2024年11月28日

訓練方法を考えることができるか【液化石油ガス設備士試験】

こたつのヒーター交換工事をしましたよイノウエです。

さて。


液化石油ガス設備士の学科に無事に合格しました。
正直7割ぐらいまた落ちたと思っていたので大変嬉しい。

また、というのは14年前だったか一度受けたことがあるのです。
その際に第二種電気工事士やいろいろと取りましたが、液石だけ落ちたんです。
なにしろ国家試験ですし、大沢ガス炉商会で作業の経験があるとはいえ陶芸窯の仕事で、街のガス屋さんと比べればはまったく知識も経験も足りませんでした。試験の勉強もいまほどネットに頼ることもできなかったですしね。

知人のガス関係の方からは、試験は年々難しくなっていると聞いていましたし、そもそも法律や規則は年々増えていくものですから、試験問題も変遷していきます。わたし自身も14年前は「バルクって何なん?」という状態でしたが多少は人生経験とともに設備などへの知識や経験も増えてきました。

以前ここにも書きましたが、これまで仕事でのガス窯の工事を通じてやっぱり自分に液化石油ガス設備士の免許があったほうがいいと思うことがありました。そして陶芸窯に関わるこの数年の無資格によるいろいろな事案に相談されたり、自分も当事者の一人として関わったりする中で、もう一度受験しようと思ったということでござんす。

しかし。

オジサンは記憶力が低下しています笑。
昨日のお昼はなんやったかいな?というお年頃です。

試験勉強は、学科の配管理論はいいとしても、法令の方はかなり苦労しました。
一回では覚えられませんので、毎日毎日酒も呑まずに勉強してきました。

いよいよ学科試験当日。

なんと、苦手な法令はスラスラ答えられたのに、配管理論の方で苦しみました。知っている問題だけど出し方が違うとか、ネットで出ないといっていた分野から出てるとか笑。

そして数十年ぶりにマークシートあるあるを体験しましたよ。

⋯こんなに3が続くか?

とかさ笑。


翌日に回答がネットで公開されて自己採点。
多くの資格がそうであるように液化石油ガス設備士も6割で合格です。

法令は15問中12問正解。8割です。

配管理論はというと。

20問のうち、絶対に正解しているのは10問。
絶対に間違ったのが5問。
ひっかけに途中で気がついたり、書き直したりして、解答の記憶が曖昧なものが5問。
12問で6割ですからこりゃダメだと思っておりました。

しかし先週通知が届いて合格が確定。
めちゃくちゃ嬉しかったオジサンです。

そして。

次は実技試験があります。

配管工事をする資格ですから、配管を作ります。

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こんなやつ。

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昔なつかしネジ切り機「しぶろくくん」。
寸法どおりのネジ切りになるように微調整をすることが重要です。


これを試験当日に、発表される寸法で、気密試験の実施を含めて1時間以内におこなわなければなりません。つまりこの配管は遅くても45分ぐらいで作成する必要があるということです。

試験会場は初めてのポリテクセンターでどんなところかもわかりません。半分外みたいなところかもしれません。

試験は割り当てられた限られたスペースで作業をおこなうようですから、訓練としては工房の片隅に狭い空間を設定し、寒い中で時間を区切って試験問題の配管作業をする練習を始めました。
訓練方法を考えることができれば濃密な練習ができます。寸法取りとネジ切りはこれまでの経験がありますし、数回練習すれば問題ないところまでカンを戻すことができました。

あとはひたすら組み付けの練習をするのみです。
どの順番で部材を組んでいくのか、組み間違いに気をつけて、無意識でできるようになるまで。
意識して寒くて狭い空間で特殊訓練をしておけば、本番で広くて暖か〜いと余裕を感じることができるかもしれません。

自分が現役の若いガス屋さんたちに勝てることがあるとしたら、長く教える仕事をしてきて、また自分も趣味の世界で誰かの生徒でもあるので訓練方法を考えること、思いつくことができることぐらいでしょうか。

そんなわけで日曜日の試験を前に、いまの段階で用意スタートから配管作業完成まで35分でできるようになりました。
実際は緊張の中、ゆっくりめの作業をすると思いますので、配管完成まで40分として、気密試験に10分弱、もし配管間違いがあって組み換えをするとしても10分のあまり時間があれば問題ないでしょう。

もちろん油断大敵で前日までしっかりと練習を続けていきます。
12月1日に実技試験、1月初旬に合否がわかります。



陶芸窯の世界をよくしていこう!
posted by inoueseiji at 08:18 | イノウエセイジの頭の中

2024年11月25日

白化粧は器ぐらいにしておいてほしい

すっぴんが美しいと思いますイノウエです。

さてさて。

中古炉でレンガ壁にアルミナコーティングみたいなものを塗っているものがあります。
また、自分で塗ってしまう陶芸家さんもいらっしゃいます。炉壁にそんなことしてもなんの意味もないから止めましょう、とこれまで発信してきましたが、ようやく意味がわかりました。

ようするに傷んだレンガをキレイに見えるようにして売りたいということですね。


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たしかに白塗りすればキレイには見えるでしょう。
むかしの穴でも補修跡も変色も見えなくすることができます。

外見も蒸気で傷んだケースや扉の鉄板も上から新たな鉄板を溶接してキレイに見せることもできます。それはそれで必要なことなのかもしれない。

けれども。


それを購入者に説明していないのはどうかなとわたし個人は思います。
また、炉壁になにかを塗ることは、やっぱりあまりいいことではないと思います。

まぁ個人の感想ですけど。

なにかが剥がれるときやヒーター固定用のピンを抜くときに余計な周りの部分もくっついて崩れることもありますし、いまの窯の状態をただしく把握できないというのも良いことではない。

あくまで一つのヒントですが、中古炉を購入しようとしている方は、こういう部分も意識されてはいかがでしょうか。見た目がキレイということは性能や寿命に全く関係がありません。

もちろんケースのシルバーペイントはサビ落としをして再塗装するべきですが、耐火断熱レンガの表面になにかを塗るというのはあまり良いことのようには思えないのです。

さらにそれが業販されて、窯のことがわからない業者が、窯のことがわからないお客様に売ってしまう、ということになる。
見た目をキレイにしたいのなら中身からキレイにしないと意味はないと思うんだけれどさ。

そういうことが見えてしまうオジサンになってしまったなぁとつくづく思います。



そうそう。

液化石油ガス設備士の学科は合格しました。
今度の日曜日に実技を受けて来ます!
posted by inoueseiji at 05:59 | イノウエセイジの頭の中

2024年11月22日

陶芸家でもないのに陶芸に関わる方々へのヒント

今日は晩ごはん当番でしたイノウエです。

今週は教育系のところと医療系のところの窯の補修が重なり、それぞれで同じような話をしてきたなぁと思ったのでこのネタ。

意外にも陶芸家でも陶芸家になりたいわけでもない人で、陶芸体験や教室に関わる方々というのはいらっしゃいます。作業療法士さんであったり何某かの教育施設に関わる方、NPOのスタッフの方、専攻は油彩だったけど美術の先生になって陶芸クラブの顧問になった人、配属された生涯学習センターに陶芸教室があったりした人たちです。

電気炉が設置されている施設が圧倒的に多いと思いますので、今回は窯詰めと焼成についてよりも、よく起きる乾燥のトラブルとその対策についてお伝えできれば、もしくはそのヒントでも示せればと考えます。

何日も何週間も十分に乾燥させているのに素焼きの窯の中で爆ぜる、ようは爆発しちゃうという場合の原因と対策について確認してみましょう。

その前にまずは乾燥方法ですが、メインの業務の合間の陶芸関連の作業ですから、

  • 確実で
  • 破損がなく
  • 放置していてもいい

という条件を満たすものとします。

理論理屈は下の動画などを確認してください。なによりも重要なことはそのまま板の上で放置していてはイケないということです。
「え、そうだったの?これまで問題なくやれてきたけど〜」という方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそれがベストの方法ではないということは知っておいてください。

特に不特定多数の人が出入りする空間においては放置はあまり良いことではありません。おすすめなのは透明のプラケースと新聞紙の組み合わせです。なぜ透明なのかというと、動画にあるような積極的な乾燥方法も取れるからです。また中が見えるというのも大きなメリットです。

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(ホームセンターに売ってます)



(質問は動画を観てからお願いいたします)


(これを透明プラケースでするとよかですばい)

(ロクロの動画ですが5:17〜ぐらいからが参考になるかと)

爆ぜる(はぜる)というのは素地の中の水分が抜けきれずに水蒸気爆発するためです。

子どもの作ったものなどはお団子状になっていたりすることがありますが、厚みが1センチ以上になれば爆ぜると思ってください。

そのあたりのイメージが掴みにくい方にお伝えする例えとしては「それがお肉だとして、その厚みをフライパンで均一に焼けるか?」と考えてみるとわかりやすかったようです。分厚いお肉でもステーキ用にカットしていれば両面を焼くことができますが、カタマリ肉ではそうはいきませんよね。それと同じイメージで結構です。

厚みがあるばあいはカキベラですこし中をくり抜くとか、大人であれば本人にそのように伝えて作陶するなどの工夫が必要になります。

素焼きについては800℃で8時間程度の設定であれば、十分に安全なゆっくりした焼成プログラムです。それで中の作品が爆ぜるのであれば明らかに厚みと乾燥状態が原因です。窯や粘土が原因で爆ぜることはありません。

  • 厚すぎると乾燥が十分でも爆ぜる
  • 乾燥が不十分でも爆ぜる
  • 昇温が早すぎると爆ぜる
  • 4時間とか5時間で800℃は早すぎ



過去記事にも詳細がありますのでリンクを貼っておきます。

作品を乾燥させる(2008年9月23日)



次は釉薬ですが、また今度にしましょう。

posted by inoueseiji at 07:42 | イノウエセイジの頭の中

2024年11月21日

筆と窯で考えるコストの話【窯の選び方】

福岡アーツ・アンド・クラフツで爆買いしましたイノウエです。
またいつかその紹介もしてみましょう。

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さてさて。

先日生徒さんとの会話の中で、窯のクオリティというかどこにどんなコストがかかるのかという話の中で、いろいろな例え話をしました。その際に手元にあった絵付用の筆を手にとって説明したら結構納得していただけた、なんてネタ。

やきものは手と窯さえあれば作り出せます。極端なことをいえば焚き火があればいい。
つまり特定の道具が必要なのではなく、知識があれば良いということです。

やきものを生み出さすためには別に電動ロクロもコンピューター制御の電気炉も必要ではありません。
そのような視点で設備や道具を見ていくことも重要です、ということです。

窯ではなにが重要でしょうか。つまりメーカーが製造する窯炉としての重要な要素は何か、ということですね。

まずは設計、つまりは炉内の寸法や容積にかかわるバランスです。
次はといえば断熱材となる耐火レンガなどの素材です。
そして次の次にその厚みや施工方法ということになるでしょうか。

窯のことばかりを説明してもわからないこともあると思います。先日説明させていただいたのは、絵付用の筆を手にして、この筆でもっとも大切なのは穂先であって、軸ではないという例え話でお伝えしました。実際に絵付用の筆、特に下絵の筆などは消耗品です。その消耗品の中で重要なのは穂先、毛の部分です。軸はある程度まっすぐであれば良いということです。厳選された軸に和紙のラベルを貼って「〇〇堂 謹製」なんて立派な軸は必要ありません。

かといって。
残念ながら100円ショップの筆ではどうにもなりません。
これでも大丈夫ですよ〜、なんて言う人はだいたい本来の絵付用の筆を使用したことがない人です。
ちなみに本物だからといって高くもありません。なにしろ消耗品ですからね。

クルマやバイクの中古でもそうです。
ボディのキズは後で補修や部品交換出来るわけですし、タイヤの減り具合なんてどうでもよろしい。
それよりもどのメーカーの車両でどのように乗られてきたのかやエンジンや足回りの状態が重要です。

そしてなんでも出来るクルマはありません。
荷物をたくさん載せたければ可愛さなどのデザインを犠牲にするしかない。デザインを優先すれば居住性を犠牲にしなければならないかもしれない。スピードを追求すれば燃費は無視するしかなくなるでしょう。


そういう見方が窯でもできるかどうか。


プロになることをドコカで意識している方に重要な考え方があります。
すでにルール無用の公道レースは始まっていて、何周も先を疾走している作家がそこらじゅうに履いて捨てるほどいるわけです。

果敢にもアナタはそこへ今更ながらの殴り込みをかけるわけですが。


そのマシーンでいいのかな?


とはいえ。

本物のレースと同様にスポンサーや資金力の関係でマシンを選べないことはよくあります。でもコンチネンタルサーカスは進んでいってしまいます。スタートしていないよりはスタートした方が100万倍マシということです。

なんでも出来るクルマがないように、なんでも出来る窯はありません。
強いていえばガス窯になるのかもしれませんが、設置する環境を選びます。

今あなたに必要なものはなんでしょうか。

明確な作品のビジョンがありそれを具現化する窯?
よくわからんけれど還元焼成ができる窯?
とりあえず焼成できる環境を構築したい?
特定の環境で使用できるサイズの窯?

窯を手に入れるとかならず自分の考えや技術は変化します。
それも考慮に入れておくことをオススメしておきます。



たぶん頭でっかちになっている方の妄想としては、

  • 100Vの電気炉で
  • 64パターンのプログラム制御ができて
  • 還元焼成もガンガンできて
  • ヒーターの寿命が半端なく長くて
  • 補修も自分で格安でできて
  • サンマ皿も入るサイズで
  • めっちゃ程度がいい中古が25万円ぐらい?






うん、無い!
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posted by inoueseiji at 07:55 | イノウエセイジの頭の中

2024年11月15日

寝起きのとりとめのない窯選びの話

共栄電気炉製作所の牛田会長から「ブログの記事のアソコとアソコがちょっと間違ってますね」と優しく指摘される夢で目覚めましたイノウエです。

申し訳ございません。ブログ記事には間違いが多々あると思います。
みなさんも100パー信用しないようにお願いいたします。



さて。

昨日は熱電対のことなどを書いておりましたが、それは結局は選び方の話になっていくと思います。

お客様になるみなさんに窯の選び方を伝えるには、窯の基本の情報を教える必要があるでしょう。
窯の構造や素材だけではなく、熱電対のことも温度計のことも含めてです。ガス窯や灯油窯ではエントツのことをしっかりと伝えることも必要です。

例をあげれば、お付き合いがあるとはいえシンリュウさんの窯本体とエントツ部材が別見積なのはいまだに納得できません。エントツなしで焼成はできないのですから、わたし個人の感覚としてはクルマ本体とマフラーが別見積みたいな違和感があります。

また、先日補修のお仕事をいただいて、あらためて確認したシンポさんの電気炉のギリギリセーフな配線の状態や部品はもっとヤバいという気がします。それは内線規定としてはオッケーでしょうが、あくまで規定は最低ラインを決めているのであって充分というものではありません。

クルマの選び方みたいに、今自分が販売しているものや、これから購入を検討しているもの、すでに運用している窯がどのレベルのどの程度の窯なのかをわかっていないという状況はなかなか改善されていないように感じています。

しっかりと選ぶこと、すでに運用されているのなら適正なメンテンナンスを行うこと、使用方法を確認することが重要ではないでしょうか。

特に中古の購入には気をつけてほしいと思っています。新規の窯炉でトラブルことはほとんどありません。これまでわたしに相談されてきたものは95パーセントが中古導入の方々でした。


安くて使えるものが欲しいのが人情です。
それはよくわかります。

では安くていい器はあるのでしょうか。
使うたびに喜びを感じるような器があるでしょうか。

窯も同じです。
それをまず認識していただきたい。

中古が悪いということではありません。ウチのガス窯も中古です。
骨董の器みたいにとはいいませんが、良い中古の窯はたくさんあります。


プロ筋の知人などは厳しい意見も多いです。

”中古とか値段で判断する人に関与する必要はないって。
好きなように買って失敗すればいいんじゃないの?”

そうかもしれません。

でもそれでは日本のやきものは良くはなりません。
さらに言えば、そうした相談されるお客様はみなさん最初は業者などを信用して購入しています。
自分がよくわからない窯のことを、きっとこの業者さんならサポートしてくれるだろうという期待です。

ところが相変わらず地方に行けば行くほどその質は酷い。
窯の製造現場も知らないし、そもそも焚けない。

もちろん産地だからちゃんとしているわけでもないです。
築炉メーカーがみんなこんな考えをしているわけでもありません。
考えるのは社員ではなく経営側ですが、今月の支払いと人件費しか考えられない状態のところもあるかもしれない。

わたしは窯選びをクルマ選びに例えることがよくありますが、圧倒的に分母と分子の数が違いますので、実は比較にもなりません。
そしてこちらには車検も保険も免許もありません。

もっとも最近ではクルマを「メンテナンスする」なんていう意識がない人が多いそうです。

陶芸窯を販売する側は情報を発信する努力を続けていくしかありません。
そしてお客様になる側は情報を収集する努力をするしかないでしょう。

ただし根拠のない情報、顔の見えていない情報には気をつけてください。
もちろんこのブログみたいに100パー信用できないという前提で受け取りましょう。

なによりも焚ける人や窯を造れる人から購入しないとトラブります。

さて、あなたは最近いつ自分のクルマの空気圧チェックとオイル交換をしましたか?
エアクリーナーエレメントとかラジェーターキャップとかも交換するものですが大丈夫かな?
posted by inoueseiji at 07:41 | イノウエセイジの頭の中

2024年11月14日

熱電対の適正突き出し長さって知ってますか?

ようやく朝晩はフリースを着るようになりましたイノウエです。

現実世界の窯の仕事が忙しくなると途端に発信が途絶えてます。
しかし、そうしたお仕事の中で売りっぱなしでやりっぱなしの窯に出会うと、やっぱり発信をしなくてはと思います。
先日もとあるお客様のところで非常に傷んだ熱電対を確認し、補修をこちらから申し出ました。

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なぜそんなに傷んでいたのかというと、炉内に出しすぎている上に、差し込み穴と細めの保護管との隙間がそのままだったためです。熱電対の差込口と保護管との隙間は、道具土などで塞いでおきましょう。

そのために排気や蒸気が熱電対の保護管と補償導線の端子部分を腐食させていたということですな。じゃあ、これは誰の責任なのかといえば、なんの説明も出来ない売りっぱなし業者の責任が9割、ただしい熱電対の挿し方を知らなかったお客様が1割ぐらいじゃないのか?というのがわたしの個人的な感覚です。

どこの学校でもいいけれど、熱電対の適正な炉内への突き出し長さを習ったり聞いたりしたことがある人はどれぐらいいるんでしょうか。わたしもそんなことを習ったり聞いたりした記憶はないですね。仕事で色々と見るうちに自然とこんなもんだろうという基準が自分に出来たようなものです。

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電気炉であれば側壁に沿って出していることがほとんどでしょう。
ものが当たらないような場所ですね。

この突き出し長さはメーカー事に微妙に違いますが、個人的な経験則としては「スペースなどが許せば少し長めに出すほうが正確な測定にはつながるが、かといって短めが絶対にダメでもない」という感じです。これは多くの作家さんなどが同意見ではないでしょうか。

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問題は制御に直結された最初から組み込まれてた熱電対ではなく、ガス窯や薪窯、電気炉でも中型以上で自分で差し込むタイプのものでの突き出し長さです。さらには測定する場所、つまりは差し込む場所もあるかもしれません。

あまりにも長く出すと作品と干渉してしまうおそれがあります。また高温焼成の方であれば斜めに突き出した保護管がいつの間にかふんわりと熱で曲がって抜けなくなるなんてこともあり得ます。だらりと曲がった熱電対の保護管を製陶所や穴窯などで見たことがあります。

また差し込む場所ですが、これまで熱電対の保護管を折ったり割ったりしたことがある方は、そもそもの測定場所を見直した方がいいのではないかと思います。窯出しのたびに抜き差しをすることなどはリスク要因と考えたほうがいいように個人的には思います。

登窯の温度計測で、各燃焼室に熱電対を挿しているなんてことがあります。まぁ大学とか施設などの窯ぐらいしかないとは思いますが、たくさん測定すればいいというものでもありません。測定後の分析とかあとで資料をもらった覚えもないですし。

ガス窯の天井アーチと扉側の2本で温度計測をする方もいらっしゃいますが、それもストレスが増えるだけで大型炉のお客様意外には特にオススメはしていません。小型炉でそういうことをすると上下の温度差がどうしたこうしたと騒ぐことにもなりますが、温度差ができるのが窯炉であり、その温度差によって焼成室の温度は上がっていくのです。そのあたりの理屈に興味がある方は自分で本でも読んでください。

まぁいいや。

それで熱電対保護管の適正突き出し長さですが、直径のn倍とかいろいろとあるようですが、わたしの個人的な感覚では小指の長さも出ていれば十分だと思います。

もちろん保護管の中がどうなっているのか知っている方は自分で判断されれば良いわけですが、初めてそんなことを考えた、なんて方や、これから窯を購入しようと検討していて、その窯が自分で熱電対を差し込むタイプの窯、つまりガス窯や灯油窯なんだよね、という方には「小指の長さ出しておく」と感覚的に覚えていればいいと思います。そこまで大間違いではありません。


あ、中指でも良いですが意味合いが変わるといけませんので小指にしておきましょう笑。

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気がついたらジョー・ストラマーよりもオッサンになってしまったよ。
関係ないけど好きな曲貼っておこう。


posted by inoueseiji at 08:29 | イノウエセイジの頭の中

2024年11月01日

事業継承するほど窯が好きなのか?

結局のところ、自分がしているその仕事を好きなのかどうかということろなんでしょう。
外の世界に自分を探しても見つからないように、自分が何をしたらいいのかなんて死ぬまでわからないんでしょうけれども、今目の前にある仕事を好きになるしかない。

仕事を好きになるということはお目々がハートマークになっているようなノボセた状態ではなく、気がついたら25年ぐらいやってるなぁというようなことですね。

わたしはなんとなくボヤ〜っと陶芸家になりたいなぁ〜みたいな甘い動機で訓練校に入りましたが、芳村俊一さんをきっかけに窯造りを仕事にしました。瀬戸の大沢ガス炉商会で働けたことは自分の人生の軸でありプライドにもなっています。

大沢ガス炉での印象的な出来事はいろいろとあるのですが、創業社長がお元気で、今の社長と工場で一緒に溶接とかをしていた頃、何気なく会話の中で言われたセリフがあります。なんの流れでそういう言葉が出たのか覚えていませんが「オレもなんだかんだで窯造るの好きやでなぁ」と何気なく現社長が言われたんです。

いま思えば彼もまだ40歳前ぐらいだったのではなかったでしょうか。家の仕事だからなんとなく自然と手伝い始めたのかなぁと失礼ながら思っていたので、それは意外な言葉でした。当時わたしもすっかり窯の仕事が好きになっていたので、今でも妙にその光景が記憶に焼き付いています。


窯の仕事が好き。


それはやきものが好きだということですし、それに関わる工場や人が好きということです。
そしてその人々を支える街や地域が好きということです。

わたしは若い作家さんが自分で建てた掘っ立て小屋から大豪邸まで様々な場所に窯を納めてきました。いろいろな人がいて多種多様な仕事のあり方があります。そういうやきものに関わる人たちを等しく応援したいと思っています。なかなか難しいですが。

わたしは窯の仕事を大切に思うからコツコツと努力は続けています。
製造に関わらなくなったことは寂しさもあります。
まぁ今年は珠洲焼の薪窯に関われたけれどもレンガ運んでモルタル練っただけだったし。



昨日のネタの陶材屋さん。

それぞれに事情はあるのでしょうが、仮に事業継承してまでこの仕事がしたかったのならお客様を不安にさせてはいけません。

お客様の窯はあなたの練習台ではない。
窯の仕事は陶芸家の人生にかかわることです。

逆にサラリーマン時代に仕事にしていた得意な部分があるんでしょうから、それを陶芸にからめたことを事業の軸にすればいいのではないかと勝手ながら思いますし、本人もそう思っているんだと推察します。もっとも釉薬屋さんや粘土屋さんがどれほど大変な仕事なのかは知らないのかもしれません。

とはいえ今さらクレーンの資格とか電気工事士の免許なんて取るのも実際は大変なことですし、おそらくその気もないとお見受けします。ロクロや窯焚きも覚えるには時間が足りなさそうですし、これもその気はないんでしょう。


そんなことよりも。





あなたは窯が好きですか?




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posted by inoueseiji at 07:40 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月31日

都合の良い解釈【陶芸窯の補修など】

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(太宰府天満宮!)

これまで数件ですが、ふくおか陶芸窯をすっ飛ばして共栄電気炉製作所に話がいったことがあります。
ようするに、コイツは信用できないと思ったか、メーカー直販ならもっと安くなるかもしれないと思われたとか、そんな感じなんでしょう。

別にそれはそれで好きにやってくださいというスタンスですが、ちゃんとコチラに連絡も来るし、メーカーさん直でも安くもなりません。なぜならこちらがサービスしている部分がそれなりにあるので、結果高くなります。そうでなければ商売になりません。

もちろん、ネットで同型機が安くなっているのも知っていますが、それを選択される方は価格重視なので仕方がありません。

それが資本主義というものでしょう。われわれだって地元を無視してAmazonとかで購入しつつ、ここらもシャッター街になっちゃったねぇ〜なんて言ってますからね。

それよりも今わたしが心を痛めているのは、無資格・未経験でこの陶芸窯の仕事をどうにかしようとしている地元の業者のことです。

そんなことをイチイチ言うなと言われるでしょうが、代表者が変わった途端、そこのお客様から数件の相談を、中には突然休日の朝っぱらとかに、いただいてきたわたしとしては無視もできない気持ちです。


こんな記事やめろって?

そうだね。

意地悪です。

嫌味です。

自分が損するのも重々承知しております。

でもね。

安全第一です。



何も知らない人は、お店と会社を構えていれば、プロのちゃんとした方と思うんじゃないですか?
ましてや知人や教室の紹介だったり、友人もむかしそこで窯を購入していたりしたら。

ところがその人は単に定年退職後に事業継続しただけの業界未経験者、ただのサラリーマンだった人みたいです。

しかも元々の陶材屋が信楽の漢字名の築炉メーカーの代理店なので、なんの経験もないのに中古の窯とか売っている。まぁプロの礼儀としてどちらも今回は名前を伏せておくよ。

べつにそれはいいですが、それで嫌な思いをされている方がいるのは事実なんですよ。
さすがにその業者を選んだことまで自己責任ってなるかな?
それはあんまりだよね。

搬入作業は全員素人とかさ。
お客様のたとえが良かったですね。
「クレーン作業中の窯がブランコみたいでした」だって。

⋯いつか事故るよ。



実はわたしはそうした方々からの相談から、その業者とやりとりをしたこともあります。
会ったこともあります(搬出の手伝い賃はサービスしてやらぁ)

わたしとのやり取りなんて楽しくはなかったでしょうが、保有資格をお聞きした際に「電気炉の補修に免許はいらないのでは?」なんて都合の良い解釈をしていたのも怖い。


ヒーター線の交換には電気工事士免許が必要ですよ。
電気がキライなわたしだって仕方ないから取得しました。
子どもでも取得できますから、ぜひ取得してください。



★経済産業省の資料を添付しておいてあげますから。



もちろん工場で組み立てる際に配線するような時には免許なんて必要ないです。
なぜならその後に有資格者が二重三重のチェックをおこなってマーキングしたりしますからね。
それが製造メーカーでの作業ということです。

一度お客様のところで電源に繋がれた電気炉はダメだって。


お客様になる側のみなさんに一つだけアドバイスさせていただきます。
特に電気炉の補修などは、業者さんの電気工事士免許を確認してください。
大事なことだからしつこく書いておきます。

ちゃんと持っているところはホームページに記載しています。
いくつか業者さんなどを検索して確認しましたが、保有されている所はしっかりと記載がありました。

ウチも保有資格は最初のページに載せています。

築炉メーカーではない業者で、載せていないところは持っていないと判断しましょう。
運転免許と同じで求められれば提示する義務があります。聞くことは失礼ではありません。
また代理店が持っていないことを分かったうえでヒーターを供給するのも問題だと思います。
そういうメーカーさんには一人も電気工事士がいないということなんでしょうか。

まぁね。
確かにむかしはこんなに厳しくなかったよ。

だけども。

こんなん免許いらんやろ?とかいう人種が事故を起こしてきたからこうなったんじゃないのかな。
またこの業者みたいな人が事故を起こしたら更に厳しくなりますよ。

それでいいのかな。
日本のやきもの業界は良くなるのかな。







安全第一です。
そしてイノウエはしつこいです笑。
posted by inoueseiji at 07:25 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月20日

アナタのおっしゃる通りでした【シンポ電気炉】

三周まわって”シンポさんの電気炉に限っては”動画でおっしゃる通りでした、という話。

ヒーター線の素材、加工の方法、ヒーター線の取付場所、炉内容積、裏の配線の素材、接続方法、排気孔の有無、制御装置の仕様、などなどメーカーごとに全然違うというか、シンポさんだけ特に違います。

シンポといえば電動ロクロです。
わたしも何台も持っております。
スラブローラーも持ってます。

とはいえ。
窯について他の築炉メーカーと比較すること自体に無理がありました。
同じレベルで語りようがないですから。


でもね。

もしわたしが瀬戸で修行せずに、ただロクロだけをやっていて。
ず〜っと九州に住んでいたら、シンポさんの電気炉を購入したかもしれません。

なにしろ機材に関しては電動ロクロを通して「シンポ」という名前だけ、いやシンポさんしか知らなかったでしょう。


共栄電気炉製作所?
大沢ガス炉商会?

聞いたことねぇなぁ。

シンリュウなら聞いたことあるけど柳北信のことだっけ?
(これをオ◯ワ社長に聞いた人がいるのは秘密 笑)

そんな感じになっていたでしょう。

しかしわたしは瀬戸の築炉メーカーで修行してしまいました。
シンポさんの古い窯も貰いもので持っていますが、お金を出して買うことはないでしょう。

ということで今回は。
これまでの経験を総合して、電気炉の構造でみなさんから見えない部分の話をするつもりです。

まず。

電気炉は読んで字のごとく電気を熱エネルギーに変えて高温を得るものです。
窯は断熱も重要ですが、なによりも熱源がなにかというのが重要な要素ですよね。

その電気炉の配線に使用する電線の部材やその接続方法についてのこと。
今日はちょっと長いかも笑。

まずは動画で紹介されているDMT-01の裏を開けるとこんな感じです。

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白い電線は2sq(2スケと読みます)
細い銅線を束ねている電線、より線です。
より線とは細かい銅線が何十本も撚り合わせてあるということです。

KIV線(可とうビニール絶縁電線)のように思えますがどうなんでしょうか。

四角い接続金具でヒーター線のつながっていますから、被覆はいくらなんでも普通のビニールじゃなくて耐熱のH-KIV線というもの、もしくはそれに近い被覆電線なのではないかと思ったんですが。

市販の電線は被覆にメーカー名とかサイズの表記がありますが、確認できなかった。
記載があった個体もあったと記憶していますが、この写真のものでは無かったようでした。

ビニール被覆だと耐熱温度は60℃ぐらい。
H-KIVだとしても80℃ぐらいで、メーカーで若干差はあるようです。

でも、実際に補修の際に触った感じは「これ耐熱か?」という感じです。
窯を製造しているのは中国工場ですからわかりません。

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2sqだと端子のサイズも小さいです。
写真のものはDFA-8(8.3kW)の配線の割れた圧着端子です。もちろん交換しました。
それにしてもDMTと同じ電線サイズってのがコストを押さえていてスゴいですが好感は持てませんね。

とはいえ違法ではなく、ちゃんと法規上問題ない製品を製造されています。
こっちとは常識が違うだけで、安心して購入していただけます。誤解のなきよう。

せっかくですから宣伝しておきますね。勝手にリンクすいません。

税込48万円ですが実売価格は40万円ぐらい。

DFA-8 
本体のみ税込100万円以上ですが実売価格は80万円ちょい。
あと設置費と電気工事費かな。




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ふくおか陶芸窯が取り扱うKCシリーズを見てみましょう。


IMG20231124143650.jpg

KCシリーズは共栄電気炉製作所製の電気炉です。

手前の青いK-240C。
真ん中はK-2430C。

この2機種は100Vの家庭用電源で使用できるモデルです。

240Cは税込39万ちょい。
オジサンのサポート付きです笑。

IMG20231213140017.jpgIMG20231213140020.jpg

炉内は丸いです。共栄電気炉製作所さんも100Vで四角いモデルがありますが。
なぜKCシリーズは丸いのかという話は以前動画にしましたのでよろしければご覧ください。


まぁそれはいいとしてKCシリーズです。

裏返して配線部分を見てみましょうか。

240_1019_1.jpg

白い電線は「シリコンゴム絶縁ガラス編組線」という特殊な耐熱電線です。
この電線の主な用途のひとつに「電気炉」とカタログに明記されています。
180℃の環境まで使用できます。

そしてヒーター線につながるこの白い電線だけは太さが3.5sqです。
許容電流は2sqの1.7倍ぐらいになりますし、物理的に太くなるのは安心です。

そして端子台につながっている黒い線がシンポさんの電線と同じサイズの2sq。

sqとはスケアのことで電線のサイズを表す規格の一つです。
2sqとは2平方ミリメートルのことです。3.5sqとか100sqなどと表します。電線はなかの銅線のサイズを基準にしないといけません。電線の被覆はいろいろな素材やサイズがあって、おなじ2sqでも電線自体の太さはさまざまです。

3.5sqと2sqの導体(銅線)を直径でいえば2ミリ強と1.6ミリという感じです。
許容電流はメーカーで若干の差はありますが、それぞれ40Aと24Aです。
このように電線でこの直径の差はかなり大きいのです。

どこにどの線を使うのかはメーカーの考えや業界の常識で決まっていくということです。


KCシリーズは円筒形の炉内を窯の上半分に設置して、配線や制御装置を一番下に配置することでファンレスになっています。
つまり電気炉の稼働中にファンがまわる音がしないということです。工房ではない普通の部屋ではこれは大きいです。

また以前もどこかで指摘しましたがDMTには排気孔がありません。
DFAは天井部にありますが、それはKCシリーズの排気孔よりも小さい。還元焼成対応ということもあるでしょう。
エントツの無い電気炉で「設計する側が」排気を意識しているのかしていないのかは、本体に様々な影響を与えるのは間違いありません。

これも電気炉選びの非常に重要な要素になると断言できるでしょう。


共栄電気炉製作所の本社工場は岐阜県多治見市にあります。
愛知県瀬戸市のお隣で、ご存知のようにどちらも”やきもの”の街です。

もちろんメイド・イン・ジャパンです。


(電気炉一筋80年!)


→→→→→→→→→→→→→→→→→


ここからはわたしの個人的な感想です。


シンポさんで電気炉を設計した方は「140キロのスピードメーターがついているクルマは時速140キロで走り続けられる」と思っているじゃないかと想像します。

電線などを選定するのにカタログだけで選んでいたんじゃないのかなと疑いたくなる。
そして、あまり窯焚きをしていない人なのではないでしょうか。
違ったらごめんなさい。あくまで個人の感想です。

まぁでも、スピードメーターや圧力計のような計器というものは、通常使用する数値の倍ぐらいを選択するというのが常識です。
例えばガス窯であれば、焼成中にガス圧を20kPa程度までしか上げないのだったら、その窯には50キロパスカルの圧力計をつけるのが正解です。

測定値が20kPaだからといって20キロパスカルの圧力計をつけてはいけません。
それはなんとなく想像できると思います。

電線でもそうです。

電気の世界の常識として、15Aなら20Aのブレーカーを、30Aなら40Aのブレーカー、75Aなら100Aをつけるとか、ゆとりをもたせるようになっています。電圧も同様です。

前述のように電線も太さによって許容電流が、種類によって電圧なども決まっています。
なにかに配線をするときに、許容電流や電圧ギリギリで使用する感覚は電気屋さんには普通はないと思います。
というかそんな職人も配電盤も見たことないです。

耐火断熱レンガなどの断熱材もそうです。
1500℃が上限のレンガで1250℃の窯を造ったら長持ちします。そのレンガでファインの窯を造ったらもちませんよ。カタログの数値は上限であって常用の使用範囲ではないということです。

50.0からアウトだと言われて49.9までセーフという考え方をするのか(ドーピング検査とかさ)、じゃあなるべく低い数値でやっていこうと思うのか。

これはやっぱり思想の問題だと思うんです。
作る側も使う側も、です。


炉内の広さもそうなのかも。
ヒーター線の熱量から計算上はこれだけ大きく出来るとしても、大きくなればヒーター線の寿命に影響します。その際に何回ぐらいの本焼きで寿命がきたらお客様は納得するのか。

もちろん機材ですから使用方法によって大きく変動はします。
でも誰がやっても1250℃で100回は持たないのは事実のようですし、ヒーター線の寿命に納得はされていない人が多いようです。

それよりも「業界一の炉内スペースの広さ!」と言える方がいい。
性能や寿命よりも「業界一」は確かにインパクトありますもんね。

「K-240Cのヒーター線は300回以上本焼きできました!」は想像しにくいかぁ〜。
(理想的な使用状況によるもの:厳密には370回オーバー)


そしていつの間にかシンポさんのカタログから消えているガス窯と灯油窯。
もうそういう経験がある人はいなくなったのでしょうか。
まぁガス窯なんかは前から得意ではなかったようです。

あとは購入する前に検索するのかしないのか、ネットで買えれば面倒なくていいやとか、ちゃんとしたところで購入しようとか、お客様が判断すればよいことです。


どっちがどうではないです。

シンポさんの選択した炉内の広さも正義です。
焼成中に開かないようにするロック機能も正義です。
子供がやけどしないように排気孔を設けないのも正義です。
利用者にヒーター線の交換をさせるのも正義。

一人ひとりに正義があるように、メーカーごとに正義があります。
あとはその正義をくらべて同じ方向を向いているかどうかを確認しておくだけです。


なにも間違ったものは販売されていません。
ただ購入しようとする人たちのリサーチや選択は間違うことがある。
だから情報発信して、共有して、ときには注意喚起していこう、とわたし個人は考えています。


ふくおか陶芸窯にも、シンポさんの電気炉をもっている、使用しているという個人や法人のお客様がいらっしゃいます。
これまで通りサポートするだけではなく、今後は必要に応じて電線の交換などを行っていこうと思います。


窯は大切な設備であり道具です。
ご質問等はいつでもお問合せください。

購入を検討されている方の資料請求もお待ちしております。

ホームページ見てね〜!

posted by inoueseiji at 06:41 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月18日

文章化できないけれど見えてきたこと

10年前の今頃はフリースとか着ていた気がしますイノウエです。

コツコツと電気のことを勉強してきました。
電気工事士になってかなり経ちますが、経験値はまだまだです。

電気関係の友人や共栄電気炉製作所のみなさんにいろいろと教わりながらやってきました。
ヒーター線の張替え、配線の補修、制御盤の取替、その他いろいろ。

メーカーが無くなってしまった電気炉の補修やメーカーは存在しているけれども、ふくおか陶芸窯に頼みたいという有り難いお仕事をこなしてきました。

そんな中、なんとなく見えてきたもの。

8kw_k.jpg

これはかなり古い単相8kWの電気炉の配線。
改造されているしメーカーも不明。
(販売した陶材屋はわかってる笑)

制御のことなどを共栄電気炉製作所さんにお願いしてわたしが補修しました。

え〜確認します、
単相8kWです。


8kw_s.jpg
これも8kWです。
電線の太さと被覆。
接続金具は可愛いロボ顔のアイツ。

一枚目と同じ単相8kWです。
厳密には単相8.3kWです。

電線の太さは許容電流値としてはアウトではありません。
(よね?)

100V_s.jpg
これは100Vの電気炉。
まぁ言い方かえれば1.5kWです。

電線の太さと接続金具。

同じ?

同じなの?

IMG20241012130254_1.jpg
(モンクアルノカ?)


IMG20241012152852_1.jpg
これは単相8.3kWの配線の一部。
圧着端子は2sqでピッタリ〜。
(sq:電線の断面積のこと。2mm2)

違法じゃないけど。
(だよね?)

細すぎませんかね?

mon_ekiln.jpg
これまた大昔のどこのかもわからない電気炉の制御への配線。
これは10kWだったかな。

電線の被覆はガラス繊維で耐熱です。
そして太さ。

一枚目の写真の電線も同様の被覆です。


配線された環境の温度は電線に影響を与えます。
数値でオッケーであっても経験則でこうするよね、みたいなことでしょうか。

100Vと8kWが同じ(少なくとも接続金具は)というのはどうなんだろう?

思い過ごしかな。

いや。

誰が
どのレベルで
どれぐらいの期間使用するのか

という想定が違いすぎる、ということでしょうかね。






こんなの誰が選べるんだ?


メイド・イン・ジャパン万歳!

posted by inoueseiji at 07:42 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月17日

焼成中に強制終了できますか?

嫁と早起きウォーキングで満月とオリオン座。

moon1017.jpg

さて。

昨日の夕刻にちょっとした知り合いから電話。
シンポさんの電気炉で素焼きをしようとしたが、間違って1230℃のボタンを押してスタートしてしまった、やり直したいけれど止め方がわからないとパニクっていらっしゃる。

シンポの電気炉をもっているとも知らなかったし、なんでウチに電話してきたのかと思ったけれど。
シンポか設置業者か知らないけれど、窯か説明書にある電話番号に電話したが「現在使われておりません」とメッセージが虚しく流れるだけだったとのこと。

先日もシンポさんのDFAだったし、これまでも補修経験がある。また先日の補修の際に取説もダウンロードしていたので対応した。
ぶっちゃけなんの義理もないので有料案件だけど困った人を放ってもおけない。

まずはスタートボタンを長押しするなど、一般的な強制終了の手段を確認してもらったが出来ない。
説明書をみてもそのような項目はない。

その割にはヒーター線の交換方法などは載っている笑。

コチラから掛け直すから落ち着いてと、一旦電話を切り、今一度説明書を隅々まで確認。
これだなと思った部分があったので、同型を使用しているお客様にも電話して確認。

まちがいない。

電話してその方法を伝える。
強制終了。


営業所(設置業者?)が無くなろうが倒産しようが、こちとらどうでもいいけれど、説明書に強制終了とか設定のやり直しとかの記載が無いのはいただけない。
そもそも測定温度とプログラム設定温度の同時表示ができないのも共栄電気炉製作所に慣れている身としては非常にわかりづらい。ボタンがいっぱいあっても意味がない。

それはさておき。
マニュアルや仕事の段取りとしてはいつも最悪の事態とか、人は失敗するという前提で考えておかないと、AIロボットの開発みたいなことになって笑えないことになるだけだ。



そうそう。
間違ったプログラムを終了させる方法ですが、説明書の停電の項目をみてください。
電源を落としてすぐに復旧すると焼成プログラムも再開しますが、電源を落としてから

10分間放置して

電源を再投入してください。
そうすれば設定した焼成プログラムは消えます。

結構〇〇〇〇な仕組みですな。
(好きな言葉をいれよう!)



というわけで、誰かが検索するかもしれないからキーワードを残しておこう。





シンポ電気炉

DFA

焼成 

プログラム

強制終了




posted by inoueseiji at 06:02 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月16日

温度計測の仕組みがわかれば

早起きしたらオリオン座とご対面、イノウエです。

さて。

ここをたまに覗いてくださる方々は、炉内の温度計測がどのようにできるのかお分かりかと思います。
温度計と熱電対と補償導線が必須であり、とくに補償導線をあやまった電線などで代用している方がいるとか、熱電対を温度計と呼んでしまうアルアルなどの厭味ったらしい記事をご覧になったことでしょう。

先日のことですが、引き取った窯に付随してきた温度計や熱電対、補償導線のメンテナンスをしました。

温度計は本体をきれいにすること、接続する端子部分をきれいにしておくこと、一度中を確認して汚れやホコリなどの侵入がないかを確認しました。

IMG20241015152752.jpg
コチラのメーカーさんは、ちゃんと中の配線も補償導線でしたね。
というかアソコ以外はみんなそうんでしょうか。

補償導線はかなり劣化していました。線は問題ありません。末端の端子部分です。

IMG20241015171657.jpg
傷んでますね〜。まぁ色もどうかと思いますが。

IMG20200731155857.jpg
熱電対は問題ありませんでした。この写真は使いまわし。

温度計測の仕組みをおさらいすると、熱電対の白い保護管の中には細いワイヤー状のプラチナとプラチナ+ロジウムが入っています。二本の線の先端は溶接されており、保護管を炉内に入れて加熱されると、二本の貴金属の回路の中で、ゼーベック効果という原理で微弱な電気が発生し、その電圧を温度計で温度に変換して表示させている、という感じです。

電気炉であれば制御装置とセットになってすでに組み込まれており、ガス窯や灯油窯、薪窯では自分の手で熱電対をセットしなければなりません。その際に正しいセットができていないとか、写真のように長年放置して端子部分が劣化していると徐々に正確性は落ちていくようになるでしょう。

補償導線の終端部分の端子は補修して交換できます。電気屋さんの知り合いとかでもできるでしょう。特殊工具が必要です。
もちろん、ふくおか陶芸窯でも可能です。

IMG20241015171807.jpg
端子のサイズや形状はイロイロありますよ。

温度計と熱電対、そして補償導線はみなさんにとって必須のアイテムのはずです。
温度計を使用しないで焼成できる人がどれだけいるのかわかりませんが、わたしはもし自分が出来るとしてもやりたくはないです。
だとしたら、温度計測にまつわる機材や器具について、もう少し理解をすすめて手入れをしてあげてもいいのでは?とソっと提案しているのであります。

温度計については過去にもイロイロと書きましたね。
結構面白い記事だったと思います。



なにかお困りのことがございましたらお問合せください。

もちろん色見やゼーゲルコーンやオルトンコーンも併用していくと良いですね。
ご安全に〜!

posted by inoueseiji at 05:49 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月14日

やっぱり部品供給だけでは無理な気がします

他社製の電気炉でも補修できます、とホームページに記載しているので、いろいろなお問合せをいただきます。
先日もシンポさんの電気炉の補修に他県まで行ってきました。

お客様が問い合わせをメーカーにしたそうですが、特に代理店などは紹介されずにとのこと。
お客様が自力でネットでふくおか陶芸窯を見つけていただきました。ありがたいことですし、嬉しいことです。
そして、ふくおか陶芸窯にそれが可能なのは、どんなヒーター線でも自社で製造できる共栄電気炉製作所さんのお陰です。

さてさて。

陶芸を長く”営んで”笑いるからといって窯のことがわからないのと同様に、電気工事士になったからといって電気炉のことがわかるはずもありません。イノウエは「電気屋は電気のことを知らない」と電気屋さんに教えてもらったことがあります。

そもそも電気工事の範囲は陶芸と変わらないぐらい間口も奥行きも広いので、ロクロを回さない陶芸家がいるのと同様に、ニッパーなんて持ち歩かないでパソコンに向かっているだけの電気工事士もいれば、電柱に登る人から巨大な送電鉄塔のケーブルの上を命綱をつけて移動する人、工場で基盤に配線してハンダ付けをする人から、変電所の管理をしている人もいれば、配線やアースのために庭にスコップで穴を掘っている人まで、電気工事士の有り様は陶芸家同様にいろいろなんです。

そんなわけで。

窯を販売するのと補修するのはまったくレベルが違うといつも書いていますが、メンテンナンスをするとか製造するのであれば最低限の安全性やそのために必要な知識や経験を積むべきでしょう。今は昔ほど時間もかかりませんし、基本の資格や免許は誰にでも取得できます。

わたしが未だに友人からのオファーで年に数回ですが電気工事の応援に行くのはこういうノウハウを身に着けていきたいからでもあります。

友人の守備範囲がちょうど電気炉の補修などに応用できる範囲だからというのも大きな理由です。

IMG20241012130254_1.jpg

これもシンポさんの電気炉ではよく使われています。
ロボットの顔みたいでカワイイな。

これはパーツとして販売されていますが、上の写真のものをどうするのが正解なのかなんて、やっぱり一般のユーザーに委ねるのは無理な気がします。美術教材のカタログで電気炉を販売する方にも無理があるでしょう。

まぁでも自分でなんでも出来るぜ!って方も多いと思いますので、こいつについてちょっとメモを残しておきます。自分もいつかどこかの現場でこの記事を確認するかもしれないし。

まず接続金具の本体はたぶん真鍮で、サイズは16×17×11ぐらい。穴のサイズはネジの部分は全部M4です。止めネジ(オメメのとこ)はM4x8で、配線の端子を固定するところ(お口のとこね)はナベ頭の小ネジにスプリングワッシャーとワッシャーのセットでM4x5です。

ヒーター線を突っこむ横の穴は直径4.2ぐらいかな。別に5ミリでもいいでしょ。

なんでこうした接続金具を使用するのかですが、ヒーター線の終端処理がそうなっているからですね。また次の理由として配線に使用する電線の銅は電気伝導性もいいけど熱伝導率性もいいので直結すると焼けちゃいます。それでなくても焼けて端子部分が劣化することはメーカーによってはよくあるようです。

IMG20241012152852_1.jpg

仮に再生不可能な状態になっているものがあり、現場に新品を持っていっていないとします。
何がなんでもこの四角い接続金具でなくてはイケないのかというとそんなことはありません。
他のメーカーやサイズではどのように施工されているのかを知っていれば想像はつくでしょう。

まぁその具体的なネタはちょっとここに書くのはやめておこうかなと思います。

素人工事で「陶芸用電気炉で感電か?:〇〇県の自称陶芸家死亡」とか新聞ネタになったらまた業界は大迷惑だからね〜。

ようは他にもいろいろな方法があるということですよ。

IMG20230719084535.jpg

IMG20240406085425.jpg

そしてそれぞれはメーカーの設計思想であり、どれも100点ではないでしょうし、どれも50点というわけでもありません。

それぞれの方法を理解していくことや体験していくことしか出来ないのですが、一人よがりにならないように様々な専門家やそもそもメーカーさんなどに教わっていくしかないということでしょう。



やきものの神様の粋なはからいで、わたしの周囲にいてくれた電気関係の友人に感謝しておこう。
posted by inoueseiji at 07:39 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月07日

陶芸家になる最短の方法?


この動画からお客様になってくださった方がたくさんいます。

そして本当にそこからプロになった方や、自分で土や原料を採取して焼成しつづけ、穴窯を造った方もいます。
そう言えば穴窯を造った方は一人ではありませんし、100Vの電気炉からさらに大きな電気炉や、ガス窯・灯油窯へ移行された方もいます。

それにしても。

自分でこの動画を見るのは死ぬほど小っ恥ずかしい。
もう7年も前のゴールデンウェークです。

人の人生は結構簡単に良い方にも悪い方にも転がりますが、まず陶芸・やきものをするのならば窯なんだ、と思ってくださった方がたくさん生まれたということは大きな意味があったように思います。

中には息子世代の20代のお客様で穴窯まで造った方がいます。
最初の電気炉はアルバイトしたお金で購入してくれました。
それでも2年ほど悩んだとか。

自分の窯を手に入れて、そこから地元の土を探してコツコツと焼成していった先に、さらに薪窯の自作という選択肢が浮上してきたのでしょう。

もうオジサンは追いつけません笑。
こういう若者がヒタヒタとあなたの後ろから追ってきてますぜ笑。

また逆に、70代で初めての電気炉を購入されて、時々お電話などで質問をいただきながら焼成を重ねていき、やがて自分の作品を少しづつ販売されるようになった方もたくさんいらっしゃいます。もちろんそれで食べていけるということにはなりませんが、焼成代や材料費は出ているみたいですよ。最初から陶芸家になってやろうというよりも無理がないのかなとコチラから見ていて思います。

焼成を重ねることも重要ですが、窯のサイズや焼成雰囲気の縛りがあるという中での作陶に意味があるように思えます。とくにサイズ。大皿や壷が作りたい人には耐えられないぐらい小さいのかもしれませんが、このサイズで何ができるのか、どうすれば使えるものや売れるものが作れるのか。そうした条件のある思考を繰り返すことがプラスに働くと思います。

動画でも述べていますが、ずっと小型炉でやっていこうとか、100Vの電気炉を絶対に購入しろということではありません。この世界の経験値というものは焼成でしか積み重ねられない、という厳然たる事実を受け止めることが重要だということです。車なら総走行距離だしパイロットなら総飛行時間と同じです。窯であれば、自作の本焼を何回行ったのか、ということです。

こればっかりは検索しても本を読んでも積み上がらない経験値です。


ふと振り返ってみて。

動画「陶芸家になる最短の方法」でわたしが述べたことは正しかったのでしょうか。
多くのお客様を知ることになったのは間違いありません。
その上でこの7年を振り返ってみてどう評価すべきでしょう。



まぁ「陶芸」よりも「やきもの」の方を広めたようにも感じます。
posted by inoueseiji at 07:25 | イノウエセイジの頭の中

2024年10月01日

好きな鍋は!


土鍋!じゃなくて水炊き?


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(酔っ払ってピンボケ)

ジンバブエでのリチウム長石争奪戦に敗れて数年。
手に入らなくなっていた土鍋の土。

しかし!

いつの間にか山内陶料さんで耐熱土が復活しております。
山内さんの企業努力に頭が下がります。

お母さんがどっかの鉱山を占拠したとかいうことではないでしょうが、まぁなにがしかの確かなルートができたということでしょう。
(ええかげんなこと言っとってかんわ!)



耐熱土のクライシスについては前作を参照
↓↓↓↓↓↓

土鍋を自分で作ってそれを家族で囲むと、

「ああ、わたしはやきものを作ったんだなぁ」

という感慨を新たにしますよね。

縄文土器をつくって火にかけたご先祖様もそんな気持ちだったのかしらん。

と、いうことで。


数量制限がありますが、さっそく注文してください!
↓↓↓↓↓↓

posted by inoueseiji at 08:24 | イノウエセイジの頭の中

2024年09月28日

インターナショナルなお仕事継続中ですが


英語はキライじゃないが話せませんイノウエです。

いろいろな工事の事情でインターナショナルな案件の窯はいったん預かったりしておりますが。
納期が伸びる間に専門用語の英語ぐらいは身につけておこうかと思っております。

Ok,then.

わたしのスタンスは「日本の陶芸」のために頑張ります、ということのみですばい。
ドメスティックに突っ込んでいくことこそインタぁーナショナ〜ルになるっちゃなかですか。

ときどき動画のコメントで英語の字幕はないのかとか中国語の字幕がほしいなどと海外の方からコメントをいただくことがあります。申し訳ございませんが、こちらでそのような対応をする予定も気持ちもまったくございません。ミョウチクリンな字幕が入っている陶芸動画とかがあると思うのでそっちで勘違いしていてください。

お偉いシェンシェー方が海外を有難がる80年代な風潮がキライでした。
あと退官を記念してニューヨークで個展とか笑っちまうぜ笑。
(俺のブログなんだからなんでも言う)

もっとも。

生徒には技術をキチンと伝えることもできず、自分が使っている窯の構造もわからず、熱電対で計測できる原理もわからず、ゼーゲルコーンの番号も知らず、ただただ学費が原資のお給料をいただきながらアーティストヅラしているような方は居なかったとは思いますよ笑。

それで後継者がいねぇとか、最近の若い奴は、とかどの口が言っているんだなんていう人も居るわけないですしね笑。


ねぇ?


先日も某築炉メーカーの社長と、工場に海外から技術研修生を入れる入れないとか、海外での仕事がどうしたこうしたの自慢話にブチ切れて大喧嘩しましたが(ルートインのレストランの方々すいませんでした)。わたしはマジで日本の陶芸は危機感高めだと思いますよ。

だってワタシがもう、目撃ドキュンの知ってるつもりポジションになってるじゃないですか!

これから築炉メーカーは減ることはあっても増えることはありません。
絵具も筆も道具もつくる人は減ってます。釉薬や粘土だってそうです。
能登半島地震で耐火断熱レンガの工場は各メーカーとも被災しました。
廃業と値上がり。

それでいて使用する側である我々の窯や原料や機材についての知識や経験値は下がっています。

はっきりと言えば、ふくおか陶芸窯は当然としても、梶田絵具店も村上金物店も山内陶料も30年後に存在していない可能性はそれなりに高いと思います。

築炉メーカーも陶芸オンリーのところは一軒もなくなっているかもしれない。「ウチは以前陶芸の窯をつくるところからスタートしましたが〜」なんてミシン作っていたトヨタ自動車みたいになっているのかもしれない。


お客様としては海外の方はありがたいでしょう。
けれどわたしは日本人がやきものをやりたいという気持ちにならなくてどうするのか、陶芸家が日本の若者を「俺も陶芸家になりたい〜!」と思わせなくてどげんするとや?と思います。


仕事もスタッフもインターナショナルですか。
安直すぎる気がする(個人の見解です)

そりゃYOUは何しに日本へ?は面白かろう。
じゃあYOUは何で陶芸家やってんの?ってことでしょうぜ。

家の仕事だから?
産地に生まれたから?


わたしは瀬戸の訓練校で教わったからです。
無償で引っ越し代まで失業保険から出していただき、訓練終了まで受給期間を伸ばしてもらったからです。

大沢ガス炉商会と梶田絵具店という瀬戸の看板で働いてきたからです。
そういう出会いを頂いたからです。縁ですね。

そして義務ではなく自分がやりたいこと、やっていてプライドを守れること、楽しいことだからですよ。


頻度下がってますが、ネット上に情報は頑張って残していきます。
いつか誰かの役に立つことがわかっているからです。がんばれ〜!

テキトーなことはできないけれども、アホなんでやってしまうときはある。
それもプロ筋に指摘していただくことがあり、有り難いことだと思っています。
補正して書き換えていくつもりです。

ニッポンチャチャチャ!

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posted by inoueseiji at 07:40 | イノウエセイジの頭の中

2024年09月24日

自作することの恐ろしさを再び実感として知った


夫婦ラブラブ陶磁器フェスタはウチだけではなかったな、オイ!
まぁブランコみたいなクレーン作業の話はまた今度にして。

イノウエはLANケーブルを自作できます。

パチもんですが工具も持ってまして。

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もう何十本と作ってきました。
動画を撮影している離れのアトリエまで、有線で15メートルぐらい引っ張っています。


で。

ウチの環境だと750Mbps前後のはずなんですが、最近アトリエのメインPCが遅いような気がするなと思って計測したら、ずっと90Mbps前後。

おかしい。春頃測ったら700Mbpsはあった。

ルーターとかを再起動するとちょっと良くなる時もあって。
コームスの部屋はというとぱっちり速度は出ているんですが。


そんなときに友人から休日の現場仕事の手伝いを頼まれました。電気関係の勉強のために彼の仕事はなるべく手伝いをさせてもらうようにしています。彼には窯の搬入や配線工事をお願いすることもあります。一人自営業は協力し合うのです。大事なのは車中での雑談だったりもするからね。

「そういえばLANケーブル作れたよね?」

「ブログにも書いたから順番もバッチリおぼえてるよ」

「今日の現場のコネクタつけてみて」

「がんばります!」

ということで。

認められたのか、人手がないのか、初めてLANケーブルのコネクタ圧着をまかせていただきました。

ケーブルの引き回しが終わると、まずは一つお手本として目の前でマジマジと作業を見せてもらった。
これまでも見ていたことだし、自分でも出来ると思っていることだが、それをいまからプロの仕事としてやる前提で見るのは全然ちがう。

そういう風に撚り線を捌けば最後は順番通りになるのか、とか。
被覆はそこまでむいちゃうのか、とか。
持ち方そういう感じね、とかさ。

で。

コネクタ2個をダメにしつつ、ちゃんと全部作成できました。
その後繋いだものの動作確認でも問題なかったのです。

達成感を感じましたね。うんうん。

プロの仕事はダラダラ夕方まではしないので、16時前に帰宅。
ウチに帰ってからそういえばと自作のLANケーブルを見る。

すると、”今まで見えなかった”いろいろなアラが見えてきました。そしてコネクタの一部には最後まで線が刺さっていないものも発見。もちろんそれはたった1〜2ミリのことで、コネクタの金具は刺さっているのでネットにはつながるのです。

しかし、速度の不安定さの原因はそれなんだろうと思い、作り直していきました。

すると。

スクリーンショット 2024-09-24 07-26-43.png

おいおい。
違いすぎるって笑。

そこから自作LANケーブルを一本一本つなぎながらスピードテストをすると、あきらかにダメな線を発見しました。ネットにつながるんだけど、です。

たかだかLANケーブルでも自作する恐ろしさをあらためて感じたのです。
まだ100円ショップの方がクオリティが高いということ。

そして、仮に失敗していなくても、LANケーブルにも経年劣化や接続不良による寿命はあるということ。

自作って恐ろしいなと久しぶりに再認識しました。

ましてや窯や機材となると、ですね。
勉強をつづけていくしかないですね。

ようやく秋めいてきました。
今日もご安全に。

posted by inoueseiji at 08:05 | イノウエセイジの頭の中

2024年09月09日

自分の焼成方法で問題ないんだけれど

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グランメッセ熊本で週末まで開催されている「くらしの中の陶磁器フェア2024」に行ってきました。
昨日で終わったかと思います。
出展されていた皆様お疲れ様でした。

さてさて。
営業という名目の爆買いツアー。
毎年数回ですが、そういうタイミング。

新たな出会いでは、知人の知人みたいな方を偶然知ったり、訓練校の先輩とか後輩とか。
特に営業というわけでもないんですが、窯のことや撥水剤のこととか、マニアックなそういうお話をすることがとても楽しいし、勉強にもなります。

その中で恥ずかしながらYouTube観てますと言われることがあります。
そして窯のはなし、特に焼成方法についてさらに突っ込んだ話をさせてもらうことがあります。

今回とてもお話がはずんだ作家さんに、とても興味深いことを言われました。
わたしの動画での説明が(そもそもその方と燃料が違うので)いまいち腑に落ちなかったけれど「自分の窯だし、自分の焼成方法で問題ないからいいか」と思われたということです。すこしすまなそうなニュアンスでしたが、まったくそんなことはない。

本当にそれ。
それでいいんです。

再現性があり、自分で加減できて、経費的に問題がないのであれば。

問題なのはどこかのオジサンYouTuberみたいに、窯の焚き方とか、ダンパーとドラフト、なんて発信をするのであれば、またはどこかで誰かに教えたりするのであれば、それだけではイケないかもしれないということです。

作家さんは自分の作品を基準に活動をしていくのであって、こういうやり方でやるんだぜ、なんて発信をする理由はない。そういう方がほとんどでしょう。

ただ弟子に伝えるとか(伝えなくてもいい)、生徒に教えるのであれば、原理原則と経験は絶対に必要です。
現実問題、焼成指導をすることが出来る人はほとんどいないし、わたしも百点満点ではないでしょうから、自分なりにネットに残していこうかなと思っているだけです。

それでも、わたしは「カレーの作り方」程度のことしか発信していないし、出来ない。
人にはうまく伝えられないけれど、そもそも伝える気もないけれど、三ツ星な仕事をしている作家さんはたくさんいるということです。

自分が納得しているだけでもいい。
窯を焚き、釉薬を調合し、土を探していく。

それが作家というものでしょう。
久しぶりにグランメッセ熊本に行って、帰り道でそんなことを考えました。

posted by inoueseiji at 09:03 | イノウエセイジの頭の中

2024年09月05日

息子の立場で言わせてくれ

嫁の朝ランに付き合えませんでしたイノウエです。

さて。昨日知人と話していてこんな話題になったので。

いろいろなお電話やお問い合わせがありますが。
やきもの作りを楽しむどころか、できれば販売とかしたいと思っている方も多いわけですよね。
だからうまくいかないことに関してご相談の連絡をいただいていると思います。ありがとうございます。

しかし、そうした相談の際に、さらにコチラがあるお願いをすると、「そういうのは苦手」「あまり得意じゃないから」などと言われる方が結構いらっしゃる。具体的には写真をメールで送ってくれますかとか、オルトンコーンかゼーゲルコーンを入れてみてください、といったことです。

そもそも関門海峡のはるか向こうからご連絡いただいている時点で、ホームページをご覧になっているんじゃないかと。つまりネット環境なりスマホがあるということですよね。だとしたらどうにか頑張って写真を添付して送ってみてください。わたしの親父世代前後の方でネットや陶芸を楽しまれているのはかなり進歩的な方だと思っているんですから。

オルトンコーンやゼーゲルコーンのことでもそうです。
ちょっと調べれば使い方はわかりますし、入れて焼くだけです。
それが面倒くさいのであれば電話での相談は無理じゃないかなと思います。

自分の好き嫌い、出来る出来ないを決めつけてしまう。
それこそが自分基準ということになってしまいます。

自分に窯や原料をあわせることは出来ないのがやきものの仕事です。

過去に壮大にトラブった方は、SK8(あえて何℃か書かないもん)で焼成すると歪むから、焼成温度を下げれば歪まないのを発見。しかし、そうなると釉薬は熔けないから、SK1aぐらいで(これも教えないヨ)熔ける釉薬はないだろうか、という質問だけをこちらに送ってこられました。

事情を知らないコチラ側の人間としては大変シブい質問に聞こえてしまったのです。いろいろと案をだしてやり取りしても何か噛み合わない。そこでこれまでの作業や作品について、いろいろと突っ込んでいくと歪みのことが判明したという話。梶田さんやらにも迷惑をかけてしまった苦い思い出の一つです(先日もスナックに呼び出して金だけ払わせてスイマセン)

そもそも歪むのは別の原因があるわけですよね。もちろん焼成を含めて原因はいつも複合的ですが。
自分の技術や工程は疑わずに、焼成や釉薬のほうをどうにかしようとしても無理なことのほうが圧倒的に多いのです。

息子の立場で言わせてほしいのですが、それをやるかやらないかだけ、やれば大成功、ということが意外なほど多いんです。

80代から始めて90代でグループ展や個展をする方もいます(孫も曾孫も大集合ですばらしいギャラリーのムードでした)

逆に毎年同じ質問をして、わたしも同じアドバイスをするけれども、一度も実践のないまま、やがて退講される方もいます。


変えるべきは原料や窯ではない。
ご自身をちょっとだけカッコよく変えてみてください。


大変ナマイキなことを申しました。
今日も良い一日をお過ごし下さい!

posted by inoueseiji at 07:17 | イノウエセイジの頭の中

2024年09月04日

悪いことはできないということを痛感しました笑

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重い腰を上げて9月1日からWindows 11へアップデート。
ノートパソコンは即アップデートしていましたが、メインマシンはいろいろとアプリも入っていることですから、すこし様子見していたのであります。
とはいえ、もういい加減に変えておかないとね。


仕事と動画があるのでWindowsを使っていますが、古いパソコンはLinuxを入れております。
どこかの自治体みたいに全部のパソコンLinuxにすれば相当なコストカットできるでしょうなぁ。
まぁ市長にでもなったら考えましょう。

さてさて、先日は頼りの友人も可愛いコームスもまったく都合がつかなかったため、佐◯大1年の甥っ子にアルバイトを頼みました。頼むぞ理系!
(文系理系という言葉は使わないとも言われますが、理系の人間は文系とまとめられるのはイヤ。理系のプライドは相当に高いから。:甥っ子談)

窯も無事に搬入してその他工事は後日の予定でしたので、撤収することに。
その際にお客様から「〇〇さんはご存知ですか?」とか「先日作家の〇〇さんにお会いして〜」と言われてビックリしてしまいました。わたしの知人やお客様だったりするからです。そしてそういうことはこの業界ではよくあるんです。

人のヨと同じで、悪い噂は一瞬で広まるし、いい噂は十年ぐらいかけないと広がらない。
どこで誰がつながっているのかわかりません。本当に悪いことは出来ないと思いましたね。

逆にいえばいつの間にかどこかで誰かが「あそこに頼めばいいよ」とか「あそこの人は何もわかってないからやめとけ」なんて言われているということでしょう。

ただ我々は自分ができることをコツコツと正直にやるしかないということでしょうか。



甥っ子はきっちり仕事を果たしてくれました。
コームスが手伝っていたときもそうだけど、生まれたときに病院に駆けつけたオジサンとしては、なんともこそばゆい感じ。
そしていつもオイチャンは呑んだくれているわけではないんだ、と甥っ子もわかったみたいで、ちょっとお互いに距離は縮まったようにも思いました。

安全第一です。


posted by inoueseiji at 07:40 | イノウエセイジの頭の中

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