2020年12月08日

知らないことを知って思う怖さ


電気炉を取り扱うようになって10年以上になります。

最初は自分の窯や知人の窯を触ってみて、というのがスタートでした。
しかし電気についてあまりにも無知な自分に、これはイカンと思って「第二種電気工事士」の免許を取得しました。

とはいえ、免許を取ったら即GPレーサーにならないのと同様で、本当の努力はここから始まります。

幸いわたしには電気工事士の友人が複数いて、アルバイトや酒席での会話を通じていろいろなことを体験し学習させていただきました。

それでも今年になって、実はアレにはこういう部材を使用していますよ、と電気の世界の専門家から教えていただくことがあり、まだまだ知らないことのなんと多いことかと背筋の伸びる思いでした。

うまく例えることができませんが、強いていうのなら100円ショップのカラビナとガチの登山用のカラビナ、素材も価格も大違いですよね。それを混同していたようなこと。

機能は同じですが、それでなにが怖いかっていうと見た目が一緒ってことなんです。
こうした機能が段違いで見た目が一緒というのは、実はいろいろな世界であると思います。たとえばパッと見の要素が同じとか、同じレベルのものに見えるとか(笑)。

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「ねぇねぇイノウエさん、
ネタとして100ショップのカラビナで降下するんですよね?」

みたいな(そこまで酷くないが)ことがあって、本当に自分の無知を思い知りました。



われわれの世界に置き換えれば「陶器なんて、その辺の土を掘って、ちゃちゃっと焼けばできるんでしょ?」と言われたら、アナタはなんと答えるでしょうか(笑)。

わたし?
そうですねぇ。



「じゃあ、やってみろ!」

って言うかな(笑)。





たとえば電気炉というものの仕組みは非常にシンプルです。
ちなみにガス窯など他の窯の構造も同様にシンプルです。

とはいえ、自分にもまだまだ知らないことがあるし、経験していないことが山のようにある。
わたしも若かりし頃はなんでも自分でやってやるぜ!と思っていましたし、実際にそうなるように努力してきました。

しかし、単純に知っているか知らないかという部分でさえ押さえきれていないのに、一体なにを自分だけで出来るんでしょうか。

いろいろな経験を積み、多少は大人になって、いろいろなことが出来るようになったなと丁度思っていたところに、ぴしゃりと冷や水を浴びることになりました(笑)。

電気関係で相談できる人、共栄電気炉製作所の方々、そういう人たちに「聞くは一時の恥権」をもっと行使していこうと思います。

まぁ例えば日曜大工にしろ、窯の補修にしろ、1,2回なら耐えうるかもしれないというレベルの仕事は誰にでも可能かもしれない。冒険野郎マクガイバー的にそういうことはあるでしょう。

しかし危機を一回抜け出せばもう使わないアポロ13の着陸船じゃなくて、恒久的にプロが業務で使用するものをどうこうする、となると経験のない人の作業や、適当なアドバイスは相当な危険を孕んでいると思います。

もちろん自己責任がお好きな人はいろいろなことを自由にやってみる価値は大いにあると思います。やきものの仕事に置き換えればわかりますよね。なんでも窯で焼いて確認するって泥臭いけれども、最強の経験値でもあります。

技術や知識はそうやっていくしか(痛い目にあうしか)伸ばせない時がありますし、無理やり三歩進んで謙虚に二歩下がるのがイノウエのオススメです。



ディスっている割に100V電気炉を愛用している人にもオススメします。




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2020年12月06日

家に窯もロクロも無いアナタにできること

今年の夏頃、5年以上使用した安物ノートパソコンをようやく買い替えました。

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いまどきのノートパソコンは画面がタッチパネルになっていて、便利なものです。

出張や講座で資料を見せたりするときにスマホの画面のように拡大ができるのは便利。

いや、待てよ。
ということはスタイラスペンにも対応か!とようやく気付き、Amazonで購入。

画面に直接描けるということです。

もちろん、それ専用のタブレット端末も数千円から販売されていますから、普通のパソコンの方でもすぐにできますよ。

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対応するアプリも有名で無料なものがいくつもありますから調べてみてください。
実は今年の春の休校時期にムスメに買い与えていたんです。


とりあえず今回はアルパカってやつを初めてインストールしてみました。
これはそもそもマンガを描くことを想定したアプリ。


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ワタシも使い始めたばかりでよくわかっていません(笑)。


ただ便利だなと思うのは、自分のラフスケッチを…

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変形したり、部分だけ拡大したりして、新たな形が見えることでしょうか。

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徐々に慣れてくれば、もっといろいろなことができるとは思います。

今どきのマンガやイラストはこうやって描いているものがかなり多いというか、ほとんどみたいですよ。

そっちの世界にいた友人が昔、〇〇先生はコピー機と修正液の魔術師だぁ!などといっていましたが、いまはパソコンが一つあればできます。

こんなオジサンが初日から出来ます。

タブレットでも使えるアプリ、スタイラスペンもありますから、調べてみてくださいね。

昔バイクトライアルをやっていた頃、「ウチの周りには練習する場所がなくて〜」とエリートクラスの知人にこぼしたら「本当に何もないですか?」とニヤリとされて目が覚めたことがあります。

山に行かなくても、岩場がなくても、雨が降っても、できる練習はありますよね。


やきものでも、陶芸でもそうだと言わせてください。

うちには電動ロクロがない、窯がない、そんなスペースもありません、なんて方がほとんどでしょう。それでも出来ることはあります。

また、うちにはパソコンはない、このブログもスマホでどうにか見てます、という人だって出来ることは山ほどあります。



自分で限界を設定しないようにお互いに頑張りましょう。


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2020年12月05日

上絵と金彩と鉛を語る前に



はっきり言ってこの動画を観た直後、ぜひ多くの人にこれを観てほしいという強い願いと、あのアホどもは観ないでほしいという嫉妬のような感情が同時に沸き起こりました。

窯についてさんざん発信してきてもやっぱりこの程度の心の貧しさ。
情けないものです(笑)。


過去に楽焼の動画で鉛のことをさんざんコメント欄に書かれました。
残念ながら、そのコメントはもうアカウントを本人が消しているようで消えてしまいました。

どんな内容だったかというと、お前のせいで鉛の入った釉薬をつくるところだった、危ないじゃないか、アホ、死ね、みたいなコメントとその返信のやり取りでした。かなりの回数のやり取りをしました。

わたしの返信を要約すると、なにか動画を観たり、釉薬のレシピを一つ二つ知ったからといって、理解はできない、わたしの発信も一つの動画に昇華するまで10年がかりだったりしているんですよ、だからアナタも「分からない、実感や自信がない」ならば、調べながらゆっくりやればいいですよ、というものでした。

時間をかけろと言って納得される方はまずいません。

おそらくその方も仕事ですでに動き始めたことへの情報を求めてのコメントだったようで、納得はしてくださいませんでした。

発信しているお前に責任がある、ということを何回も書かれました。だから、実践して時間かけて…いや答えをちゃんと伝える責任がある…の繰り返しのようなことになったわけです。


鉛が悪い、怖い、毒だ、それは一部は正しいかもしれないけれど、間違いでもあります。
その間違った認識は無知からきている。無知という言葉がキツイのならば、情報の少なさ、だとも言えます。

ものごとを身に着けるには時間がかかります。
そして自分で実践するしかありません。
答えを聞いても解決はしないのです。

わたしも楽焼きの作品を作った時にはさんざん調べて確認もしました。
レベルは低いですが、何年もかけたのです。

最近の若人は長い動画も観れなくなっているらしいですから、とても専門書なども読めないかもしれませんが、中高年も似たようなものです。時間が惜しくなっているのは全世代共通で、ウソでも断言してたくさん言えばホントになったりするのです。



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例えばE=mc2といわれても我々に宇宙の秘密も、光と時間の不思議さも実感できません。

いきなり答えをくれというのは、それに近い。
この公式を利用する準備はできているのか?



引退された方にそのようなお話をさせていただくと、わたしには時間がありません、もう若くないから、と言われることがあります。


だからポンと答えが欲しいということでしょうか?


だったらその答えはE=mc2になっちゃいます。
(ヤンキーも知っている公式第1位:相対性理論)





88歳でやきもの講座に入って初めて陶芸用粘土に触れ、91歳で自分の窯を持ち、94歳からは自分で灰や土も作っている人がいます。いま96歳です。

時間がないと、この方も言われます。
アナタの真逆の意味で。


まぁ意地悪な話はここまでにしましょう。





この上絵の動画。

まちがいなくこれ以上の授業はないでしょう。

アナタがどんな大学に入っても、専門校に入校しても、窯元に弟子入りしても、ここまでの内容を理路整然と教えていただけることはありません。

ありとあらゆる絵具を溶いて塗って焼いたことがあり、それらの使用現場と製造現場をしっているのは梶田さんぐらい、全国でも2,3人いるかいないかでしょう。



そもそもワタシが梶田さんのところで働いていたときには、ノート数冊に及ぶメモを残しましたが、それでも上絵や金彩等についてこんなに詳しく習いませんでしたから(笑)。



それが証拠です。















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2020年12月04日

ロクロ上達の一つのヒント


今日はロクロ上達のためになるヒントを一つ。

先日講座で数人の方に指導した電動ロクロでの一個挽きです。
重さをキチンと測り、フリーカップのようなものを挽いてみます。
ロクロの天板がまぁGLですから、底の厚みがつかみやすいわけですね。

そして以外と難しいのが230〜250グラムていどの土の芯だしと土殺し。
小さいものができればあとは大きくしていけばいいのですが、小さいものをしっかりと芯だしするのは意外と難しいです。

底の面積があまり大きいと持ち上げられなくなりますから(動画参照)、その場合は亀板を使用するといいでしょう。

確実に230グラムでフリーカップができるようになれば、組み合わせたり継ぎ足したりして、様々な器形を求めることができます。

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土の性格から、常にこのようなロクロ挽きをしている産地もありますし、海外の方の動画でもよくみる技法ですね。

いつでも数キロの土を回す必要は、趣味や量産以外の作陶では実は意外とありません。
わたしは窯詰めの最後にガンガンこの一個挽きをしてフリーカップを作ります。
削らないから仕事が早いんですよね。



(全然芯が出てないなぁ)


↓ くっちゃべってない海外向け(笑)バージョン。





一個挽きしてガス窯で炭化焼成(ちょっと失敗気味)のカップたち。

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2020年12月03日

どうすれば陶芸上手になるかしら?

仕事場を整理しておりましたら、数年前の資料がでてきました。
まぁ指導するわたしの基本的なポリシーのようなものです。

ご参考までに載せておきます。

もっとも、これを守るかどうかは受講生に任せてますけども(笑)。



木曜やきもの講座 


講師 井上誠司


どうすれば技術が上がるのか


  • 必ずノートに記録する

  • 数値化する

  • 週に2回以上の頻度を確保する

  • 各工程のつながりを意識する

  • 目標・課題をもつ

  • 自分の欠点を知り、得意を見つける

  • 理論を固めるために知識を得る


陶芸教室でよく見られる失敗


  • ロクロだけに夢中になる

  • 周りに流される

  • 行き当たりばったり

  • 根拠のない知識や技術のコピー

  • 話を聞かない・都合の良い解釈をする

  • 窯変に期待している

  • 材料や素材への無知と無関心




まどかぴあ生涯学習センターでは、これからやきものを始める方々への基礎講座として、この木曜やきもの講座を開講いたします。工作室には、そのための設備がすべて整っています。生涯学習センターはいわゆるカルチャーセンターではありません。みなさんはお客様ではなく、受講生、つまり生徒です。自ら学ぶ姿勢が必要です。週に一度の学校に通っているという認識でこの一年間、一緒に楽しく学んでいきましょう。


はじめに


どんな勉強でもビジョンを持つことがとても大切だと思います。

やきものの基礎を身につけるということが、生涯学習センターの基礎講座の理念です。具体的には、やきものの制作にどんな工程があるのかを知り、その一つ一つの基本的な知識と技術を記録し、身につけること、になります。実際、やきものの制作にはたくさんの工程があります。その基礎を1年間で修めることはなかなか難しいですから、きちんと記録を取るようにしてください。

後述しますが、やきもの作りは実は簡単です。ただ、そのやり方を正しく伝えるところがほとんどないため、世の中には、妙なイメージだけが先行しており、本当の楽しさを知っている人は少ないのです。この講座で講師はなにも隠さずにすべてお伝えしますので、どんどんと質問し、実践するようにしてください。


「陶芸」と「やきもの」


「陶芸」や「陶芸家」という言葉ができてから、実はまだ百年もたっていません。これらの言葉は現在では当たり前に使用されていますが、とても新しい言葉なのです。

みなさんは「陶芸」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。わたしは長くこの世界にかかわっていますが、これほど定義があやふやな言葉もない気がしています。

それでは「陶」という文字はどうでしょうか。これは「やきもの」という意味があります。「陶工」という言葉はかなり古くからありますし、「陶器」「陶土」などの言葉もみなさんご存知でしょう。この講座名に陶芸という文字を使用していない理由は、みなさんにイメージが人によって異なる「陶芸」ではなく、土を焼いてものを作る、「やきもの」を意識してほしいと願っているからです。

言葉は少し厳しいですが、みなさんがなんとなくイメージしたり、テレビなどで見聞きする陶芸教室というものは、実はただの粘土細工教室に過ぎないことがほとんどです。焼成の工程にかかわれないのならば、粘土で形を作ることがいくら上手になっても、それはやきものを身につけたということにはならないからです。しかし残念ながら、このことに疑問を持つ生徒や講師に出会ったことがあまりありません。

これは巷の陶芸教室だけの問題ではありません。多くの教育者、教育機関、大学の陶芸専攻の授業でも、その生徒や受講生に、まともに焼成のことを理解させているところはほとんどありません。それどころか焼成専門の助手がいたり、講師が窯焚きしたりして、生徒がまったく焼成にかかわれないところが多いのです。

また、学ぶ人のほとんども、目先の技術的なこと、主に電動ロクロなどに興味を奪われて、それを追求することが陶芸の勉強であると勘違いしてしまいます。少し器用な人なら一年ほど、普通の人でも二、三年もすればある程度ロクロができるようになります。そうなると確かに面白いのです。わたしも焼成実習のまったくない訓練校で、黙々と電動ロクロの技術を磨いていた時には、自分は今まさにやきものの勉強をしているんだ、と勘違いしながら、とても充実した日々を過ごしていました。

本来、陶芸教育は焼成を抜きにしては考えられません。「やきものを作る」ということは、粘土鉱物を高温で焼結させるという工程が絶対条件として必要です。そしてそのことを理解し、実践できなければ、どれだけロクロが上手くなろうと何の意味もありません。

わかりやすく料理にたとえるなら、キャベツの千切りだけがいくら上手になっても、それは料理が上手になったとはいいません。また本や知識の上でレシピをいくらおぼえても、料理というものの根幹を理解しているとはいえないでしょう。大切なのは下手でもいいから、温かい料理を作る努力をすることです。調理が一通りできるようになってから、必要に応じて各工程の技術を磨いていけばいいのです。

料理もそのほとんどは「加熱する」という工程があります。それを理解する一番の近道は、実際に手を動かして、料理を作って食べてみるということです。やきものならば、作って焼いて使ってみるということになります。これを繰り返すことのみが、あなたの作陶レベルを引き上げてくれる唯一の方法です。

下手な作品を窯に入れたくない、自分はまだまだ、などと思ってはいけません。確かに、はじめは失敗作をたくさん作ってしまうでしょう。しかし、それでいいのです。

すべての答えは窯で焼くことでしか得られません。なるべく様々な条件でたくさんの作品を窯に入れるようにしてください。自分がやっていることが正しいのか間違っているのかは、焼成を通してしかわかりませんこれは断言できます。失敗したら、その原因を探り、きちんと記録を残すようにしてください。

また、常識では間違っているというやり方をしたとしても、それがきちんと焼き上がって、その後も再現できるのであれば、その方法は正しいと判断してかまいません。また逆に正しいと思い込んでひたすら努力をつづけ、納得して窯に入れてみたら、その後何度も同じ失敗をしてしまうということもよくあるのです。それはただの遠回り、貴重な人生の時間の浪費でしかありません。


世間一般に言われていることを信じない


実は「陶芸」という言葉ができたのは、一人の陶芸家がつくりだしたからだといわれています。それまでの多くの陶工は主に分業で仕事をし、自分のかかわる仕事についてしか熟練していませんでした。これは今でも大規模な製陶の現場ではあまり変化がありません。ピラミッド構造の分業制度なのです。

また原料などを供給する側も、それぞれの分野に分かれています。製土、築炉、釉薬、絵具などです。これをなるべく一人で行うように腐心したのが初期の陶芸家です。それはこれまでの窯元というシステムが行っていた製造工程を、一人の人間が行うようになった、ということです。そうすることによって芸術家としての価値を高めようとしました。量産ではなく、個人の作品制作にシフトしていったのです。

また、薪の窯しかなかったやきものの世界に、さまざまな燃料の窯が開発されていきます。石炭、重油、灯油、ガス、電気などです。レンガなどの耐火物の品質も飛躍的に向上し、また新しい断熱材なども開発され、いままでになかったような技術革新がおこったのも、この百年未満のこと、ほぼ戦後のことです。ほかにも輸入原料が使われるようになったり、新たな技法や絵具が開発されたり、ほかの産業と同じようにやきものの世界もすさまじい勢いで進化していきました。現在でも日本をはじめ各国で様々な開発や技術の発展を続けています。

多くの人が抱く陶芸」へのイメージは、ほとんど時代遅れで、間違いですもちろんそのイメージを作ろう、守ろうとする個人作家や窯元も多数存在します。それはそのほうが売るためにプラスに働くと考えるからです。必要な演出という部分もあるでしょう。

しかし、やきものを学ぼうとする人がそういうイメージにとらわれることは危険です。みなさんがあるイメージをもっているということは、そうなるように働きかけ、それを支持した人々がいるからです。わたしを含めて、学校などの教育機関や陶芸教室で教わった人はほぼ全員間違った認識や呪縛を持ってしまいます。それを拭い去る努力にも多くの時間を使ってしまいます。

自分の土や窯でのみ通じる事実と、普遍的な真実、科学的な正確さを混同している人は思っている以上に多いのです。迷ったら講師であるわたしに質問し、なによりも自分が焼いたものに答えをさがすようにしてください。他人の無責任な言葉にぶれないように気を付けてください。残念ながら、書籍や技法書かたよりがあり、すべての記述が正しいわけではないということを知っておいてください。


量産の技術と作品作りに必要な技術


みなさんがこれまでの人生で目にしてきた、やきものの技法や窯元の仕事などは、ほとんど量産のためのものです。プロがそうしていたからといって、あなたが同じことをする必要はありません。

ロクロにたくさんの粘土をのせて人より早い回転で回しても、なにも偉くありません。ある意味滑稽でさえあります。よくプロが修業時代に一日千個の湯呑を挽いたなどと伝説のように語られることがあります。しかし見方をかえれば、それは哀しく貧しい労働の時代だったとも言えるのです。魚河岸でアジをひたすら開きにする仕事や、工場で延々とネジを締めるだけの仕事がありますが、それとなにもかわりません。技術をおぼえるために反復練習が必要な時期はありますが、そのために数やスピードを競う必要はみなさんにはありません。はっきり言って百害あって一利なしです。是非とも考えながら丁寧な仕事をするようにしてください。


この一年の目標


この講座で、あなたが目指すべきことは、実にシンプルです。それは一人で全工程を把握し、自分のやきものを作れるようになることです。やきものの最終段階である焼成から逆算して、そこへむかって形作りや釉薬掛けなどを行えるようになることです。

やきもの作りで最初に到達すべきレベルは、通信簿のオール2というレベルです。ある教科だけ5や4をとってもほかが1では何も作り出すことはできないのです。

やきものを作るには様々な工程があり、それぞれにおぼえることがあります。そして時間は限られています。ですからきちんとノートをとるようにしてください。最初の一年で一番大切な道具は、ロクロなどではなく、筆記用具とノートだと思っていただいて間違いありません。なにも頭にすべて記憶する必要はありません。ノートを見ながら制作していったほうが失敗は少ないものです。


最後に


やきもの作りは実は簡単です。そうでなければ一万年以上前から人類が作っているはずがありません。難しくしているのはあなた自身に植え付けられたイメージのせいであり、量産の職人を訓練するような間違ったこれまでの陶芸教育のせいなのです。

たとえば、土練り三年、ロクロ六年などという言葉もまったくのウソです。そんなお話しも講座の中でできると思います。

みなさんは、これから一年をかけて、これまでの呪縛を解きつつ、楽しいやきものづくりに目覚めてください。これから一年間、よろしくお願いします。



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2020年11月27日

陶芸のニオイ問題


日某絵具店の方(笑)と電話でいろいろとお話したのですが、電気炉でのニオイの発生をどうするかという質問がお客様からあったとのことでした。

まず、エントツのあるガス窯ではニオイがすることはありません。
焼成で発生するニオイはエントツを通じて排気されてしまうからです。

やきものの製造工程の中でニオイを感じる作業はいくつかあるかと思います。
自分で窯を焚かない人でも想像できるのは、油性撥水剤の溶剤臭でしょうか。

また焼成中であれば燃料や炉内に炭素が多いとニオイを感じます。薪窯でも薪が燃える特有のニオイを感じます。「あぁ薪窯焚いてるな〜」というニオイです(笑)。

気炉の場合、焼成中であればいくつかのニオイ発生条件があるかと思います。
まず素焼きですが、わずかですが焼成初期段階で粘土が含む有機物の燃える際に発生する独特のニオイを、窯の周囲でわずかながら感じることがあります。また還元焼成を行う方も、ガスを投入すればさらに強いニオイを感じることでしょう。

ちなみに一酸化炭素が出てると言われる方もいますが、一酸化炭素は無臭ですから、このニオイは完全燃焼しきれていないガスの排気のニオイです。ストーブなどでも起こりえますから本格的な冬到来の前にこちらもご確認ください。

日本ガス石油機器工業会のサイト https://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/anzen/co/index.html


しかしそうしたニオイも、アレに比べればそこまでひどくもありませんし、そこまで周囲に迷惑をかけることもないでしょう。


では。

電気炉の焼成でもっともニオイが気になる時とはいつでしょうか。


実は金液等の焼き付け工程です。


液や銀液等を使用した作品の焼成では、どうしても金液が含む樹脂等が燃えるニオイがします。おおよそ400〜500℃ぐらいまで確認されるこのニオイは、かなり独特のものです。

瀬戸などの陶産地を歩いていると時々このニオイが漂ってくることがあります。
わたしや経験のある人であれば「あぁ金を焼き付けているんだなぁ」と微笑ましく思いますが、何も知らない人にとってはただの異臭と感じるだろうとも思います。

そもそも金を塗る際に使用する金油がなかなかのニオイです。
こうした作業を自宅陶芸で行うには、周囲の人を不安にしないようにニオイ対策をする必要があるでしょう。

気扇を回すにしても、人通りの多い通学時間や、お隣がバルコニーでせっせと洗濯物を干しているタイミングは避けておきたいものです。ニオイのピークを、深夜か、逆に真っ昼間の地域人口がもっとも下がる時間帯に持っていくしかないかもしれません。

後ろめたいことがなければそんなことをしなくても(笑)という声を聴きそうですが、人間というものはご近所が変なことをするのに意外と敏感です。これは築炉業に関わってきたわたしの実体験でもあります。突然お隣がエントツを立てたりするとしっかりとチェックしているものですし、その家の人には聞かないで、わたしたち業者に探りを入れてこられることはよくあります。

ましてその後にニオイや煙が出てきたとなると、ご近所トラブルにもなりかねません。密集する住宅地の方に、わたしが灯油窯をオススメしない理由もここにあります。無煙タイプでも少しは煙が認めらえますし、ブロアーの音もそこそこするからです。

液などの焼成によるニオイの元は、液に含まれる樹脂などの燃焼によるものです。ということは「ある程度は」その量によってニオイの強弱は「多少は」変動するかと思います。

壺の表面を全部金彩するとか、打倒三輪家とか思われている方は、そうとうニオイが発生するということを覚悟するか、ガス窯で行うといいでしょう。

気炉の方はお住まいの環境に合わせて少しづつ様子を見ながら行ってみてください。
まずはカップの縁とか、お雛様の着物にチョンと塗る程度から様子を見て、これぐらいニオイがするんだな、と把握しながら行うべきでしょう。

まぁ新しいギターアンプを買ったり、でっかいテレビを買ったときに、近所が許してくれるボリュームの勘所を探るような感じですね(違うわ!)

く言われることですが、ご近所トラブルを避けるためにも、初窯の記念品を配るとか、日頃の井戸端会議で「すっごく小さな窯でチョコチョコっとしたもの焼いてるのよ〜」と現状を過小気味に伝えておくのもいいかもしれません。まぁとにかく、やきもの屋は周囲とは仲良くしておくべきです。

マンションやそうした近所づきあいが希薄な環境の方であれば、なるべくニオイや音などで周囲を不安にしないような対策は考えておいたほうがいいかと思います。

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(波佐見:陶壁「陶磁の路」部分 イノウエ撮影)



















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2020年11月16日

陶芸に見るダニング=クルーガー効果


「なぜ能力の低い人間は自身を素晴らしいと思い込むのか」という調査によれば、能力の低い人間は以下のような特徴があることが分かった。

  • 自身の能力が不足していることを認識できない
  • 自身の能力の不十分さの程度を認識できない
  • 他者の能力を正確に推定できない
  • その能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる。

ウィキペディア ダニング₌クルーガー効果より



いるね〜、陶芸にも(笑)。


逆に能力の高い人間は自分を過小評価しているそうですよ。
自分がサラッと出来ることは誰でもサラッと出来ることなんだと思うから、だそうです。



わたしの拙い発信でも、ネット上での窯に関する発信が少ないからか、そこそこ見ていただいているようです。それらの発信についていろいろな質問をいただくことがあり、それはまたこちらの勉強と経験値の蓄積にもなることですから、なるべくわかる範囲でお答えするようにしています。

それでも本州の端っこあたりの准〇授みたいに、プロをタダでこき使おうというアホに当たることもあり、ホームページには有料対応と無料対応の基準を明確に記しているわけです。

逆に動画のコメントについては「その動画にかかわることであれば」なんでも答えていくようにしています。

わざわざ「」で囲っているのでもわかるようにロクロの動画に違う動画の窯のことを聞いてきたり、そもそもまったく動画に関係のない個人的な機材の質問を書き込まれることもあり、困惑することがよくありました。

まぁ答えられる範囲のことであれば答えるようにしてはいましたが、そういうコメントに限って返信しても何の反応もありません。


聞きっぱなし?

そりゃ上達しないよ(笑)。



いちいちそれに反応していては革命は成就しませんから、どんどん進んでいくしかないのですが、本当にもったいない。

直接メールしてくださる中にも、明らかに有料である事案について、よろしくお願いいたします、と言われてもねぇ…。




それよりも。

わたしを筆頭に発信している人とその内容を鵜呑みにしてはいけません。

尖ったナイフのような少年時代を送ったイノウエが、免許だ資格だとたまに言うのは、我々やきもの自営業には誰もツッコんではくれないからです。



無資格でなれるイケてる職業 

第4位 陶芸家

なんですよ。
(順位は適当〜アナタも考えてみよう)




免許もなにもないわけ。
陶芸教室の講師にもなんの資格も必要ありません。

それでいいし、そういうものです。


免許がない、それは大人のチェックは入っていませんぜ、ということでもあるわけですから、そこを注意していきましょ。

最近サボり気味ですが、発信するには話す内容の参考文献やエビデンスをなるべく示すべきだし、理系はオール2でしたとか、理数系の大学でお勉強しましたとか、発信者はちゃんと白状して、視聴者も発信者のバックボーンを確認してから受け取る度合いを考えましょう。

個人の発信にはチェックが入りませんから、どうしても玉石混交になってしまいます。

わたしのロクロ動画なんて職人さんからすれば、白帯が偉そうにという感じでしょう。ゼーゲル式の説明とかも、お前がするんじゃない、とあの人とあの人とあの人の奥さんが心の深いところでは思っているのかもしれません(笑)。

また逆に「オレの言うことが正解っス!イエ〜100マン通り調合を使いこなす天才はこんイノウエばい!」なんて言う方もいるでしょう。

検索すれば一つのキーワードでそれが同列に並べて表示されてしまいます。


そして視聴回数が多いと正解のような錯覚をしてしまいます。





(敬愛する陶芸ユーチューバーの全動画が最近非公開になったようですが、おそらくはそのあたりの遠因にもなっているのかなぁと勝手に想像しています。違ったらごめんなさい。応援は永遠にいたします)



さて陶芸に見るダニング=クルーガー効果についての説明は、あいかわらず尻切れトンボで出来ませんでしたが、またいつか!


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類似する用語:カジタ=イノウエ効果

個別の調合を先んじて行えば一つの乳鉢を用いて正しい実験が行えるが、34歳以下の男性が往々にして陥る、いい加減な計算に頼って次々に原料を乳鉢に投入して乳鉢のサイズが大きくなっていく現象。またそれによって作られたテストピースの釉薬は先に塗布した釉薬の減少分を考慮していないためにまったく資料として機能しないことをいう。おもに日本の窯業界のほんの一部で使用されている用語。

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2020年11月14日

粘土以外の「ネンド」も気にしてみよう


小忙しい日々の中、久しぶりにロクロを回したら風邪気味になっちゃいましたイノウエです。

わたしが倒れてもこの二人がいる!



長文はまた今度!

今日はあったかいモノ(熱燗・お湯割り)いただいてしっかりと寝ます。


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2020年11月05日

砥部焼のお碗で美味しいゴハン!




砥部に行ってきたのは先月末ですが、大変勉強になりました。

何しに行ったのかはちょっとアレですが、仕事がおわったあとは皐月窯さんに見学コースのガイドをしていただき、梅山窯さんの貴重な資料や製陶所の様子を見ることができました。

砥部が有田や瀬戸と大きく違うことの一つは、あくまで食器の産地であるということではないでしょうか。

瀬戸などはセラミックや耐火物、碍子なども作りますし、それは有田も同様でしょう。

砥部はどちらかというと小鹿田焼のような磁器の民芸の産地という認識の方が強いのかもしれませんね。きりっとした磁器も悪くはありませんが、砥部のおおらかでそれでいて洗練された文様と器体、砥部の現在を引っ張る若手の作家さんや窯元さんの仕事も素晴らしいと思います。

実にいいところですよ。

今回はGOTO適用で宿泊はかなりお安くできました。



★お世話になった皐月窯さんのところでのお仕事の様子は過去動画にあります。




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2020年10月31日

鉛とバリウムはイイ奴らだった…


事に出張からもどりました。

さてさて梶田絵具店さんの動画。
あいかわらずシブいところを…。


ことの発端はわたしの土鍋の動画の説明欄に書いた調合例に炭酸バリウムがあったことからでした。

お客様の一人から、今は炭酸バリウムが手に入らないのでは、というご指摘がありましたので、すぐに梶田絵具店に確認してみたところ、全く問題なく取り扱いをしているとのこと。



かに炭酸バリウムは毒劇物指定でハンコがないと購入できません。

陶芸ではほかに硫酸銅も同じ扱いになっております。
また塩酸を渋抜きに使用する織部作家さんもいるでしょう。

おそらくこの三つが陶芸に登場する毒劇物になると思います。

これを取り扱い、販売するには毒劇物取扱責任者の免許が必要です。
これを所持せずに販売するのは違法です。

そういう所がコッソリ販売を取りやめたから、手に入らないと誤解される方も多かったのかもしれません。

だったら免許取ればいいんじゃない?という話になりそうですが、これは陶芸材料用の免許ではありません(笑)。

全産業の毒劇物にかかわる免許ですから、上記三つ以外の部分の勉強が99%を占めるのです。

そしてある程度の理科と化学の基礎を押さえておかなければならないわけですから、相当な努力をしっかりある程度の期間しなければなりません。

ノウエも焼酎三段を筆頭に様々な資格を所持していますが、免許や資格は、ある意味公平な制度だと思っています。

たとえば電気工事に必要になる基本の資格、第二種電気工事士免許は学歴も年齢も関係ありません。現に息子は中二で取得しました。

毒劇物の免許も同じです。
学歴も年齢も関係ありません。

キチンと勉強すれば誰でも取得できます。
受験料も高くありません。

格制度にはデメリットもあるでしょうが、メリットの方が圧倒的に多いとわたしは思います。

誤解されている方もいるかもしれませんが、普通乗用車の免許も司法試験も、べつに自動車学校や大学に行かなくても取得できます。

ただし免許の恐ろしいところもあると思います。

普通自動車免許であれば取得初日からフェラーリでもブガッティ・ヴェイロンでも乗れます。大型自動二輪免許であればドカティでもハヤブサでも乗ってアクセル全開も可能です。
まぁ即廃車で病院行きになりそうですが(笑)。

建築系の資格でイノウエも所持している「玉掛作業者」というクレーン作業でワイヤーを掛けるための資格には重量の制限がありません。

これも資格取得初日から、ガス窯だろうと、イージス艦の砲弾だろうと、原子炉本体だろうとワイヤーを掛けて、クレーンオペレーターに合図を送ることができるのです。


無資格でどうにかしようとする人はこの辺りの感覚がありません。

大袈裟だと勝手に工程を端折ったり、そもそもその業界の常識を知らないから、とんでもない動きや作業をしてしまうのです。まぁ陶芸でもそういうことはありそうですね(笑)。

ちなみに陶芸家になるのも学歴や年齢は関係ありませんよね。
それでもちょいと危ないヤツを使いたいなら、ハンコは押してくださいね、ということです。
そしてハンコを押さなければならないようなものを販売する人には、資格の取得と法令の遵守をお願いします、というシステムなんです。

そしてあえて言いたいのですが、こうした毒劇物に鉛は指定されていないということです。
そのさきは使用される方が考えていただきたいと思います。


違いなく、これまで炭酸バリウムと鉛は、三国志でいえば関羽と張飛ぐらい陶芸に貢献してきました。

鉛が討ち死にしてしまった今、炭バリにまで逝かれては、劉備玄徳も哀しいぜってなもんです。


危ないものはいろいろあるでしょう。
一番の危険は無知ではないかと思います。

そして正しい知識は正しい所から得るようにすればいいのです。

オリジナルな使い方を発信するのもいいですが、その前にメーカーのホームページを見るべきってことかな。



posted by inoueseiji at 07:45 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年10月21日

なぜ撥水剤?




日あたりから過去記事の撥水剤がアクセスランキング急上昇。
なんで?

因みにこのブログの最初期の投稿の一つで12年前のものです。

コロナ禍でお家陶芸が盛んになってきたからでしょうか?

わたしは今年初めて水性のCP-C(CP-A2)を使用する機会を得ました。
これは子供がたくさんかかわる施設への納入の際に安全を第一に考慮して選択したからです。

結果としては大変良好です。
なにしろ臭いがほぼ無い。

水性能は青いCP-Eには劣るようですが、小皿の裏に塗る程度ではその性能差を感じることはありませんでした。
まぁペンキの油性と水性という感じではないでしょうか。

安全性や家庭、子供との使用を前提とすれば、水性をオススメします。

撥水剤はどれも新昭和コートさんの製品です。
特に釉薬添加型のものなどはホームページでダウンロードできる動画を確認して使用してください。

★新昭和コートさんの撥水剤一覧 http://www.shin-showa-coat.com/showa/hassui.htm


れまでいろいろな相談やアドバイスを行ってきましたが、陶芸であれ、建設現場であれ、失敗する方はまず説明書読んでないです。

なんでも出来る・わかってるは…ねぇ。200Vの電気炉に12Vのリレーをつけようとする方や、圧着端子というものを知らずにワッシャーで押さえてる人とか(そして違法工事)

たとえば洗濯機だって施工手順書などが業者用に添付されているのに、ちゃんと見ないで配送先でグダグダやって挙句ネジを一個紛失したりする、量販店の請け仕事で食いつなぐ元電器屋がいたりするんです。

ーカーがこうしてください、というのが85〜90点の正解です。
普通の人が適当にやってもその点数は出ません。ゴリゴリのプロだけが100点を狙えます。

それを勝手な受け売りや、陶芸教室に伝わる口伝、窯を販売しているオジサンユーチューバーなんかに騙されないようにしましょう。

しい製品を、正しい使用方法で使ってよい作品を作ってください。
原理原則は蝋抜きや墨はじきから始まる単純なものですが、それを製品化し、適当に工房にほったらかしておいても何年も安定した品質を保つように作られています。

キッチリとした道具や素材を使って、バシッとプロの仕事がしてあれば値段が付く仕事ができるものです(擬音が多いほどヤンキー感が高くなるばい)


でも適当だと100円ショップの器に負けそうになります。
上代100円で利益を出す現場は、実は個人作家の何十倍も製品管理や素材・原料に気を使っているものだからです。





(髪の毛黒いなぁ)


★撥水剤の購入はコチラで!

梶田絵具店   http://kajita-enogu.com/

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2020年10月18日

器のサイズ


うやく涼しくなってサイクリングシーズン。
朝からひとっ走りする前にブログを書いておきます。

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(帰ってきました)

自分の器が小さいと知る時、その器に固執するのか、叩き割って大きな器にするのか。
五十路になったワタシとしては、このプライド問題は徐々に大きくなってきました。

例えば、自分の仕事のやり方を人が見て、善意で「そこはこうするともっと簡単ですよ」とか、「これを使うのが常識ですよ、知らないの?」なんて言われた時、アナタはどうするでしょうか?(人様に振るんじゃない)

誰だって自信を持って行ってきた仕事や作業をそういう風に突っ込まれればカチンとくるでしょう。

そもそも多少の自信があるから人目につくところで行っていたわけです。

チンと来るのは自然なことです。
問題はその後でしょうか。

「そうなんですか。教えてくれますか?」「それはどういう風に使うんですか?」こんなことをサラリと言える人は、本当に大人だと思います。

40代から50歳になった日に思いましたが、自分の中身は中二から中三になった程度しか変化していないということですね(笑)。

ちゃんとした社会で活躍していれば、次長とか専務とか、大佐とか艦長なんかになっている年齢ですが、一人自営業の哀しさで、バイク屋の店長なみに社会常識が希薄なイノウエでございます。

人はワタシのことを多少は気にかけてくれるから、アドバイスをくれるのでしょう。
その人にとってわたしが、どうでもいいヤツ、嫌いなヤツと思っていれば、何も言わず陰で未熟さを笑っているだけ、のはずです。

「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」と死んだバアチャンがよく言っていました。
これは人に聞くのは恥、という意味もありますが、実際はアドバイスされた時にかく恥、も含まれているのでしょう。一生にかかわることになるぜ、と。

自分がようやく身につけたと思った技術を、実はむかしから何十年も何十人もの人が行ってきた製陶所なんかがあって、それを知っている人からサラリとアドバイスされる。

正直ガビーンとなりますが、恥をかかせてくれてありがとう、と思えるようになりたいものです。
「いや、俺のやり方は違うんで」とアドバイスを拒否してしまうと超絶カッコ悪いことになるばかりか、アドバイスをいただくこともなくなり、器が大きくもなりません。

分の器を大きくするには、今のお気に入りの器を壊すしかないんですねぇ。
難しいなぁ。

これまでのお客様や受講生を見ていても、スパッと切り替えて急激に技術を上げられる方と、こちらのアドバイスは聞かずに同じドツボに嵌りつづける方もいたりして、たとえ技術と知識だけであっても自分を変えるのは難しいものだと思います。



posted by inoueseiji at 05:00 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年10月14日

「一家に一台、陶芸窯」というキャチコピー

(今日めちゃくちゃ長いです。音声入力したので)

「一家に一台、陶芸窯」というキャッチフレーズを動画の最後なんかに言ってるんですが、これはですね芳村俊一さんが前に言ってたことなんですね。


四半世紀むかしの訓練校在籍時に、芳村俊一さんに会ったから私は窯作りをする決意をしたわけですが、その後いろんな芳村さんの書籍や雑誌に寄稿されてる芳村さんの文章をたくさん読んだんです。


言葉はすべて正確に覚えていませんが、その中に「理想は各家庭に小さな窯があってお母さんとかがその家族の器をその家で作って焼くような世の中になればいい」というようなニュアンスの記事があったと記憶しています。


それを読んだ当時の私はまだ20代後半ぐらいでしたので、その真意を理解できなかったと言うか、何を夢みたいなこと言ってるんだろうこの人って思ってましたね。


しかし自分がこういう仕事するようになって、本当に心の底から「一家に一台、陶芸窯」だなと思うようになりました。


芳村さんが言いたかったのは、まず「やきものは焼くとこからスタートしないと駄目だ」ということだったんですね。まず土がありきでその焼成がある、その前提で原料や粘土を選んで行かなければいけないし、決して粘土細工だけを追いかけてはいけないということです。


その言葉を芳村俊一さんが文字にした時、まだまだ夢物語だったと思います。40年、30年以上前であれば今紹介しているような100Vの電気炉はありませんでした。


でも今は本当に小さな窯の性能が高くなりました。芳村俊一さんが発信していた窯造りはどうしても薪や炭などで炎がある前提のものが多かったですから、場所を選びました。吉田明さんの七輪陶芸も難しい環境があるわけですから。


可能な方ならば火をおこして焼成してみてほしいですが、無理な方には100Vの電気炉がある。

私のお客さんの中にはマンションに住まわれてる方も非常に多いです。中には17階とか高層マンションの方もいらっしゃいますし、普通にアパートの一室でコツコツと研究や作品づくりを行っている方もいらっしゃいます。


だから今の設備からすればどんな家庭でも、それこそ「一家に一台」というのは可能なんです。


例えばわざわざその家の中でろくろを回して作らなくてもいい。焼成から逆算して、うちだったら今このサイズがあと3枚必要だな、と素焼きの素地だけ購入して、例えばお母さんと小さなお子さんで絵付けして焼成する。


一緒に窯に入れたり、窯出ししてみたり。


ほんのりと温かい窯出ししたばかりの器に自分の絵を見つける。

子供の情緒は大きく育まれるのではないかと思います。


絵付けも絵具を調合したり、調整したり筆を用意しなくてもいいのです。今は下絵用のクレパスのようなものがあります。それがスタートで十分です。


それを家族でワイワイ楽しく行ってですね、お母さんと一緒に釉薬を掛けて窯詰めする。もちろんお父さんもおじいちゃんもオバアチャンも可。


お茶碗とかカップとか子供の成長に合わせて作っていけます。

年中行事のためのもの、お食い初めの器はおじいちゃんが作る、夏休みなど時にはお父さんと一緒に粘土から作ってもいいでしょう。その器にはお母さんとおばあちゃんが料理を盛ってくれます。


いつか家を建てる時には壁などにそんな使わなくなった子供時代の器をタイルのように装飾に使う。縄文土器を例に出すまでもなく、陶磁器は永遠です。

そういう形でそれが子供の原体験として日本人に少なからずある。その子供たちがいつか家庭を持って同じように器を作っていく。そういう世の中になると本当にいいなと私も思います。


それが陶芸作家へのリスペクトになり、文化としての産地への誇りになり、陶芸講師や製陶所で働く人たちの社会的地位向上にもつながるでしょう。そうした方々の収入が上がれば就業する人も増えます。


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友人の吉田崇昭さんが指摘してくれましたが、今モノを作る人たちを目の当たりにするっていうことは非常に少なくなりました。街に畳屋さんや欄間職人さんなどが「仕事をしている姿」を見なくなりました。


瀬戸の友人であり先輩でもある小川友明さんの原体験は、自分の家から見えるロクロ師のおじいちゃんの仕事場の様子だったそうです。朝から晩までロクロに向かい、お昼もロクロの前でかきこむように食べる。その簡素なご飯がとても美味しそうだったと子供の頃の記憶として残っているそうです。いかにも瀬戸の人の原体験です。


仕事をしている人を見て、その仕事に就くというようなことはまだ続いているのでしょうか。

ドラマで見る職業人はスーツ姿か警察官かシェフと看護師と医師ぐらいですけれど(笑)。



また、わたしが高校生ぐらいの時代から、学校の授業でも音楽・書道・美術というものが選択科目になってしまいました。


我々の小中学生時代であればそれは全部一週間の時間割にあったものでした。


ところが土曜日が休みになってそのしわ寄せが、本来子供の教育に欠かせない授業を削らざるを得ない状況になって久しいわけです。これは非常に残念だと思います。


私の感覚であれば、数学・社会・理科こそ選択みたいな方がいいなとかね(笑)。


極論をいえば教科で区切ること自体が多少の弊害を孕んでいるわけですねよね。その緩衝材というか繋ぎのような役目を音楽・書道・美術が担ってきたのではないでしょうか。数学と社会と理科なしにこれら三教科もまた成り立たないのですから。


例えばやきもの、楽焼なんかを中学校で行ったとしましょう。


どうして釉薬は熱でこんな変化をするのかとか、粘土はどんな地層から出るのかとか、耐火物や断熱材の開発という技術の歴史について、現在陶磁器をはじめとする窯業は日本や世界においてどのような状況にあるのか、流通量はどうなのか、輸入された原料をどれぐらい使っているのか、そこに環境破壊はないのかなど、そういう総合的な話にもなると思います。


そこに外部から専門家を呼んでもいいですよね。リタイアした技能士さんとか職人さん、試験場や業界の方などの話を聞くことの意義は大きいでしょう。


そんな授業を受ける時にですね、一度自分たちで器を焼いていれば、あの炎の熱さとか、蒸気とかそういう皮膚感覚が記憶としてあるわけです。


生徒がその皮膚感覚を持ってその後の授業を受けるのと、単に教科書を開いて日本の窯業について勉強します、というだけの座学を受けるのと、どちらがいいのかというのは言うまでもないことです。


以前にもこのブログに書いたことがありますが、子供さんのイベントに関わると、今まさに作らんとする粘土を前にして、若いお母さんが「これ今日持って帰れますか?」と聞かれるようなことが、残念ながら少なからずありました。


今どきの若いお母さんは何も知らないんだと笑ってもいいのでしょうか?


そんな質問をする人を責める資格が我々にはあるのでしょうか?




モノを作ることが大げさに言えば人類の歴史の最前線ようなものだと思うんですが(アナタのやきもの作りも!)、そういう認識の人はわたしたち世代や息子世代にどれぐらいいるのでしょうか。



ちょっと得意の脱線をしますけど、例えばスーツをビシッと着てノートパソコン持って立派なオフィスビルで働くとかっこいいなという風潮をいつのまにか作られてしまったように思います。前述のドラマの話ですね。

やきものを生業とする我々も無意識にそう思ってる部分があるのではないでしょうか。


そういえば以前お世話になった建築関係の社長さんから名言(迷言?)を頂いたことがあります。曰く、「スーツはモノを作らない人の作業着」。なるほどと思いました(笑)。


さらに脱線すると、その辺りから実際の工事現場の作業着なんかもおしゃれでカッコイイものがいっぱい出てくるようになったなと思います。たたき上げのその社長さんは自分たちの仕事着にプライドを持てと卑屈になりがちな若い方に言っていたのかもしれません。



さてさて、話を戻して。


じゃあ一家に一台の陶芸窯を普及させるためにはどうすればいいのか、ですが。


20年前の私だったらたぶん「まず土を練ってから…」とか眉間にしわを寄せて言っていたんだろうなと思います。でもそうではなくて、まず窯で焼くとこからです。


つまり焼成するところから逆に進んで行かないといけないのかもしれないと今考えています。先日の記事での「高みから俯瞰する」ということですね。


陶芸窯で焼成するには、窯詰めしなければいけない、その前に釉薬を掛けなければいけない、ならばその前に絵付けをしておかなければいけない、こんな逆行の形でもいいんじゃないかなと思います。


大事なのは観光地の絵付け体験のような安易なことではない、ということです。後で窯で焼いて送りますっていうことではなくて、とにかく一番大事な工程は焼成なんだ、と全国民に知ってもらうということと、その焼成を体験することだと思います(話が大きくなってきました)


これまでの発信でも何度もお話ししていますが、本来やきものを勉強する順番は逆です。

一番に焼成で、何もできない時から窯を焚いた方がいいんです。芳村俊一さんなんて空っぽでもいいから窯を焚けと言っていました。


そこから逆算して自分の知識と技術を追っかけていければ良いと思います。


RIMG0036.JPG


私はいまピアノを習っていますが、ピアノの先生の悩みとして、とりあえず安価なキーボードではじめて上手くなったらピアノを買おう、ということをよく親御さんたちから耳にするそうです。


それもやっぱり逆ですよね。


ピアノが上手くなるためには先にピアノが必要なんです。

それでも昔に比べれば質の良い電子ピアノが普及していますから、マンションでもどこでも始められるようになったはずです。



やきものの上達や指導方法についての考察、それは他の世界に置き換えれば分かるシンプルなことです。


教室に通ってなんとなく理論がわかって、たくさんその分野の本も読んで、教室で借りながら多少上達してから「自分のカメラ」を買うのでしょうか。


これも違うのが分かりますよね。ちょっと意地悪な例えですけれど。


どんなに安いものでもいいから、今ならスマホでもいいから、日々写真を撮らなければ写真は上手くはならないはずです。


そしてそれを人に見せることもSNSを通じて簡単にできるようになりました。あとは「あなたはカメラマンになったほうがいい」と言われるぐらいまで撮りまくってアップしまくればいいんです。



ピアノやカメラの例え話が、やきものや陶芸にも当てはまる、ということだと思います。

だから私はこれからも「一家に一台、陶芸窯」の世界を目指して発信を続けていきます。


記録によれば昔は小学校で野焼きをしたり楽焼をした時代があったみたいですね。

全ての学校でではないですが、そんな豊かな教育を行った時代もあったんですね。


芳村俊一さんは、その時代の小学校の図画工作の先生だった方です。その時の生徒さんの言葉から氏のやきもの研究が始まったとか。芳村さんの言葉でいまの私があります。




「一家に一台、陶芸窯」というキャチコピーには、こんな思い出と願いがあるんです。



posted by inoueseiji at 09:53 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年10月10日

避けては通れないこともある




(石灰透明釉とは言わないところが!)


明釉という罪な言葉にどれだけの初心者が惑わされてきたことでしょう。

例えば全てテリヤキ味がジャパニーズと思い込んでいる人も世界には億単位でいるのかもしれない。

ホントは違うんだよ、と思いながらも次へと続くモノのために変なニンジャとかの棟梁(陶料じゃない)みたいな役をキッチリこなすケン・ワタナベのバッドマン・ビギンズに涙した(かどうかは不明の)梶田絵具店の新しい動画がついに世界同時公開。

ロム赤釉の先にどこまでいくのかと思ったら、グッと基本に戻ってきてムーンレイカーの次のオクトパシーぐらいシブい007を見せてくれています(ついてこれない人は結構です)

わたしも毎回勉強させていただいています。

基本わたしもみなさんと同じ釉薬の初心者クラスにいるクラスメイトです。畏敬の念をもってグランドの梶田寮長の背中を美術準備室からコッソリ目で追っているだけなのです。

なにもみなさんと変わりません。
ちょっと留年が長いというぐらいのこと(笑)。

もしくはクラスのきもの係というぐらいの感じ(調合数はトキちゃんに負けた)

多分わたしだったら、これだけのテストピースをつくって焼いたらしばらくは満足感いっぱいの放心状態で、その後は10年ぐらいは自慢話ネタにすると思います(したした!)


透明というのは状態であって調合ではない。
そんなことを実感として知るには調合して焼くしかない。

を見てもだれもやっていないなぁというアナタの不安を梶田さんは応援しています。

たった一つでも調合すれば、人生は変わりますよ。


そして同じように調合を積み重ねてきたプロが人知れず頑張っています。




かた陶器まつりは明日まで開催。

JR博多駅前広場ですからすぐわかりますよ。






posted by inoueseiji at 08:24 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

2020年10月08日

フライパンは鉄に限るがサビと鉄粉はゴメンだ


最近ネタが豊富です。

陶芸の世界で忌み嫌うものは、釉中や素地に混入してしまう鉄粉などの不純物。
ボロ降り、ボロ、産地によっていろいろな呼び名があるかと思います。

しかし窯や道具類は金属が多く使われています。建物も鉄骨スレートだったり、パートさんのご主人が鉄工所務めだったり、つねにやきものの仕事場は鉄粉の被害を被る恐れがあるわけです。

そのため訓練校などでは最初にそのあたりをみっちりと叩き込まれます。カンナを研ぐのは別の小部屋が設けてありますし、床に粘土を落とすとそれが何キロであろうと処分されます。製陶所などでも同様です。

わたしたちのような業者にしても、相手の仕事場や仕事のレベルをそういうところで判断し、判断されています。個人の方などは無頓着な方もいますが、真っ黒な土でゴリゴリの還元焼成でも、望まないところに黒点が出るのは、それこそ望まないでしょ(笑)。

道具がサビているなとか、両頭グラインダーがこんなところにあるのかとか、撥水剤の刷毛がカチンコチンじゃないか、とかね。そもそも窯場と窯をみれば、その作家なり教室のレベルは正確にわかります。

とくに白い器を作っているところは鉄分やゴミに対して非常に警戒しています。部外者の工房見学ができない所はそういう理由もあります。磁器の産地や作家さんなら特にそうでしょう。
陶芸教室などでも、そういう部分を伝えていけるといいですよね。

わたしは築炉メーカーにいて、そうした工房内での仕事の経験の方が個人の仕事場よりもたくさんあるわけですが、いきなり工房で電動工具を使ったりする鍛冶屋のオジサンには、年功序列関係なく大声を出して止めていました。

そうすれば、それを見た製陶所の社長さんは「コイツはわかっているな。この会社は大丈夫だな。」と思うわけです。

粘土を扱う場所で、カンナを研ぐとかはご法度です。別にあとで掃除するから大丈夫とかいう人に限ってボロが出ております(経験談)。カンナにヤスリ掛けがご法度なんですから、それ以上のことは厳禁だということが容易に想像できますよね。

これを読まれている方々は重々承知されているでしょうから、ぜひこれを機に周囲の無知な方々に伝えてあげてください。


とはいえ。

どんなに管理の厳しい工場でもペケは出ます。
器などにわずかに認められる黒い点。

それはもちろん機能的には問題ありません。十分に使えますが、そういう問題ではありませんよね。美しい作品に全力傾けて生産活動をしているプロフェッショナルがたくさんいることを知っておきましょう。

それは作家や製陶所だけではありません。
粘土屋さん、釉薬屋さん、絵具屋さん、道具屋さん、設備屋さん、築炉屋だってそうなんです。


このところ、先日の鍋土のことなど、外側からの質問や発信によって初めて気づかされることが多くあります。

「こんな基本的なことを言わなければならないのか」と思うと講師業や発信はつまらなくなってしまいます。

そうではなく「もっとわかりやすい方法を見つけて伝えていこう!」なんてかつての先生や先輩をコッソリ仮想敵にして、ポジティブな発信を続けていきたいものだと思います。


posted by inoueseiji at 09:42 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中

水炊きはすき焼きの夢を見るのか?


原料についての誤解、原料名の間違った読み方、ウソ、大げさ、紛らわしい。
ナントカ機構にチクりたくなることが時々あります。


さて鍋土、耐熱土。


自分で作った土鍋を家族みんなで囲む鍋の時間。
こんな楽しいことあります?

自分で作ったモノが完全に主役の器として食卓の中心に鎮座しているのです。

わたしも講座の受講生の方にこんな体験をしてほしいと常日頃から思っていました。
ところがいくら力説しても、目の前でそのキメの細かい耐熱土を見せても、だれも作らない。

「いや、鍋はけっこうです…。」

人によっては迷惑そうにそう言って離れていきます。


わたしの受講生の平均年齢は70歳ぐらい。
あるていどの期間やきものを楽しんできた方々が中心です。

その方たちの心にのこる、土鍋のしょっぱい思い出。

  • 土がザラザラ
  • 作りにくい
  • 焼成温度を変えないといけない
  • 釉薬が思ったような仕上がりにならない
  • 使っていると割れそうで不安
  • 調理中に真っ二つに割れた人もいるらしい



そんなことが頭の中をよぎるのでしょう。

でもそれは昔の常識です。
アナタがそれに縛られて土鍋を作っていないなんてもったいない。


耐熱の素地の開発はそれこそ耐火物とならんで重要な研究だったのではないかと想像します。
ペタライトを使用するようになって、土鍋は広く普及するようになったのでしょう。

とはいえ、ペタライトを使っているから耐熱になるというような単純なことでもありません。わたしは味噌煮込みうどんが大好きですが、某老舗の煮込み用の土鍋なんて全部針金で縛ってありましたからね(笑)。





常識の無い人にも困りますが、これまでの常識をアップデートしないのも困ります。
どんどん技術は進歩しているんですね。

当然昭和よりも平成、平成よりも令和の御代の耐熱土の方がより良いものであるはずです。
動画を参考にみなさんも是非作ってみてください。




◆耐熱土(赤)20sはコチラ https://www.nendoyasan.com/?pid=138066752 ◆耐熱土(白)20sはコチラ https://www.nendoyasan.com/?pid=138066751 ※それぞれ10s売りもあります。



ねんどやさん.com【山内陶料】 https://www.nendoyasan.com/

山内陶料さんは他にも様々な製品をラインナップしていますよ。


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2020年10月03日

刷毛塗りのヒントになる動画


またまた人の動画を勝手にシェアさせていただきます(笑)。

自宅陶芸でオススメの釉薬の刷毛塗りですね。

焼いてみたら、釉薬が薄くなってしまったとか、上手く出来ない、という方に瀬戸の作家さんの動画でわかりやすいものがあったので紹介します。

瀬戸の加藤裕重さんの動画です。
(また福岡に来てくださいね)


特に3分51秒から https://youtu.be/kxlKMCkWBKk?t=231

容器に入っている釉薬はそこまで濃くありませんが、糊分(CMCなど)を入れることで、ドロッとして刷毛塗りがしやすくなります。

失敗される方の多くは、このドロッとした釉液にビビッて薄く塗ってしまったり、CMCを入れてからまた水を入れたりしていらっしゃるようです。


動画での刷毛塗りはかなり厚く塗っているように見えますが、最後の焼き上がりをみると灰釉の部分は織部よりも薄いでしょ?
(それが織部ってもんだぜ!:偏見)

これを一つのヒントとされると良いかと思います。

ツクリテチャンネル瀬戸の登録もオススメします。



織部は掛け分けがありますので、こうした施釉方法は多くの方が非常によくされています。




先日も勝手に紹介の寺田鉄平さんの動画。
こちらもちょこっと釉掛けが映りますが、参考になりますよ。


あとは焼いて確認ですね!




お暇でしたら不肖イノウエのヤツもどうぞ(笑)。








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2020年10月01日

一年間毎日発信できるのか?


川瀬さんのところに先日吉田崇昭さんとお邪魔してきました。

その際に9月いっぱいで毎日発信はとりあえず終え、10月からは週に2,3回程度の発信ペースになると伺っておりました。

今日から10月。
昨夜の動画であらためてお疲れ様でした、とお伝えしたいと思ったところです。




そもそも毎日なにかを一年間できる?
この酒飲みだって、年に二日ぐらいは強烈な二日酔いで呑めない日もあるというのに(笑)。

それこそが川瀬さんをプロたらしめているのでしょう。
古民家の改装と引っ越しも控えた中での発信、本当にお疲れ様でした。

またこれからの発信も楽しみにしております。フカウミさんも頑張ってください!






さてさて。

一年間は休まないとか、新規オープンの個人のお店などでもたまに見かけますが、まぁそういう覚悟のところが潰れたのを見たことがないですね。

毎日店を開けておく。
機会の損失を最小にするという当たり前のことです。

いくらロクロが上手くなっても販売先、アクセス方法、それが閉ざされている、そもそも自分で努力していない、なんてことではプロになれるわけもないのかもしれません。

また暴言気味の個人的な意見ですが、ネットとかスマホはちょっとねぇ〜とか仰っている方は、一人自営業には向いていないのかもしれません。

あのゴルゴ13だって、それこそ複数のアクセス方法があります。一般人でも会うことができるのです(依頼であれば)。マニアしか知らないことですが、ゴルゴ13にはアマチュア無線のチャンネルも持っていて、自由に出歩けない無線ファンもアクセスも可能です(そういう回がある)

そしてそれを世界各地や帆船にしつらえた隠れ家で、日々ちゃんとチェックしているゴルゴ13って、健気です。


一年間なにかを毎日やってみるチャレンジ。
アナタもやってみませんか?

最悪ツイッターに「暑い〜」の一言でもいいから毎日ツイートとか。
手でグッと握っただけの箸置きの日があってもいいから、最低一つは何か作るとか。
梶田さんみたいに毎日釉薬の調合するとか。


川瀬さんのところでの様子は今度また紹介しますね。

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(お盆で集まった従兄状態)

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2020年09月27日

そこですか〜!


トキちゃんにお洋服買ってあげたのでしょうか、気になります。

さてさて、外角低めを待っていたら、内角高めの速球に芋引いてバット振っちゃた感じ(野球知らんけど)

そこか〜。

クロムスズピンクか〜。

マンガンピンクじゃなくて(これは別ネタ)

20年前に引き上げの仕事の際に頂いた酸化クロムが2ポンドほどあるけど、なくならないんです…。

クロムスズピンクの釉薬も、クロムの添加量はわずか0.1%。

まぁクロムとかコバルトとか、少人数でガッツリ仕事しますからねぇ。

梶田絵具店のYouTubeチャンネル、恐るべし。




(全画面表示で見ることをオススメします。)
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2020年09月26日

何もできなくても本は読めるはず!


サウナで整って夏バテを解消し、久しぶりに動画をアップいたしました。



「陶芸窯 基礎知識と築窯記録」 寺田康雄著 里文出版 ISBN978-4-89806-491-7

★本の購入先はコチラ https://www.yodobashi.com/product/100000009003262789/
★美山陶房 https://www.teradabizan.com/
★寺田鉄平さんの紹介動画 ツクリテチャンネル瀬戸 https://youtu.be/YqFW2XbAAqM



コロナの影響で教室が休講になったり、縮小されて受講できなくなっている方もかなりいる、とお客様に聞いております。

作陶できないのはツラいでしょうが、今はレベルアップのための充電期間だと思えばいいのではないでしょうか。きっといつかは元に戻ります。

とはいえ、アチコチでフェアなども再開しているようで、ある程度ピークは過ぎたようですが、まだまだ作家さんや教室講師の方々にとってはいろいろと大変な時期が続いていると思います。

もうしばらくは知識の再確認とレベルアップの期間と捉えて苦しい今を乗り切っていきましょう。



さて、陶芸本のはなし。

陶芸家を目指している方で、いまは違う仕事などをされている方だって、一日に10分程度の読書は出来るはずです。

わたしも築炉メーカーにいたころ、夜な夜なこうした書籍を読んでいました。
それは確実に今に繋がっています。

また、わたしにしろ、誰にしろ、人の発信には原典があります。
それを読んでおくことが重要です。
(映画だってハリウッドリメイクで感動したらオリジナルを観てみましょう。)



例えば仮に、わたしの発信で何かの書籍について聞いたとしても、それはヘラヘラ笑っているオッサンのフィルターを通したものに変化しているものなのです。

学校や職場で習った作陶の技法などが、いつの間にかその人なりのやり方に変化しているのと同様です。

コピーのコピーのコピーに感動したりしないように情報には気をつける必要が、ネット以前の時代よりもあるということでしょう。個人の発信にはなんの検閲もないということです。


作陶についての話に戻れば、人間は自分が一人で習得した技術や考えに固執するものです。

たとえばいつも歪んでいたサンマ皿が上手く作れるようになったとしましょう。
その時に、実はなんの根拠もないある工程が成功のカギだったと「自分で自分を誤解してしまう」ことがあるのです。

実はサンマ皿の成功の理由は、ただ単に冬になったからとか、気にもしていない工程で使用する器具や道具が変わっただけ、だったりするんです。

失敗だけでなく、そうした成功の原因も、理詰めで把握していくことが大切です。書籍などを通じて考える基礎の知識を持っていないと裏ワザ的なことを王道の技術と誤解することがあります。

失敗だけではなく、成功の原因も理詰めで理解する、これは作家としてひとり立ちする方も、講師業をする方にも必要な考え方だと思います。

意外と「その人の環境でしか通用しないこと」を書いている本や発信は多いものなんです。




まぁ、このブログもそうですけどね(笑)。








◆陶芸本のはなし2




◆陶芸本のはなし3






posted by inoueseiji at 06:37 | TrackBack(0) | イノウエセイジの頭の中