日

おばあちゃん


ここには陶芸に関わる情報のみを書く、というルールを自分に課していましたが、はやくも破ってしまいます。

実は入院していた妻のおばあちゃんがなくなりました。

ガンでしたが、発見されて、入院したのも今年の5月ごろでした。その後、義父たちと相談して手術はしない、という決断をしたようです。入院した知らせと一緒にそれを聞いて、いつかこういうときはくると思って覚悟はしていましたが、残念です。

高齢とはいっても、母のいない妻の実家の台所をまもる、かくしゃくとした方でした。野球や芸能人や蓮ドラの話もよくされて、小説などもわたしに貸してくれたりしました。

愛知県にいるときには、月に1度は実家を訪れて泊まるのが慣わしでした。
わたしはスーパーなどで買い物するのは全く苦にならないほうなので、嫁とおばあちゃん三人でいつも買い物していました。情けない話ですが、買い物にいくと、いつも車代といってウチの分までお金をだしてくれたりしていました。また孫の婿であるわたしの好物もおぼえてくれていて、寒くなると、よくすき焼きをしてくれましたし、いつもチョコレートが用意してありました。

彫刻科出身のわたしは、よくおばあちゃんの包丁5本を研いでいました。
そういうことがこれから大切な記憶になっていくんでしょう。

きっと世の中のどんな人も、誰かに支えられてたり、支えたりしているでしょう。
とりわけ、わたしたち夫婦は、陶の道を選んだことで、いまは支えられる側にまわっていることが多いと思います。あのころ、瀬戸でくらした9年のうち、結婚してからの5年間は、本当に義父とおばあちゃんに物心両面で支えてもらいました。

そういえば義父と呑みすぎて怒られたりしたこともありました。わたしの長男は産後は妻とおばあちゃんのもとで過ごしました。福岡で生まれた娘は、一昨年と今春に抱かせてあげられました。

あしたは朝が早く、画面に向かって、こんなことを書く場合ではないのでしょうが、今日は寝れないようなので。


posted by inoueseiji at 03:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年08月29日

赤茶けたもの


以前絵具店で半年だけ働かせてもらったことがあります。
そのときに、ここに書けるような知識をたくさんいただきました。そのお陰で、わたしは世の中が全く違うように見えてきたものです。

弁柄というと、鉄絵を描くときに使ったり、釉薬に使ったりしますよね。
じつは、弁柄と一言でいっても、たくさんの種類があるのです。そのはなしはまた次回にゆずりますが、そのときふと、「サビ止めのペンキも似たような色ですよね。」と言ったら、それはまさしく弁柄の色だったのです。

先日も、テレビで工場の製造工程を少しずつ見せるクイズで、氷枕を作るゴムに弁柄を入れていました。ということは、イッチンのスポイトも間違いなくはいっていますね。

左官仕事でモルタルを着色するために入れたりもするそうです。

つまり、この世の赤茶けたものは弁柄などの鉄分の色、といえるでしょう。
数年前に、ある大先生の窯焚きとして某県某所に一週間ほど滞在していましたが、焼きあがると白っぽいはずの釉薬が、バケツのなかでは赤っぽいのを確認してしまいました。(さすがにこれ以上はオープンにはできませんね・・・)

わたしの知識は耳学問や本だけもかなり多いのですが、あるとき絵具メーカーの材料に関する本をみたとき、驚くほど理解できました。つまり、やきものの顔料などと同じような材料を使用しているのです。ガラスの本でも同じような体験があります。

青いもの、赤いもの、茶色、黄色、緑色。

この世でそうした色をだす物質はだいたい決まっています。一生懸命こういうことを追求すると、宇宙の秘密がわかりそうな気がします。

・・・気がするだけで、それに対しての努力はあんまりしていませんけれど。




http://inoueseiji.com/

 ↓ブログ村ランキングです。こちらにもたくさんの陶芸ブログがありますよ。

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 18:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年08月21日

100V電気炉


うちには、築炉メーカーに勤務している時に社員割り引きで購入した100Vの電気炉があります。棚板サイズは17センチ角で、炉内の高さも18センチぐらいです。

これがとても便利なんですね。コンピューター制御です。
少しだけ上絵をしたり、嫁の人形はほとんどこれで焼いていますし、テストしたり、素焼きしたり助かっています。

しかし、このごろ最高温度に達するのに、プログラムどおりの時間で昇温しなくなってきました。たぶん線の寿命が近づいているのでしょう。

そろそろメーカーに交換をお願いしないといけないなあ、と思っています。
一体幾らかかるのか、聞いてみなくてはいけませんね。

それにしても、十分もとをとった窯です。

今の100Vの電気炉はもっと炉内も広くて、ヒーターなども改良されているので、購入などで悩んでいる方は一度メーカーにカタログを請求してはいかがでしょうか。

http://inoueseiji.com/

 ↓ ブログ村ランキングです。こちらにもたくさんの陶芸ブログがありますよ。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年08月07日

急須談義


個展も2日目を終えました。
先日は午前中は閑古鳥でしたが、午後から友人知人がたくさんきてくれて、賑やかに過ごせました。

それにしても新聞やメディアの威力というのはすごいな、と感心することがこの2日でたくさんありました。2日目も、新聞をみてきた、という方が数名いらっしゃいました。

その中でも、現在陶芸教室にかよっているという60代の男性の方で、急須ばかりをつくっているという方がみえました。男性には珍しく、構えることもなく、いろいろな質問をされる方だったので、いろいろお答えしてました。やはり、ここでも情報は公開すればするほど、リターンがあるということを実感しました。

所詮、わたしが急須に取り組みはじめたのはこの1年半ぐらいのことです。アマチュアとはいえ、何年も急須、急須と取り組んできた方から学ぶことはたくさんありました。もちろん技術的にはわたしのほうが勝っているでしょう。しかし、アマチュアならではの行動力で、いろんなところに出かけて、見たり聞いたり、買ったりした急須の話は、本当に面白くて、楽しく聞かせていただきました。

それにしても、苦労したり工夫を凝らしたりするところは、やはり似ていて、お互いのこれまでの健闘をたたえあうような、和やかで楽しい急須談義に華をさかせました。

初個展の時に気付いたのですが、陶芸を習っている人、陶芸家はこちらから見て、はっきりわかります。

それ以来、自分が人のモノを見に行くときは、先にこちらから声をかけて、それとなく同業者ということを匂わせることにしています。その上で相手の出方を伺って、お話したり、退散したりしています(嫌な奴ですか?)。

ほとんどの人は、技法でも釉薬でもヒントになるようなことを教えてくれます。某有名作家の人などは、80万円ぐらいの茶碗を幾らでも持たせてくれました。

わたしの個人的な感想ですが、器は持たなければわからないし、土と窯が違えば秘密も秘密でなくなるからだと思います。

その点、女性はすごいですね。なんでもズバっと聞いてきます。織部を「小石原焼ですか」と聞かれてひっくり返ることもよくありますが。

男はいけませんね。自分はプチメタボなのに、格闘技の選手の戦いっぷりなどをテレビの前で批評するようなところが男にはありますから。

みなさんも、損をしないようにしてくださいね。

http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 09:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年08月06日

「注ぐ器」展初日


いよいよ個展のはじまりです。

今年もたくさんのお花をいろんな方々に贈ってもらいました。本当にありがとうございました。

また、メールや電話をくださった方々、お忙しい中ありがとうございました。これからも精進していきます。

なにより、会場まで足を運んでいただいたみなさん、ありがとうございます。


今年は十数年ぶりという高校の同級生も来てくれました。お互い子持ちだったりするのが不思議な感じです。

プレスリリースをがんばったお陰か、数紙に取り上げてもらいました。新聞をみてきました、という初めての方が数人、わたしの作品を買ってくださいました。初めての方に買っていただくのはとても励みになり、嬉しいことです。

初個展とはちがい、2回3回と回を重ねるたびに実力を試されていくのだろうと思います。
初日はまずまずのスタートでした。2日目はどんな方がみえるでしょうか。楽しみです。


写真はまだ来場されてない方のために、ほんの一部だけです。


s_IMG_7017.jpg  s_IMG_7013.jpg  s_IMG_7023.jpg

http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 06:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年08月01日

八朔


今日から8月ですね。

昨日の夜から、今日の昼にかけて、個展にむけて最後の窯を焚きました。
この半年、新しい挑戦の連続で、たくさんの失敗もしました。しかし、挑戦の中で技術も多少向上しましたし、幾つかは機能的に満足いくものもできました。今は正直、やれるだけのことはした、と思っています。

そして早くも、もっとやれたのではないかとも反省してもいます。

今年の個展、「注ぐ器」というテーマを設定したことで、たくさんの変化が自分におきました。

まず、器の機能そのものをテーマにしてしまったので、これまでとは全く違った考え方をすることになりました。例えば、お皿は極言をすれば、重たくてもサイズが変でも、まだモノを乗せるという「用」を最後まで残しています。許容範囲が広い器と言うことができるかもしれません。わたしは絵織部が中心なので、絵付けに熱中してしまって、載せる料理を考えることをこれまであまりしていませんでした。

ところが、「注ぐ器」中心は急須です。
これは完全に「用」が先行している器でしょう。

陶磁器の歴史や技法をまったく知らない人でも、容易に急須の良し悪しは判断できる気がします。実際、この個展に向けて、多くの友人、知人にテストの急須を渡し、家庭で使用してもらいアンケートに答えてもらいました。このときの忌憚のない意見は大変に参考になりました。そうでなければ、これだけ短期間でのレベルの向上はなかったと思います。

また我が家でも、食器棚を整理してみると、使われていない急須、土瓶がいくつかありました。これらは悪くないのですが、我が家の普段の生活では使えなかったのです。茶漉しがいい加減、容積が人数にあっていない、しりびきがあまりにひどい、などなど。
また逆に、ウチには一つだけ、口切れよく、軽くて雰囲気のある急須もありますが、いまは全く使われていません。その産地の特性で、ボディが薄すぎて欠けやすく、(それが2代目なのです)割れるといやだから、といって完全にわたしの資料用になってしまっています。

厚すぎず、薄すぎずある程度強度もあって、注ぎ口のあと引き、しりもれがほとんどなく・・・。
蓋ももちやすく、茶漉しの穴の大きさもほどよく、容積も家族にちょうどよく、生活のどんな場面でも邪魔をしない・・・。

むずかしいテーマでした。これはもう、「用」の部分で永遠のテーマですね。今回の個展でそれができました、とは言えません。しかし、わたしが逃げずにこうしたテーマに立ち向かい、どう戦った(?)かをお見せできると思います。焼いたものの中でそれに足るものを展示していますので、お近くのかたで興味のあるかたは是非ご高覧下さい。


3年前の8月1日、この八朔の日に福岡での初窯を焚きました。
あれからもう30回ほどここで窯を焚き続けています。

その独立にいたるまでの10年間、福岡に戻っての3年間、本当にたくさんの方々に応援していただき、また知識や経験を授けてもらいました。毎年、この八朔には特にそのことを思い返して感謝の気持ちになります。



http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 21:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年07月23日

水漏れ防止剤、撥水剤再び


このブログのサーバーでは、訪れてくれた方の検索ワードが、管理画面でわかるようになっています。そこでこの数ヶ月目立っているのが「水漏れ防止剤」と「撥水剤」です。

わたしのブログを訪れた人の数割が、この検索ワードによるものだといえるかもしれません。
これは、裏を返せば「水漏れ防止剤」と「撥水剤」を売るページはたくさんあるが、きちんと説明しているページが少ないということだと思います。また、厳しい言い方をすれば、学校や、教室などでも教えきっていないということだろうと思います。そこでもう一度。


    水漏れ防止剤と撥水剤について (3月の記事)



それから、ネットショップなどもたくさんあるようですが、きちんとした説明があるところは残念ながらほとんどないようです。何でも簡単に手に入る時代になりましたが、売る側が買い手を選べないので、恐ろしい時代だという気もします。

わたしが瀬戸で勉強をはじめたころは、お店で「そんなもん、まだ早い。」といって売ってくれなかったりしました。それが悔しくて勉強しましたし、仕事もがんばりました。

今は武器でもナイフでもネットで買えます。

ネット販売は行き過ぎた感がありますが、だんだんともとに戻っていくような気がします。やはり膨大な数の商品、その一つ一つに対する知識や経験をもった人たちが残るようになっていくのではないでしょうか。

これは特にやきものに限ったことではないと思いますが、そうしたプロと話せるように買うほうも少しは勉強をするべきだと思います。そういう人の手助けになればいい、と思って始めたのがこのブログですが、「水漏れ防止剤」と「撥水剤」に関してはその役割を果たせたのではないでしょうか。

ここをご覧になった方は、なにかのご縁だと思って、下記に紹介する会社をチェックしてみてください。



 ■梶田絵具店 http://kajita-enogu.com/

愛知県瀬戸市の老舗陶磁器絵具店。全国多くの教育機関、製陶所、著名な陶芸作家、窯元、学生が利用している。上絵、下絵の顔料や釉薬製造などについて、3代目店長と2代目お父さんの知識量は尋常ではない。窯業専攻科セラミック工学コースを修了され、毒劇物の免許などの資格も所有している。筆や撥水剤など取り扱い商品も多岐にわたる。


 ■山内陶料  http://www.nendoyasan.com/

愛知県豊田市の製土業者。ここの山内さんは試験場などの経験があり、非常に理論的な製品開発をしている。またそういうことを少しも自慢するようなこともなく、初心者にもやさしく説明をしてくれる。製土直売なので送料を入れても値段も手ごろ。釉薬の化学式を理解してくれる数少ない製土業者。


★ この2社に限らず、窯業界は家族経営や小規模の事業所がほとんどです。商品注文以外の相談などは、メールやファックスを利用するようにするマナーを守りましょう。

http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 20:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年07月22日

個展まであと2週間


毎日暑いですね。

福岡は毎日猛暑日です。わたしは午後から夜中にかけて仕事をしますが、午後ははっきりいって仕事になりません。・・・などと言える時期でもなくなってきました。

個展開催まであと2週間です。本焼をあと1,2回したいと思っていますが、どうでしょうか。

今日、幼友達が仕事の途中によってくれました。彼は自営業ですが、なにか手伝うことはないか、といって来てくれたのです。遠慮しましたが、とても嬉しかったです。

また、先日は「アニキ」と慕う先輩から焼酎3本送っていただきましたし、自転車トライアル関係の友人も、自分は飲まない人なのに、選んで焼酎をわざわざ持ってきてくれました。メールをいただいたり、電話をもらったり、たくさんの人から応援していただいているのをひしひしと感じています。本当にありがとうございます。

もう少しです。あと2週間、身体を壊さないようにがんばります。
みなさんも暑い毎日、どうかご自愛ください。

http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 14:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年07月10日

個展まであと少し


いよいよ個展まで一月をきってしまい、かなり焦っています。

今年は3月4月を瀬戸行き、アトリエ、窯小屋改装などで費やしてしまい、いまのところ明らかに去年よりもつくった数が少ないと思います。しかも、急須などをメインにしてしまったために、手間もかかるし、失敗も多いし・・・。

と、言い訳をいまのうちにしておきます。

しかし、今年はいつもの織部ではなく、「注ぐ器」という器の特定の機能をテーマにしているため、いろいろな土や釉薬を使用しています。大変ですが、気分転換になって仕事も飽きません。急須の土は水が染み出さないものを2種類(いまのところの予定)といつもの織部の土2種類というところです。

個展をするというのは、つくるだけではなく、お客さんやお店を回ったり、プレスリリースやDMの作成、印刷、配布などやらなければいけないことがたくさんあります。実は今週には新聞社の取材も入っています。

この時期に子供の誕生日などがあるのですが、ほとんど嫁さんにまかせっきりです。

苦しんで、あがけるのは後二十日間ぐらい。そのうち、ロクロをまわせるのはあと1週間というところでしょう。徹夜はしていませんが、三日で、のべ12時間睡眠ぐらいをつづけています。先日窯焚きのあと久しぶりに8時間連続で寝ました。

身体にわるいですよね。いや髪の毛かな。

http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 02:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年06月28日

あの女優さんの名前は?


今回の個展のテーマで、新しい試みをしていますが、わからないところや知らないところは、自分なりに考えたり、調べたりしてきました。こうでなければいけない、という考えがあまりにも陶芸の世界に飛び交っていて、すっかりわたしの無意識のなかにも巣食っています。自分で自分の行動を抑制する考え方を無意識にしていたり、刷り込みというのはおそろしいと思います。

なくなった芳村俊一さんを訪ねた時、訓練校に入校したばかりでした。「君ら、そんな学校に入って大丈夫か?」とその場のへんどの会の方と二人、ギョッとした姿を今でも思い出します。頭を固められてしまうぞ、と言われました。また大学時代の講師で、独立してからお世話になっている松尾先生は、アメリカの大学や韓国で陶芸をされていました。たまにお会いした時には、日本とまったく違う環境や考え方のことを聞いて、いつも大変勉強になっています。このブログのネタになるようなお話ばかりなので、いつか許可をいただいて書いてみたいと思います。

また、これはわたし自身が経験したことですが、あるアメリカ人の方に釉薬の掛け方を見せたところ、とても驚かれました。彼女は趣味として母国で陶芸をしていたそうですが、釉薬は筆でぬるものだと思っていたそうです(アメリカがすべてそうではありません)。ズブ掛けして湯飲みの中まで釉薬がかかっていることを、とても感心していました。

訓練校を出て、窯屋に就職してました。仕事に慣れてきた時に、もっとこうすればいいのに、と思って改善したことがいくつかありました。それは全くの第三者としてその仕事を見ることができたからです。熟練工になってしまうとそういうものが見えなくなってしまいます。当時の職人さんに、お前の言うことが理にかなっているのはわかるが、できないというようなことを言われたことがあります。

例として、先日ウチに来た知り合いに、彼の仕事部屋にはってあるポスターの女優のこと聞いたら、怪訝な顔をされて、何のことがわからないと言われました。つまり、彼にとってその写真は壁の一部になっていて、もう10年以上意識されていないということです。そういう「壁の一部」になったものが自分の仕事や考えの中にないか、考えてかなければならない、と思いました。

・・・思うだけはいつも思うのですが、それで見つからないから「壁の一部」なんですよね。




http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ

posted by inoueseiji at 20:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

個展のDM

s_s_DM_03 021.jpg

DMのための撮影をしました。
去年は写真をされている方に頼めたのですが、今年はなんと自分でしなければいけません。
カメラは友人からかなりいいものを貸していただいたので、説明書をみながらがんばりました。

もちろん、ぶっつけ本番ではなく、この数日間、練習しましたし、今日も100枚以上撮影しました。

DM自体はプロの友人達にたのむのですが、素材となる写真をとるのは疲れました。運んだり並べたりに付き合った嫁も疲れたようです。
自分でいいと思うもの、というかピントがあったものを20枚ほど今日送りました。

お金があったらほしいなあ、とデジタル一眼レフのことを思ったことがありましたが、撮影は本当に難しいです。わたしが教えている生涯学習センターにも複数の写真講座があって盛況ですが、納得しました。これは習ったほうがいい。シャッターの横のダイアルを、オートからマニュアルのほうへ回そうと思うなら、少なくとも相当勉強するべきですね。(回しましたけど・・・)

この数日で、フィルムの時代の人を素直に尊敬しました。誰かが「写真は念写だ!」といっていましたが、そういう感覚でしょうね。窯焚きのときに信心するようなものでしょうか。



http://inoueseiji.com/

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 04:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年06月12日

犯人の器


最近いやな事件がつづいていますね。
そのいやな事件の類似犯罪、模倣犯がでたりしているようです。

独立して、器をつくるようになって、こういうときにいつも考えます。この人は一体どんな器でどんなご飯を食べていたんだろうかと。そもそもきちんとした食器の一揃えもあったんだろうか、と。べつに高価なものをたくさんもつ必要もありません。陶芸家のブログだから、暗にいい器を買えといいたいわけでもないのです。

ただ。

学生時代の友人が、離島から福岡にでてきたとき、最初の器はカップうどんの空き容器だったそうです。この話はなぜか強烈に印象に残っています。わたしの一人暮らしは瀬戸でしたから、器は必ずどこかでもらえました。なにしろやきものの街でしたから。しかし、友人の若いときのように、100円ショップもなく、食うや食わずの若者からすると当時の食器は高かったでしょう。

新婚の家庭に招かれて100円ショップの器がでてくると、ほほえましいものです。最近は完全に輸入食器のなっているようですから、昔のように日本製のものはすくないでしょう。すこしでも安く作るため、燃料代を下げなければなりません。そのためには焼成温度を下げてあると思います。それでは素地も釉薬も焼き締まらないため、土も釉薬の調合も日本の一般的なものとは違うものも多くあります。哀しいかな、わたしたちが見たらわかってしまうのが100円ショップの器です。

ギャラリーのオーナーが言っていた、器も車と同じなんだ、という例え話に最近考えさせられています。つまり、中古の軽でいい、という人にいくら高級セダンを勧めても買わない、ということです。しかし、いつかはあの車に乗りたい、という人は計画的にお金を工面して買うだろう。器でもそうですよ、という話でした。そして、ちょっとがんばっていいものを買うと、何かが変わります。器は生活のなかにそういう変化をもたらす、もっともたるものだろうと思います。今月、2,3千円の御飯茶碗を買ってみる。そしたら、なにか変わるかもしれない。

思い返せば、初めて一人暮らしをはじめたとき、いつも同じ器で食べていました。そしたら、やっぱりちょっと哀しい。わたしの母はいいものを少しづつ買う人でしたから、そのときはじめて、今までちゃんとした器で御飯をたべていたんだなあ、と思ったものでした。ですから、毎日御飯をきちんといただいている人には、陶芸家になる条件を半分満たしているといえるかもしれません。

いま多くの同世代は共働きや、子育てなどで、一番苦しい期間を過ごしていると思います。そういう家庭を見ていると、食育や有機農法うんぬんなどの食事療法は、働く母親をバカにしているとわたしは思います。いったいいくらお金と時間が必要なのか、いまの家庭を知らなさすぎです。(どれだけ有機か知りませんが、空気がこれだけ汚染されていれば同じような気がしますけどね。)



大切なのは、なるべく家族みんな一緒に御飯を食べて、おかずは買ってきた惣菜でもいいから器にうつして食べる。きっともっと美味しくなります。罪滅ぼしに皿洗いしてもいいじゃないですか。

売れっ子の陶芸家も最近はなかなか売れないそうです。なぜでしょうか。いろいろな事件をみて思いついただけですが、家庭が変わりつつあるからではでしょうか。もう歪もピークという気もします。器をつくる陶芸家から、変わらなければいけないのかもしれません。

むかしと違って、この業界には大将がいない、という言葉を瀬戸時代に聞いたことがあります。その人の一言でやきもの界が動くような人。どこかにいるのかもしれないけれど、多分、いまの政治の世界と一緒で、キチンと御飯を食べていないんでしょう。だから、毎日御飯をつくって食べている人、食べさせている人のことがわからないのかも。

わたしたちの仕事をまもるには、案外とお隣の台所、お母さんと子供たちの食卓をまもることなのかもしれません。
そしてお父さんのスペシャルな器をつくること。

今日は書きながら反省するばかりです。

 
http://inoueseiji.com

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 12:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年04月23日

陶芸の書籍について



陶芸の書籍には、陶芸家が書いたものと、学者が書いたものしかない、といってもいいでしょう。

陶芸家が書いたものは、どうしてもその個人の守備範囲に偏重しています。科学的な記述も簡略だったり、いい加減だったりすることが多いです。
学者が書いたものは、化学的な記述はただしいものの、読み手に受け取る知識がないと難解なだけです。また、そうした本は本来セラミックの世界に向けて出版されており、陶芸にそのまま流用できるものでもありません。




陶芸家の書いた書籍を読む



おもに入門書に陶芸家が書いた本が多くあります。
陶芸家の書いた本で重要なのは、その作家が飾ることなく自分の体験を書いているか、ということにつきます。それを通じて、それに気付くまで何年もかかるような技法や考えを、知識として得ることができるからです。無理に調べて書き写した、原料や歴史についての記述をしているよりも、素直に自分の苦労話を書いているほうが、読者が得るものはおおきいものです。

注意しなければいけないのは、技法書の場合、その作家の背景を知った上で、紙面の情報を受け取らないといけません。その陶芸家が伝統工芸の出身なのか、教育機関で教わった人間なのかによって意見はかなり違ってくるからです。

土を大事にしろ、とにかく土を大事にしろ、とやららと書いてあるのでよく読んで見ると、わたしは自分で探してきた土を使用しているのだ、陶芸とはまず土を探すところからだ、というような伝統工芸系の作家の文章でした。しかし、これを一般の陶芸愛好家に強要してどうするのだろう、と思ったことがあります。板前に魚釣って来い、というようなもので、一般向けの本を書くべき人ではないのかもしれません。
(もちろん同じことはこのブログにも言えます。)


また、技法についての記述がある場合、それが陶芸一般に正しい場合と、その産地の土や釉薬に関してだけ正しい、という場合があります。たとえば、ロクロの挽き方などは、土の性格によって全く変わってくるし、著者がどのロクロで作陶しているのかというのも記述の違いとなる場合があるようです。絵付けの顔料なども良く擂ったほうがよいものがあったり、流通の段階で細かく擂られていて、あらためて擂る必要がないものなどもありますが、なんでもとにかく擂れ、というような説明をしているものもありました。


なかには、著者が普段やっていないような技法を、本のために無理やり実演していたりすることもあります。ほかにも、窯や焼成に関しては、その人が普段どんな窯で焚いているかで考え方や説明のしかたが全くちがったものになります。また陶芸家のなかには残念ながら、もっともよいのは薪の窯だ、として電気炉やガス炉を軽んずる人や、一般人には設置不可能な、大きな窯でなくては、よいものは焼けない、とういうようなコメントをするような人も結構存在しています。

・・・わたしは一度、昔の勤務先で、ある有名な陶芸家の取材の応対をしたことがあります。技法書を出版する前に、使用している材料について詳しい資料が欲しいということでした。だが、材料についての記述に割ける紙面では、とてもまともな説明はできなかったし、本人も、その材料について意外と知らなかったことに驚いたのを覚えています。勤務先の人が、そんなことを無理に書かないほうがいい、というようなことを言ったと思います。やがて出版された本には余計な記述はありません。ただ、これこれを使用して、何パーセント混ぜなさい、としか書かれていないのです。陶芸家の技法書としてはそれで十分だし、今その本を見ても、バランスの取れたとてもよい本だと思うのです。



学者、専門家の本を読む



工業大学のセラミック科などの出身者で、陶磁器試験場などの勤務から陶芸に関する研究をした人が、陶芸家や陶芸を趣味とする人のために書いた本がかなり出版されています。そういう本は、ページをめくって、三分の一ぐらい内容がわからない、という感じだと思います。しかし、そういう本を手に入れて作陶をつづけ、やがて書いてあることの意味が判りだすときほど面白いことはありません。わたしを含めて、一般人が全て理解できるような内容の本は、かえって噛み砕きすぎだと思います。

こうした専門書はある程度の値段がするものです。しかし写真だらけであまり文章のない入門書も2〜3000円することを考えたら大変お得であると思います。専門家や学校、公立試験場などが、管理された研究室で実験したデータ、多くの人手や年数をかけて調査したりしたこと、これまで発表された論文のなかから、陶芸をする人間の役に立つ部分を抜粋して、学者なりに一般人に読めるようにまとめてあるのです。こうしたことはとても一人の陶芸家でできることではありません。本の情報は値段に比例します。わたし自身、こうした本で得た知識に現在もそうとう助けられています。

数人の例を出すと、大西政太郎や素木洋一の概論、理論の書籍、津坂和秀の釉薬に関するもの、在野の研究家では芳村俊一の土や釉薬の独自の考察、陶芸家だが加藤唐九郎の原色陶器大辞典なども調べ物をするときには役に立ちます。特に大西政太郎の本は、陶磁器制作における化学的な現象を、わかりやすい言葉に置き換えて記述してあり、大変読みやすい。辞典以外は3〜6000円ぐらいで手に入ります。

  ***************************


上絵の技法書

陶芸家の本になるかもしれないが、浜本玄の「色絵の陶芸」理工学社をあげておきたい。わたしはこの本以外で、上絵付のまともな技法書を知らない。というか、ない。技法書とは名ばかりで、作家の紹介になっている本ばかりである。家業や日々の仕事として上絵に関わる人には、このような本は書けないだろう。著者はもともと教員だったそうである。ゼロから始めた人間の苦労と創意工夫が全編からにじみ出ていて感動すら覚える。この本の中で、実際に絵筆を持つ前の下準備について、かなりのページを割いている。初めての人間が知りたいのはまさにその部分であるが、上絵を職業としている人にはそこに気付かない。また電気炉の自作までして、その全てを記載してある。全編にわたって、本人がやったことしか書いていない。絵具屋さんが見てもおかしな記述はないそうである。


  ***************************




陶芸を勉強するのに、概論書や理論書を読む必要があるのか、という意見も多いでしょう。

以前あるところで話をした陶磁器問屋の経営者から、「頭が先行していない陶芸家はダメだ」と言うようなことを言われたことがあります。頭でイメージしていることに、作品が追いつかないぐらいでないといけない、ということです。そのためには勉強を怠ってはいけないということです。頭が知っている場所にしか技術は歩いていきません。


また、経験を積み重ねることだけを重視してしまえば、先に始めた人間や、プロにはかなわないということになってしまいます。しかし実際にはそんなことはありあません。わたしが知っているだけでも、キャリア何十年という人で、陶芸教育の初期段階で習うことを、まったく知らなかった人もいます。また、特定の師匠について修行し、そこで覚えこんだ「まちがい」を、自分で確認せずに、いつまでも信じている人もいます。逆に、厳しい生活のなかでひたすら試験焼成を繰り返し、短期間で優れた作品を焼くようになった人もいます。

やきものは理論と制作、センスが複雑にからみあった分野だといえると思います。

そして、陶芸作品は、窯で焼くまで完成しないため、結果を確認するためにはある程度の時間がかかってしまいます。そのため一つのスタイルを追求していても、あっという間に数年が過ぎてしまうこともあります。知識は無駄なトライ・アンド・エラーをなくしてくれます。

また日本人は土と火を使うこの仕事を、神聖な気持ちでとらえているということもあります。初窯のお供えはこれこれをすること、女は窯場に入るな、火を止めるときはこうしろ・・・。そういう部分を否定はしません。大事なことだと思います。わたしも窯焚きのときには御神酒をあげ、仏壇と神棚にお参りします。しかし、そういう感覚が、本来科学的であるはずの技法書や教育現場、陶芸家の思考回路に、無意識のうちに組み込まれていることも事実です。海外の陶芸の書籍などを見ると、当然ながらそういう部分がまったくなく、情報も技法もオープンで気持ちがよいものです。しかし欧米の陶芸家は日本陶芸をそうとう意識しているそうなので、そうした精神も伝えていくといいのかもしれません。


書籍についていろいろと書いてみましたが、わたしは是非、陶芸に関わる人には、こうした本を読んでみてもらいたいと思います。一体どれぐらい陶芸の世界にひろがりがあり、自分はどこでどっちを向いているのかを知るのは悪いことではないものです。

またプロならば、自分と人との考え方の違い、方法を知ることもできます。また、自分だったらどういう本を作るか、と考えて読むのも面白いと思います。よく「誰それはダメだ」とか「陶芸の技法書などろくなものはない」という陶芸家がいます。そう思うならば、なにが正しいか改めて啓蒙するのも陶芸家のしごとではないでしょうか。

残念ながら亡くなられましたが、十数年前にお会いした芳村俊一氏の言葉を最後に書いておきます。


「よいやきものは人間の頭の中にある」
 
http://inoueseiji.com/ 

 ↓ ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。  

にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 20:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2008年03月14日

ボチボチですが開始しますね。


こんにちはイノウエセイジです。

以前から個人的なブログはもっていました。

そのなかで陶芸のこともかなり書いていましたが、ドメインを取得したのを機に、陶芸に関することは、、こちらに一括することにしました。

  「(仮)陶芸家イノウエセイジの頭の中」

へんなタイトルですが、今のところのインターネットに対する時の正直な実感です。なるべくたくさんの頭の中の情報を、ネットの中に投入したいと最近思っています。

一子相伝ではないですけれど、いままでは人並みに秘密にしていたこともありました。でもどれもこれも、たいした秘密じゃないんですよね。

今の陶芸家としての自分を形成したのは、すべて人です。

人が研究して書いた本、人が教えてくれたこと、人が見せてくれたこと、人が与えてくれた仕事。そしてほんのわずか、それらを組み合わせて自分で出した新しい解釈や答え。

画面では人の経験や知識を伝えるのには足りないところも多々ありますが、多くの人に読まれるという利点があります。そんなことは今更かもしれませんが、そのせいで間違った情報も非常に広範囲に広がっています。2年前から、生涯学習センターで人に陶芸を教えるようになって、そうした弊害を実体験として強く感じています。

ということで、このブログは自己顕示欲よりも、幸運により、たくさんのバトンをもらった人間の、義務感みたいな部分で書いていきます。

でも、なるべく楽しく読みやすくなるように努力していきます。

よろしくお願いします。


にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
posted by inoueseiji at 13:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

あなたのクリックでオジサン泣いちゃいます→ にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ