2009年09月18日

試験炉製作のはなし


燃焼のはなしの途中ですが、この数日の間でのことなので、気持ちが新鮮なうちに書いておきたいと思い、今回はこのネタです。

どんな窯の話だ?と期待された方には申し訳ありませんが、実はこれは陶芸の窯ではありません。

防火壁の耐火試験のための試験炉です。

ある金属加工メーカーの方がわざわざネットで調べて、わたしの所に連絡をしてくれました。お盆休み直前のことです。

最初はHP上に紹介していた中古のガス窯が欲しいということだったのですが、一体普通の企業がなんのために窯が必要なのだろうかと思い、話をしてみると、建材の壁材の耐火試験に使いたい、ということだったのでした。

条件を聞いてみると、商業施設の壁に使用される新製品の試験だそうで、なんと、40分で950℃にしなければならない、という陶芸の世界にいる人間としては、とんでもない条件だったのでした。

さすがに、そんな短時間で昇温させたことなどないですし、しかも取り付ける試験体は、最低でも1メートル四方のボードだそうで、それ以上小型にするわけにはいかないということでした。

相手はちょっと名前は控えますが、大きな会社ですし、設計、営業、工場のお偉いさん(?)の3人がわざわざアトリエまで来てくれてのはなし、無碍に断るのもかわいそうです。
すでにこれまで社内でいくつか試験炉を製作して失敗し、もう予算もない、ということでした。

細かい打ち合わせの経緯は割愛しますが、最終的には、相手は加工メーカーですので、窯のフレームは自社で製作し、わたしのほうで設計や材料などを提供して欲しいというお話になりました。

とにかく、
瀬戸の築炉メーカーなどに相談してアイデアを出してみましょう、ということに。

とはいえ、陶芸の世界で、1時間以内のうちに炉内を1000℃近くまで上げることはありません。そのため、どうしても常識にとらわれてしまい、なかなかいいアイデアも浮かんできませんでした。

はっきり言えることは、たとえ真っ白な耐火断熱レンガであろうとも、レンガを使用してはその条件は難しい、ということです。

1メートル四方の試験体を扉にして、なるべく薄くするとはいってもバーナーの炎が動く幅が必要ですし、扉になる建材に直接炎を当てない、というのも条件になっているため、どうしても炉内の幅が50センチぐらいは必要になってしまいました。そのため、タバコの箱を横に倒したような形の窯になりました。

試験炉の容積は、1mx1mx0.5m=0.5m3 ということになります。

これはわたしの窯とほぼ同じぐらいのない容積です。それを40分で950℃にしなければなりません。レンガを使ってしまうと、点火後にまず窯のレンガに熱を取られてしまいますから、なかなか温度が上がりません。

レンガが使えないということは、その代わりになる耐火物を使用し、さらにその断熱性がレンガよりも良くなければならないのです。

そんな材料があるのか? 

あります。

それはある種の耐火ボード製品で、大変熱伝導率が低く、低蓄熱量ですので炉壁への熱の損失がレンガよりもはるかに低いのです。

また、アルミナシリカ系の耐熱繊維なので、ふかふかとやわらかくて軽く、加工もまあまあ簡単です。そしてなんと最高仕様温度は1300℃なのです。
これまでの仕事で使用したことも何度かはあります。

ただ、高い。

何度かの打ち合わせや見積の結果、このボードと同じく600℃ぐらいまで耐えてくれる断熱ウールという断熱材との2層構造で試験炉を製作し、ガスバーナーは4本つけることになりました。

材料を納入し、その後工場に出向いて、わたしも一緒に製造にかかわりました。ステンレスのピンで溶接しながら留めていくのでレンガを積むよりは早く仕事ができます。一気に完成させて、二日目にもう試験焼成をすることになりました。



その二日目。

はたして上手くいくのでしょうか・・・。

ものすごい不安が、イノウエセイジの頭の中を過ぎります。

試験体である、金属製の枠の中に耐火物が入っている建材ボードを扉代わりに取り付けます。ガスボンベのバルブを開けて、ガス圧をいきなり高めにして、最初から全てのバーナーに点火しました。

デジタルの温度センサーの数値はいきなり上昇していきますが、炎が当たっているだけの最初の段階では、温度計の数値はあてになりません。

しかし、温度計の数値が落ち着いてきた点火後20分ほどで、炉内は800℃を超え、30分で900℃に達しました。

60分の試験を終えて、非常に良好な結果を得ましたので、相手の方々には非常に喜んでいただきました。これで上手くいかなかったら、今頃メルマガを書いていないかもしれませんね・・・。

それにしても、このアルミナシリカ系のボードはすごいですね。
なにがすごいと思ったかというと、あっという間に冷めてしまったんです、この試験炉。950℃で終了して、1時間半ほどでもう100℃ぐらいになっていましたので、試験体を外して内側を確認することができました。

つまり、このボードは、レンガなどと比べると、まったく蓄熱しないということです。いくら炉内に何も入れていないとはいえ、レンガで作った窯の場合、そんな短時間で温度は下がりません。
(もちろん逆に、こんなに短時間で昇温もしませんが・・・)

正直言って、できるのかどうか非常に不安でした。
温度は大丈夫だと思っていたのですが、時間がクリアできるのか、というのが最大のネックでしたが、まさかこんなに簡単にできるとは思いませんでした。

新しい素材を知ることもとても大切ですね。

新しいといえば、試験をした建材の耐火壁は商業施設などの通路などに使用されるそうです。たくさんの人が逃げる時間を稼ぐために、非常に厳しい条件が国から求められているそうです。

いいことなのか、悪いことなのか、こうした条件の変化は、数年前の耐震偽装問題からだそうで、各メーカーが新商品の開発、既存の商品の撤退、などさまざまな動きがあるそうです。

この試験炉で社内試験を繰り返し、本試験は国の施設で年明けに行われるそうです。その本試験も小さな普通乗用車の購入費用ぐらいの費用がかかるそうです。






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焼成 酸化と還元 2



酸化焼成と還元焼成について書いていきましょう。

先週の続きで、どの温度で、どうやって、どれくらい、というお話にうつっていきましょう。

還元焼成に入るのは、一般的に900〜950℃の間ということになっています。ガス窯や灯油窯など炎のある窯では、この温度帯でしばらく窯をねらし、炉内の温度をなるべく均一にするようにします。

電気炉などと違い、炎がある窯では低温域での炉内温度はかなりばらつきがあります。

また、以前書いたように、温度計が指し示す温度と、実際の作品とではかなり温度の開きがありますので、最初の焙りから、ようやく一段落というこの温度で少し中休みということです。

先月、かつて働いていた築炉メーカーにお邪魔しましたが、そのときの社長の話でも、このことを強く強調されていました。いつも学生への焼成指導でもそのことを指導するそうです。

学生のころにはわたしもそうでしたが、どうしても温度計を気にして焚いてしまうんですね。温度計がそうなっていれば、つい作品もそうなっている、と無意識で考えてしまいます。

900℃ぐらいの温度というのは、けっこう簡単に自然界でも出てしまいますし、まして陶芸窯の場合は1250℃を意識して造っているわけですから、これぐらいの温度はどんな窯でも普通に焚いていれば短時間でも上がります。

しかし、それと作品の温度、熱、カロリーというのはまた違うのです。

昔は数日かけて焚いていたのを、十数時間で焚くのですから、どうしても温度計先行になってしまいます。とにかくここではしっかり練らして、窯の温度を均一にしていく努力をしましょう。

さて、それではいよいよ還元焼成にむけて、さまざまな操作をしていきます。

まず、ガス圧などを操作して、火力を強め、炎を多目に送り込みます。

また、同時に煙突のダンパーを中に差し入れたり、ドラフトを開けたりして、煙突の引きを弱めます。これを陶芸の世界では煙突を押さえる、などと言います。

こうすることで、還元焼成になっていきます。(先週のお話を参考に)

還元焼成が安定すれば、たとえばガス窯の場合、色味の穴から炎が数センチ吹き出します。温度の上昇も1時間当たり30〜50℃ぐらいになってきます。
もしまったく温度が上昇しないのならば、それは押さえすぎているはずです。

電気炉の還元焼成では、ガスや薪などの可燃物を炉内に供給します。


おおよその数値ですが、1100℃ぐらいになると、釉薬が溶けてきて、釉ガラスを還元ガスが通り抜けられなくなります。

そのため、あまり短時間で還元焼成の温度帯を通り抜けてしまってはいけません。どれだけの時間、還元をかけたのか、それはひとつのデータですから記録しておくことが大切です。

1150℃にもなると釉薬の表面も溶けてきて、還元焼成の効果もあまりなくなりますので、還元の度合いを弱め、温度が上がりやすいようにしていきます


還元焼成は、なかなか本やこうした記事だけではなかなか理解できないと思います。

どうしてもある程度のテスト、もしくは失敗が必要になるでしょう。






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2009年09月03日

酸化と還元 1


酸化焼成と還元焼成について書いていきましょう。

このメルマガは、きっといろいろな経歴、経験の方が読まれていると思いますので、どういう表現で書こうかまようところですが、わたしが普段、陶芸講座などで人にどう説明しているかを書いてみます。

その前に、わたしは陶芸教室などをみてとても強く感じるのは、還元焼成で焼かれたもののほうが、酸化焼成で焼かれたものより良い、という受講生の感覚が見え隠れする気がしています。

電気炉のお話のときにも書きましたが、酸化焼成で伝統釉を焼くこと自体、本来はナンセンスなのかもしれません。それはさておき、化学をまったく高校、大学で学んでこなかったわたしが、この焼成における酸化と還元を理解するのは結構苦労しました。

陶芸の世界では、酸化と還元はまったく別物として捉えられていますが、化学の世界では、いずれも、酸化還元反応、と本来は呼ばれるべきだそうです。なぜならば、何かが酸化されているときには、同時になにかが還元されているからです。



酸化焼成というのは多くの人が理解しやすいかとは思います。
なぜなら、普通にものを加熱すると、基本的には酸化焼成に近い状態で焼成が終わります。それは陶芸の窯でも同じです。とくに電気炉は輻射熱で加熱しますので、炉内の空気は、外気とほぼまったく同じ状態です。

ガス窯などでは、ガスバーナーの炎が必要とする酸素を全部供給して、効率をもっともよい状態にしているときに酸化で焚いている、といいます。

「電気の酸化と、ガスの酸化ってちがうよね。」という差は、炉内の雰囲気の差による、わずかな反応の違いです。

同じ酸化焼成とはいえ、電気炉は外気とほぼ同じ窒素と酸素のバランスですが、ガス炉などは、炎が存在するため、炉内は電気炉よりも酸素がすくなく、また炭酸ガス(二酸化炭素:CO2)が存在しているからのようです。

現実には炎を使用した高温処理では、ある程度の還元反応が素地におきるのは仕方のないことのようです。以前窯の話でもかきましたが、電気炉の利点はまったく、一切還元がかからないことなのです。

ガスだろうと灯油だろうと、薪だろうと、燃料はすべてC(炭素)をふくんでいます。そのため、燃焼しているときにできる燃焼生成物は、二酸化炭素、水、および窒素で、これらは煙突に排気されます。

還元焼成をおこなうには、この炭素を過剰にするか、煙突への排気を押さえて炉内へ二酸化炭素を足止めするかすればいいのです。ほとんどの場合、これは同時に行われます。つまり、ガス圧を上げて、ダンパーとドラフトで排気を押さえます。

ちょっと変な想像力を働かせてほしいのですが、あなたはいま、燃える気マンマンでガスバーナーから出てきた炭素か一酸化炭素(C・COですね)です。が、いざ現場にきてみると、もう還元焼成になっていて、自分が結合してもえつきるべきパートナーの酸素(O2・Oですね)がいません。これは息ができなくて苦しい。

ガスに生まれてきて、こんな理不尽なことがあるか、と思ったあなたが取る行動はたったひとつ、略奪です。

見るとぽや〜っと融けかかった釉薬の中や、素地の中では、楽しく酸素と手をつないでいる奴がたくさんいるではありませんか。

あなたが煙突から外へでるには、どうしても酸素と結びついて、二酸化炭素にならないといけません。強引に酸素を奪って連れて行きましょう。酸素をなくした連中の色が変わろうが知ったこっちゃないのです。どうせ追いかけてこれないし。

こうしてFe2O3(弁柄)などから酸素を奪ってFeOなんかにしてしまうのが還元です。

これは酸素をつなぎとめているもの全てでおこりますから、還元焼成をすれば、釉薬でも土でも色や雰囲気がかわります。また、たとえ話のように、単に加熱していくだけではなく、化学反応が強くおこなわれるわけですから、酸化焼成よりもよく焼き締まるような気がします。

酸化還元反応は、陶芸の場合、酸素のやり取りの話です。
燃料を燃やすために必要な酸素、燃料を過剰にして、釉薬や素地のなかの酸素を奪い取らせるようにするのが還元焼成です。

では、どの温度で、どうやって、どれくらい、というお話にうつっていきましょう。






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2009年07月26日

ダンパーとドラフト 2


前回書いたように、ドラフト(バカ穴)は煙突・煙道の途中で自在に開閉できる穴ですね。いくつかに分割したレンガで蓋をしていることが多いです。

その穴から空気を吸い込んでしまいますから、その分だけ、煙突の穴の断面積が小さくなることになります。このことは、前回、穴の開いたストローとタバコのフィルターに例えて書きました。

そしてさらにドラフトの先には、ダンパーがあります。

ドラフトからの外気と、炉内からの排気が混ざって落ち着いたあたりに、板状の耐火物を出し入れできるようにして、これをダンパーと呼んでいます。

かつてはレンガの薄いものを使ったりしていたのですが、最近はムライト質の板などがほとんどです。

ダンパーは板を排気の通り道に差し込むことで、物理的に気体の流れを妨害します。ドラフトでの操作を、さらに精密に微調整していく、という感じであるとわたしは捉えています。

ダンパーとドラフトの関係については、さまざまな捉え方や方法論があるとは思います。

しかし、はっきり言えることは、ダンパーだけ、ドラフトだけ、という考え方をするのは、非常に窮屈だと思います。また、バランスの取れた窯と煙突ならば、ダンパーだけで還元焼成をするのはむずかしいと思います。

さまざまな人からお話を聞いた中で、ダンパーには触らない、半分で固定、バカ穴だけでやっていくのがいい、などという人もたくさんいらっしゃいました。もちろんそれが間違っているわけではありません。しかし、それはあくまでも、その人の窯の場合、その人の考えの場合、という発言であると思います。

もちろん、この文も、わたしの場合、わたしの考えの場合、ということにはなりますが、築炉の仕事をしてきた者として、多少は汎用できるものが書けないだろうか、と思っているだけです。



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2009年07月19日

質問 窯の改造について


今年になって、ふくおか陶芸窯のほうのサイトから、同じような質問が2,3きましたので、少し書いておきたいと思います。

ガス窯を灯油窯に変えられますか、というようなお話や、その逆のことを問い合わせていただいたことがありました。こうした要望は地域差などかもしれません。

結論から言えば、灯油の窯からガスへ、またはガス窯を灯油へ、という変更は不可能ではありません。

しかし、決しておすすめするようなことでもないのです。

わたしがいた築炉メーカーでは、厳密に灯油窯とガス窯では炉内のバランスを変えていました。わたしは灯油窯の設計のことは正直わかりません。経験がほとんどないからです。わずかな経験というのは、もともと灯油窯だった施設がまた灯油窯を新設するときに造ったことなど、2、3基ぐらいだったと思います。

普通のガス窯や灯油窯は倒焔式ですから、扉正面から見て、本体の左右に同じようにバーナーを設置しています。

そのとき、ガス窯でバーナーが3、4本必要な部分に、灯油の窯では1個しかバーナーをつけません。すみからすみまで均一にバーナーが割り振られているガスの窯と、真ん中にひとつの灯油窯では、あきらかに違いそうでしょ?

どちらにしても、窯本体に開けられているバーナーの穴を加工するのは、そんなに簡単なことではありません。穴と穴の間に、補強のためにフレームを入れてあることもよくあるからです。

これはわたし個人の考えですが、いま焚ける状態ならば、何十万もかけてまた別の熱源を取り入れても、劇的な変化があるとは思えません。そこまでコストをかける意味もあまりないような気がします。

また、これも質問されたのですが、焚く回数が減ってきたり、仕事の内容が変わってきたからといって、窯の内側に壁をレンガ一枚づつ張って、容積を小さくしたりもできません。

表面上、トントンと均一に積まれているように見える炉内のレンガですが、実は格段ごとにその後ろの層のレンガと組み合わせてあります(少なくともちゃんとしたメーカーは)。

0.2m3のガス窯でも1トン以上の重量があり、レンガだけの重さも相当なものです。それが1200℃以上の熱で膨張し、収縮するわけですから、その力はとても強いものです。

そうした窯を何百回と使用できるようにレンガを積んでいる職人さんやメーカーってすごいと思いませんか。

窯の扉のハンドルを、ぎっちり閉めない理由は、パッキンになるブランケットを守るため、でもありますが、膨張によって戸当たりのレンガを傷めないように保護するためでもあります。


窯の炊き方はいろいろな考え方があると思いますし、それら全てが経験によるものだと思いますので、一概にこうだ、とは言えませんが、わたしの考えとしては、詰める作品の量が少ないのならば、全体に均一にスカスカに詰めて焚くか、最下段を何もいれないで(代わりにツクなどを置いたりして)焚くなど工夫するしかありません。

あきらかにわたしも、窯を焚く回数も、詰める作品数も減っていますが、なるべく均一に窯を詰めるように気をつけています。織部はスカスカのほうがキレイな気がします。

とにかく、造られた窯は、ひとつの完成形ですから、むやみと変更をしたりするのは、よほどの理由がない限りやめたほうがいいと思います。

また、そういうことを計画するのは、レンガの張替え工事を控えたときなどに、メーカーなどと相談しながらがいいでしょう。

窯焚きというのは、簡単といえば簡単かもしれないし、複雑といえば複雑な要素もたくさんあります。たとえば、煙道の中のゴミを除去しただけでも還元の具合が変わったりするぐらい、窯のバランスというのは敏感なものがあります。



ご参考までに。



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2009年07月16日

ダンパーとドラフトについて 1







※過去記事ですがアクセスが多いため、動画をリンクしておきます。


ダンパーとドラフトのことについて書いていきます。

一般的な倒焔式の窯の場合、棚板を組んだ炉内、もしくは台車の下に煙道が通っています。これは窯の後ろで垂直に立ち上がり、煙突へ伸びているわけです。

火力に応じて、煙突へぬけていく排気の状態も変化していきます。還元焼成のように、意図的に流れを悪くしたり、あぶりの時には、より煙突へ炉内の空気がぬけていくように操作しなければなりません。

その操作のために設けてあるのが、ダンパーとドラフトです。
今回は、ドラフトのことについて書いていきます。

ドラフトですが、これはおそらくドラフトチャンバーの略でしょうね(などと偉そうに言っているが今調べた)。吸気をしながら排気することをいうようです。バックドラフトという火事場用語?もなんとなく意味がわかりますね。

窯本体の後ろ、煙突の真下にあり、おおむね煙道が直角に曲がる部分に穴が開いています。普段はそこをレンガなどで閉じているのですが、この穴のことをいいます。陶産地ではバカ穴などと言われたりもします。

このドラフトの働きですが、煙突の途中に穴があるわけですから、その穴を閉ざしているレンガを取って、煙突に穴を開けた状態にすれば煙突はその穴からも空気を吸ってしまいます。その結果、窯の中の空気を吸い出す力が弱くなります。

熱が逃げすぎるとき、還元をかけるため、炉内を燃料過多にしたいときに、レンガを必要なだけ取って穴を開け、炉内からの空気(熱)の排出を抑えます。

ジュースを飲むときに、ストローに穴が開いていたら吸いにくいでしょう?

また、タバコのフィルターにミシン目の穴が開いていて、空気を一緒に吸い込むから、軽くて1mgかな、というのと同じ原理です。

ドラフトの場所は意外と重要で、曲がり角にあるのが一番効果的です。そのため、煙突がある窯のほとんどは、真後ろの一番下にドラフトがあると思います。



◆2019年5月26日 追加:

ダンパーとドラフトはエントツがしっかりとその役目を果たしてこそコントローラブルになります。
次の動画も参考にしていただければ幸いです。




◆2020年6月24日 動画を追加しました:





◆2025年3月5日 追記

この記事はこの数年ブログ内の記事のアクセストップの状態が続いています。
ガス窯等の焼成において、お困りの方は以下ホームページからお問合せください。
電話相談で解決することも多いですから、お気軽にお問合せください。

https://www.fukuokatougeigama.jp/guide.php

お電話でのお問合せ 080-9534-7310




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2009年07月09日

焼成について 4


ダンパーやドラフトのはなしをする前に、もうすこし窯本体と炎の関係を軸にして話をしていきますね。



窯の中に、炎が長くいてくれれば、単純に温度は上がると考えられます。

そのため、その経緯や歴史的な順序は、わたしは不勉強でわかりませんが、穴窯から大窯、そして登り窯へと移っていったのは間違いのないことです。
(海外の窯はまた全く違う形で変遷してきたようですし、沖縄なども本土とは少し違うようですが、ここでは分かりやすく書かせてもらいます。)

登り窯(連房式登窯)はいくつかの部屋にわかれている窯です。前回の大窯のように炎が一度炉内に広がりますが、天井にそって炎は下へ向かい、次の間への穴へ吸い込まれていきます。こうして炎の動きはだんだんと倒焔(とうえん:上がって下がる)の方向へむかっていくわけですね。

登り窯は地方によってさまざまな形、設計があるようです。これだけでも本が書けるぐらいでしょう。いまふと自分がかかわったり、見学させてもらったりした登り窯を思い出しても、全てタイプがちがっていました。

丹波の古窯から、愛知県の某校にある十室以上の長いものまで、さまざまな角度と大きさ、形状がありました。

穴窯と比べて、登り窯になったことで、かなり炉内の温度差は小さくなったと想像できますよね。

ひとつの部屋の下から入った炎は器の間を通り抜け、天井に沿って上へと走りますが、出口がありません。そのため、天井アーチを伝って、今度は下へ向かって降りはじめます。するとようやく次の間への穴があり、(この穴をサマ孔といいます)吸い込まれるようにそちらへ抜けていきます。

次の間でも同じことが繰り返されます。また、つねに胴木間(どうぎのま:最初の燃焼室、作品を入れない)から熱が加えられますし、後ろへいくほど前の燃焼室からの予熱がかかりますので、非常に安定した焼成をすることができます。

薪窯での作品に、なにかものすごい期待をしていると、登り窯では、あまりにも普通のものが出てきて拍子抜けするかもしれません。登り窯とは安定を目指した薪窯としてのひとつの完成形なのだと思います。

そのため、これは薪窯で焼いた、という作品を求めて穴窯などが人気があるのかもしれませんね。また今では穴窯の最後に一部屋をつけた穴登り、とでもいうような窯もあります。これはそれぞれの良いところを取りたいということですね。

話は脱線しますが、一度この穴登り式の、窯焚きのお手伝いしたときには、穴窯が終わったと思ったら登り窯の攻め焚きをしなければならないという感じで、結構精神的には疲れたのが印象に残ってます。
自分で造るならば、穴登りは、う〜んという感じですね。


さて、話をもどして。

なるべく効率よく燃焼した炎が、スムーズな移動をしながら、なるべく長い時間炉内にいたほうが、炎は隅々までいきわたり、温度が上がって(均一にカロリーがかかり)、安定した焼成になります。

炉内のサイズや煙突の大きさなどから、スムーズに通れる気体の量は決まってきますから、たくさんの薪を突っ込んで、無理やり焼成しようとしても限界があります。

薪を投入した時には少し酸欠なぐらいで、薪が燃え始めたら程よいぐらいに空気(酸素)が供給されるように、薪の量を調整して焚いていくのが、薪で窯を焚く際の大切な考え方になるでしょう。

よく、薪を入れたときが還元で、段々酸化になるというような説明をしてある場合があります。この説明が完全に正しいとかどうかは置いといて、イメージとしてはとても分かりやすいと思いますので、薪窯焼成を理解する助けになると思いますが、いかがでしょうか。

薪の投入を、マッチの火に例えれば、バッと勢いよく火がつき、やがて軸が燃え始めて炎が小さくなり消える、ということの繰り返しをたくさん同時にしているのが薪窯焼成です。

先に投入した薪が燃え尽きる前、どれぐらいのタイミングで次の薪を投入するのか、そうしたタイミングや薪の量の変更で焼成している感じですね。

もちろん例外もあるでしょうが、おおくの薪窯の焼成では、煙突やダンパーを操作することは少なく(あったとしても単純な操作)、薪の投入量、投入するタイミングなどで炉内の熾きの量や炎の状態を操作して、窯を焚き上げます。

また、燃焼にかける熱は、かなりの割合で煙突から逃げていきます。それ以外にも窯本体を温めたり、棚板やツクに熱を取られたりして、薪窯の場合、作品にかかる熱は燃料の30パーセントほどだ、というデータもあります。

作品を焼く前に窯を焼く、と言われることがありますが、その通りなのです。

この暑い季節が終わったら、薪窯のお手伝いに行きたいですね。







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2009年07月04日

焼成について 3


前々回、焼成には炎を用いる、といいましたが電気炉など例外があります。

電気炉には炎がありません。電気で中のパイロマックスなど発熱体が発熱し、その輻射熱で作品を加熱していきます。

わたしの実感ですが、電気炉の窯焚きで特徴的なことは、昇温のペースを完全にコントロールできることだろうと思います。これは炎がないということと、自動制御であるということが重要です。

制御付きの電気炉では、1時間後に50℃しか上げない、と設定すれば温度計と連動した制御で設定どおりに加熱していきます。

これはほかの窯には真似できないことですね。

窯の寿命をかなり縮めるでしょうが、たとえば、3時間で100℃などと設定をすれば、削ってすぐの作品でも素焼きをすることができるかもしれません。
(しかし、これはやらないほうがいいでしょう。窯が一気に傷みます。)

「焼成」と簡単に言っていますが、辞書によれば、

「焼成とは、一般に焼結を目的とした加熱処理の行程や作業のことを指す」

となっていました。

それでは、焼結はどういうことかというと、

「焼結は、固体粉末の集合体を融点よりも低い温度で加熱すると、
 固まって焼結体と呼ばれる緻密な物体になる現象」

ということらしいです。

焼き固まる、という言葉そのままですね。
また、粘土の粒子が細かくて丸く、粒の大きさがそろっているほどしっかり焼き締まり、強度もあがるようです。

肌理の細かい土を適正温度で焼結させた製品が一番強度があるということでしょうね。みなさんも経験で知っていらっしゃるのではないでしょうか。


さて、前回の続きですが、窯の歴史的な経緯のほうにご興味があるかたは、ここでは触れませんのでご自身で調べてみてください。
(わたしも勉強中ですし、教科書丸写しはしたくないのです。すいません。)

このブログでは、窯を焚くために、窯の構造についてわかりやすく簡単に書いていきたいと思っています。

さて、「煙突」に例えた窯は、だんだんと傾斜にそって寝ていきます。いわゆる穴窯ですね。

焚き口の炎はゆるやかな斜面の内壁にそって走り、中の作品を加熱していきます。入り口から出口へ向かって横向きに炎がすすみますので、「横焔式」などと言ったりします。

横焔式でも、まだまだ熱効率や生産性は悪いので、だんだんと焼成室が大きな窯になっていったようです。桃山期の大窯など、イチジクを二つに割ったような形の窯になっていきます。

大窯などでは、焚き口から窯の中に入った炎は大きく広がり、そこから煙道にむけてぎゅっと閉じた形にそって、炎は出口の煙突へ殺到します。

しかし、一度に排気されるわけではありませんから、かなりの熱が炉内にとどまって、煙道から外へでる順番をすこし待たなくてはなりません。

その結果、炉内の温度は効率よく上がっていきます。






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2009年06月25日

焼成について 2


窯で作品を焼く、焼成の工程について先週から書いています。

前回、窯とは煙突である、という表現をしましたね。熱源を暖炉の火として、屋根の上まで伸びる煙突の途中に、ものを入れて焼成できるようにしたのが窯だと極論してみました。

しかし、まっすぐ上へ伸びるだけでは1200℃までの温度上昇は望めません。燻製やピザぐらいがいいところでしょう。

熱や煙はまっすぐ上へいきます。わたしたちは経験でそれを知っています。

そこでまっすぐな煙突に角度をつけて、斜めに倒していきます。仮に熱源から窯の先端まで、垂直に10メートルだったとしますね。この窯を45度に倒したとすると、熱源から窯の先端までの距離は約14メートルになり、かなり伸びます。距離と角度は抵抗になり、それだけ窯の中のものに熱を加える時間も長くなり、結果として窯の到達温度は上昇します。

実際の窯としては、山の斜面を掘って造られた地下式登り窯、わたしたちの世界でいう穴窯がこれにあたり、傾斜の角度も、もっと寝ています。

実験や測定をしたわけではありませんが、想像するだけでも、明らかに垂直の煙突よりも傾斜をつけて寝せた「煙突」のほうが熱がとどまりやすく、温度もより上がるだろうと考えられますよね。

この傾斜の角度をどうやって過去の人々は決めたのか、わたしにはわかりません。単純に、山の斜面を利用してそうなっただけなのか、経験である程度の角度をベストとして意図して造ったのかは、まだまだ不勉強でわかりません。

作業性などを考えて、自然とそうなったのかなぁ、とも思っていますが、間違いないのは、そこに工人の意図はあったということです。

また、窯の傾斜角度だけではなく、炉内にたくさんの作品を置くことで、炎が素通りしにくくなり、作品により多くの熱を長い時間かけることになります。

先週、熱を水に置き換えて説明しましたが、この穴窯の話も、窯の上下をひっくり返し、水を流し込んで想像していただけばイメージがしやすいのではないでしょうか。川の上流のように、岩をも穿つ激しい水の流れが、窯の中を走る炎のイメージです。

急流では、水はあっという間に流れていきますが、同じように熱があっという間に窯の中を抜けてしまっては温度が上がりません。水で満たされつつ、新しい水が入りながら排水されていくバランスが理想なのです。

完成した窯の傾斜角度はもう変えられませんから、次に考えるのは出口を狭くして、つねにある程度の熱を窯の中に留めるようにすることです。

焚き口と同じ大きさの穴では熱はどんどん逃げていきますから、穴の大きさを調整します。もしくは調整できるようにしておきます。そうすることで、熱は窯の中で渋滞を引き起こし、ある程度の時間留まるようになります。

七輪陶芸を試みられた方もいらっしゃるでしょうが、熱を留める工夫をしないと、七輪の中で焼かれる、ぐい飲みの高台と口元という短い距離でさえ、ものすごく温度の開きが出てしまいます。

穴を掘った中で羊を火で焼いている象形文字が「窯」だそうですが、ただの穴で野焼きのようだった窯が、煙突のように長く伸びていき、さまざまな機能や調節ができるようになってきます。

ここまでくれば、窯の温度はかなり高くできるようになっています。須恵器の時代には1200℃を超える温度を得ていたようです。

そして、窯はさらに進化をしていきます。






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2009年06月18日

焼成について 1


窯で作品を焼く、焼成の工程についてこれから整理してみようと思います。

その前に、あらためて書いておきたいのですが、ここにわたしが書いていくことは、自分で経験したり、勉強したり、信用できる人や仕事先などから教わったことを元にしています。

もしかしたら、あなたの知っていること、実践していることと違うことがあり、わたしの言葉が間違いのように感じること、また逆の場合など、さまざまな感情や考えが浮かぶかもしれません。

そういう時が一番、面白い時です(笑)。

是非、さらに突っ込んで考えたり、調べたりしてみてください。ささやかなことかもしれませんが、きっと新しい発見や気付きがあると思います。

それをまた検証したり、発信したりしてみてください。






◆ 焼成するには




なにかを焼くには、炎を用いなければなりません。(例外もある)

直接炎にかざしていたのでは、対象は均一に焼けるとはとてもいえません。これは炭火で焼肉をしているのを考えていただければわかると思います。

窯という字が、穴の中に羊を入れて火であぶっているのを表しているように、被加熱物を覆うことで、食材などを均一に加熱しようとするのは、相当古くから行われてきたようです。

やきものをつくる時にも、野焼きのような方法が最初に行われたのでしょう。

ここはもっている知識からの想像ですが、野焼きの安定感を上げるために、穴をほったり、燃料の薪の上を練った土でおおっていたのが発展して、窯のはじまりとなったのではないでしょうか。(また調べておきます)



◆ 窯のはじまり




国内では、須恵器の時代には、いまでいう穴窯、地下式登り窯が使用されています。

窯というものを理解する最初の一歩として、次のような例え話、これは故芳村俊一さんからの受け売りですが、紹介します。

窯は、かまぼこ型、もしくは逆U字型の窯本体、その一方向から火を焚きつけ、その反対側をそのままに開け放して焚きつづけると、熱はほとんど逃げて温度は上がりません。

また逆に焚き口の反対側を閉じてしまうと、中にこもった熱気がそれ以上の炎をうけつけないために、温度が上がりません。

もし、窯の焚き口から煙突側まで同じ断面積(つまりかまぼこ型)だった場合、焚き口の大きさの2〜3割の穴を煙突側に開けると1000℃以上まで簡単に温度が上昇していきます。

これがなにを示すかというと、窯というのは、加熱しながらも少しづつ熱を逃がしていくことが重要なのです。


これをより分かりやすく理解するには、熱を水に置き換えるといいかと思います。つまり、最初の塞いでいない状態では、水がどんどん流れていくが、とどまらない、次の状態では水がすぐにいっぱいになって、それ以上入らない、ということになるでしょう。

プールに、たくさんの水がたまりながらも、その一部を排水していくことで、清潔で新鮮な水で満たし続けることができるのが、理想のバランスです。


また、わたし個人の感覚で説明すると、


   「窯とは煙突」


です。


極論を言えば熱源にたいする大掛かりな煙突が窯だと思うのです。
(例外もありますが、それはあえてここでは触れません)

暖炉の煙突の途中を膨らませて、物を入れられるようにする。そして、暖炉の火力と、煙突の穴の大きさを自在に変化できるようにしておく。

しかし、普通の暖炉とその煙突で、どうやって12n0℃の温度をつくりだすことができるのか。もちろん出来ません。

さまざまな工夫をしないかぎりは。







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2009年05月17日

耐火レンガと耐火断熱レンガ


この二つのレンガの違いをご存知ですか。

簡単に言うと、カッチカチなのが、耐火レンガで、サックサクなのが耐火断熱レンガです。
(耐火断熱レンガでもカッチカチのはありますが、後で説明します)

一般の方が想像するレンガはほぼ間違いなく耐火レンガだと思います。
シャモットや粘土などを中心とした原料を焼き固めてつくります。固くて重たいです。多分1丁3キロぐらいあると思います。普通5丁づつ縛ってあります。その5丁が、耐火断熱レンガの10丁縛りよりも重たいです。

登り窯を山のなかでつくったりすると、レンガを運ぶだけで、かなりたくましい身体になります。
ほとんどはSK34番ですが、32番もあります。またほとんど見ることは無いと思いますが、その上の番数も耐火レンガにはあります。

このごろは、国産の耐火レンガがホームセンターに売っていたりして、便利になったものだと感心します。みなさん買うならTONOと刻印があるものがいいですよ。

耐火レンガの代表的な使い方は、薪窯やガス窯の台車、炉内の底に当たる部分、などです。ものが当たったり、重みがかかるところ、屋外に設置されるものに使用します。

レンガ自体の強度があるため、薪が当たっても大丈夫です。ほかに長所というか断熱レンガと比較すると、価格が安い、手に入れやすい、蓄熱するため、焚き終わったあとに冷めにくい、短所としてその逆にレンガに熱を食われてしまうため、ガス窯などを全て耐火レンガでつくる(志野窯など)と燃費がわるくなります。また断熱レンガよりも非常に重たい、加工が大変、などなどです。

耐火断熱レンガは、電気炉やガス炉の炉内表面に使用されている、白いものを筆頭に、実にたくさんの種類があります。色見もベージュや赤茶などいろいろあります。種類が非常に多く、カタログを見ただけでは一般の人にはどこに何を使えばいいかまずわからないと思います。

よく本や雑誌で、何々窯をつくるときには、このレンガ使う、と書いている記事が思いっきり間違っていたりします。鵜呑みにしないで、必ずきちんとしたところで相談して買いましょう。なかにはほぼ酸化焼成専用の使用方法を想定しているレンガもありますので、そういうもので還元焼成する窯を造ったりしないようにして下さい。

何十種類もありますが、陶芸窯で使用されるのはせいぜい10種類ぐらいですから、築炉メーカーなどに問い合わせて取り寄せてもらうといいと思います。

瀬戸にはいくつかのメーカーの工場や営業所がありましたが、閉鎖や廃業などがつづき、窯業地といえども、メーカーの営業所がないことがほとんどです。そのため、取引のある築炉メーカーなどで分けてもらうのが一番いいと思います。

耐火断熱レンガは、読んで字のごとく、断熱性が非常に高く、また一部を除いて加工が非常に簡単です。レンガ鋸と呼ばれる刃の粗いノコギリで用意に切断できます。

わたしはかつてレンガ師の手元として、よくレンガの切断を、このノコでしていました。そして食い入るように職人のレンガ積みを見ていたせいか、いつの間にかそれなりに出来るようになりました。といっても補修や修理をするぐらいのレベルです。

過去にレンガについて書いたブログの記事です。
http://inoueseiji.sblo.jp/article/15773694.html

加工が簡単ということは、物理的衝撃に弱いといことです。ガス窯の扉を、取り扱いを知らない人がいい加減に開け閉めすると、角のレンガが引っ掛かって、欠けたりすることがあります。

また耐火レンガに比べるとかなり湿気を吸いますので、保管場所や新品の窯のあぶり焚きなどに気をつけなければなりません。

こういう常識的なことを知らない業者が、かんたんに窯を売ってトラブルがたくさんおこっています。気をつけましょうね。



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2009年05月10日

耐火物について


先日、ある方と楽焼の窯をつくりました。

といっても、わたしはサポートするだけで、本人がほとんど造られました。
偶然にもその窯を造っているときに、メールで質問をいただきました。

それにお答えするためにも、窯を構成する耐火物について、すこしづつ書いていきたいと思います。


■ 耐火物とはなんでしょうか。

これにはきちんと規定があって、

高温度に耐え,化学的に安定な非金属無機物質,またはその製品の総称。
普通には耐火度SK18(1500℃)以上の工業炉材を指す。

、ということです。これは感覚でわかりますよね。

では、楽焼の窯をつくるとして、レンガでなくてはいけないのでしょうか?

わたしがかつて築炉の仕事をしよう、と決心したのは、伊豆の芳村俊一さんに会いに行ってからでした。そのときに、教えてもらった一番簡単な窯は、土手の斜面をスコップで削り、棚板を壁と天井にして灯油のバーナーを突っ込んだ簡易窯です。

おどろきました。そんなのでいいんだ、と。
その後、似たような様式の窯で引き出し黒を焼いている人をNHKで観ました。

その次におどろいたのが、七輪で焼く、という吉田明さんの発想です。
今もかなりそうなんですが、当時は本当に自分は頭が固くて柔軟性がない、とへこみました。ともに故人になられたのが残念です。

これはわたしは試したことがありませんが、U字溝のコンクリートをひっくり返して楽焼窯にするということを知人がやっていました。

また、赤レンガは耐火度が低いと俗に言われていますが、楽焼ならば、おそらくすべての赤レンガが、種類によっては、1250℃の高温でも耐えるものがあるようです。

また地方で炭焼き窯に使用される石などでも窯はつくれるでしょう。
パンやピザの石窯の石、暖炉で使われるものでも大丈夫です。耐火モルタルがないばあいは、粘土に素焼きを砕いたものや砂を混ぜて、より土のようなものを使えば大丈夫です。




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2009年04月09日

中古の窯を運ぼう


このごろ、窯のお仕事のお話ばかりが立て続けにあります。
今回あったのは、中古の窯の移動のはなし。ガス窯でした。


ふつう、中古の窯の場合、窯の価格が何十万円といわれても、運搬設置費は別です。

ガス窯の移動を例にお話しますが、まず問題になるのは窯の大きさです。
小型の電気炉などは、そこまで神経質にならなくてもいいのですが、ガス窯や灯油窯などになると、0.4m3で普通は2トンぐらい重さがあります。

それを動かして、吊り上げるのに必要なのは、最低で二人の人間、ジャッキ、バール、コロ、ワイヤー、クレーン車、トラックです。トラックにクレーンがついている、いわゆるユニック車ならば、最低4トン、その場合、車の真横まで窯を移動させることが可能でなければなりません。

クレーン車などの「何トン」という表記は、ブーム(腕)を最短にして、もっとも条件のよい場合の最大吊り下げ重量です。

素人目にうわぁ、デカイ!と思う20トンのクレーンが、空に高々とブームを最大限に伸ばした場合、その先で2トンの窯を吊るのは、ブームの角度にもよりますが、おそらく無理かもしれません。

0.4m3のガス窯の移動。

もっとも理想的な条件がそろった場合、二人分の人件費と4トンユニック車の経費、移動する先までの交通費、雑費といったところでしょう。

もし、車が近づけない場所であったりした場合、いわゆるクレーン車を呼ばないといけません。
一人乗りのキャビンがついた自走式クレーンの一番小さいものを呼んでも、一見さんである窯の持ち主に請求される金額は、会社や地域差もありますが、5万以上10万未満の金額だと思います。移動先でもクレーンが必要な場合、同じクレーンが付いてきてくれる距離ならばいいですが、県外などならば、また別のクレーンを呼ぶ必要があり、費用が倍になってしまいます。

さらに、設置後には煙突の取り付け、ガス配管工事が必要になります。

もらった先で、これだけの費用が発生しますので、中古の窯の購入の際に参考にしてみてください。


瀬戸にいたときに、人の紹介で窯の移動の見積をしたことがありました。

若い作家が独立するというので、レンタカー屋の伝票まで見せて、日当も通常の半分近くに下げ、値段をギリギリに安くしてあげたのですが、その見積価格を信用してもらえず、他所に話をもっていかれたことがありました。

結局その人は変な業者につかまり、わたしの見積より10万以上高く請求されてしまいました。紹介して下さった方はその子の先生でしたが、後日わたしたちに平謝りに謝っていかれました。その子が自分で決断したのですから仕方ありません。

わたしや友人は、そのときは不愉快な思いをしましたが、今思えば、説明不足だったのかなぁ、と思っています。

だれでも独立のときや、若いときにはお金がありません。わたしもそうです。(今もそうだという噂は本当)
しかし、窯の移動ともなれば、最低限の費用は発生してしまいます。

別の窯の工事などでも、自分で手伝いますから安くなりませんか、と言われて困ったこともありました。
しかし、レンガも積めないし、溶接も配管もできない、トラックさえ運転したことがない、という人は、悪いことはいいませんから、貯金してください。

わたしがお世話になった窯屋でも、他の築炉メーカーでも、わたしにしても、みんな窯の仕事が好きで、窯を焚く人たちのことを最優先に考えています。

大きな窯は一度設置すると簡単には移動できません。
よく考えて購入、譲渡などをするようにしてください。

その際に、このブログやわたしの話が少しでも役に立つと幸いです。





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2009年02月10日

100Vの電気炉について


今日、岐阜県多治見市の電気炉メーカーの社長さんに電話で面白いお話を聞きましたので書いておきます。

わたしが手に入れた最初の窯は、築炉メーカー時代に購入した100Vの家庭用電源で焼ける電気炉です。炉内寸法は20センチ立法、棚板サイズは17センチ角というとても小さなものです。

それでも、コンピューター制御がついていて、8ステップの2パターンを記憶してくれます。何時間後に何℃、という設定を1ステップとして、8ステップですから、実際はそこまで細かく設定したことはほとんどありません。

この窯を使って、本当にいろいろな勉強をさせてもらいました。

独立してからは、ほとんどが陶人形作家の嫁の作品を焼く窯としてコンスタントに活躍していましたが、このごろは、1100℃あたりから設定温度どおりに昇温しなくなってきました。酸化焼成しかしないとはいえ、もう百回近くは焚いているからか、線が相当劣化してきたのでしょう。

かつての勤務先のガス炉メーカーに線の交換について相談したところ、直接電気炉メーカーに連絡するように言われて、先日電話したしだいです。(この2社は協力関係にあるのです。)

最初の電話で見積もりをお願いして送っていただき、今日その件について連絡したのです。

電気炉の金属発熱体は電熱線などともいいますが、「パイロマックス」、というかなりカッコイイ名前のものです。ちなみに製造販売は、リケンという、ほとんど世界中の自動車メーカーなどと取引のある企業です。(売り上げのほとんどが自動車業界から)

さて、見積もり書には、わたしの窯の場合、2種類のパイロマックスが選べるということでしたので、その違いを教えてもらいました。パイロマックスは用途に合わせて、いくつか種類があるのです。

聞かせていただいたのは、高温時での電気抵抗値が品番によって違うといった、相当奥が深い話でした。

また、100Vの電気炉についてもいろいろと教えていただきましたが、一番勉強になったのは、コンセントに100V来ているのか、という話でした。ギリギリの家庭だったりすると、窯が最高温度まで上がりきらず、クレームになったりするそうです。(別の会社の話です)

いま、わたしも電気炉の相談を一件うけているのですが、そのことを社長さんに話すと、実際にその家のコンセントを測ってきたほうがいいだろう、ということでした。

例えば、うちは98Vしかありませんとか、ぎりぎり100Vです、ということを伝えていただける場合、対応できるそうです。

ひさしぶりに目からウロコのお話でした。そして、いかに自分が電気炉について無知だったのか、本当に思い知りました。電気炉メーカーを30年以上経営されている社長さんも、100Vは難しい、とおっしゃっていました。

電話のあと、さっそく自宅の電圧をテスターで測ると、100V以上あり安心しました。わたしの家は考えてみれば、敷地の角に電柱がありますから、高い数値で安定しているようです。

電圧が低いとクレームが多くなるということならば、電気炉を売る人間としてそれぐらいは把握しておかなければならないということでしょう。

家庭用電源で窯が焚ける、ということで電気炉はかなりうれているようです。たくさんの企業が参入して、わたしが瀬戸の訓練校に通ったころからすれば信じられないぐらい種類も豊富で、容積も大きくなっています。

それによる恩恵を受ける人がいる裏で、売った人間も原因がわからないクレームや、オークションなどで七宝炉を陶芸用電気炉として販売してたり、相変わらず責任感のない業者もたくさんいます。

そういう連中とは自分違う、きちんとわかっているんだ、と、わたしは考えていましたが、そういう考えこそ大間違いでした。反省しています。すいませんでした。

また、電気炉販売に関して、心になんとなく引っかかっていた部分が、こうしたことだったのだと判り、これからどうすればいいか明確になったので安心もしています。

テスターを持っていただけセーフという感じでしょう(実は友人の置きっぱなし)。

コンセントにテスターを突っ込むのは、危ないので電気の勉強をしてからにしましょうね。
ちなみに感電死は、電圧の高低ではなく、電流値の高低です。家庭用電源でもあっさり亡くなることもありますから、自己責任にて。

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追記

この記事の電気に関する記述の間違いについて、minikamaさんより指摘していただきました。
ありがとうございました。修正しました。
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2009年01月23日

薪窯でこそいいものが焼ける


そう思っている方、かなり頭が固くなっていますよ(笑)。

先週お世話になった先生のところでは、電気・ガス・登りと、たくさんの窯があります。わたしのようなこじんまりとした仕事場の人間でも、100Vの電気炉とガス窯を持っています。

こうでなければならない、という考えをもつのは、大切ですが、同時に危険でもあります。

わたし自身も、非常にそういう考え方をするところがあり、なにもこのブログで上からものを言っているわけではありませんから、誤解のないようにお願いしますね。

たとえば、薪窯ですが、では薪窯のなかで、穴窯が最高だ、いや登り窯、なになに穴登り(?)だ、という人もいますし、薪は赤松でないといけない、という人もいます。わたしは窯をつくる側にいましたから、よくわかるのですが、薪なんてどうでもいいのだと思います。

ただ、赤松でなければならない、と言う人は、赤松で焚くことを前提とした窯を設計するようにしてください。ここからが重要で、赤松で焚くことを前提とした窯を造って、違う木材で焚かないようにしてください。

確かに松は、薪としては優れたところがあります。ですが、松でなければならないというのは、大きな間違いです。

窯の構造を、杉やヒノキ、広葉樹などの雑木で焚けるようにすればいいのです。意外と知られていませんが、そういう工夫をした窯のほうがオールマイティに使えるのではないでしょうか。

越前のさる有名な方の窯を見せていただいたとき、まだわたしは窯のことにそこまで詳しくありませんでしたが、ちょうど松でないと焚きにくい構造の穴窯を焚いた直後でしたので、その焚き口やロストルの違いがよくわかりました。

この窯の薪はなんですか、と質問したのをおぼえています。

また、大分県の小鹿田焼に愛知県の友人らを連れて行ったときには、ちょうど素焼きをしているから見にいってごらんなさい、といわれてさるお宅を訪ねると、なんと薪で素焼きをしていました。

その場にいたのは、窯を自分で造ってきた人間ばかりでしたが、全員唖然としたのを覚えています。上絵を薪でされているところがあるそうですが、素焼きも薪でしているのは見るのも聞くのも初めてでした。

また本焼きの登り窯も快く見せていただきましたが、やはりまったくちがう構造でした。

陶芸、という名前が着く前、やきものは「百姓(たくさんの仕事)」の一つだったはずです。必要にかられての仕事の中で、自然と相違工夫を凝らし、かまどや炭焼きの経験から、自然と松は窯に使え
(松は囲炉裏などにむかない)、ということになったのではないでしょうか。

とにかく、こうでなければというのは、活動に閉塞感を生み出してしまいます。そんなことはないことのほうが多いわけですから。

薪でこそいいものが焼けるというのは、正しいと思いますが、真理ではないと思います。

しかし、いつかわたしも薪窯が造りたいとは思いますね。土と火で遊ぶのはとても楽しいものですから。



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2009年01月19日

楽焼と登り窯


先週は、月曜日に楽焼をして、木曜日に登り窯を焚く、珍しく忙しい一週間でした。

楽焼のほうは、去年のイベントのときに鉄枠を溶接して、窯を造ってしまいました。

楽焼は、器がどうやってできていくのかを、楽焼という低い温度でもいいから体験してもらいたい、という趣旨で行っています。

しかし、今回は受講生が相手です。焼成への理解も大事ですが、楽焼、七輪陶芸は、自分ににもできる、という感覚を持ってもらいたいと思い、七輪も用意してもらい、二つ同時進行で焼いていきました。

受講生の方々も、うわさには聞いていたが、これが七輪陶芸なのか、とい感じで興味津々のようでした。七輪などは、年配の人にとって、なつかしいものでもあるのでしょうね。

残念ながら、後半かなり酔っ払って写真を撮っていませんが(笑)、今回も大成功でした。焼きあがった自作を見る人々のきらきらした顔をみていると、楽焼をやめることはできませんね。

そして、木曜に大学時代の先生のところに窯焚きの手伝いにいきました。
この窯焚きは酔っ払うわけにはいかないので、呑むのもそこそこに、一生懸命自分なりに働きました。

楽焼もそうですが、この先生の登り窯の窯焚きも、温度計をまったく使いません。
一の間にゼーゲルコーンを二つ、後の部屋に一つづつ、それと色見。精神的に非常に楽です。

先生のところでは、ある番数のゼーゲル錘が倒れたら、横からの攻め焚きにはいる、というかたちをとっています。ふとおもったのですが、昔はどうやっていたのでしょうか。

なにか800〜1000℃の目安になるものがあるかなぁ、と考えていましたが、思いつきません。またどこかで何か思いついたらいいのですが・・・。

さて、その窯の作品は、来月から大分県のトキハデパートで開催される、先生の個展に出品されます。お近くの方はぜひどうぞ。

魚連坊窯 松尾 伊知郎 作陶展

http://www.tokiwa-dept.co.jp/index.html

それにしても、わたしは愛知県での人間関係にも恵まれていましたが、故郷に戻ってからも、こちらの先生には大変よくしていただいています。

また、温度計をつかわない窯焚きや、陶芸、彫刻にたいする考え方など、非常に柔軟な先生で、いつも多くの刺激をうけています。




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2009年01月11日

楽焼イベント


新年最初のイベントは、明日の楽焼です。

瀬戸でもよくやっていましたが、福岡にもどってきて、初年度の講座の受講生と冬の田んぼでやって以来、毎年の恒例行事のようになってきました。

素地は先に900℃(楽焼は高めにする)で素焼きしてあるので、当日は釉薬を塗って、一人づつ順番に窯にいれ、引き出したり、籾殻で還元させたりするばかりです。

普段の講座では、なかなか焼成の具体的な工程を受講生が学ぶ機会がありません。そのため、楽焼は課外の個人の勝手なイベントですが、参加した人には、釉薬が融けていく工程を目の当たりにして、もっとも重要な焼成の部分を感じてほしいと思っています。

そうはいっても、受講生のみなさんは、大宰府政庁跡地近辺で竹を切ってきて、カッポ酒の用意をしたり、当日の食事やおつまみの準備のことなどで、張り切っているようです。

それぞれ、講座では自分の作品に向かっていることのほうがおおいわけですから、こういう機会に親睦をはかるのも大切ですね。

かつてはレンガをその場で組んで窯としていましたが、今回は、もうわたしが鉄枠を溶接で造ってレンガを積んだ窯になってしまったので、七輪も久しぶりに使うことにしました。

楽焼は、講師のわたしだからできる、と思わずに、受講生自身が、故吉田明氏の七輪陶芸をこころみるための、一つのきっかけになればいいと思っています。

日本の楽焼は、どうしても茶陶のイメージからはなれない部分がありますが、海外の人々は、「RAKU」としてオブジェなどを盛んにやいたり、ワークショップをしたりしているようです。

日本で陶芸を学んでしまった人間は、やきものというと、どうしても1250℃でやく、ロクロはこうする、土はこうでなくては、という見えないけれど、脱ぎ去りにくい呪縛にしばられていることが多いものです。

もちろん、わたしも縛られまくっているものの一人です。

ですからたまには、こうした海外の人々の仕事をみると面白いと思います。



↓ YOUTUBE で、「raku ceramic fire」で検索した結果

http://jp.youtube.com/results?search_query=raku+ceramic+fire&search_type=&aq=f



・・・さて、あしたは呑みすぎないようにします。




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2008年11月02日

窯跡の見学


わたしの家から歩いて10分ぐらいのところに、保存が決定して、鉄骨の覆屋がつけられた窯跡があります。

http://www.city.onojo.fukuoka.jp/kyoiku_rekishi_info_ooiya

http://www.city.onojo.fukuoka.jp/kyoiku_rekishi_iseki_umegasiratettou
(煙道のよこの溝の役目がまだ完全にわかっていないようです。)

6世紀から7世紀ごろとみられる梅頭窯跡です。地下式穴窯という様式ですが、この窯は珍しいことに炉内から、大きな石とその周辺に鉄刀・鉄鏃・須恵器などが出土したのです。

工人を指揮する階級の人のお墓に転用されたのではないか、と言われています。

恥ずかしながら、牛頸・陶邑・猿投と須恵器の三大古窯群ともいわれている地元ですが、本当に4年ぐらい前まで知りませんでした。また、今日知ったことですが、もっとも、わたしの家に近いところでは、2〜300メートル先の同級生の家のあたりでも、窯跡が確認されていたようです。

初めて訪れたときから、いろいろと教えていただいている担当の方々ともお話をさせていただいて、一体どうやって窯を焚いたのか、という話で盛り上がりました。

みなさんは、須恵器の窯をどうやって焚いていたと思いますか?

高さも幅も絞りのない、吹き抜けの穴窯ですが、強還元というか炭化したように焼き締まっています。わたしはついつい、薪窯の窯焚きを想像してしまいました。

しかし、ある写真をきっかけに、自分の知っている窯焚きに当てはめて考えることの愚かさに気付きました。

焚き口から、扇状に、黒い土の層が広がった、発掘当時の写真を見せてもらいました。焚き口から、扇の弧のあたりまでの長さは、窯よりも長いのです。

それが、灰原です。

保存用の覆屋は、焚き口から数メートルで壁になって終わり。ついつい、窯はそこまでだと思ってしまいましたが大きな間違いでした。

とにかくその写真、文章では伝えにくいですが、公園のすべり台が窯だとすると、滑り降りた砂場が真黒な灰原というイメージです。しかもそれが異常に広い砂場(伝わりました?)。

時代は6〜7世紀です。

窯はレンガなど使われていませんし、そもそも、当時、ノコギリらしきものはなかったようで、斧のような道具しかなかったそうです。薪というものではなく、枝と丸太、という感じだったのではないでしょうか。

窯の発掘で、まれに、炭化した丸太が出土するそうです。大きなものは直径が30センチぐらいのものまであるそうです。これは先程の灰原のなぞを解明するのにどんな意味をもっているのでしょうか。

いずれにしても、薪を投げ込んだりすることができない窯焚きだったのでしょうね。

今日窯跡で話したことですが、書いておきます。(ブログは証拠になるらしいので /笑)



まず、須恵器の窯は傾斜が急です。

斜面を掘っているわけですから、高さも幅も絞ることが難しかったのか、焚き口も中間も幅はほとんど同じ。それでも、勾配が急なので、引きはいいのではないでしょうか。

たとえば、焚き口のすこし手前、2メートルぐらいのところで焚き火をすれば、煙と熱気は窯の焚き口に、す〜っと、吸われていくと思います。

こうやって焙りをしたのではないでしょうか。焚き火がだんだん大きくなる。だんだん焚き口に近くなる。ちょっと、引きすぎるようだ・・・。

そこで、リンク先に写っている溝です。

おそらく、排水溝も兼ねているでしょうが、煙道の最後の穴の部分を閉じたり、開けたり、積極的にコンロールするための通路ではないでしょうか。窯も大変でしょうが、この溝を掘るのも大変ですよね。排水だけなら、もっと浅くても良いかもしれません。

あ、いま思いついたのですが、人が通れる深さということは、熱の伝わりを感じるためなのかもしれませんね。(知人の穴窯の窯焚き最終日に雪が降ったことがありました。その時、こういう風に熱が伝わっているのか、とわかるぐらい、穴窯のまわりに雪が積もらなかったものです。)

やがて、薪を中に入れ始める。長いでしょうから、少しづつズルズルと押し込んでいく。こうすれば満足な防護のための服がなくても薪を入れていけます。

ロストルがないから、オキをかき出したりもしたでしょう。焙りと窯焚きのあいだに、焚き口のまわりには消し炭がたくさん散乱していたのではないでしょうか。

また、窯出しのときも、酸欠で燃えきれなかったオキが焚き口近くに残っていたかもしれません。それも外へ捨てる。それが繰り返されて、灰原になっていく。

最後、窯焚きの終盤では、木蓋の丸太を目一杯焚き口に詰め込んで、泥で固めたのではないでしょうか。う〜ん、ここの考えの詰めが甘い気がしますね。

おそらく、かなり温度は上がったでしょう。それも簡単に。いまどきの窯が寝そべって見えるぐらい、急な角度の窯ですから。

それにしても、今日ほどドラえもんの道具が欲しいと思った日はありませんでした。


市教育委員会のみなさま、お疲れ様でした。





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2008年10月16日

楽焼イベント


毎年、春と秋に、お世話になっている器と雑貨のお店で、楽焼のイベントをしています。

今年の秋はこんどの日曜日です。いままではレンガをその場で組んでいましたが、今年の春から溶接した枠をつけて、持ち運び可能な楽焼窯を造りました。

といっても、ただレンガを四角に組んだだけで、簡単なものです。四角い七輪のオバケみたいなものを想像していただければいいと思います。

釉薬は瀬戸の伝統的なレシピを基準にして2種類ぐらいですが、炭化させたり、ムラに塗ったりしていろんなものが焼きあがります。

朝の10時から生土からつくるのですが、のんびり他のイベントもからめて夕方までというかんじです。楽焼をすると素焼きの重要性がよくわかります。これまでの成績は5,60個焼いて3つぐらいしか割っていません。(はず・・・)

とにかく楽焼は何年やっても面白いです。
そのあと打ち上げも、いつもその日つくった器で乾杯して、沢山のあたらしい人と友達になりました。楽家があれだけ続いているのも、伝統もあるでしょうが、かかわる人たちが、いい意味で楽焼きが面白いからだと思います。

経験のない方、是非やってみてください。



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2008年10月14日

トンネルキルン


トンネルキルンというのをご存知でしょうか。

窯の形式の一つで、釉薬をかけて棚に組まれた製品をのせた台車が、列車のようにゆっくり動いていきます。台車も何台も連なって、まさに列車のようです。
そして長いトンネル状の窯の中に入っていきます。焙りの低い温度から、だんだんと昇温して、最高温度まで。そしてゆっくりと冷めながら外へ出てきます。

そして焼きあがった製品を出して、次を積んでいきます。トンネルキルンはこれがエンドレスで続いていくのです。

こうしたトンネル窯は一度火を入れるとそうそう火を落とすことはありません。衛生陶器の工場などで使用されますが、まだ幾つか、食器を焼いているトンネルキルンが稼動しているそうです。

以前勤務していた築炉メーカーの方と話していて、この話題になりました。
いったいその月産何万個もの食器はどこへ行くのでしょうか。不思議で不思議でしかたありません。

むかし、岐阜のある製陶所の窯をつくったことがあります。そこは湯のみばかりをつくって、ほぼ毎日窯焚きしています。少なく見積もっても年に十万個の湯のみを焼いているはずです。いったいそんなにたくさんの湯のみはどこへいくのでしょうか。

また、ガス代の値上がりでやめられたようですが、東濃地方には100円ショップの器をつくっている工場がまだあったようです。ダイ〇ーに納入する値段は1個10円以下だとか。

この国の製造業の根幹にあるはずの、ものづくりの現場の1シーンです。

トンネルキルンが稼動した時代はもう終わりを告げようとしているのでしょう。少なくとも国内流通分では。



これからはどんな時代になっていくのでしょうか。




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