進化論のダーウィンのおじいさんはパイロメーターを発明したジョサイア・ウェッジウッドさんだって。
はい、イノウエです。今日は長いヨ〜。
(まだチャンと測れんとね?)
温度計測について最後にまとめておきたいと思います。
一人でごちゃごちゃとマッチポンプなことをやっておりましたが、まぁこれを踏み台にしてみなさんに良い作品を作っていただければ幸いです。
まず、これまで何度も発信してきましたが温度計はとても頼りになるけれど完全に信用してはいけないということです。アイツらが指示している数値に関しては”他業種にいる幼馴染のアドバイス”ぐらいに考えておいてください。
「どげんかいな?」
「けっこう温度上がりよるバイ!」
「そうね、そりゃ良かったたい!」
というぐらいのことですけんね。
窯を焼成するためには温度計のみで行ってはいけません。
必ずゼーゲルコーンやオルトンコーン、自作の色見を複数入れておきましょう。
正しく設置されたゼーゲルコーンとオルトンコーンが一番信用できます。そして還元の状態や釉薬の流れは色見で判断します。
ここまでを共通の認識として以下お読みください。
(コーンは信用できないという人を信用してはいけません)
どのような計測機器にも誤差はあります。まずこの事実をしっかりと押さえてください。
誤差がないなんてあり得ないことなんです。1250℃の1%は何℃かな?
そしてどのような計測機器も徐々に劣化していきます。
どこがどう劣化するとかは計装の専門家が発信してクレイ!と思いますが、わたしの比較試験によれば、デジタル温度計でも20年前のものと新品では数値にわずかな誤差が生じています。また使用された環境や保管状況でも誤差の範囲は変わっていました。
それからもう使用する人も機会も少なくなっているアナログの温度計ですが、使用時には窯の熱の影響を受けない場所で指示面を上に水平に設置し、計測開始前に必ず針のゼロを補正するということを厳守しましょう。今更だけど。
まだ実験できていませんが、わたしの予想では、これらの正しい運用方法で今でもデジタル温度計に遜色なく使用できるのではないかと考えています。アナログ温度計は熱電対からの起電力のみで電源不要で計測できます。電源が要らないのはまだまだ大きな利点になりえるのではないでしょうか。
先日わたしの研究?のためにと吉田さんが持ってきてくれたアナログの温度計は、間違った縦置きが出来ないようにゼロ補正のツマミがかなり出っ張っていました。
(これなら縦置きできないヨ)
時代的には1970年代の後半のモデル、以前紹介した2つよりも数年後の他社の製品です。おそらくいろいろな所で間違った縦置きを見た設計者がこのようなデザインにしたのでしょう。それよりも針のゼロ補正をマイナスドライバーを使用しなくても手で回せるようにしたという意味も大きいと思います。
吉田さんもゼロ補正なんて聞いたこともないとのことでした。ということは有田の窯大も瀬戸の訓練校も教えていないというか、まぁ我々の頃はすでにデジタル化されていましたからね(そこまでオッサンじゃないぞ)。
わたし個人的には薪窯だったら絶対にアナログ温度計がいいと思います。薪を入れたときにガチャガチャと数値が動くデジタル温度計は見ていて疲れるし笑。ホワイトベースの司令室よろしく数値読み上げる学生とかいた日にゃ鬱陶しいことこの上ありません。
「薪投入完了。ハッチ閉めよ!」
「ハッチ閉め〜!」
警報発報(ホワイトベースのヤツを想像したまえ)
「艦長、炉内温度上昇中です!」
「何?」
「1192,1193,1194,1195…1200℃!さらに上昇中!」
「イノウエさん、これは!」
「うるせぇ!黙って薪運べ」
(実話ちょっと脚色)
ま、そんな時代もあったね。
デジタル温度計ですが、これに関しては特になにも問題ありません。補正も自動的におこなうようになっています。設置場所はやはり窯の熱の影響を受けない所に設置しましょう。
もし新規に導入してこれまでの計測と100℃もズレがあったとしたらメーカーに連絡しましょう。電源を入れた際に数秒間表示される設定数値などで確認できます。ユーザー側の間違いも指摘されるでしょう。
でもね、先日の記事でのウチの温度計でおきていた設定ミスは例外中の例外だと思います。わたしに温度計測についての発信をさせるため、やきものの神様の粋な計らいだったと認識しておりますし、普通はありえませんからご安心ください。
デジタル温度計の運用方法として半分外みたいな窯小屋の方は使用時以外は取り外して保管しておくことをオススメします。アナログの温度計とは違い、中は指示計や温調計の基盤がありますので、温度や湿度の変化はあまりよろしくないと思われます。
それから補償導線です。
ある意味一番意識されていない部分かもしれません。これは熱電対と温度計をつなぐ導線ですが、専用の線になります。見た目は普通の電線に見えるでしょう。しかしまったく違いますので、代用したり、改造したりしないようにしてください。先日の記事のようにわたしにも失敗経験があります。
また過去にはご自身で補償導線を延長しようとして、通常電線で代用した方の焼成指導を行ったことがあります。そのときにはゼーゲルコーンの8番を事前に渡して色見穴から見える場所に入れてもらっていました。焼成中に補償導線の改造は知らされていませんでしたが、温度の表示が明らかにおかしい。
温度計の数値は1300℃を超えていましたが、かつて経験した1300℃の窯からのエゲツナイ光を色見穴からは感じません。低いんです。1300℃になってもゼーゲルコーン8番もまっすぐに80°のまま。こうなってはゼーゲルコーンを頼りにするのみ。なにしろJISの規格品です。
結局ゼーゲルコーンの8番が倒れたのは1370℃という高温でした笑。後日窯出しの際に補償導線の改造にわたしが気がついて原因がわかったというオチでした。
補償導線も温度計や熱電対に接続する端子部分が劣化していれば新しいものに替えてください。電気屋のお友達がいれば端子部分を新品にしてもらってもいいでしょう。ビニル被覆やガラス被覆がありますが、中の線は同じです。取り回しに気をつければどちらでもいいと思います。ふくおか陶芸窯でも作ってマス。
(補償導線の色で判断できるように決まっています)
そして重要な熱電対です。
陶芸窯に使用するのはR型です。これぐらいは覚えておきましょう。
そして世の中にはいろいろな種類の熱電対があります。熱電対が変われば補償導線も変わります。
素焼窯用にK型を使っていることもあります。RとKでは価格がまったく違います。耐火断熱レンガも熱電対も対応温度が高いほうが価格も高いという不思議は追求せずに、単純に安い熱電対は無いとおぼえておいてください。
R型熱電対のプラチナ・ロジウムの素線は0.3ミリとか0.5ミリです。それが保護管に入っています。ちなみにK型でも保護管は同じなので外観で判断はできません。使用する際には保護管の太さの5〜10倍の長さを炉内に出しておきます。出しすぎれば破損のおそれがありますし、1〜2センチだと正確な測定はできません。
あとはこのブログとかYouTubeを検索していただえければこれまでの発信が出てくると思います。温度計測なんてどうでもいいわという方は少ないと思いますので、よければ一度ご確認ください。
今日の記事のタイトルですが、1400℃とか1300℃超で焼成している方がいるらしいという話は実は複数の人から聞いたことがあります。もちろんフクダさんみたいなファインの人ではなく陶芸家で、です。
中にはホントにその温度にしている方もいるとは思います。しかしガス窯を製造していた経験、焼成してきた経験からすれば、それはそんなに簡単に出せる温度域ではありません。
ファインセラミックの世界であれば1700℃とかで焼成しています。わたしはガス窯でそういう窯の製造や補修をした経験もありますが、まぁ耐火断熱レンガが高い。しかも持たない。
1400℃で焼いているヤツがいるらしいと聞けば、わたしはもしかしたら測定の機材などが間違っているのかもしれないと想像してしまいます。その方の窯でゼーゲルコーンの13番とかが完倒しているのなら謝ります。ゴメンナサイ。
でも一度補償導線や温度計の設定などを確認することをオススメします。ゼーゲルコーンって何?という方なら機材側の問題でしょう笑。
さて。ごちゃごちゃと書き連ねてきましたが。
はたして今の陶芸家で熱電対と温度計無しで窯焚きできる方はどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。
わたしは多分出来ないかな。やりたくもない笑。
そう考えると昔の人や、みんな大好き桃山陶ってスゴいよね。
そして昔からの自作の色見も重要ってことですわ。
知れば知るほど、これまで炉内の温度を計測しようと努力してきた方々に感謝いたします。
ゼーベック効果のゼーベックさんとか、勝手に写真を使いましたウェッジウッドさんにも。
いろいろなヒントや導きをくださった諸先輩方や友人にも。
(あとがきっぽい)
ジョサイア・ウェッジウッド
パイロメーター
熱電対
ゼーベック効果(読んでもわからん)
トーマス・ゼーベック