窯も無事に搬入してその他工事は後日の予定でしたので、撤収することに。
その際にお客様から「〇〇さんはご存知ですか?」とか「先日作家の〇〇さんにお会いして〜」と言われてビックリしてしまいました。わたしの知人やお客様だったりするからです。そしてそういうことはこの業界ではよくあるんです。
これまでの相談で、いくつかガスバーナーの間違った使い方について確認したことがありました。プロ・アマ問わずですね。それこそ何人もいらっしゃいました。ここ最近数件あったのはバーナーの空気量の調整、エアダンパーの部分ですね。
ある方は空気の量が多すぎたし、ある方は空気の量が少なすぎて煤が出てるような状態でした。ガス窯なのに窯場が煤で黒くなってるんですね。窯の扉上部とか窯場の天井とかね。それは本来ガス窯ではありえないことなんですけど、何十年もそんな焼成を、その窯元さんをやってきたわけです。
また別の方は空気量の調整を間違った状態のまま、何十回も焼成のデータを取ってやってらっしゃいました。何回やっても揃わないとかね。こうじゃないな、あーじゃないと悩みながら続けてきて、いよいよ何が正解なのかわからなくなって相談をしていただいたなんてことが何件かありました。そんな設定を誰にアドバイスされたんですかと聞いたら設置した業者さんだという話でした。
大事なことで、皆さんが誤解されてることは、ガス窯のバーナーとか、そういうことはガス屋さんはわからないんですよ。ガス屋さんっていうのは 家庭に向けての器具の設置とか、そういうお仕事がメインであって、まああとは工場とかですかね、そういうところのガス関係の設備の工事をされているのであって、陶芸のガス窯なんて見たこともない人はたくさんいます。決してガス窯について詳しいわけではないということです。
それを責めることはできませんよ。同じように我々もプロパンガスとか電気についての詳しい知識や工事の経験もないですよね。そういう部分を繋いでいるのがわたしの様な取扱業者だと思います。
窯の設置業者さんが、知らないくせにお客様に非常に不用意なアドバイスや助言をする。それは非常に罪深いことです。
それによってお客様はいろんな迷惑を被っちゃうということですね。うちに相談があったお客様はみなさん、ここはこうするんですかとか、ちゃんと最初の設置時などに使い方を確認されたそうなんです。その時に業者から、こうですよって教えられたら、それは正しいと思いますよね。知らない人間が適当なことを言っているかもしれないと疑ったりしないでしょう。
でも実はそれは大間違いであったなんてことを何年も経ってから知らされる。なにしろ全く安定しないし、製品が取れない。そういうことで時間やお金がロスされていくわけですよね。いよいよ困り果ててネットで調べてこのオジサンに電話してみようかとなり、これまでの数年間のやり方をあっさりと否定される。わたしにも似たような経験がたくさんありますから、よくわかりますよ。
非常に厳しい発言をしていると思われてるみたいで、井上さんに相談したらなんか怒られちゃうんじゃないか、みたいなことも言われたこともありますけども、自他ともの過去のいろいろな例があるので、それは厳しくならざるを得ない。というか、わたしが言ってるぐらいのことは当たり前になってほしいと思っています。
実を言うと僕はすごいくいい加減な人間なんですよ。そのいい加減な人間でさえ、これは免許を取らないと怖いなって思うことが 電気とかガスとかクレーンとか、そういう世界にあるということですよね。例えば建築現場なんかでは免許持ってる人しかいませんが、そんなベテランがやってても事故が起きることはあるんですよ。死亡事故とかありますし、爆発とかねそういうこともあります。
業者はモノを売ればいいから楽チンじゃないんですよ。
梶田絵具店の梶田さんだって筆や顔料を作ったりするわけではないですが、それらがどこでどのように作られて、現場ではどう使用されているのか、ありとあらゆる例を知っていてお客様に提案されているわけです。村上金物店のワタナベさんだって同じです。窯の業者もそれぐらいの感覚でやっていかなければならないんです。自分で窯焚きできないような人は圧力計も交換せずに設置したりしますからすぐに分かります。でもそれは私には分かるけれどもお客様にはわからないことなんです。
(箱から出したまんまのI-72調整器:この圧力計では数値がデカ過ぎてコントロールできない)
メーカーの責任も重要ですが、実は自分では陶芸窯を作っていない販売業者の責任は、実は非常に重大だということです。右から左に販売すればいい、窯を設置すればいいということではないんです。設置工事が終わってからが仕事ですよ。
業者というのはさっきも言いましたが、メーカーと窯元さん作家さん、ようはお客さんと製造メーカーとの間に立って、しっかりとサポートしなければいけないんです。それからお客さんの現場では、電気屋さんやガス屋さんに、窯とその工事に関しての説明をしてあげなきゃいけない。そういう重要なポジションなんですよ。
まあ窯自体は作らないし、多少はわたしみたいに業者が設置工事とかするっていうこともあると思うんですけど、丸投げの人もいるでしょう。とにかく製造・設置工事の全体でいえば取扱業者は大した作業はしないわけです。本体の製造以外の技術的な部分、使い方やメンテナンス、そうした 知識とか焼成技術の面でのサポートができなきゃダメよってことです。それで対価を取ってるわけですよね。
その業者の利益分の責任がたっぷりとあるっていう風に考えないと、適当なアドバイスや説明をしたら、真面目なお客様ほど一生懸命それで焼成テストして頑張るんですよ。間違った使い方で一生懸命に。
自分のやり方が悪いんじゃないかと思っていろんな試行錯誤をされていくんです。
相談されて私が実際見に行ったら、ただ単に最初の設定が間違ってますよっていうね。それでもコントロールできないのに頑張ってるとか煙突の工事がそもそも間違ってますとかね。そういうことって実はまだまだ非常に多いんですよね。
わたしはいろいろな情報をプロの人たちで共通の認識としていただきたいと思います。
そのときに別に私からどうこうじゃなくていいと思っています。ネット上に情報を上げておけばいい。だって、こいつ嫌いだわ〜っていう人も必ずいると思うので。
とにかくですね、なんだか焼成がうまくいかないなと思ったら、セカンドオピニオンは取った方がいいんじゃないかなと思います。電話ならわたしは答えますよ。実際問題ですね、今はスマホで簡単に写真送れるんですから、こうなってるんですけどいいんでしょうかぐらいの確認だったら出来るじゃないですか。それが合ってる間違っているぐらいの答えはもらえると思うのでね。それだけでも違いますよ。
それで何か間違いがはっきりしたら、じゃあちょっと見積もっていただけますか、みたいな話でもいいのかなとは思いますね。そうすればこちらも仕事になるわけですから、業者だって営業活動の一つと捉えることが出来ると思います。