2025年12月25日

正しいかどうか判断できないこともある

メリクリですねイノウエです。


本日は本年最後の生涯学習センターの講座の日。
窯出しして、かるくお掃除して終わりです。

そういえば、織部釉の被膜はなんなのか誰からも教わったことがありませんし、書籍で見たこともありません。

チャッピーに聞いてみましょう。
友人のコームスはチャットGPTと作ったレポートで卒業したそうですが、釉薬についての記載はどうでしょうかね。問題はこれが正しいのかどうかを検証する人が少ないだろうなということです。

アナタはどうするのかな?
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陶磁器の釉薬についての質問です。灰釉に酸化銅を添加した「織部釉」ですが、焼成後に表面に酸化被膜が生成されます。それをクエン酸や塩酸で除去するのですが、そもそもどうして銅を含んだ釉薬に被膜ができるのでしょうか?



とても良い質問ですね。
織部釉(灰釉+酸化銅)で見られる**表面の酸化被膜(いわゆる金属光沢・黒ずみ・粉状の皮膜)**は、銅の化学的性質と焼成条件が関係しています。

結論から言うと、
釉薬中の銅がガラス(釉)に溶けきれず、焼成や冷却の過程で表面に分離・再酸化するために被膜ができます。

以下、順を追って説明します。


@ 銅は「釉に溶けにくく、移動しやすい」着色材

酸化銅(CuO / Cu₂O)は、鉄などと比べて

  • 釉薬中での溶解度が低め

  • 高温で移動(拡散・揮発)しやすい

という性質があります。

特に灰釉は

  • CaO・K₂Oなどのアルカリ・アルカリ土類が多く

  • 釉の構造が不安定になりやすい

ため、銅を均一に抱え込みにくいのです。


A 焼成中に起きていること(高温)

高温域(1200℃前後)では:

  • 酸化銅の一部が

    • Cu⁺ や Cu⁰(金属銅)に還元されたり

    • 釉の内部から表面へ移動したりします

  • 特に

    • 銅が多い

    • 還元気味

    • 釉が流れやすい
      場合、この傾向が強くなります

この時点で、表面付近に銅が濃縮されます。


B 冷却時に「再酸化・析出」が起きる

ここが被膜の正体です。

冷却時(特に800℃以下)に:

  • 表面に集まった銅が

  • 炉内や外気中の酸素と反応して

CuO(黒色)や Cu₂O(赤褐色)として再酸化します。

しかしこれは

  • ガラス(釉)の中に溶け込んだ状態ではなく

  • 表面に析出した微結晶・薄膜

なので、

  • 黒っぽい

  • 金属的

  • 指で触ると粉がつく
    といった状態になります。

これが「酸化被膜」です。


C なぜ酸で簡単に取れるのか?

クエン酸や塩酸で取れる理由は、

  • 被膜が

    • ガラス質ではなく

    • 銅の酸化物の層だからです

反応例(簡略):

CuO + 2HCl → CuCl₂ + H₂O

つまり、

  • 釉そのものを溶かしているのではなく

  • 表面に浮いている銅酸化物だけを溶解除去しています

なので、緑色は残り、発色がクリアになります。


D まとめ(要点)

  • 織部釉で被膜ができるのは
    銅が釉に溶けきれず、表面に分離・再酸化するため

  • 原因は

    • 銅の溶解度の低さ

    • 灰釉の性質

    • 焼成・冷却条件

  • 被膜の正体は
    ガラスではない銅酸化物の薄層

  • 酸で取れるのは
    化学的に銅酸化物だから


もし興味があれば、

  • 被膜を出にくくする配合・焼成

  • 逆に被膜(窯変)を積極的に出す方法
    についても説明できますよ。




その両方について教えてください。


了解です。
では @被膜を出にくくする方法A逆に被膜(窯変)を積極的に出す方法 の両方を、
配合・焼成・冷却の3つの視点から整理して説明します。


@ 被膜を「出にくくする」方法

(安定した緑の織部を狙う)

1. 釉薬配合での対策

● 酸化銅を入れすぎない

  • 目安:0.5〜2.0%

  • 3%以上になると

    • 溶解しきれない銅が増え

    • 表面析出 → 被膜が出やすい

指差し確認右 緑を濃くしたい場合は
銅を増やすより、釉を透明化する方が安全です。


● シリカ(SiO₂)をやや増やす

  • ガラス構造が安定し

  • 銅を釉中に保持しやすくなる

例:

  • 灰釉が流れやすい場合
    → 長石 or 珪石を 5〜10%追加

※ 増やしすぎると
発色が鈍くなり、失透に注意。


● アルカリが強すぎる灰は控える

  • 木灰は種類で性質が大きく違う

  • K₂O・Na₂Oが多い灰ほど
    → 銅が暴れやすい

対策:

  • 洗い灰を使う

  • 灰を一部長石に置き換える


2. 焼成条件での対策

● 酸化焼成を基本にする

  • 強い還元は

    • 銅を金属銅に近づけ

    • 表面析出を助長

おすすめ:

  • 中性〜弱酸化

  • 特に最高温度付近は酸化寄り


● 焼成温度を上げすぎない

  • 必要以上の高温は

    • 銅の移動・揮発が増える

例:

  • 1230℃で十分な釉を
    → 1250℃まで上げない


3. 冷却での対策

● 急冷しすぎない

  • 急冷すると

    • 表面に銅が「凍結」して析出

対策:

  • 900〜700℃をややゆっくり冷却

  • 窯の口をすぐに開けない


4. 被膜を減らすまとめ

  • 銅を控えめ

  • 釉を安定化(SiO₂)

  • 酸化気味で焼く

  • ゆっくり冷却

指差し確認右 「銅を釉の中に閉じ込める」発想です。


A 被膜・窯変を「積極的に出す」方法

(黒皮・金属感・荒々しい織部)

1. 釉薬配合での工夫

● 酸化銅を多めにする

  • 3〜6%(かなり攻めた配合)

  • 釉に溶けきれない銅を意図的に作る

! 食器には不向き(溶出リスク)


● アルカリの強い灰を使う

  • 未洗い灰

  • ワラ灰・松灰など

→ 銅の移動・分離を促進


● 流れやすい釉にする

  • CaO多め

  • 粘土分少なめ

→ 表面に銅が集まりやすい


2. 焼成条件での工夫

● 還元を強めに入れる

特に:

  • 1000℃〜最高温度直前

効果:

  • 銅が

    • CuO → Cu₂O → Cu⁰ に近づき

    • 表面へ移動


● 焼成温度はやや高め

  • 銅を十分に動かすため

  • 釉が溶けすぎる直前まで


3. 冷却での工夫(重要)

● 急冷気味にする

  • 最高温度から比較的早く冷却

  • 800℃以下で窯を締め切る/開ける

結果:

  • 表面に集まった銅が

  • 一気に再酸化 → 被膜化


● 再酸化を意識する

  • 冷却途中で少し酸素を入れる

  • 窯焚きなら口焚きを使う

→ 黒・赤・金属的変化が出やすい


4. 被膜を出すまとめ

  • 銅を多く

  • 不安定な釉

  • 還元強め

  • 急冷+再酸化

指差し確認右 「銅を表に追い出す」発想です。


使い分けの考え方

狙い方針
美しい緑銅を釉に溶かす
荒々しい景色銅を釉から追い出す

もしよければ、

  • 使っている灰の種類

  • 焼成(電気・ガス・薪)

  • 温度帯(何℃)

を教えてもらえれば、かなり具体的な配合例まで落とし込みますよ。


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タグ:釉薬 織部
posted by inoueseiji at 05:52 | 釉薬に関すること

2025年12月05日

お願いだから比重を意識して【釉薬のはなし】

夢は空自の陶芸教官、イノウエです。
(そんな職業はない)


さて。

ゴルゴ13だってスコープを使っているんだから、アナタが比重計を使っても恥ずかしくはありません。

もっとも、ゴルゴもようやく持ち込めたリボルバーで100メートル先を狙撃することもあるんですが、それは日々スコープで狙撃しているからカンが働くというものでございましょう。

というわけで復習の記事。


まずは「失敗の9割は釉薬なんじゃない?」という名言を口にした人のヤツ。

秘密工作課「Q」case-5 釉薬の比重計を自作


理屈や技術は何年たってもかわりませんな。



で、オジサンのヤツ。



クオリティは低いが若いな!
posted by inoueseiji at 08:28 | 釉薬に関すること

2025年11月26日

粉末の下絵具を使いこなしませんか?

子猫の可愛さに癒されましたイノウエです。

はい。
お約束通り。

液体の下絵具、しかも海外製のもの。
すいません、わたしは使ったことがありません。
ですから使用感などをお伝えすることはできませんし、今後も購入する気はサラサラございません。ごめんね。

わたしは、日本はやきものの先進国だと思っています。歴史上は大陸や半島の影響も色濃く受けてきましたが、独自に発展したものが多くあり、そもそも影響を受けることができるぐらい、縄文からの技術の積み重ねがあったのでしょう。そもそも九州と半島は昔は別の国っていう感覚も希薄だったんではないでしょうか。そういえば、むかしの博多駅だったかの構内の地図に、東京が見切れているのに朝鮮半島がガッツリ入っているのを見た関東の人が衝撃を受けたなんてことを聞いたことがあります。

それはさておき、国内の各産地には原料や顔料の取扱店があり、様々な絵具が販売されています。それらは国内で製造されており、産地ごとに製造している企業やお店があったりします。それは下絵具でも上絵具でも同様です。そもそもの原材料は輸入に頼っているものも多いでしょうが、開発などは日本の産地や窯業製品を想定して行っているようです。

瀬戸や多治見の製陶所や工場が多い地域をクルマで流していると、〇〇化学なんて社名の古い工場をみることがよくありますが、そうした社名のところが釉薬や絵具を製造しているところだったりします。

むかし生涯学習センターの受講生の方がチューブの赤の絵具を何本も買ってきて「どうしても真っ赤になりません」と質問されたことがあります。そんなものを買う前に相談してくれればよかったのにと言いたいのをグッと我慢して笑、粉末下絵具の使い方をお伝えしました。その方はとても繊細な下絵顔料を用いた作品をたくさん制作されました。

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(プロアマ関係なくその人のセンスが作風を作るのね)

チューブのものではなく、海外の液体のものでもなく、粉末の下絵顔料を使用すれば思うような色や濃さを追求できますよとお伝えしますが、わからない、できない、と二の足を踏む人が意外と多いようです。プロでもです。

使い方は梶田絵具店さんのページに書いてありますし、動画まであります。
多くの方がトラブっているのは下絵具を摺って合わせる時に透明釉を入れないで濃く塗ってしまい、下絵の上の釉薬が縮れたり剥がれたりってことではないんでしょうか。

意外とこの釉薬を添加するというシンプルなことが知られていません。

透明釉混ぜてね〜!


さて。

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これだけの色がいくらでも好きなように出せるのに、わざわざ海外のすでに色も決められたものを使うなんてもったいない。
まぁオジサン料理研究家が出汁をとらないお嫁さんにチクチク言っているみたいな気がしないでもないですが、実際にそっちの方が安くて美味しい?んだからね。

透明釉やマット釉をベースにして、下絵具の濃度を調整すればそれこそ好きな色味を作り出せます。さらに素地を変えたり、酸化焼成や還元焼成でも変わってくるでしょう。

オジサン的には陶芸だのやきものだの、桃山とかなんとか言う方が多いのは結構だけれども、現代にしかできない下絵具や上絵を使いこなす人が少ないことや、電気炉ならではの仕事を追求する人が少ないことも勿体ないと思っておりますよ。無理やり100Vの電気炉で還元焼成しようとして壊すぐらいなら、ちょっといい秤と乳鉢を購入して自分にしか出来ない色を出すのもいいと思いますよ。今の設備や環境で出来ることを積み重ねれば、かならずそれは将来につながっていきますから。設備的にできないことを無理にやらなくていいんですよ。


下絵具を使いこなせば、陶磁器製のガンダムもできます。
セーラーマーズもできるかもしれません。
少なくともゴレンジャーはできるでしょう。

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(画像、かりま〜す!:アムロっぽく)



◆参考使用例

RX-78-2で使用する下絵具
酸化焼成 OF

白盛(素地によっては不要)
#80赤
イエロー
濃ブリューもしくは呉須(濃度注意)
茶系グレー(ランドセル部)
濃黒・特黒

※ビームサーベル使用時を制作する場合

ブレードは上絵の淡ピンクラスターからテスト
下絵のみで制作する場合は陶試紅を薄く



入門編はアッガイかな。

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茶呉須とか栗茶とかで適当に。
あとは素地の鉄分でイケるんじゃね?
posted by inoueseiji at 07:41 | 釉薬に関すること

2025年10月17日

自分で釉薬を作ってみよう!

ラッキーカラーは赤と紫らしいですイノウエです。
ということは乗り物はこれ?

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(バンダイさんお借りします)

陶芸教室という言葉も微妙な筑前工房ですが、いよいよ釉薬の調合なんてやりだしております。
だれもなんにも強制しておりません。自然なことなんでしょう。

みなさんの乳鉢と乳棒の使い方がまだまだって感じで微笑ましい。
ロクロでもなんでも姿勢や後ろ姿でなんとなくの技量がわかったりしますが、乳棒もそうなんだねぇ。うんうん。

自分がかつて梶田絵具店の◯田さんに聞きながらテストピースを作っていた頃を思い出しました。

3号石灰透明釉に絵具を合わせるだけは調合じゃないんですか?なんて言われた方もいましたが、それも立派な調合です。
二つ以上のものを測り合わせることが「調合」の意味ですからね。

そもそも0.1グラム単位の計測をした時点で、乳鉢でゴリゴリしだした時点で、陶芸家・陶芸愛好家の中の順位が8000〜10000位ぐらい上がります(なんのランキング?)

みんな全然やらないんです。
やれって言ってもやらないんだから。

自分でやらないから「オレは10万通りの調合をしてきたぜ」みたいな微笑ましい方の発言を突っ込めないし、どこかの窯元や工房を見学しても見てるだけになってしまう。つまり見て盗めないってことかな。自分である程度やっていればテレビの画面からでも原料の一部がわかったりしますけどね。

そして一つの調合をするだけでこれだけの時間がかかるのかと知れば、梶田絵具店のテストピースの凄さをまじまじと実感できます。

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梶田絵具店のホームページの「店長の部屋」のページをプリントアウトして持ってこられていました。エライ!
その中で3つの外割の数値は同じなのに色見の違いに気がついてのご質問もあり。

さすがは井上社中でございます。

さて、これをご覧のあなたはこの写真のテストピースで疑問に思うことはないかな?

そう。

下絵具がそれぞれ2.5%と5%と10%で合わせてありますが、そのグラデーションが顔料によって違う。写真でいえば下のほうの青いものなど、ゴス系は当然コバルトが入っているので2.5%でかなりもう濃ゆいわけ。

これが絵具ではない原料の酸化コバルトとかイノウエとつくばセラミックワークのフクダさんが大嫌いな酸化クロムとかはもう目も当てられない(ホームページで見てね)

ということは、下絵具によっては2.5%という数値が適正ではないともいえるので、テストするさいの調合の比率も考えるといいよね。シャア専用の赤を出すには何%かな?とかさ。

そんな話をしつつ、テストピースと小品に施釉して窯詰め。
すぐにスイッチオンです。

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自分で焼成する陶芸教室ってことで。

次は土でも掘っちゃう?

posted by inoueseiji at 07:20 | 釉薬に関すること

2025年10月04日

粉コナ混ぜマゼ!【釉薬の調合】

散髪してもヨメが気付いてくれませんイノウエです。

さてさて。

自分の教え方(偉そうな言い方だこと!)が間違っていないな、と思うときがたまにあります。

それは受講生の方が自然と釉薬のことに興味をもって調合してみたいと質問してくれたり、その辺の石を焼いたらどうなりますか?なんて質問をしてくれるときです。さらには自ら図書館で釉薬の本を借りてこられて、その内容についての質問をいただいたり、この原料ってありますか?などと言われたりするときです。

乳鉢を買ってみようとか、長石を買ってみようかと思う、などと言われるとかなり嬉しい。

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(5寸が良かばい!)

訓練校に入校し、伊豆で芳村俊一さんにお会いしたところから始まったわたしのやきもの人生です。あそこまで極右(いや極左か?)にはいけませんが、窯造りを仕事にして、製陶所や梶田絵具店でも短期間ですが経験を積ませていただき、常に窯と焼成からものを見るように伝えてきたつもりです。

特に、わたしのところでゼロから始まった人への自分の影響はいつも注意してきましたし、経験者の方への軌道修正でも、相手の立場や経験に気をつけてアドバイスをしようと努力してきました。

ロクロが上手いのだけが正義、みたいな陶芸オジサンたちを力づくで黙らせて指導してきた過去を思えば、最近は随分と窯と焼成と乾燥に意識が向く人が増えてきたように思います。それでもまだまだ少数派でしょうかね。

イノウエが言ったり書いたりしたことは、本人があんまり成長していないから実はほとんど変わっていません。
過去記事を読んでもそう思う。


◆釉薬のソロバン、という考え方


釉薬の調合、なんていうと魔女が秘薬を作っていそうな妖しさを感じる人がいるのかもしれません。この感覚、こちら側の人間はもう想像できなくなっているんです。許してやってください。

パンケーキミックスが売っている粉で、小麦粉とベーキングパウダーを自分で混ぜるのが調合なんです。
(わたしじゃなくて生徒が言ったから。〇〇さん、〇〇さん、怒らないで笑)

おすすめはいつも言ってますが、透明釉の粉に自分の庭の土でも混ぜてください。

それでオリジナルです。

そして、それがオリジナルです。


重量の比率は記録しておこう!
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posted by inoueseiji at 08:14 | 釉薬に関すること

2025年08月28日

今日は下絵付します【CMCについて】

三大資格のプロに相談したら血圧下がりましたイノウエです。
いやぁ〜ストレスはいけませんなぁ。

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(手びねり豆皿もこうすれば売れそうじゃん?)

さて。

お盆休みがあったので8月の生涯学習センターの講座は隔週ではなく2週連続のスケジュール。
今日の予定は窯出しして下絵付の予定です。

6ヶ月間の短期講座ですが、なるべく多くの工程を体験してもらいたいので、全員強制的に下絵付。
絵具と筆は講師で用意します。絵心がない?将来する気がない?そんな我をはってどうするのでしょうか。豊かな人生のためにはやったことがないことも食べたことがないものにも積極的に挑戦しましょう。

下絵付については、梶田絵具店さんのホームページの説明を読めばオッケー。

あとは絵具や釉薬に使用するノリ・糊のことも伝えておきましょう。
昔の人は布海苔などを使っていますが、いまはCMCが一般的でしょうか。

いろいろな使い道がありますので知っておいた方がいい材料です。陶芸関係のところならどこでも売ってますが、梶田絵具店で購入しよう!

ほかにもいろいろありますが、それはそれぞれで試してネ。



(結構この動画登場しますね)

CMCの作り方についての検証は、つくばセラミックワークスのフクダさんの過去記事が秀逸。



 

いや7年半も前かよ!
光陰矢の如しだな!


梶田絵具店さんの動画は釉薬への添加などについても詳しく解説あり。

(そして二人の愛は永遠さ)

posted by inoueseiji at 07:33 | 釉薬に関すること

2025年08月01日

梶田絵具店:うっかり専門用語?

八朔に思い出すことがいろいろとありますイノウエです。

さて。

筑前工房のロクロ道場(仮称)では人も増えてきましたし、良い話もポツポツと出てきています。
そんな中、講師のオススメで梶田絵具店のホームページを見た方々から、こちらがスッカリ忘れていた感覚をなんども呼び起こされることがありました。

そう。思えばドキドキで梶田絵具店に入店した20代の頃ははるか昔、いつの間にか梶田さんとは酒を呑んだりする仲になってしまって、出逢った頃の君ではいられなくなっていたのであります。そして、相変わらずイノウエは梶田のアニキの足元には及ばないものの、20年前よりは細かな説明をすることもされることもなく、専門用語まみれの会話が成立してしまっているのであります。同じ過ちは、やきものオジサンラジオ(仮題)でもあったことだろうと想像します。


本日のタイトルでもありますが。

優しい発信のつもりでも、うっかり専門用語を使っちゃうというやつ。

先日受講生でもあるお二人からいただいたのは釉薬の調合例にある言葉。


 「外割ってなんですか?」


釉調合における内割と外割。
お答えできる方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。


建築など他の業界でも使われる用語ではありますが、たしかに一般的ではありませんよね。
それをすっかり忘れてしまい、自分はわかりやすく発信しているんだ!エッヘン!なんてスタンスでグビグビとキリンビールを呑んでいる自分が恥ずかしい。

改めてここで説明しておきましょう!


例として透明釉の粉末を用います。
透明釉粉末は梶田絵具店で販売されています。

その粉末100グラムになにか他の原料を10グラム足すとします。
そうですね、下絵具の好きな色でも結構ですし、庭の土でもいいですね。


100グラム+10グラム=110グラム  ← この場合の10グラムのことを 外割10% といいます。

90グラム+10グラム=100グラム  ← この場合の10グラムのことは 内割10% となります。


総重量から百分率になおすと比率が変わるのはおわかりかと思います。
外割の方がわかりやすく、実際の作業においては外割になりがちというのもあります。

また後日説明したいと思いますが、三角座標はどのポイントの調合でも総量はかわりません。ですから内割の比率をわかりやすく把握するものということもできるかもしれません。


ちょっとややこしくなってきました?
もっとわかりやすくということであれば。




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フリーカップにお湯を半分程注ぎ、それからギリギリまで焼酎を入れるのが内割。
カップの容量を100とみなすわけですね。




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「カイピリーニャをくれ。砂糖は抜きでな…」

の砂糖が内割でライムが外割。
(山猫の夏〜好き〜!)

ん?
わからん?

じゃあ。

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「ジンをくれ。ビタースを垂らしてな…」

「…アンタ海軍かい?」

の、ビタースが外割。



わかった?



posted by inoueseiji at 07:24 | 釉薬に関すること

2025年06月03日

梶田絵具店:釉調合してみよう【調合風景動画】

愛も調合数もトキちゃんに奪われましたイノウエです。

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さて梶田絵具店さんのホームページと動画を駆使して、自分のTポイント(陶芸のTな)を上げていきましょう。
釉薬のことを理解するには実際に自分で簡単な釉薬でいいから調合してみることです。
そうすれば理解度も深まり、見えてくるものが多くなります。

これはなんの世界でも間違いないことでしょう。料理だって「アレ美味しかったなぁ。自分でも作ってみよう!」と思ってレシピを検索すればこんなに手がかかるのか!と驚くことがありますし、たかだか出汁一つとっても奥が深いのがわかるのではないでしょうか。

知識先行、頭でっかちになっていいし、そうでなければイケないといつも思いますが、同時にそのための手順や工程の理解はその身を持って覚えなければなりません。ここで紹介する動画は梶田さんがテストピースにどうやって施釉しているのかを紹介したものです。わたしは訓練校出身ですからここまでのガチな調合方法ではなく簡単な調合実習しかありませんでした。だから初めてこの動画を観たときには、ある種の衝撃がありました。これを最初から観ることが出来る人が正直うらやましいです。




ふくおか陶芸窯のオジサンはここで重要なことをお伝えしますので、下記の項目をよく確認してください。
こうした動画発信において発信側ががっかりすることがイロイロありまして、わたしも散々経験しました。受け取り手ともどもの利益につながることですので、多少うっとおしく説教臭いかと思いますがよろしくお願いします。

まず、重要なことは

  • 必要なものをちゃんと用意する
  • 工程を書き出しておく
  • せめて3回はその通りにやってみる
  • 勝手な工程の省略や追加をしない

ということです。


動画を一から解説します。
わずか2分半の動画ですが20年分ぐらいのノウハウが詰まっていることでしょう。
しっかりと確認してください。


★動画内での作業工程

  • しっかりとした作業台に新聞紙
    • グラグラしないテーブル
    • 新聞紙で汚れ防止

  • 素焼きのテストピースを用意する
    • 形は統一したほうがよい
    • 板状以外の形でもよいが統一する

  • 必要ならば撥水剤
    • CP-Eならラッカーシンナーも必要
    • 専用の容器・筆や刷毛

  • ゴスで下絵ができる用意
    • 自分がよく使うものでもよいがゴスと鉄が多い
    • 下絵具の調整を確認する
    • 乳鉢・乳棒・面相筆など

  • 事前に調合量などを計算しておく
    • 使用する原料の決定つまり調合目的
    • 事前に完全乾燥させて乳鉢で摺っておく

  • デジタル秤で計測する
    • 調理用でも良いから0.1グラムが計れるもの
    • 上皿天秤でも良い

  • ビニール袋にわけておく
    • 袋ごと手で揉むのでビニール袋がベスト
    • プラカップという手もあるが混練具合を考えるとビニール袋
    • もちろん再利用とかしませんよ

  • 乳鉢で粉摺りしてから定量の0.5%CMC溶液を入れる
    • CMCの0.5%はちゃんと測ること
    • 動画中に解説がないがシリンジで量も測ってる

  • 刷毛塗りでテストピースに施釉
    • 刷毛は梶田絵具店のテルピン刷毛
    • サイズは6分か7分ぐらいが使いやすい
    • 塗る都度しっかり洗浄する
    • 複数本あると良い

  • 乾燥後により土の土台に据える
    • 割り箸の上に置く意味がわからないなら黙って置こう
    • 乾燥するまで触らないこと
    • テストピースの形によってはそのまま立つこともあるかな

  • 窯詰め・焼成
    • 焼成条件を決める
    • 焼成グラフの記録
    • 同じ窯に入れることが望ましい



わたしが若いころ散々失敗したことは前述したように、教えられたとおり、言われたとおりにやらなかった、ということです。ビニール袋?いらんやろ、CMC?何それ?とかならまだいいとして、いちいち何度も計測するのが面倒くさいなぁとかにまでいっちゃうと後の祭りです。そして大事なのは記録を取ることです。手で取ることね。


ベストな釉薬ほど記録がどこにも見つからない、というなんとかの法則が陶芸界にはあります。
たくさんの犠牲者がこれまでにも確認されていますので気をつけてください。

「守・破・離」という言葉が示すように、工程や作業目的が腑に落ちるまでは梶田の兄貴のやり方を守りましょう。0.5%溶液とか適当でいいやん、と思うのであれば適当なものが出来上がるだけです。それでは再現性のない実験ごっこになるだけです。

釉調合なんて適当だし、ものづくりはセンスじゃないのかな?と思ったヒッピーでヒャッハーなアナタは自分のセンスでミョウチクリンな中古窯とか買わないように気をつけていきましょう。意外とこの世界は理詰めです。


動画になかった工程など

使用する粘土はなるべく白いものを使用するのが一般的です。もしくは自分の土が決まっているならそれと白土系とかね。まぁ利き酒するのに黒いぐい呑使わないのと同じ理由です。

また調合した乳鉢に残ったものは一回一回キレイに全部洗います。洗いもの用のバケツを用意してください。別にもったいないとか思いません。思うのであれば動画のようにしっかりと数値管理して無駄が少なくなるようにしましょう。

しっかりと洗ったら乳鉢と乳棒は当然湿っておりますので、ヘアドライヤーを乳棒といっしょに乳鉢に突っ込んで強制乾燥させます。アッチッチになったら乾燥終了です。これ重要です。

まずは作業に慣れるためにも複雑な調合ではなく2成分や3成分ぐらい、総数も10〜15ピースぐらいでやってみましょう。ごちゃごちゃ書きましたが「やってみなはれ!」ということです。

梶田さん御夫婦は二人で10の23乗個ぐらいのテストピースを焼いていますが、我々凡人でもこれまで調合数ゼロだった人が調合数3になるだけで世界は動き出しますよ(チ。は調合のチかもしれんってぐらい笑)

面倒くさいアナタにはこの動画もオススメしておきます。





またね〜。
posted by inoueseiji at 08:35 | 釉薬に関すること

2025年05月29日

梶田絵具店:ホームページの使い方【釉薬編】

声が小さいほうかもしれないです、イノウエです。

先日釉薬に目覚めつつある受講生の方が、「井上しぇんしぇ〜の紹介されていた梶田絵具店で買い物しようとホームページを見たんですが、何を買っていいのかわかりませんでした〜」という報告を受けました。これはかなりの衝撃的な発言でしたが、そう思っている人は意外といるのかも?と思いましたし、あぁオレは窯でそれやっているのかもとも思いました。

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(朝の7時からやってます)

つまり初めての人は、なんとかドットコム的な買い物ができると考えていたのだと思います。
粉末・液体のそれぞれの釉薬が色見本とともにわかりやすく表示してあるようなページですね。うんうん。

でもね。まず声を大にしてお伝えしたいのは梶田絵具店のホームページに行き着いた時点でアナタのレベルは68ぐらいに到達しております。喜びましょう。

たしかに梶田さんに液体釉薬はありませんが、やきものの釉薬・絵付・その他に係るあらゆるものを販売しているだけではなく、その使用方法、製造工程、製造メーカーや職人さん、納入先での使用例を全て把握しております。その上で店主自ら夜な夜なテストピースを作り、コツコツとホームページの説明文も更新されています。それも朝の7時から夜の7時まで営業しながら、です。

これほど味方につけておくことが頼もしい所もございません。
(ということは敵に回すと終わるということデス!)


本日はそんな梶田絵具店さんの公式ホームページの使い方?と買い物の仕方を簡単ですがご提案させていただきます。

僭越ながら進行役を努めますのは、ある特殊な事情で半年間だけ梶田絵具店で働いた唯一の男、ふくおか陶芸窯の井上でお送りいたします。


◆梶田絵具店とは!

創業90年以上、やきものの街瀬戸を支える老舗絵具店です。

公式ホームページ https://kajita-enogu.com/

公式Youtube https://www.youtube.com/@梶田絵具店

まずホームページとYoutubeチャンネルがあるということを把握しておきましょう。



◆店長の部屋を見ろ!

最初は原料名などがわからない方も多いでしょうし、知らない原料なんてそれこそ何に使うのかもわからないでしょう。
ですから先に色見本を見ることをオススメします。それがありえないぐらい掲載されているのが「店長の部屋」です。

トップページ左のメニューにリンクがあります。

絵具・釉薬・練り込みその他 3つのメニューがありますが、それぞれクリックすれば夥しい数の色見本があります。もちろん全部を梶田さん本人が作っております。すごくない?

それぞれのテストピースの説明文を見てください。
よく見ていただければ、単純に重量比で混ぜるだけの調合もたくさん載っているのがわかるでしょう。
これなら出来そうとか、色がキレイ、そんなスタートがとても素敵です。

ゼーゲル式しか記載がないものはまたいつか説明してみますが、このリンクに数値入れてみればいいですよ。
https://www.shiga-irc.go.jp/scri/tech_info/seger_to_ratio




(どんな世界でも出来る男はヨメが大好き)



◆資料ポケットを見ろ!

三角座標?なんのこっちゃと思った方もいるかもしれません。
そんなアナタは資料ポケットを確認してください。トップページにリンクあります。
特にゼーゲル式と三角座標についてのPDFは教科書レベルというか、これが教科書でいいでしょう。


◆釉薬用原料を見ろ!

ここまで確認したら、どんなものが売っているのか見てみましょう。
難しく考える必要はありません。こんな曲が弾きたいなと思って歌本を開いてギターのコードを覚えたように、釉薬も同じ感覚でもまったく問題ありません。楽譜が読めなくてもあれだけの曲をビートルズが作ったように、ゼーゲル式が絶対でもありません。
アナタを突き動かすのは作りたい、知りたいという純粋な欲求のハズです。

さてでは原料の購入を考えるわけですが、基本の長石と灰を購入するとしましょう。それぞれたくさんの種類があります。こまったもんです。
どいつがどんなヤツかはこれも資料が梶田絵具店のHPにあります。資料ポケットの釉薬原料分析表ですね。これも最初から理解できた人はいません。いろいろとやっていくうちにいつもこれが入ってるなぁとかで把握していけばいいんです。

では長石と灰です。国内で掘っている益田長石と合成土灰にしてみましょうか。
そうと決まればメールなどで注文してください。わからないことがあれば問い合わせてから購入です。
すぐに発送してくださいます。振込用紙が入っていますのであとはよろしく!



★気をつけてほしいこと

ここを覗いている人はそんな人は少ないと思いますが一応。

営業中の魚屋さんに電話で煮付けの作り方を聞くようなことをしないこと笑。
大人でもそういう人はたまにいます。ここで半年働いていたから知ってますしウチもたまにある。

そして質問ならメールの方が質問内容も回答も残るのでよいのではと思います。


というわけでまだまだ続きますよ〜!!



posted by inoueseiji at 07:26 | 釉薬に関すること

2025年03月14日

米の研ぎ汁問題にアツくなるには理由がある【与太話】

「アナタ、米の研ぎ汁問題はもういい加減にして働いて!」という声は放っておいて笑。

昨日紹介した粉引の大皿は美しいでしょう。
ここぞという時に食卓に上る器なんです。
器はそうやって育っていくものだと思うのです。


さて。

あまり具体例を出すと我が身がヤバいのでアレですが。

たとえば桃山時代に作られて現代まで銘品として残っているものは、それなりに使い込まれてきた器の良さを持っているものだと思います。みなさんが、いわゆる骨董という言葉を聞いてイメージするような雰囲気の器です。カッコいいですね。


しかし。
そんな器にも窯出し直後のウブなときがあったはず。

それはわかりますよね?

現在の作家モノは、必ずしもそのウブな状態で売られるわけでもない、ということは大人の事情を知る人なら…です。

まぁとある有名な作家さんで、焼成したおびただしい数の井戸茶碗を山に野ざらしに積んで数年放置から数十年放置して、個展をするとなると改めてそこから選び取る、ということをされていた方がいます。それは一つの作品づくりの方法論であるといえますが、自然と古色付けにもなっていると思います。

他にもいろいろあって、土中に数年埋めておくとか、トチ渋につけておくとか、紅茶とか、ベンガラや鬼板の水溶液で着色するとか、あまり詳細を書くとイケない技法がいろいろとあるのかもしれません(かもしれないブログ笑)


じゃあそれが米の研ぎ汁問題となんか関係があるのか?ということになるかと思いますが。


焼成の甘さのような部分が茶碗の味や雰囲気を生み出す一つの条件にもなるのかもしれませんが、それは茶陶では良くても食器では厳しいのではないかと思います。自作の器を改善しないで米の研ぎ汁のような水漏れ防止剤を使用する考え方は、前述したあまり表に出したくない裏ワザを茶陶と食器で混同していく可能性があります。

食器と茶陶の自己主張の強度はかなり違うようにも感じています。


わかりやすく言えば、自分の求める作品の雰囲気が絶対であれば、水が漏れようが関係ありません。モグサ土で志野を焼こうが井戸茶碗を万単位で山に放置しようが好きにすればいい。ファンはそれを数万から数十万円出してありがたく購入するでしょう。

しかし一般の家庭で使われる器を一般人のお財布で購入可能な価格で販売しているのであれば、テレビで見た陶芸家の考え方よりも製陶所の考え方に近いものを採用したほうが良いのではないかとわたし個人は思います。


まぁこれはちょっと脱線しすぎなのは自覚しますが。
与太話なんでゆるしてチョンマゲ。


もう一つ、米の研ぎ汁に潜む問題点があると思います。それは窯焚きなどでもよくある、誰もそれに突っ込めない、周りがそう言っているから自分も、という状況が広まってしまい、いつの間にかそれが事実のようになってしまう、ということへの危惧です。

還元焼成について、ダンパーとドラフトの操作について、ヒーター線について、築炉メーカーについて、エントツの素材について、バーナーの調整方法について、電気工事について、温度計測について、補償導線について。

誤解と誤謬、思い違いに曲解がこれまで山のようにあったし、今も多々あると思います。
実際にわたし自身も五十を過ぎてようやく真実を知って悔しい思いをしたことがいくつもあります。最初にちゃんと伝えてくれればやったのに!とかさ。


何年も間違った窯の操作をして苦労してきた人。


間違った発信で窯の購入に不安を覚えた人。

スピーカーケーブルで温度計測してきた人。

木炭を電気炉に突っ込んでヒーター線をダメにした人。

安直なアドバイスで一窯全部パァにした人。

窯そのものを壊してしまった人。



そんな人たちは。

1014.jpeg






誰も悪くありません。



プロだと思った人たちのアドバイスを信じただけです。

米の研ぎ汁のように。




というわけで自分のブログの中ぐらいグダグダ熱く書いておく。

ご安全に!



posted by inoueseiji at 08:34 | 釉薬に関すること

2025年03月13日

米の研ぎ汁問題から脱線する【電子レンジと洗剤】

購入したところが答えないから相談が来るけれど、それでお金を取るほどの商売人ではない自分がトホホなイノウエです。

はい、米の研ぎ汁問題は、派生作品?がまだまだしつこく続きます。

繰り返しになりますが、米の研ぎ汁を使用すると目止めになる、ということを作り手の一部が認識して、お客様向けに説明しているということは、自作の器や陶器一般に吸水性があること、場合によってはクレームになるほどのシミができることを把握しているということです。

だとすれば、本来はその米の研ぎ汁についてももう少し詳しく説明するべきなのではとオジサンは意地悪に考えてしまいます。

精米機で7分づきにしているけれど研ぎ汁が濃すぎますか?

研ぎ汁の理想的な濃度はいかほどでしょうか?

米の研ぎ汁はどこで購入できますか?

なんてさ笑。

まぁたしか1970年代の陶芸関連の書籍には確かに米の研ぎ汁について言及している書籍があったと記憶しています。


また土鍋を購入したら最初はお粥を炊いてから、なんておばあちゃんの知恵袋みたいなことを聞いたことがある人も多いでしょう。でもそれはペタライトが今のように多く使用される前の土鍋の時代でしょう。わたしの世代でも若かりし頃の土鍋土はザクザクの手が痛いような土で、焼成温度を変えてと言われていました。

山内陶料さんが一般売りを解禁されてから、今の土鍋は別にわざわざ1180℃で焼成をする必要はありません。他の製品といっしょにSK7のOFで問題なく焼成できます。逆に1180℃で焼成するとトラブルのもとです。1180℃の根拠は以前書いたので、今日は意地悪して書〜かない。

わたしがこんなことを何度もしつこく書くのは、このノリが窯選びや焼成方法にもあるからです。シンプルな理屈や仕組みを知ることなしにただ米の研ぎ汁を盲信するようなノリ。これを是正しないといつまで経っても何百本記事を書いてもなぁ〜んにも変わらないことになるからです。

その証拠にこのブログでは、毎日まいにち2009年のダンパーとドラフトの記事がアクセストップの状態が続いています。まぁ脱線です。



とにかく。

ベストの状態で焼き上がっても陶器には吸水性がある、といということを理解すれば、電子レンジをどうするかもわかるでしょう。また洗い方についても聞くまでもない。


まず電子レンジについては自作の器で何度でもテストすればいい。もしくは、電子レンジこそお客様にはやめといて、と言っていいのではないかと思います。電子レンジは水分子を振動させるわけですからね。条件によっては器に染み込んだ水で、なんてことがあり得るということですね。

ウチはまぁまぁ自作の器なら
電子レンジに突っ込んでます。使っているのは失敗作が多いので笑。ちなみにグラタンは織部の型打ちの角皿をトースターでガンガン加熱しています。トースターは意外とへっちゃらのはずです、ってイノウエが言っていたとか言わずに、自分の器は自分でテストしてね。


あとは洗い方です。

先日の記事にも書いたように、むかし同期みんながまだまだ未熟だった頃ですが、購入した知人の器からイヤな匂いがするようになったことがあります。昨日食べたカレーの臭いとかそんな匂いではなく、台所の排水溝のようなイヤな匂いです。飯碗でしたが、それが熱いご飯の匂いに混ざって立ち昇るのです。うんざりしてすぐに使わなくなりましたが、ある時ふと思い出して素焼きしちゃったという話でした。


共働き家庭だったりすれば洗い物を流しにつけっぱなしにしていたり、放置していることがあります。それは別に悪いことでもない。そういうことを想定しておく必要が製造業にはあるのでは?ということです。

また食洗機問題もあるようです。親しい方から聞きましたがオサレカフェの器が洗剤臭くてコーヒーが飲めなかったことがあったそうです。そのオサレキッチンを見ると食洗機でガンガン洗っていた。せっかくのオサレ器をセレクトしているのなら、なぜ手洗いしないのかと思ったそうですが、お店のスタッフが業務用食器と混同しているのだろうから仕方がないことだと思ったとのことでした。

食洗機ね。

オートクチュールを家の洗濯機にブチ込む感覚やろ、なんてわたしは言っておりません笑。
そしてそれだけ業務用食器というものが優れているということでもあります。


洗剤にしても流しに漬けっぱなしにしても、器の吸水性を考慮しておくべきでしょう。ワタシがいまこのポジションで無責任なことを言うのはズルいかもしれませんが、自分だったらやっぱり釉薬や土によっては食器用の水漏れ防止剤をしてから販売するかな。

米の研ぎ汁なんて書かないで、初めて使用する前には水につけて、使用後はなるべく早く手洗いで洗ってください、と書くべきでしょう。そして吸水性のこと、洗剤を使用する場合の注意書き、よく乾かすこと、匂いがついたら日光に当てることも有効であること、どうしようもなければ引き取って素焼きするなんてサービスもいいかもしれません。またジーンズのように使い込んでいく美しさが陶器にはあるということも発信しておくべきでしょう。


そしてなによりも作り手は自分の器を自分の生活で使ってテストすることが大事だと思います。耐熱の器を販売したいのなら、一冬しっかりと自宅で使い込んでからにするとか、そういうスタンスが大切です。

そんなに待てない!とかあるかもしれませんが、あの人の器いいよ〜という評判よりも、あの人の器すぐカビる!とか水炊きしてたら割れたの!なんて悪評のほうが780倍ぐらい早く広まってしまうので気をつけましょう。写真付きでトゥイッター笑なんかに上げられたらイヤじゃん?


とりあえず釉薬のことも含めて、梶田絵具店のサイトをチェック!

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(20年以上前にいただいた同期Oさんの粉引大皿。真白だった器がここまで育った。井上家の宴席にいつもあって我が家の祝い事のすべてを知っている大切な器。)
posted by inoueseiji at 08:07 | 釉薬に関すること

2025年03月12日

米の研ぎ汁問題は続きます【釉薬の問題など】

もうすぐ池田屋で会合だぜ!と思っていたら、自分の脱藩のところまで振り出しに戻された気分のイノウエです。

さあ、元気だしていきましょう!

はい、では米の研ぎ汁問題のパート2です。

米の研ぎ汁で器の目止めをするということは、そもそもバッチリ出来上がっても吸水性のあるのが陶器だけど、何某かの要因で通常よりも吸水性が強い状態になっている、ということでしょう。

あ、一応今回からは「自分の器はちゃんとテストして問題ないのはわかっているけれど、クレーム対処のためにあえて製品のシオリに米の研ぎ汁と記載しているんですわ」という方のことではなく、マジで自分の器の水漏れやシミやカビの原因がわからなくて、ネットを検索しまくって「米の研ぎ汁がいいんだって!」となっている人を対象に書きますんでよろしくメカドック!

まずいきなりギャフンとなっちゃいそうなことを書いておきます。これはとても大切な考え方ですからあえて。

自分の器の雰囲気を大事にするあまりに食器としての機能を犠牲にする方や考え方があります。
茶陶とかね笑。時代付けとか笑。まぁそれはそれでよろしい。しかしその場合は米の研ぎ汁なんて言わないで食器用の水漏れ防止剤を使用して「つくり手側が責任をもって」やってください。お客に米の研ぎ汁なんて用意させるのは論外であるようにわたし個人は思いまっせ。気をつけないとどこかが”ペットボトル入の米の研ぎ汁”を販売しそうだもんね。


あなたが有名売れっ子作家ならば、茶筅通しで畳が濡れるぐらい水が漏れてもお茶の先生が怒ることはないかもしれません。逆に「早く器が育たないかなぁ」と嬉々として使ってくださるようなこともあるかもしれません。しかしほとんどの場合は水漏れしたとか貫入にコーヒーの色が入ってしまったとかクレームを言うような方へ説明をする羽目になる確率の方が高い。

衣服にたとえれば量産の器と手作りの器はユニクロのシャツと手縫いのセーターのような違いかもしれません。ユニクロのシャツならガシガシ洗濯するでしょうが、あの子の手縫いのセーターはやさしくソフランで手洗いするべきですよね。まさか洗濯機では洗わないでしょう。無意識でその常識が衣服にはある人が多い。なんででしょうね。

まぁそれと同じで、作家ものの器をどう取り扱うかは、器好きな人の共通認識になるまでは作家側が発信していくしかない(と思うよ)。その際に米の研ぎ汁ではあまりにも哀しい。ていうか、器好きな人の共通認識が米の研ぎ汁になりつつある危機感を感じています。一部のギャラリーの人がそういうこと言っているらしいし。


さて、学校の教科書でも習うように、磁器やb器とはちがって陶器には吸水性があります。それは粘土の種類や釉薬との兼ね合いで変動するわけですが、吸水性がある。つまり焼結したものでも目に見えない気孔が素地に存在しているということです。

当然ながら窯出し直後の器にはなんの水気もありません。そこに米の研ぎ汁なんかをブチ込んでしまうと永遠に雑菌のエサをみずから供給する器になってしまう。つまりカビが発生しやすい器になってしまうということです。

たとえば織部釉を使用した器は渋抜きをしますので、窯出し後に水道水に漬けてからクエン酸水などに浸します(なんでかは過去記事で)。塩酸を使用する人ならもう消毒しているのに近い状態でしょう。それでも長い期間使用していれば高台内にカビが発生することもあります。条件によっては数ヶ月でそうなることもあるでしょう。

まだ窯が熱いのに窯出しして、ピンピン音がする熱い器に焼酎を注いで呑むとかいう◯◯な窯元のニュースを昔みたことがありますが、そんなことをすればもうその匂いは取れなくなってしまいます。

友人や同期の初個展などで購入した器が速攻でカビたり、焼きが甘くて洗ったあとにイヤな匂いが取れなくなったりしたことがあります。幸いワタシはやきものの仕事をしているので、匂いに耐えきれなくなって知人の器を自分の窯で素焼きしたことがあります。そうすればカビも匂いも消えるし、若干何某かの反応も進むのか、そこから一切カビなくなったりすることもあります。しかし、いくらふくおか陶芸窯が「一家に一台、陶芸窯」の世界を目指していても、普通の家庭に窯はありません。だからあくまでこれはやきもの屋の裏ワザです。

はい、ということでここからが本題。
今日問題にするのは釉薬視点での米の研ぎ汁問題です。

まず釉薬の濃度を把握しましょう。濃度で器の吸水性や汚れやすさは変わることがよくあります。濃度というのは器に表面にくっついた釉薬の厚みを管理できるのかということです。


濃度の比較については16年前の過去記事があるので確認してください。


★さまざまな濃度で焼成実験


↓ これは5年前。

★数値で管理できるかな?
http://inoueseiji.sblo.jp/article/187506422.html


焼成温度を変更しないのであれば釉薬の濃度や調合を変更するべきかもしれません。もちろん、そうしろと言っているのではなく、ヒントとしてそういう考え方はどうかしら?ということです。

話がまだまだつづくので、また次回にしましょうかね。

A young woman enjoying pottery.jpg
(AIに陶芸を楽しんでいる若い女性、とお願いしたらこうなった)

posted by inoueseiji at 08:28 | 釉薬に関すること

2025年03月10日

無洗米の人はどうすればいいのかしら?【米の研ぎ汁問題】



お水が冷たいと道具をつかって米を研いでいたことはヨメには内緒のイノウエです。

器を購入したらいまだに「米の研ぎ汁で」という注意書きがあると複数の方から伺いましたし、わたしもフェアなどで購入した器のしおりに書いてあったことがあります。

動画の冒頭でも発言しておりますが、わたし個人は雑菌のエサを仕込むようでイヤです。
反論する方は沸騰させるから問題ないというのかもしれませんが、それでもイヤ。

イヤなものは嫌なんです。
そもそも面倒くさい。

1200℃オーバーで焼成しているものが沸騰ぐらいでどうにもなるかいな、と思います。

もちろんワタシもコーヒー注いだら茶色い汗をかくようなカップを作ったことがあります。
敷物を濡らすような花器をつくったこともあります。
炒めた油が染み込んだ跡が消えないようなお皿を作ったこともあります。

でもね。

撥水剤に逃げてはイケないわけですね。
安直に。

特に食器はね。

器が悪いのに溶剤でどうにかしようという発想をする人は少ないと思います。
あくまでも撥水剤などは保険として使用するものだと思います。まぁ花器は別かもしれません。

これまでわたしが認識した「米の研ぎ汁で煮てください」とか、そういう注意書きをしおりに書いている方々はみなさんプロでした。プロとしての意識から、その製品のクレーム対策として書いているということは理解しております。

ただね。

昭和じゃないんだから、プロの方からそれを是正してお客様を安心させていかないとイケないのではないかな、とオジサンは思うのであります。


もう昭和じゃございません。
令和でござんすよ、旦那。

米の研ぎ汁なんてどの家庭でもある時代ではなくなったのです。
無洗米を使用している人もいるでしょう。
そもそもおコメを食べない外国の方も購入するでしょう。
炭水化物ダイエットしている人はどうすればいいのでしょうか。

大昔の土鍋なんかはかなり粗い土で焼成温度も低くしていたはずです。
ペタライトなんてジンバブエから輸入されていなかったでしょうから。
米の研ぎ汁やお粥を最初に炊け、なんてのは、そんな時代のおばあちゃんの知恵袋的なことです。

だから製品のテストをすることです。

そして釉薬と土の相性や調整をしっかりとしましょう。
もう一度言うけど、食器なら特に。


陶器なら必ず釉薬に貫入は入ります。
ただそこに汚れが入るか入らないかは土と釉薬との相性できまる部分もあります。
こんなときにゼーゲル式なんかも使えるかもしれません。

焼成も関係します。
焼成時の最高温度や窯出しの温度も影響すると思います。ゆっくりと昇温させることや熱いうちに蓋開けるなといつも申し上げております。



新しい器は水だけで洗って、水を吸い込ませてから使い始めとすると良いと思います。
そして町中華屋の厨房みたいにいつまでも洗い物を放置するんじゃなくて、食べ終わって一服したらすぐに洗って乾燥させましょう。手作りであろうとも、しっかりと作られた器ならそれでいいはずです。

そして作家なら自分が作った器を自分の生活の中でもしつこく使っていくことです。
そうしてようやく人からお金を取る器ができるのだとわたし個人は思います。

量産品をバカにしてはいけません。
ここまで書いた様々なことを全クリしている製品なのです。
100円ショップにあるものでさえです。

量産の器の世界の人は「米の研ぎ汁で」なんて言わないと思います。


それとも。


そう言わざるをえない時代なのかねぇ。





◆追記:過去記事をリンクしておきます。

水漏れ防止剤について
posted by inoueseiji at 09:43 | 釉薬に関すること

2014年08月19日

金ラスター釉


今回は、わたしが実験してとても良かった調合を紹介したいと思います。

釜戸長石 85 出発原料

亜鉛華  5
無鉛白玉 5
蛍石    5  以上 媒溶材、融材

二酸化マンガン 20 主着色材

酸化銅  3
酸化クロム 0.5  以上 鉱化材

1230℃ 酸化焼成


この釉薬は金属ラスター釉薬の種類になります。

また長石が多いので長石釉の種類に分類されるでしょう。

施釉のコツはちょっと厚めにぬることです。

亜鉛華は、亜鉛華という名前で売っています。
無鉛白玉は無鉛フリッとのこと
蛍石はフッ化カルシウムで、これも名前のまま売っていす。

酸化銅はふつうの黒色酸化銅です。
酸化クロムもそのままの名前で売っています。

この釉薬のように、基礎釉に特定の金属を大量に投入することで、案外と簡単に金属ラスター釉をつくることができます。是非いろいろと挑戦してみてくださいね。

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原料購入はこちらから↓
posted by inoueseiji at 12:42 | Comment(2) | TrackBack(0) | 釉薬に関すること

2013年10月17日

織部の渋抜き


わたしのやり方は瀬戸の釉薬屋さんから聞いたものを、さらにアレンジしたものです。この正しいやり方をブログにもアップして、多くの人に知ってもらいたいと考えています。

織部の渋抜きには、トチ渋を使った方法もありますが、わたしの渋抜きは塩酸を使ったものです。ご了承ください。



●そもそも酸化皮膜とは何なのか

織部釉は焼成後、曇ったようにくすんでいます。これは釉薬の表面に皮膜がついているからで、この皮膜をわれわれは酸化皮膜と呼んでいます。この皮膜は釉薬に含まれている酸化銅の析出物ということですが、どうして皮膜になるのか、わたしはわかりません。残念ながら、わかっているという人に会ったこともないです。だれか教えてください。

まあ、皮膜が取れれば問題ないですよね。


●窯出し

窯出しの時に注意することは、織部釉の部分を素手で触らないということです。
軍手をするなどして、手の脂がつくのを防ぎます。そうしないと指の跡がいつまでも渋抜きで取れないことになります。


●まずは水に浸す

窯出ししたらまずは水に漬けます。理由は、渋抜きに使う塩酸の成分が、素地や釉薬の貫入にしみ込まないようにするためです。これをおこたると、渋抜きしても貫入から白い塩がいつまでも出続けてやっかいです。

水に漬ける時間は1〜2時間でいいと思います。塩酸で渋抜きする場合、これはとても大切な工程ですので忘れずにやってくださいね。


●お湯と塩酸を用意

いよいよ渋抜きをするわけですが、水ではうまくいきません。ある程度熱いお湯を用意します。お風呂よりもちょっと熱い程度で十分です。だいたい50〜60℃でいいでしょう。わたしは我が家の給湯器で一番熱い設定の60℃で行っています。

重要な塩酸とお湯の混合比ですが、かなり薄いです。だいたいお湯15〜20リッターに、塩酸20cc程度を目安にしてください。きちんと測ることが重要です。横着はしないこと。

作品がつかるだけの容器が必要です。コンテナ、衣装ケース、子供用プールなどを流用して使います。

塩酸は取り扱いに注意が必要です。手袋、マスクなどを必ず着用してください。


●中和のために重曹水

バケツ一杯の水に大さじ1〜2杯の重曹を入れて攪拌し、用意しておきます。別になくてもいいのですが、塩酸を中和するために重曹を使うのです。わたしが紹介している方法での塩酸溶液は、素手でも大丈夫なぐらい薄いのですが、念のためにも重曹水を用意しておくといいでしょう。


●漬け込む

いよいよ作品を漬け込みます。お湯がかなり熱いので、棒やハサミなどを用意するといいでしょう。漬け込む時間は1〜3時間程度です。塩酸水の濃度が薄いので、結構アバウトでも大丈夫です。キーワードは薄く長くです。

瀬戸の製陶所などは、もっと濃い塩酸溶液で、もっと短時間でやっているようですが、あわてることはありません。塩酸が濃くていいことはあまりありませんから。


●皮膜を取る

時間がたち、頃合になると、本当に皮がむけるように皮膜が取れてきます。そうなったらスポンジなどできれいに作品を洗い、完全に皮膜を取り除きましょう。このとき確実に皮膜をとることが大切です。拭き残すと乾燥したときに皮膜が残ってしまいます。

きれいに拭き落としたら、流水で洗い流します。この工程で、自分の作品の美しさを存分に味わってください。作者の特権です。


●乾燥させて終了

全ての作品の渋抜きが終わったら、後片付けです。塩酸水には先ほどの重曹水を混ぜて中和し、流しに捨てましょう。作品は水気を切り、乾燥させます。これで織部の作品ができあがりです。この一手間があるので、織部の作品は割高だったりするのです。


以上がわたしが行っている渋抜きの作業工程になります。是非参考にしてください。渋抜きで大切なのは、あまりあせらないことです。短時間でやろうとすると失敗のリスク、事故のリスクが高まります。とにかく塩酸は薄くして、長い時間をかけるようにします。



今回紹介した渋抜きの方法、是非あちこちで広めてください。

もともとはわたしも釉薬屋さんに教わったことです。水に漬けるとか、重曹水とかは、わたしが付け足した部分ですが、薄く長くというのがこの方法の一番の肝です。

織部釉はとにかく美しいものです。特に渋抜きしたばかりの濡れた作品はとても美しい。だからやめられないのです。

※今ではクエン酸で行っています。2020年1月追記】




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posted by inoueseiji at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 釉薬に関すること

2009年12月12日

釉薬の調合試験


わたしがやきものの仕事でもっとも嫌なのが素焼きだ、という話は前に書きましたが、じゃあ何が好きなのか、というと釉薬の調合です。

もちろん、ほかにも好きな工程はたくさんありますが、先日かなりの数を調合しましたので、そのことを書いてみます。

調合をするのに、化学式が必要かどうかは、それぞれの人が、どう釉薬を捉えていくかにかかわってくることが多いとは思います。それよりも、まずやってみることが大切ですし、面白いと思います。

もっとも簡単なのは、長石と灰を混ぜる、さらにその基礎釉に酸化鉄やゴスを入れて着色することでしょう。

釉薬の調合に挑戦する場合は、とにかく乳鉢と乳棒を用意します。

大きさは、乳鉢の直径が12〜15センチぐらいのものを用意すればいいでしょう。あまり小さいと粉がこぼれたりしますし、これより大きくなると、一気に乳鉢の価格が上がります。

できれば上皿天秤があればいいでしょうが、まあ、最初はデジタル秤でもいいと思います。わたしは最初の1年ぐらいはデジタル秤でやっていました。複雑な調合でなければ、特に問題はありません。

三角座標を使用した調合のことなどは、多くの本やネットで説明されているようですから、わたしはそれ以外のこと、自分が学んで、なるほど、と思ったことを書いてみます。

まず、試験調合はたくさんの種類をおこなうはずですから、100円ショップなどでプラスチックのカップを購入し、そのカップに番号を振ってマジックで書いておきます。

これは当然、ミスを防ぐためです。わたしは数字やアルファベットを書いて、ノートに別に調合の内容を書いたりしています。こうすれば、カップは洗ってまた後日使用できます。試験する粉末は、20〜30gぐらいが適当でしょう。

まず、よく洗って充分乾かした乳鉢にまず最初の混合原料をいれ、乳棒でよく摺ります。

これはあくまで混ぜるためで、粒子を細かく摺るという意識は必要ありません。あくまで、大きなかたまりをつぶして、それぞれの原料が充分に混ざるようにするのです。

さて、いよいよ水を入れますが、入れすぎに注意しましょう。まず、粉を湿らせる程度にしたほうがよいと思います。それから、少しづつ水を足し、筆で塗れるぐらいにします。

わたしはこの段階でCMCを入れています。水だけでは、刷毛塗りがしにくいと思います。水やCMCを入れたら乳棒で数分充分に混ぜます。混ぜるときは、おへその所に抱え込んでゴリゴリやったほうがやりやすいでしょう。

用意した素焼きのテストピースに塗ります。

このとき、意外とおすすめなのが、均一に塗るのではなく、ムラになるように塗ることです。釉薬の薄い部分と濃い部分を意図的に作っておくのです。

こうすれば、一つのテストピースで、その釉薬のさまざまな表情を確認することができます。

釉薬1を調合して、テストピースに塗ったら、乳鉢と乳棒を洗います。

洗ったら、乳鉢をよく拭いて、乳棒をさし、ドライヤーの先端も差し込んで温風で充分に乳鉢と乳棒を乾かします。こうしないと、次の釉薬2の原料を入れたときに、粉が乳鉢にくっついて、仕事がかなりやりにくくなります。

数種類の釉薬を試験する場合は、なるべく、白い原料から混ぜていくべきです。しかし、もし乳鉢の内側に前の釉薬の色が残って、拭いても洗っても取れない場合は、長石の粉か、ケイ石の粉と水を入れて摺ると、きれいになります。

一つの調合で、テストピースを二つが三つぐらい作っておくと、酸化や還元、最高温度などの試験に使用できます。

こうしてすべてのテストピースを作って焼き、その中から、うまくいったものがあったら、今度はそれを、さらにテストします。

だんだんと作品を大きくすると、テストピースとのギャップがあることがあるかもしれません。小さな色見でいいと思っても、大きな器になると雰囲気が思った感じにならない、ということもあり得ます。

また逆に、意外といいぞ、ということもたまにはあります。

もちろん、調合のことばかりでなく、釉薬のテストをする土を変えるなど、やろうと思えばいくらでも試験はつづいていきます。

さて、いくつか試験した中から、これを使ってみよう、というものがでてきたら、今度は乳鉢ではなく、バケツなどで調合します。

バケツなどでキロ単位の調合をする場合は、先にバケツに水を入れてから粉を入れます。そうしないと、原料粉への水の浸透が悪くて、なかなか均一に混ざりません。

バケツで釉薬を作ったら、篩(ふるい)を通します。篩は80目以上であれば、大丈夫です。スムーズに篩を通すためには、なるべく水の多い薄い釉液にしておきます。後日分離したうわずみを取り除き、適正濃度にして使用します。


わたしは、こうした作業が好きですが、逆に、面倒くさくて嫌い、という人もいます。

あなたはいかがですか?




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2009年08月06日

釉薬の厚み


釉薬に関する質問や、講座での作業がかさなりましたので、書いてみたいと思います。

釉薬の濃度は、作品の雰囲気を大きく左右する、とても重要な要因のひとつです。釉ガラスのベールを、どれだけの厚さ素地に重ねるのか、という言い方もできるかもしれません。

釉薬というのは、ガラスのようなものです。焼成した作品の釉薬面は、釉薬の色味と、焼きあがった土の色味が重なっているわけです。

そのため、あまりに厚く釉薬をかければ出来上がった作品は釉薬の色味が強く出てしまいますし、薄くすぎた場合は、土と釉薬が反応しあった中間層しかなく、いったい何の釉薬なのか、わからなくなってしまうこともあります。

厚くかけすぎれば、剥離したり、強い貫入がでてしまったりというトラブルがおこりますし、薄すぎれば荒い素地がでてしまったり、吸水性が強すぎて食器として使い物にならなくなったりします。

もちろん、結果として良好な雰囲気となれば、黄瀬戸の焦げであるとか、落ち着いてマットな雰囲気になったりもします。そのため、テストピースを制作して、釉薬をテストするときには、濃いところと薄いところができるようにムラに塗るか、濃度ごとにテストピースを用意するといいでしょう。

わたし自身の経験ですが、白っぽくなるように調合した釉薬を、何気なくあまった素焼きの別の土にかけたところ、その土の鉄分と薄く掛けた釉薬が、還元焼成によって、まったく違う色味と雰囲気を作り出したことがありました。その釉薬は、どちらかと言うと、いまいちだなぁ、とそれまでは思っていたのですが、その後、その効果を狙って頻繁に使用するようになったことがあります。

釉薬を使いこなすのは、とても難しい。

しかし、さまざまな実験をしたり、調合をするのはとても面白いものです。
また、たった一つの釉薬であっても、釉薬の濃度を極薄から特濃まで変化させたり、様々な種類の粘土を使用したりすれば、たくさんの雰囲気を出すことも可能なのです。

よく、同じ釉薬でもだんだんといい雰囲気をだせるようになる、と言われることがあります。
おそらくそれは、適正な濃度や、掛ける粘土の吟味、焼成技術(冷却技術をふくめて)の向上などにより、自然と高次元で融合した、作品自体のまとまり、というものが出てくるからではないでしょうか。

まだまだのわたしが書くと、あまり説得力がないですが・・・。





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2009年05月14日

低火度釉・高火度釉


今回は、かんたんではありますが、温度による分類のことを書いてみます。

これまで、釉薬の分類の定義はいろいろあります、ということを書いてきましたが、焼成するときの温度によって分類されることもよくあります。

900℃から1120℃ぐらいの低火度釉、または低温釉などという分類、これはフリットや楽焼などになるでしょうか。

そして1140℃から1300℃の中火度釉、または中温釉、わたしたちが一般に使用する温度域ですね。

さらにそれ以上のもの、1500℃ぐらいまでのものを高火度釉、高温釉などといいます。

これもややこしいのは、また別の分類で、1000℃から1100℃の釉薬を軟質釉とかいうことがあったようで、わたし個人も経験があるのですが、低火度釉と言ったときに、相手が想像する温度がこちらと少しずれている場合があります。

温度による分類は、その温度でとけるものの関係上、まったくレシピがちがいますので、有効な分類だといえると思います。

高温釉などは、個人が調合して使用することはそうそうないかもしれませんが、低火度釉はチャレンジした方、これからされる方がいらっしゃるかもしれませんね。

楽焼の釉薬は、低火度釉に入りますし、七輪陶芸などでもその温度は簡単に生み出すことができるでしょうから。

わたしも過去に初めてチャレンジしてみたときは、フリット、唐の土などを使って絵具店の方や、友人などに聞いていくつか調合してみました。その中の3,4種類がいまわたしの楽焼の定番になってもいます。

低温でとけるものは、なんとなく身体に悪そうなものが多いので、調合するさいにはよく調べて行ってください。

いまでは無鉛フリットがありますので、それとカオリンなどを8:2とかで混ぜれば安全な低温釉ができることはできます。


話は脱線しますが、わたしの受講生に歯科の先生がいて、その方に聞いた話ですが、最近では安い金属のカバーなどが出回っていて、その製造元が某大陸らしく、もとの金属の安全性がどこまであるのかわからないから怖い、ということでした。

例えば鉛とかですか、と聞いたらそれもありますが、歯科の場合口の中に入れっぱなしなので安易に安いからといって使うのはためらわれる、ということでした。同じことは100円ショップの器の釉薬にも言えます。

わたしの勝手なイメージですが、身体に悪そうな奴ほど低温でとけたりします。しかし、そういうものほど美しかったりするのです。

アメリカとかイタリアの駄菓子で、これはどう見てもやばいだろ、という色の奴ほど美味しい的な・・・。

釉薬の安全性のことなど、いつか書けるように仕事と勉強を引き続きがんばりますね。






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2009年05月07日

白マット釉とワラ白釉


白マットと藁白の二つの釉薬の違いを、講座で説明するのが意外と難しいです。

まず、マットという言葉をしっかり定義してみましょう。

マット釉というのは、不透明で不光沢である釉薬、と言えるでしょう。
釉薬自体が透明ではない。またその表面はツヤがない、ということです。

表面にツヤがないということは、融けないものが多めに釉薬に入っているということですね。

ワラ白釉などは、不透明ですが、光沢があります。乳濁釉と言うこともあります。釉薬自体はこちらの方がよく融けているということになるのでしょうか。

この二つ、どう例えるといいのか考えましたが、上手く思いつきません。

マット釉は融けきれてないが、乳濁釉は融けているともいえます。
また、マット釉は調合自体がその結果をしめしていますが、乳濁釉は、たとえば透明釉に乳濁作用のあるものを添加すると、それらが釉ガラスに作用して乳濁させます。



■ 分類の境界


すこし意地悪なことを書いてみましょう。

透明釉も調合によっては、窯での焼成後、ゆっくりと冷却したり、もう一度再加熱したりすると、透明ではなく乳濁の方向へ変化することがあります。

また逆に、マット釉を再加熱したり、最高温度で窯の外に引き出したりすると変化していきます。

そして釉薬は、ある程度の厚みで施釉して焼成した場合は、はっきりとその釉薬の性質を現しますが、一定以上薄く釉掛けしたり、個性的な土を使用した場合、素地の影響をうけて全く違ったマチエールとなることがあります。

こうなってくると、もとの透明釉とは、もはや呼べないのではないでしょうか。

混乱のないようにするには、調合したり、購入したときの釉薬の名前をもって管理するのがいいのではないでしょうか。



わたしもいつの間にか、このバケツの釉薬はこうなる、これはこう、などと無意識で考えるようになっていました。それを矯正するうえでも、ひとつひとつの用語と向き合うのはとても意味のあることかもしれません。


また、陶芸教室では、釉薬をなにか絵具の種類のように捉えていることが多いようです。たくさんの種類の釉薬があるのは、たしかに楽しいです。

しかし料理の味付けで、お醤油がいろいろな使われ方をするように、たった一つの釉薬でも、適正濃度、薄く、濃く、粘土の変化、焼成方法の種類、冷却方法のバリエーション、再加熱などで驚くほど多彩な変化をしてくれると思いま
す。

わたしも、こう書いた手前、今まで以上にそうしたことを試していきたいと思います。


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2009年03月05日

さまざまな濃度で焼成実験


長石と灰の調合から、いろいろなバリエーションができるという話を以前しました。
それでは今回はというと、濃度によるバリエーションについてです。

5、6年前からはじめた釉薬の勉強ですが、自分が勉強したことをノートに記録しつづけてきました。

初めて焼成試験したのは2成分で、次に実験したのは、それぞれに酸化金属を入れることでした。陶試紅や弁柄などです。

また、濃度によるマチエールの比較をしました。ある調合の釉薬を、濃度を変えながら釉掛けして、その違いを確認するのです。これは非常に意義深い実験でした。




ためしにそのときのノートを写してみますね。

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「比重の違いによるテスト」

■土 本業土 赤 (瀬戸の代表的な粘土です)

■釉 長石 75 灰 25
   高さ3センチほどの小さな湯のみ状のテストピース(弁柄とゴスで絵付
   けする)に同じ方法でずぶ掛け。

■窯 電気炉 SK7(1230℃) OF(酸化焼成)


◆60(濃度)

気孔のような微細なぶつぶつが釉面にある。鉄絵は流れるギリギリ。
描いた線や絵のシャープさがない。SK7では使えない。

◆50

気孔なし。貫入あり。
釉がたまった部分の線が流れ気味。50〜60では鉄絵がはっきりしない。
いかにも透明釉をかけました、という感じの濃度。

◆40

たぶんうすい。貫入はない。砂気がある土なので、渋い感じ。
鉄絵ははっきりしている。ほどよい。

◆30

かなりうすい。水はしっかりはじいている。
鉄絵は描いたそのまま、という感じ。筆のかえしの微細なはねの線もそのまま。

◆20

かかっているかどうか、パッと見にはわからないぐらい。
水をはじいた、と思ったらすぐに素地にすわれてしまった。
食器にはとても無理。土をかえるか。


◆感想 濃度によって雰囲気がまるで違う。土味が薄いほど顕著にでる。


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・・・という感じです。

いま読み返すと突っ込みどころ満載ですが、当時本当に一生懸命でした。
勉強し始めたころのことを思い出しますね。たしかこれ、風呂場で釉掛けしたんだと思います。なつかしいなあ。



同じ釉薬でも、濃度を変化させると、まったく違います。特に鉄分を多く含んだ赤土などは、さまざまな表情を見せてくれると思います。




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